Books-Culture: 2012年5月アーカイブ
今年2012年は日本最古の歴史書『古事記』編纂1300年にあたるのでいろいろと本が出ている。これは吉田敦彦氏監修の、古事記あらすじと、地図、図解、写真。神話の解説の背景にはさまざまな学説というのがあるわけで、それをいちいち展開すると、一般書としては話が難しくなるわけだが、この本はバランスよく異説にも触れたり、要約して載せているなあと思った。古事記の全体像を理解するのによくできた本だと思う。
日本の神話と世界の神話とのつながりという観点はこの著者ならではかもしれない。
この本に指摘されていた例を抽出してみると、
半裸になって踊るアメノウズメ → 『リグ・ヴェーダ』、ギリシア神話に類似
異形の妻トヨタマビメ → メルシナ型神話として世界に広く分布
生母の姉妹に育てられ叔母と結婚するウガヤフキアエズ → 『リグ・ヴェーダ』に類似神武天皇らを助ける老人の姿の神シホツチ → ギリシア神話の海神ネレウス
オホゲツヒメの食物起源神話 → ハイヌヴェレ神話として世界中に分布
女性の陰部から生じる火の神カグツチ → インドネシア、ポリネシア、南米に類似
イワナガヒメとコノハナサクヤヒメの死の起源神話 → バナナ型神話として東南アジアやパプアニューギニアに類似
など、多数ある。
古事記という最古の神話も日本の100%オリジナルというわけではなく、ベースは世界中の神話が集まってできているのだ。韓国や中国よりももっと遠いところから伝播してきたというのは面白いところだ。
地図でみると、神話の中の出来事がどのくらいのスケールで語られているのかよくわかるのもよかった。
・iPadで古事記の傑作漫画を読む 「まんがで読む古事記」
http://www.ringolab.com/note/daiya/2010/11/ipad-1.html