Books-Brain: 2004年11月アーカイブ
高齢化に伴い製薬分野は注目だと思っているので、その最先端はどんな状況なのかを知りたくて読んでみた入門書。著者は脳や心に作用する薬を研究する神経生理薬理学者。うつ病、注意欠陥多動性障害、統合失調症、痴呆、不眠症など現代人の脳と心の病の特効薬の研究成果が一般向けに易しく解説される。
多くの薬剤開発は実験用マウスを使ってテストされる。残酷であるが実験ではマウスの特定の遺伝子や脳の特定部分を意図的に壊すことで、病気と同じ症状を作り出す。これをノックアウトマウスと呼び、この症状を治すような薬を作る。
興味深かったのはノシセプチン受容体と呼ばれる脳内物質をノックアウトしたマウスは、学習や記憶力がよくなっていたという話。通常、何かをノックアウトすれば異常、不具合が観察されるはずなのに、この受容体に限っては逆にマウスの頭がよくなってしまった。それはノシセプチン受容体が痛みを感じることと、忘れることに関係する物質だったからだと判明する。
ノシセプチン受容体がないと骨が折れていようが、疲れていようがランナーズハイで走り続けられるし、あらゆることを覚えていられるらしい。だが、それでは体が持たないし、昔のことをくよくよと思い出していたら、新しいことへの意欲がわかなくなる。脳はノシセプチン受容体とその作動物質を使って、心身のバランスを調整しているのだそうだ。だから、頭が良くなるクスリは、作れそうだが飲みすぎてはいけないということになりそうだ。
この本を読むと、うつ病や統合失調症、アルツハイマーなど様々な現代の病気に特効薬がもうすぐ現れそうで未来は明るそうに思える。しかし、同時に人間の精神状態や考え方にまで強い影響を与える薬剤が可能になりそうだという怖い未来もある。誰かを毒殺するのではなく、うつ病に追い込んで自殺させる薬だとか、都合の悪いことを忘れさせる薬などが今でも可能なように思えた。
個人的には好物のコカコーラとチョコレートは食べると幸せになるクスリだという話も面白かった。人は褒められたときアナンダミドという脳内物質が分泌されて幸せになるそうだが、チョコレートにもアナンダミドが含まれているという。仕事中に疲れたとき、会社に導入したオフィスグリコに100円入れてチョコレートを食べると元気になるのは、そういう裏づけがあったのかと驚いた。
コカコーラは、昔は本当にコカの葉を使い製造し、コカインが含まれていたそうだが依存性が問題になって廃止。今日のコカコーラには代わりにカフェインが含まれている。カフェインにも軽い依存性と興奮性があるそうで、コーラがやたらと飲みたくなる日がある理由が分かった気がした。
最近、こんな本も笑いながら読んだ。
Amazon.co.jp: 本: ビジネスマンのためのドーピング・ガイド
「
いますぐ「仕事力」をアップしたい──。そう感じたら、まず食べ物や薬・サプリメントを活用すべきだ。簡単に自分の能力をアップできるだけでなく、上司を味方につけたり、部下にやる気を出させたり、顧客を口説き落としたりすることにも絶大な効果をもたらしてくれる。これが、ビジネスの新しい常識、「ビジネス・ドーピング」である。 具体的ノウハウについては、伝説のテレビ番組『カルトQ』で優勝した経験を持つ“カリスマ薬剤師”が、その知識をもとに49のシーンを想定して紹介(すべて合法、副作用なし)。
」
ということで、
重要な決断には「イチョウ葉エキス」
仕事のペースを上げる「牛レバー」
パソコン仕事には「カレー」
パソコンに疲れたら「ブルーベリージュース」
資料を読む前に「石菖蒲(せきしょうぶ)」
ブレストのときには「2時間前に食事」
眠気に襲われたら「陀羅尼助(だらにすけ)」
力仕事をするなら「和三盆と葛根湯」
残業に効くゼリー飲料は「ウイダーinゼリー」
仕事の追い込みには「マグロ刺身定食」
徹夜仕事には「ミックスナッツ」
朝イチ会議の前夜には「納豆+カラシ・ネギ」
やる気が出ないときには「タケノコご飯(鶏肉抜き)」
寝起きの頭に「ホットココア」
朝の目覚めに強くなる「青汁」
過労に効くビタミン剤は「アリナミンEX」
たまの休みには「沖縄でソーキ」
などという処方が並べられている。即効性を重視しているらしいのだが、本当だろうか。楽しい本ではあった。