Books-Culture: 2006年4月アーカイブ

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・文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
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上下の上巻部分をまず書評。

歴史から消滅した社会を比較研究することで、文明の崩壊の法則を論じた大作。

過去の文明崩壊に共通する、5つの要因として

環境破壊
気候変動
近隣の敵対集団
友好的な取引相手
環境問題への社会の適応

があると結論している。

共同体の発生→人口増加→食糧・エネルギー消費の増大→環境への負荷→食糧・エネルギー収量の低下→社会の混乱・破綻→崩壊・消滅というサイクルで文明は発生し、反映し、崩壊していく。5つの崩壊要因はこのプロセスの中に現れるが、最も重要なキーワードは環境である。

この上巻では、モンタナ州、イースター島、ビトケアン島とヘンダーソン島、アナサジ族、マヤ文明、バイキング、グリーンランドの繁栄と崩壊がケースとして詳細に分析されている。現代の例もあれば古代文明の例もある。

モアイ巨石像で知られるイースター島。かつてモアイ像は住民同士の宗教戦争によって、すべて倒され破壊されていた。現在、立って並んでいるモアイ像は現代になってから、復元されたものだけである。今のイースター島には樹木がないが、かつては森林に覆われていたという。樹木を一本残らず切り倒したのも、今は亡き住民たちであった。

イースター島は他の太平洋諸島から距離的に遠く孤立している。資源は不足気味な土地であったが、人々は懸命に生き独自の文化と宗教を育てていた。崩壊の原因はむしろ繁栄したこと自体にあった。増えた人口を養うために樹木が切り倒され、動物種を絶滅に追い込んでしまった。文化的であるがゆえにモアイのような、膨大なコストのかかる建造物をつくることに夢中になった。

外部からの資源の流入が期待できない島で。それは少しずつ進んだが、知らないうちに、自然の再生能力を人間の消費量が超えてしまっていた。彼らは自然から再生能力そのものを奪ってしまった。

次第に苦しくなる生活の中で、人々は希少な資源をめぐり争った。戦争は狭い島を一層荒廃させ、モアイ像をはじめとする文化も破壊した。この文明の晩年は激しい戦争と人肉食に及んだ飢餓に悩まされたらしい。ついにすべての住民が島から姿を消した。

このイースター島という箱庭の中の栄枯盛衰は数百年にわたる長い歴史であった。すべては徐々に進んでいた。各世代は知恵も能力もあり、最善と思う選択を選んでいたはずだ。そうでなければ巨石像を何百もつくる余裕のある一時代を築けなかったはずであるから。
上巻にでてきた多くの文明が、自らの住む環境を何らかの原因で徹底破壊してしまったことに崩壊の原因があることがわかる。人類のどんな営みも自然環境を少しずつ破壊している。農業でさえ破壊行為のひとつである。悪意や無知の環境破壊だけではないから複雑だ。イースター島という箱庭が実は現代の地球の縮図であるのかもしれない。

著者は、古今東西の文明崩壊の究明は今の地球文明の持続可能性の研究でもある、と示唆しているようだ。

下巻の書評を明日続けます。

・ルート66をゆく アメリカの「保守を訪ねて」
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ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス、サンフランシスコ...。米国の東海岸と西海岸の都市は世界にも知られたグローバルなアメリカだと言える。自由や民主主義、資本主義経済の優位性を世界に発信している。これに対して、保守、愛国のローカルとしてのアメリカはなかなか見えてこない。著者は保守の拠点であるアメリカの中央部、中西部を走るルート66を旅して、保守の代表的な人物たちにインタビューを行った。それはローカルとしての「本当のアメリカ」を見つける旅になった。

米国の保守の状況を伝える数字。1990年代の調査によると、週に一度は教会に行く成人の割合はイギリスで27%、フランスで21%なのに対し、米国では44%を占める。2005年の別の調査では宗教が「非常に重要」と考える米国人は57%、「まあまあ重要」は28%であり、合計で85%に達するという事実が紹介されている。

キリスト教の聖書では人間はサルから進化したことにはなっていない。中西部の州では、学校の授業で進化論を教えることを認めない、あるいは、進化論だけを教えることを許さない人たちがいる。伝統的には神が人間を直接創造したする創造説があるが、最近ではインテリジェントデザイン(ID)という概念も提唱されるようになった。

IDとは「宇宙や生物の成り立ちは自然淘汰などではなく、ある知的な要因(インテリジェント・デザイナー)によるものとするほうが、より良く説明できる」で、進化論者との対話を求める動きだそうだ。この論法ならば宗教ではないから、科学との論争の入り口に立てるということで、教育における進化論論争でよく使われるようになったという。自然科学の常識なら創造論は非科学、非合理である。アメリカの保守派はその非合理を合理的に主張するやり方を得たわけだ。

