2007年06月28日

レトリック感覚

・レトリック感覚
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「たとえば、現代の、いわゆる社会の指導者たちあるいはスターなどがインタヴューを受ける場面がよくある。そういう場合、欧米のリーダーたちと私たちの国のそういう人々との、質問者に対する受け答えに、平均的レベルの差を、あなたは感じませんか。答えたくない、答えにくい質問をかわすための、拒絶のしかたでさえ、欧米の彼らはしばしばユーモラスに明るい印象を残し、わが国の彼らは、しょっちゅう、憎々しいか、みじめか、傲慢かあるいは卑怯の印象を残す。」

この本の初版が書かれてから30年が過ぎたが、軽妙な受け答えについては、日本人は欧米に比較して、まだまだ下手だと思う。弁論術はあっても、ユーモア精神が欠けているような気がする。レトリックには両者が必要とされる。

アリストテレスによって弁論術・詩学として集成され、近代ヨーロッパで磨かれたレトリックは、2千年間の間に専門家によって体系化、理論化が行われた。たとえばレトリックの主な要素である比喩だけでも、10種類以上に分けた細かな定義ができる。この本では、直喩、隠喩、換喩、提喩、誇張法、列叙法、緩叙法の7つの技法が分析される。

「発生期には説得術というあくまで実用的な機能を担当するつもりでいたレトリックは、やがて自分にそなわるもうひとつの可能性に目ざめることとなった。それが、おおまかに言えば、芸術的あるいは文学的表現の技術という、第二の役わりである。」

そしてこの本の真の主題は、著者が提唱するレトリックの3つ目の役割「創造的認識の造形」である。

例えば隠喩では「あの隠密め...」というところを「あの犬め...」といいかえる。AにBを代入するわけだが、決してAはBに完全に置き換わってしまうわけではないと著者は指摘する。「本当は、隠喩においては、使われた語句の本来の意味と臨時の意味の両方が生きていて二重うつしになり、≪犬である隠密≫という多義的な新しい意味が出現するのにちがいない。いわば複数の意味が互いに呼びかけ合う緊張関係がそこに成立するのだ。そうでなければ、わざわざ言いかえるにはおよぶまい」。ことばのあやを分析していくことで、こうした「創造的認識」に至るわけである。

私たちは考えたことを表すために、心の中で言葉を探し、組み立てる。だが、考えたことAに対して、それを正確に表す言葉Bがあるとは限らない。言葉にしてみてはじめて自分の考えを認識することもある。レトリックとは説得要素、美的要素を超えた創造行為なのだということを、著者は実例多数を持って説明している。

言葉を使う仕事に就いている人、就きたい人必携の一冊と言えそう。

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2007年02月21日

2週間で小説を書く!

・2週間で小説を書く!
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文芸評論家が教える小説の書き方。

「自分が何かひとかどの、個性的な人間のつもりで得意になって語っているような小説なんか、誰も読みたくない。お前のことなんか、べつに知りたくないんだよ、と言ってやりたくなる。そういう冷たい目を向ける厳しい読者、というより何の関わりも興味もない読者の他人をも引きつけるような力を魅力というのである。」

そういう魅力のある文章を書くためのトレーニング方法が2週間分、この本に紹介されている。たとえば複数人数でリレー小説を書く、とか、最初の記憶を書く、人称を変えて書く、など。古今東西の名文を例にしての分析が参考になる。

小説は書いてみたいと思っている。たまに少し書いてみるが完成したためしがない。場面の描写はできるのだが、物語が作れない。物語を先に作ろうとして、思いついた筋を書き出してみると、ありきたりの筋になってしまって、書く気が失せてしまう。「大切なのは解決ではなく変化である」という。オチをつける必要は必ずしも無いわけだ。

いろいろな作家の登場人物設定や命名法なども紹介されている。リアルさを出すために実在の人物をモデルにしたからといって小説としてのリアリティがあるとは限らない。むしろ、ほとんどの人間は凡庸なので、モデルベースで書くとどこにでもいる人間になってしまう。「小指のない女の子」なんて登場人物をつくるのもいいとアドバイスがある。

「セリフのあとに「・・・・・・・と○○は言った。」と断りを入れなくても、このセリフをしゃべっているのは間違いなくあの人物だと分かるような個性をセリフで体現すること。」」。そう、自然なセリフって難しい。女性の登場人物の語尾なんて意識して書くと、本当の現代女性が喋る言葉遣いではなくなってしまう。意識して日頃から人の会話を観察せよという。

この著者は作家ではなく評論家なので、批評家の目で冷静に作家の文体を分析している。小説家の実態についての説明がとても面白かった。有名作家は一握りで、文学賞を取っても文筆では食えない小説家がいっぱいいることや、小説家以外の正業につけないタイプが作家になっていることが多いことなど、現実についても教えてくれる。

最も強調されているのはとにかく作品を完成させよということ。この本のメソッドで書けるようになるかはわからないが、書いてみようという気を起こさせる本であることは確かである。

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

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2006年08月18日

「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本

・「バカ売れ」キャッチコピーが面白いほど書ける本
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キャッチコピーのつくりかた本はたくさん出版されているが、実際に誰にでも書ける方法が書いてある本は少ない。抽象論や有名なキャッチコピーの事例解説だけを述べられても、プロの感性がなければ、なかなかコトバがでてこないものだ。

この本には、プロでなくても、誰にでも、それっぽいキャッチコピーをつくる方法論が書いてある。人から訊いたコトバをそのまま素直に使ったら、いいコピーになる、というノウハウだ。

「強いコトバを集める3つの質問

1 なぜ買ったの?

