Books-Creativity: 2006年8月アーカイブ

・すばらしい思考法 誰も思いつかないアイデアを生む
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天才の創造性は「ランダムな変異から、優れたものを選択して残す」やり方にあると著者は自論を展開している。ダーウィンの進化論、自然淘汰の仕組みと同じである。


自然界が手当たりしだいに新たな可能性を生むように、天才はバラエティ豊かな代替案をいくつも思いつき、いくつもの推測を生みだす。そこから最良のアイデアを選り分け、さらに発展させたり改善するのに使う。


驚異的にクリエイティブな天才は、二、三の限られた偉業を行ったと広く思われているがこれは誤解だ。トーマス・エジソンは白熱灯と蓄音機の発明で知られているが、彼は1093もの特許を取得した。エジソンは創造をただの地道な努力の結果と見ている。電球が長持ちするフィラメントを作るのに何千回も失敗したのに、なぜあきらめないのかと助手に聞かれ、エジソンは質問の意味がわからないと答えた。彼にしてみれば失敗は一つもなかった。ただ、うまくいかない方法を何千も発見しただけだ。

もちろん、普通は多数のアイデアを生み出すこと自体が難しい。

この本は、ひとつのアイデアが別のアイデアをうむような連鎖反応を起こすための視点変換術、斬新な組み合わせを作る方法、集団で発想する方法、素晴らしいアイデアの作り方といった思考方法の理論とテクニックがテーマだ。

テーママップ、MY法、システムマップ、SCAMPER法、フィッシュボーン・ダイアグラム、真北思考法などなど、何十もの思考法とその使い方が解説されている。すぐに実践できそうなもの、やってみたいものが、いくつか見つかった。

「質問の仕方を変える」というのは簡単だが効果がありそうだ。トヨタで「どうしたらもっと創造的になれるか?」と従業員にアイデア募集しても提案はなかったが、「もっと仕事を楽にするにはどうしたらいいか」に言い換えたら洪水のようにアイデアが寄せられたという。「どうしたら売り上げが伸ばせるか」「どうしたら受験に合格するか」と悩んでいるより、どうしたら楽に○○できるか?と問い直してみたら、根本的な原因や解決の糸口がみつかりそうである。

そしてなにより、追い求めるテーマに対する情熱的なしつこさが最終的には重要みたいだ。

アインシュタインは彼自身と平均的な人の違いを尋ねられて「干し草の山から針を探せと言われたら、普通の人は針を一本見つけた時点でやめるだろうが、私はほかにも針がないか、干し草の山全体をしらみつぶしに探す」と答えたそうである。

情熱的でいられることが、才能の本質なのかもしれないなと思った。

・発想法―創造性開発のために
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003913.html

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html

・分かる使える思考法事典―アイディアを生み出し、形にする50の技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000725.html

・デスクトップ発想支援ツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000139.html

・アイデア・ブック スウェーデン式
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004203.html

・ひとつ上のアイディア。
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004030.html

・発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000275.html

・Make: Technology on Your Time Volume 01
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これは面白い!。

モノを作る個人のクリエイティビティを次々に紹介していく本である。

スーパーマーケットのショッピングカーにエンジンを取り付けてゴーカートを作る人、アフリカの巨大ゴキブリを頭脳とするロボットを作る人、自宅で低温核融合の実験を続ける学者、中古マウスを自律センサーで動き回るロボットに作り変える人、VHSビデオを猫の給餌マシンに作り変える人、などなど。

クリエイティブで、少しクレイジーなものづくりの現場のドキュメンタリがカラー写真と解説で数十本。

時間があったらやってみたいと思ったのが「カイトフォト」と「ドロイドビルディング」。どちらも見ているだけでワクワクする趣味だ。

カイトフォトは凧に自動撮影機構つきカメラを取り付けて、上空へ飛ばして、航空写真を撮影するもの。飛行機に乗らなくても、上空から見下ろすパノラマが撮影できる。気持ちが良さそう。

・日本カイトフォト協会
http://www.interq.or.jp/japan/jkpa/

ドロイドビルディングは、スターウォーズのロボットを自作で再現する趣味。世界中に制作者がいて、R2D2の頭のドーム部分などは、皆が必要としているので、売られているそうである。映画に登場するR2D2を忠実に再現すると、三本目の足をおろすことはできても、引っ込められなくなるそうだ。だからビルダーの間では、オリジナル設計者よりも踏み込んで可動部のデザインをしなければならないことは常識らしい。

・Astromech Gallery - Astromech.net
http://www.astromech.net/Lists/Galleries/astromechs/Default.htm

なお、この本は米国の雑誌「Make」日本語版で、年に2,3冊出版されるとのこと。これはその日本第一号である。出版社はオライリー。ソフトウェアエンジニアの関心もくすぐるように、ハードウェアハッキングの楽しさが紹介されている。

・makezine.com: MAKE: Technology on Your Time
http://www.makezine.com/

必ず次号も買うと思う。