政治の中から現在の保守主義が生まれたという意見も紹介されている。民主党と共和党の打ち出す政策はかさなっている部分が多いため、人々をひきつけるには差異が必要であった。そこで共和党のとった戦略が、宗教的保守主義であり、実現の道具として中絶反対、同性結婚反対などの道徳・価値観が使われたとする意見である。

この共和党の戦略は近年の大統領選挙においても成功を収めており、イラク戦争でも経済でもなく、道徳・価値観を論点とすることで、保守派の組織票を集中させることができた。そうした政治基盤を持つブッシュは、外交政策、経済政策はともかく、内政的には彼らの主張に迎合している。

ルート66上の保守的な都市に住む人々へのインタビューでは、同じ保守と言っても、個別の政策やイラク戦争に対する意見はさまざまであった。個々の問題で賛成派、反対派がいる。それぞれの立場に立つ理由も十人十色であった。彼らが共通して支持しているのは、結局のところ、共和党か民主党か、レッドかブルーかという二元論ではなくて、アメリカという旗そのものなのだというのが、この本の結論であった。

そして、その旗への支持、愛国心の源が、ルート66に代表されるような古きよきアメリカの思い出であるらしい。そうした思い出は米国以外の国の人間は共有していないものである。ネオコン、KKK、キリスト教原理主義といった保守派の負のイメージは、わからないが故の不気味さの象徴として、諸外国の人間に印象づけられているように思った。

日本も諸外国も、特に知識人は留学先が多い東海岸と西海岸的視点で理解しがちである。アメリカをよく見るには、真ん中の人々の動向にもっと注意しておくべきだと気がつかされる。

・感染症は世界史を動かす
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ハンセン病、黒死病(ペスト)、梅毒、結核、新型インフルエンザ。聖書の時代から感染症は億単位の数の人間の命を奪ってきた。それは戦争や核爆弾を遥かに超える影響を及ぼす。中世のペストの大流行は世界で7000万人の犠牲者を出した。人口が元に戻るには2世紀を必要としたという。全盛期初頭のスペイン風邪では4000万人から8000万人の犠牲者を出した。そして新型インフルエンザの大流行が今起これば、最悪のシナリオでは1億8000万人から3億6000万人が死亡すると専門家に推定されている。

感染症の大流行(パンデミック)は特に都市化と交通の発達が進んだ中世以降に起きるようになった。医学が確立される前の中世では、原因不明の疫病は悪魔の仕業であり、患者は汚れた者と不当に差別されて悲惨な最期を迎えていた。ハンセン病やペストの死者は教会に埋葬されないことも多かった。

医学のない時代の治療は神頼み。無意味に血を抜いたり、水銀を吸い込んだり、自らの身体を鞭打って行進したりすることで病気が治るわけもなかった。患者を不衛生な場所に閉じ込めることで、死亡率はさらに高まった。

この本では中世以降のヨーロッパ、日本の感染症の実態が語られる。病気は自然が生み出すものだが、それを広めるのは人間である。ルネッサンスのヨーロッパでは、売春行為や娼婦は合法で公営のものまであった。ローマのシスティーナ礼拝堂は娼家の税で建ったといわれるそうだ。職人社会のマイスター制度では、若者は一人前になるまで結婚してはならないとされて晩婚化が目立った。若い男性は売春宿を利用した。梅毒の大流行の原因にあげられている。

産業革命のイギリスでは都市部の工場で、劣悪な環境下に労働者がおかれた。栄養不足や疲労、非衛生的な部屋に、集団で暮らすことで結核の温床になった。1840年のリバプールの労働者階級の平均死亡年齢は15歳だったそうだ。日本でも炭鉱労働者は次々に結核で倒れていた。世界大戦ではスペイン風邪の菌が兵士の大移動で世界中に広まった。最新のSARSや鳥型インフルエンザは飛行機で国境を飛び越える。

状況が中世と異なるのは、治療と予防の技術が進み、ある程度のコントロールが可能になっていること。近年、多くの専門家が近い将来のパンデミックを予言している。新型インフルエンザも怖いが、この本で知った事実「今日の世界の人口の3分の1は結核にかかっている」事実にも驚かされた。感染症の問題は人類最大の文字通り致命的問題かもしれない。

中世と近代のヨーロッパや日本の歴史を、感染症という視点で切り取った社会史、文化史として勉強になる本だった。世界を動かしてきたのは政治でも経済でもなくて、病気と考えることもできるのである。

・インフルエンザ危機(クライシス)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004247.html

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