Books-Creativity: 2009年5月アーカイブ

・文才がなくても書ける小説講座
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文才がなくても書ける小説講座

身も蓋もないタイトルに思わず噴き出した。

文才がないのに小説を書く意味があるのか?

面白くない小説など存在価値がないではないか。

書けない人が書く必要がないジャンルなのではないか?

でも、よく考えてみると、ありである。

少なくとも書いてみたい人間にとってはオオアリクイである。

才能があるかないかは書いてみなければわからないからである。
(ダジャレも言わなきゃ受けるかどうかわからないからである。)

文学的に読む価値がある作品か否かはともかく、まず一遍の作品を完成させることを重視した講座である。著者が高校教師なだけあって、論理的で明解に指導してくれる。説明の流れに説得力がある。

まず最初に何か書く。すると「こう書いた以上は、次にこう書かないとまずいよな」という不足を埋める必要が生じる。ひらめきではなく論理で埋めていけ、というのが著者が教える基本的な書き方。

「書くことを、情緒や感性と結びつけて考える人がいます。それらが豊かでなければ、すなわち特別な才能がなければ、書くことはできないというのです。これは誤りです。書くことに必要なのは不足を見きわめる目と、それを慎重に埋めようとする論理の働きです。書くことは私たちが思う以上に、即物的な行為なのです。」

有名作家の絶妙な例文を用いて、文豪の文章でさえ案外に論理的な生成の働きで綴られていることが示される。これなら自分でも書けるかなあと思えてくる。文章術の本にはやり方を示すと同時に、書ける・書きたいというその気にさせる要素も大切だろう。その点、この新書はかなりの高得点である。

最初の一作をものにするための手ほどき本だ。

何を書いたらいいかわからない、書きたいことがないという人でも大丈夫だとフォローする。「書きたいことが事前に想定されていなくても、書き継ぐことによって、書きたいことは見えてきます。」。文才がなくて書きたいこともなくても大丈夫だという、ハードルの低い小説家への案内本。

万年小説家志望の私としては、やはり何か書いてみよう、とまたしても思った。

・一億三千万人のための小説教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/2008/03/post-721.html

・物語の作り方―ガルシア=マルケスのシナリオ教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005281.html

・2週間で小説を書く!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004901.html

・人生の物語を書きたいあなたへ ?回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・小説の読み書き
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004878.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html