2 その商品は、あなたに何を与えてくれるの?

3 それを使うと、どんな気持ちになる?

こうして集めたコトバを本書で解説する「10の方法論」で整形すると、売れるコピーができあがる、と著者は教えている。人の素直なコトバをそのまま使う方が、ヘンに素人が加工するよりも、活き活きとしたチカラのあるキャッチコピーになるというわけだ。

本当は人に訊くべきなのだが、読みながら、自分一人でやってみた。

私は風邪を引くと薬屋で総合感冒薬を買うのだが、基本的に、一番高くて効能書きの多いものを買うことにしている。だってそれが訊きそうだからだ。風邪が1日早く直るならプラス1000円は惜しくない投資だ。

だから、ハイエンドの総合感冒薬の広告に、

「一番、高いから買いました」

は確かにアリな気がする。

以前、書いた気がするが、DVD-Rメディアを買う際には、「That's」ブランドを買うことにしている。太陽誘電はOEMメーカーで、品質が高いと知っているからだ。秋葉原あたりのショップでは、某社のDVD-Rのパッケージの棚のPOPに「中身は太陽誘電です」と書いてあったりする。

「安心を買ってます」

は、私の答えであると同時に、反応してしまうコピーになる。

ネットワーク製品はなるべく最大シェアのブランドを買うことにしている。ユーザが多いと、ネットの検索で他の利用者のトラブル解決例や活用法がいっぱい見つかるからだ。Linux用ドライバも存在する可能性が高い。だから、LANカードやハブ、ルータなら、

「検索したら5万件もでてくる機種です」

は悪くないコピーだ。

この手法なら、製品の特徴や市場ポジションなんて、考えなくてもいいのだ。ただ人に訊けばいいのだから。ほかにも素直なコトバを集めるためのツールとノウハウがいくつも紹介されている。

この本自体に対して3つの質問に、答えてみると、

1 なぜ買ったの?

「表紙が黄色くて売り場でダントツ目立っていたから」

2 その商品は、あなたに何を与えてくれるの?

「私にもできそうな自信」

3 それを使うと、どんな気持ちになる?

「キャッチコピーって簡単なんだ〜」

こうした素材を加工するアイデアと事例が後半に詳しい。

・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004488.html

・書評 一覧 「文章・表現」についての本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/cat_bookspresentation.html

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2006年05月16日

スラスラ書ける!ビジネス文書

・スラスラ書ける!ビジネス文書
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清水義範らしいユーモラスでユニークなビジネス文書指南。

型通りの手紙(メール)でも文末に、

「以上、ほかのどなたよりも、○○様にいちばんにご報告いたします」
「○○様にご出席いただけたら会の成功は間違いなしです。どうか......」

と書いてみろ、印象が違うから、などという。

相手の顔の筋肉がふっとゆるみ、懐に飛び込むような印象を与えるチャーミングさが、うまいビジネス文書なのだとアドバイスしている。具体的には、目下から目上に出す手紙ならば「可愛げ」、目上から目下へ出す手紙なら「優しさ」を、そっとアピールするのが極意と書かれている。

手紙ではないビジネス文書については次のように語る。

「まず、社内向け文書では、あえてひとつにしぼるならば自分ができる社員であることを、社内にわからせることが狙いである。たとえば出張報告書なんて、このように報告できる私の有能さに注目せよ、という狙いがあってあたり前ではないか。

そして社外向け文書では、当社は誠実で仕事の確かな信頼できる会社であり、貴社とのおつきあいを喜んでおりまして、今後もずっといい関係でありたいと望んでいます、ということを伝えるのが狙いである。そう書くのではなくて、文書からそれをにじませるのだ。文章とは、そんなことまで伝えることができるものなのである。

清水義範は文体を巧みに使い分ける、文章の手品師みたいな人である。この本でも文例が面白くて何度か吹き出してしまった。

ひとつ引用させてもらうと、型にこだわるなという指導のところで、


世間からはマンネリだという声も出ている中、やっぱり今年も例のあのお客様感謝キャンペーンを、やめる理由もないからと実施するわけでございます。しかしいくらなんでも少しは新味を出さなきゃどうにもなるまいということで、浮上いたしましたのが貴社の協力を仰ぐというプランでございます。

親しい関係ならビジネスでもこの手紙アリだよ、と。

確かにつきあいの深い相手から、こんなメールをもらったら、苦笑しながら、喜んで引き受けたくなる。形式を超えて、相手の心を動かすのがいい文章だというわけ。ここでもチャーミングがキーワードになる。

