Books-Culture: 2006年6月アーカイブ
武士道と不可分な主従の「忠」という感情。
男性ばかりの武家社会における、その絆の強さは、衆道(男色)と関係が深いことを、多数の文献を引用しながら明らかにする。「忠」には「恋」の感情が含まれており、そこには肉体関係も当然のように存在する。裏切られれば嫉妬もする。歴史上の有名な決闘のいくつかは男色関係のもつれが原因であった。
江戸時代や明治時代の初期までの日本では、男性同士の関係が現代よりも遥かに容認されていたらしい。武士の心がけを説いた18世紀の書「武士としては」には、武士として度を過ごしてはならない事項として、私欲、えこひいき、女色、酒食と並んで童愛(男色)が挙げられている。恋人の敵討ちは美談であった。武士道の華、尚武の証として讃えられていた時代もあったのだ。
時代が下り、武家社会が官僚社会に変容する。軍隊社会では、教育的意味も強かった主従関係、義兄弟関係がその意味を失う。それに伴い、男色は次第に衰え始める。ひとつには結婚年齢の低年齢化も原因であったそうだ。江戸時代の初期の武士は40歳で結婚するものが少なくなかったが17世紀後半には20歳前後で結婚するようになった。
感情や肉体の絡んだ強い絆を失い、武士道は、倫理道徳の精神論に変容していく。「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり(葉隠)」という有名な言葉があるが、なぜ死ぬのかの理由の一つが、愛する同性のためでもあったことになる。江戸時代の文化史、精神史を考える上で、男色は省くことができない要素で、その研究は面白いだけではないと結論されている。
武士道とエロスの意外な面がわかった。NHKの大河ドラマなどで、こうした事実に忠実に、戦国時代のドラマを作ったら、面白いのではないか。こどもに説明するのが難しそうだが。
・男女交際進化論「情交」か「肉交」か
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004393.html
”ダビンチコード”がこじつけに感じられてついていけない私ですが、この本の内容はすべてが現在進行形の実話でわくわくした。ナショナルジオグラフィック協会の最新刊。
1970年代、エジプトで謎のパピルスの写本が発見された。欲に駆られた美術商たちの手から手へ、写本は30年間の旅の末、米国で信頼できる研究者の手に渡った。そのとき写本は長期の劣悪な環境によって崩壊寸前であった。研究グループは5年の歳月をかけて修復を行い、内容を解読した。専門家の調査、放射性炭素年代測定の結果は、紀元240年から320年頃のものという結果がでた。初期キリスト教の片鱗を今に伝える文書であることがはっきりした。
そしてナショナルグラフィック日本語版では6月号の特集である。
・NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2006年 05月号
古代コプト語で書かれた数十ページの写本のタイトルは「ユダの福音書」。
その内容は通説をくつがえす衝撃的な事実に満ちている。裏切り者とされたイスカリオテのユダはイエスが最も信頼した弟子であった。イエスの十字架上での処刑は、イエスが肉体を捨てて高次の存在になるために、イエス自身が企んだことであった。イエスは誰よりも信頼する弟子のユダに、最後の重要な指示を与えた。私をローマの官憲の手に売り渡せ。「お前は真の私を包むこの肉体を犠牲とし、すべての弟子たちを超える存在になるだろう」。
ユダの福音書にはユダとイエスの対話が含まれている。イエスは最も信頼する弟子であるユダにだけ真理を伝授している。「ユダの福音書を追え」は発見の経緯中心のドキュメンタリ、福音書の内容については要約レベルで紹介されているが、詳しくは同時に出版された「原典 ユダの福音書」に原文が収録されている。解説も詳しい。
今後、この写本が学術的にどのような位置づけになるかはまだわからない。イエスの死後数百年の頃の初期キリスト教には、今に伝わる新約聖書以外にも、複数の福音書があった可能性があるという人がいる。それを示唆する別の文書もある。ユダの福音書は、偽書ではなく、その後の教義の統一過程で、抹殺され、失われた文書である可能性がある。
結論がどうなるかわからないが、考古学上の大発見を一般読者もリアルタイムに味わえるのは素晴らしい。
なお、この原典を理解するには、グノーシス主義について、知っていると深く楽しめる。以前、グノーシス入門書を書評しているので参考文献として紹介。
・グノーシス―古代キリスト教の“異端思想”
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004060.html
・ヴォイニッチ写本の謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004123.html
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世界遺産番組のプロデューサーもつとめる、NHK勤務の著者が、趣味の個人旅行と仕事の出張で訪問した200近い世界遺産について、ジャーナリスト視点で語る。
・社団法人日本ユネスコ協会連盟 - 世界遺産活動
http://www.unesco.or.jp/contents/isan/about.html
世界的に見ると、日本における世界遺産の認知度はトップクラスなのだそうだ。テレビでは毎週のように世界遺産を取り上げる番組が放映されている。ビジュアル的に見栄えがするために雑誌メディアや広告としても露出が多い。旅行の目的地としても人気がある。著者は、その人気の理由として、日本人は権威が認定したものに弱いこと、お遍路のように決まった目的地を回る目標達成型の旅行が好きなこと、があるのではないか、と分析している。
