Books-Culture: 2007年12月アーカイブ

・あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅
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「中国残留孤児だった父の半生を追う、奇跡と感動のドキュメント!

日中の国交が断絶していた1970年に、
文化大革命さなかの激動の中国から
奇跡の帰国を果たした28歳の日本人戦争孤児
――それが私の父だった。
二つの国の間で歴史に翻弄された父は、
いったいどんな時代を生き抜いてきたのか?

21歳の秋、旧満州に飛び込んで、10年がかりの長い旅の果てに、
戦争のもたらす残酷な運命と、語り継がれるべき「歴史」の真実を鮮やかに描き出す。
戦争の被害者である父と、加害者だとされる軍人だった祖父、
父を育てた中国の養母と、血のつながらない親戚たち……
いまを生きる私につながる“戦争”の物語とは? 反日と情愛の国のリアルとは?
そして「歴史」は複雑に絡み合い、ひとつの数奇な運命としてその姿を現わす」

今年最も感動したドキュメンタリであった。特に第一部の出来が素晴らしい。自分よりも年下の書き手が、第二次世界大戦をテーマに、こんな傑作を書けるなんてと驚かされた。
著者の城戸久枝は「1976年日本生まれ、日本育ちの」中国残留孤児2世。2世とはいっても「ただの日本人」である彼女は、自分のルーツ探しとして父親の中国での足跡をたどる旅に出た。戦争によって大陸に取り残され、中国人として生き、苦難の末に帰国した父親の物語。

「あの戦争」がぐいぐいっとひきつけられて、間近に生々しく語られる。歴史に対する遠近感が独特の作品である。それは父親の帰国は1970年だったこととが大きい。この家族にとってはそれまで戦争は続いていた。だから遠く離れた「あの戦争」も30数年前の一昔前のこととして語られるのである。だから、30代の著者は自身の人生と地続きの話として、父親の人生も情感たっぷりに語ることができたのだと思う。

映画にもなった漫画「夕凪の街 桜の国」と同様に、「戦争を知らない子供たち」である私たちの世代でも、戦争をテーマの傑作はまだまだ生まれる可能性があるのだなあ。

・夕凪の街 桜の国
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005073.html

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http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005077.html

『針聞書』 虫の知らせ

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・『針聞書』 虫の知らせ
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へんな本だ。

九州国立博物館所蔵の「針聞書」は、織田信長の時代の1568年10月11日に、現在の大阪在住の二介という人が書いた鍼術の秘伝書である。人間の体内にすむとされる、想像上の63種類の虫の絵とその説明が書かれている。

たとえば一匹目は肺積という白っぽくて辛い味と生臭いにおいを好む虫。最初は右のわき腹に発生して、やがて胸先を多い尽くして肺病を引き起こす。治療に当たっては、鍼はやわらかく浅く立てよという指示がある。

日本語には虫という語のつく表現が多い。蓼食う虫も好き好き、若い娘に悪い虫がついて、虫がいい話、虫の知らせ。悪い虫が起きて、腹の虫がおさまらない、虫が好かない、本の虫、仕事の虫などたくさんある。多くの表現の背景には、人間の体内に虫がいて宿主の心身に影響を及ぼしているという民間信仰がある。昔は排泄物に回虫が多く見られたから、体内の虫は身近でリアルな存在だったのである。

63種類の病魔の虫は、現代のウィルスや細菌に相当する存在である。今でも子供向けの説明には、虫歯菌や風邪のウィルスが擬人化されて登場するが、この古文書に登場する虫たちは馬や蛇のような形をしていたり、独特の性格を持っていたりと、味のあるキャラばかり。

・九州博物館のサイト
http://www.kyuhaku.com/pr/collection/collection_info01_02.html

上記のサイトで実物が公開されているが、ヘタウマ系のキャラクターとして愛嬌があるものが多い。博物館はプロモーションにこの虫たちを活用しているようだ。フィギュアまで制作されて販売されている。戦国時代の精神世界から登場したこのキャラクター、結構、流行るかもしれない?

・フィギュアの販売サイト
http://www.j-cast.com/feature/mushi/fig.html

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