Books-Brain: 2011年2月アーカイブ

・天才が語る サヴァン、アスペルガー、共感覚の世界
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自閉症でサヴァン症候群で共感覚者で、円周率22500桁を暗唱し、10ヵ国語を話す天才・ダニエル・タメットが語る脳の働きと可能性についてのエッセイ集。前作『ぼくには数字が風景に見える』は世界的ベストセラーになった。

最新の脳科学の実験の紹介や、自身の特異な脳の体験に基づく仮説の提示、人間の知性の構造特性の考察、記憶力や創造性の向上に向けたアドバイスなど、博覧強記の天才ならではの幅広い内容になっている。

ベテランの俳優が長い台詞を正確に覚えるコツの話が面白い。彼らは長文を機械的に覚えるのではなく、なぜ登場人物がそれを言うのか、という文脈を理解することで、記憶の「精緻な符号化」を行っているのだという。

「「肉体と精神と感情のすべてのチャンネルを使って、実際にいる相手や、想像上の人物に向かって台詞の意味を伝えるようにしなさい」と指示された学生は、台本をひとりで読んで理解した学生と比べて台詞を覚える力が飛躍的に向上することが実験で証明されている。」

精緻な符号化とは、予備知識と新しい情報を結び付けることだ。ダニエル・タメットが10ヶ国語を覚えられたのも、既に知っている外国語の単語との類似性で、新しい外国語の単語を記憶しているからだという。

タメットの場合は精緻な符号化に共感覚が深く関係する。多くの円周率暗唱者は語呂合わせを記憶に利用するが、数字がカタチとして認識できる彼の場合は、数字や数列を三次元の形状に結びつける。そのイメージを再現することで、円周率を再現できる。精緻化に使える次元が一般人よりひとつ多いのだ。そして数字への本能レベルでの偏執的こだわり。天才の秘密が垣間見えた。

この本は前作よりは天才の自分が足りが減って、天才と脳の研究者としての側面が強くなっている。

・ぼくには数字が風景に見える
http://www.ringolab.com/note/daiya/2007/07/post-602.html