かくいう私も世界遺産には興味がある。この数年間、HDDレコーダーのキーワード録画に「世界遺産」と登録し、関連番組を全部録画し、自宅でライブラリ化している。何が楽しいのかというと、ポケモンカードのように集めるのが楽しい、気がする。
しかし世界遺産がいくつあるのか、知らなかった。どのような組織がどのような基準で認定するのかも知らなかった。この本で知りたかった世界遺産の全貌を把握できた。
ユネスコが年に一度、認定する世界遺産には、まず自然遺産と文化遺産の分類がある。ふたつの特徴を共有するものは「複合遺産」という認定を受ける。また戦乱や環境破壊などで状態が悪化すると「危機遺産」として重点監視下に置かれる。
希少で貴重な存在である世界遺産だが、実は登録数はひたすら増え続けており、2005年の段階で812件に及ぶ。予備軍である暫定リストには1000件以上が行列待ちになっている状況。近年は登録数が多すぎるのではないかという議論も出ているそうだ。私の録画コレクションはまだまだ続けられそうである。嬉しいような悲しいような。
この本には世界遺産番組の紹介ももちろんあった。
世界遺産というとTBSの30分番組を思い浮かべるが、こちらはNHKで放映されている5分番組「シリーズ世界遺産100」を100本収録したDVD5枚組みボックスセット。この番組シリーズも、私の録画コレクションの対象だったのだが、抜けなく、高画質で全部見られることに魅力を感じ、購入してしまった。大満足。
・NHK 世界遺産の旅 【探検ロマン世界遺産・シリーズ世界遺産100・とっておき世界遺産100】
http://www.nhk.or.jp/sekaiisan/
番組のオフィシャルサイト。情報が充実している。
地域ごとに別れて各DVD1枚に20番組が収録されている。毎週日曜日に1枚見ると決めて1ヶ月で100本を見てみた。世界遺産マラソン。実際に100箇所の訪問は難しいが、映像で世界一周した気分になれる。地域別なので近隣関係がよくわかる。各遺産が5分で完結するため、飽きずに楽しめるのもいい。カラー写真満載の書籍が付属していて、詳細情報は文字で読める。
世界は広く、歴史は長いことがよくわかる。
せめて国内の世界遺産を全部、旅行してみたいと思っているのだが、今年はどこか行けるだろうか。世界遺産のある地域でIT業界のイベントに呼んでもらえないかなと虫のいいことを思っていたりする。そういう話ないですかね?(笑)
私の地元近くの鎌倉は世界遺産の暫定リストに登録されている。認定されると徒歩でもいける世界遺産ができて、ちょっとうれしい。
・世界遺産登録推進担当ホームページ かまくら GreenNet
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/sekaiisan/top.htm
女性科学史家が、古代から中世の古文書を研究し、数千年前の戦争の中でも、生物化学兵器が世界中で使われていたことを立証しようとする。化学や細菌学の知識がない時代であっても、人類は、生物化学的な殺傷能力を巧妙に利用し、敵と戦ってきたという。
古代の生物化学兵器の例。蛇の毒を塗った矢、下痢を起こす植物成分での飲み水の汚染、兵士の死骸を投石器で城壁越しに投げ込む疫病攻撃、ペスト菌の付着した衣類の投げ込む作戦、退却時に砦に毒入りハチミツを残す戦術、サソリ爆弾、原始的材料で作った粘着力のあるナパーム弾攻撃など。「生物兵器の「生物」としては、サソリ、スズメバチ、ノミ、シラミ、ネズミ、イヌ、ウマ、ゾウなど、ほとんど、あらゆる生き物が列挙される。」。
ゾウはブタを苦手とするそうである。ゾウ軍団に対しては、火をつけたブタを突進させ、軍団をひるませたらしい。敵兵の洞窟には凶暴なクマを突入させた。動物受難の時代である。毒矢には蛇や植物の毒と一緒に人間の排泄物も塗られていた。こうすることで、毒を生き延びてもさまざまな感染症で敵を殺傷する確率を高めていた。性病持ちの娼婦を、敵の兵士のいる場所へ送り込んだり、美しい「毒の乙女」を将軍のもとへ贈ったりした。この毒の乙女というのは科学的根拠は怪しいのだが、少量の毒と解毒剤を毎日摂取することで、毒性を持つに至った女性のことである。彼女と交わるものはその毒におかされて死んでしまう。
こうした化学や細菌の威力は、悪魔や神の仕業と理解されていた。原理はわからなくても、強力な効果は知られていた。犠牲者は悲惨に死ぬ。毒殺を恐れる王たちは侍医に万能の解毒剤を調合させ、毎日飲んでいた。同時にそうした兵器を使うことは、道徳的によくない不名誉なことという認識が共有されていたという。だから、表の歴史書には、具体的な記述が乏しいのだと著者は分析している。
そして現代における生物化学兵器との類似性が指摘される。今ならば一層悲惨な結果を招くことになると警鐘をならす。
この本を読んでいて思い出したのが、好きな漫画家 星野 之宣の「コドク・エクスペリメント」である。コドクとは蠱毒のこと。つぼの中に毒虫をたくさん入れ、戦わせて、最後の一匹になるまで待つ。生き残りの一匹からは、最強の毒性を抽出できる、という古代中国に伝わる毒の開発方法。この漫画では宇宙の凶悪な生物たちを集めて、ひとつの惑星に置き去りにし、惑星規模でのコドク実験が行われる。
・コドク・エクスペリメント 1
とある惑星に荷物を無人で下ろすはずが、上官の陰謀と惑星変動により置き去りにされた乗組員たち!20年後、その惑星は…。巨匠の描く宇宙SF。新装版。
・私の好きな漫画家たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000741.html
・感染症は世界史を動かす
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004403.html
・インフルエンザ危機(クライシス)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004247.html