Books-Culture: 2010年11月アーカイブ
今週末で龍馬伝が終了してしまうので、来年のNHK大河ドラマの予習。
江(ごう)。
戦国大名の浅井長政と織田信長の妹お市の間に生まれ、二度の政略結婚と離婚の後で徳川秀忠の妻になり、大奥を創設した女性である。徳川家康は江の義父で、二代将軍の秀忠が夫で、三代将軍の家光は息子である。江の姉は豊臣秀吉の側室の「淀君」=「茶々」である。江は淀君の息子の秀頼に娘の千姫を嫁がせている。つまり江は「信長を伯父に持ち、秀吉の息子に嫁がせ、家康を義父に持つ」ということになる。
父は信長に殺される。最初の夫とは秀吉の命令で離婚させられる。家康の天下取りの都合でに姉を大坂の陣で失う。でも、しっかり天下人の妻になって母になって大奥を取り仕切る。運命に翻弄されながらも、力強く生きた人だったみたいだ。
本能寺の変、関ヶ原の合戦、大坂の陣など歴史的な大イベントがいっぱいあるし、信長、秀吉、家康ほか有名な戦国大名が勢ぞろいなので、見どころが多そうで今から楽しみ。
それにしても今回の登場人物たちの人間関係が非常に複雑だと思うのは私が世界史派だからというだけじゃないだろう。戦国大名同士の婚姻関係が実際に複雑なのであり、龍馬伝とは比較にならない解説が必要になりそうだ。Wikipediaを見ながらドラマを見ることになるかもしれない。
そして、こういう解説本も需要が大きそうだ。
江と徳川三代の関わりを丁寧にひも解いている。
「現代の観点からすると、結婚・離婚を繰り返すのはネガティブなイメージがあるのは事実だ。この頃の日本と現代の日本とでは結婚観がまるで違う。社会通念が根本的に異なっていたのである。」
など、江の生き方について、当時の意味も語られている点も参考になる。
電子書籍じゃなくても名作だと思うのですが、電子書籍の名作です。
最先端の電子機器iPadで日本最古の古事記を読むという、とり合わせの面白さだで紹介するわけではありません。もともと私は古事記・日本書紀が好きなので、現代語訳や漫画作品が出るたびに買っていますが、この漫画は娯楽的にも教育的にも抜群に素晴らしいと思います。完成度が高いエデュテイメント作品です。
古事記の話そのものは荒唐無稽で、おまけにエロスとバイオレンスに満ちた展開ですから、そのまま漫画にすると解説なしにはわかりにくくて、素直に楽しめない作品になります。でも、脚色を入れてドラマとして面白くし過ぎると、今度は本来の古事記の内容を知るという教育目的が果たせなくなります。この作品はそのバランス感覚が素晴らしいのです。
解説や神々の系図もちゃんとつけられています。本作品には御参拝記念用「まんがで読む古事記」神社版というのもあって、抜粋版小冊子を配布している神社もあるようです。子供が読んでもセーフなレベルに、エロス場面、バイオレンス場面も抑えられて描写されているので安心なコンテンツでもあります。
ちなみに紙の書籍版もあります。
・アマテラスの誕生―古代王権の源流を探る
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/08/post-1057.html
・日本語に探る古代信仰―フェティシズムから神道まで
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-959.html
・日本人の原罪
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/03/post-946.html
・[オーディオブックCD] 世界一おもしろい日本神話の物語 (CD)
http://www.ringolab.com/note/daiya/2009/02/cd-cd.html
・日本史の誕生
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/08/post-799.html
・読み替えられた日本神話
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/02/post-700.html
・日本神話のなりたち
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/05/post-573.html
・日本古代文学入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004835.html
・ユングでわかる日本神話
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004178.html
・日本の聖地―日本宗教とは何か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004661.html
・劇画古事記-神々の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004800.html
・日本人の神
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003868.html
・日本人はなぜ無宗教なのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001937.html
・「精霊の王」、「古事記の原風景」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000981.html
・古代日本人・心の宇宙
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001432.html
・日本人の禁忌―忌み言葉、鬼門、縁起かつぎ...人は何を恐れたのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000809.html
・神道の逆襲
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003844.html
・古事記講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003755.html
・日本の古代語を探る―詩学への道
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003206.html
「民俗学者宮本常一の代表作に『忘れられた日本人』がある。宮本は地方の田舎で昔ながらの生活を営む人々の中にこそ、本当の日本人の姿があるとした。 私はそれとは対極に、路地に住む人やそれと同じように異端とされた人々、タブーとされた出来事を通して、日本人の姿を見つめようと努めてきた。だからこれは宮本と違う意味で、ノンフィクションの書き手である私なりの「忘れられた日本人」ストーリーでもある。」
被差別部落問題ノンフィクションで大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したライターによる、マイノリティ視点の現代日本人論。偉人伝より異人伝の方がずっと面白い。有名、無名の6人の人生が語られる。
・類人猿のような姿態の"ターザン"姉妹
・差別を描いて封印された漫画家『血だるま剣法』平田弘史
・孤高のやり投げ選手 溝口和洋
・医師の猥褻行為と裁判で戦い続けた生涯を持つ女性
・股間から火を吹く芸で知られるストリッパー
・伝説の落語家 初代桂 春団治
日本はアメリカと比べると社会の異形に対する許容度がかなり低い国だと思う。規格を外れた人間を排除しようとする。現代になって部落差別は少し減ったかもしれないが、情報ネットワークが発達して、異形はネットメディアに晒されて叩かれる。異形に対する不安や嫌悪感は、多様性に対する恐怖が根っこにあるのだと思う。みんな一緒であることで安心を得る社会と、異形を取り込みながら成長していく社会。後者の社会に生まれていたらイノベーターと呼ばれたかもしれない人たちが、日本社会で生きにくい人生をおくっているレポートの本である。