型通りの文書の書き方ではなくて、チャーミングさというメタメッセージを仕込む余裕と方法論について、文章の達人が楽しく教えてくれる軽めの一冊。、

・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html

・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html

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2006年05月11日

全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術

・全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術
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売れる文章の極意の伝授。

第一センテンスは短く書け、と始まる。

第一センテンスが読まれなければそれ以下は読まれないからだ。

そして


宣伝文のあらゆるパートが第一センテンスを読ませるために存在するとしたら、この第一センテンスの目的は何でしょう。「ベネフィット(便益)を伝えたり、特徴を説明したりする」と考えたなら失格です。短い第一センテンスがそれを読ませる以外に何ができるでしょう?そう、もちろん正解は「第二センテンスを読ませる」です。それ以上でもそれ以下でもありません。

当然、第二センテンスは第三センテンスを読ませるために存在し、第三センテンスは.......という具合で続いていく。著者はこの書き方を「滑り台効果」となづけている。セールスを始めるには、序盤でスムーズに読者を引き込む必要があるという。

ベネフィットや特徴を伝えるコピーは、滑り台で勢いをつけたところで登場させる。

「反応に差が出る22のポイント」と「役に立つ22の心理トリガー」など、たくさんの売るための文章術が解説されている。複雑な商品はシンプルに、シンプルな商品は複雑に説明せよ、予防は売れないから解決を売れ、最後に注文の念押しをせよ、など、具体例も豊富に教えてくれる。

文章術の本は多いけれど、この本は売るという目的に特化した方法論を学べる。著者はダイレクトマーケティングの分野で実績のあるコンサルタントで、参加費用33万円のセミナーで儲けている。この本はその高額セミナーのエッセンスで構成されている。

特にネット上でのセールスは、文章術次第で、売り上げが大きく変わるものだ。イベント参加受付フォームの告知文章も、集客率の鍵になる。サイト構築のデザイン力やシステム力がなくても、文章術だけで成功している事業者を私も何人か知っている。

テキストは消費者を動かす万能アプリケーションになる、と思った一冊。

・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html

・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003740.html

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2006年01月18日

人は「動き」だ!―なりたい自分を演出する40の方法

・人は「動き」だ!―なりたい自分を演出する40の方法
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注目していたサイトが書籍になった。

・人の動き探偵団
http://www.hitonougoki.com/

「動きで見るニュース」では、メディアに登場する人物の動きに着目して分析を重ねている。最近ではこんな感じだ。面白い。

・第56回 NHK紅白歌合戦を盛り上げた「みのもんた」のアクションの秘密
http://www.hitonougoki.com/text/geinou6.htm
・耐震強度偽装問題証人喚問・証人
http://www.hitonougoki.com/text/shakai1.htm

この書籍はこちらのコーナーがベースになっている。項目はほぼ同じなのだが、もちろん大幅に加筆されている。

・なりたい自分を演出する10の動き方
http://www.hitonougoki.com/text/naritai.htm

人は動きのノウハウを知るだけで、大幅に人に与える印象を変えられる。

人の動作には次の3つの法則があるという。指を指したり、着席したり、振り向いたりといった動作に応用できる。

1 動きの方向

内側に閉じる動きは、わかりやすさや、地味さを表す
外側に開く動きは、華やかさや、アバウトさを表す

2 動きの圧力

圧力を入れる動きは、意志の強さや、激しさを表す
圧力を抜く動きは、意志の弱さや、やさしさを表す

3 動きの速度

速い動きは実行力や、機敏さを表す
ゆっくりした動きは、穏やかな行動力や、控えめな様子を表す

「堂々としたいとき」「相手を立てたいとき」「好かれたいとき」「お詫びやお礼がしたいとき」など10項目に、イラスト入りの動作のアドバイスが詳しい。

なるほどねと感嘆し実践してみようと思ったのは、

お願いするとき「十秒長くやるだけで粘り強く見える」
親切な印象を与えたいとき「相手をよく見る人は親切な人」
断りたいとき「手のひらを突き出せばはっきり断れる」

といった項目。

動作というのは、他者に与える印象を変えるだけでなく、自己イメージまでも変えてしまうものだと思う。堂々と振舞っているうちに自信がでてくるし、力強く腕を突き上げてみればやる気が湧いたりもする。最初は演技でも、繰り返すことで、自己イメージが変わって、自然な習慣になってしまえば、それが本当の自分になってしまうものだ。

形から入ることの有効性を知る一冊。

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2005年12月05日

声のふしぎ百科

・声のふしぎ百科
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(独)情報通信研究機構本庄情報通信研究開発支援センター長。郵政省通信総合研究所長、埼玉大学教授、日本工業大学教授を歴任。音声情報処理の第一人者が書いた音声技術の本。理系の学部生くらいが対象に思われる。

「ヤマダ タロウ」と「オオヤマ ダイザブロウ」では、選挙で連呼されたとき、後者が聞き取りやすさで有利という音素の話。秘密は音量の差、発声のしやすさ。同じ大きさで話したつもりでも、母音の/i/と/u/は振幅が小さく、/a/と/o/は大きくなるそうである。だから大声コンテストで叫ぶと有利なのは「馬鹿ヤロー」「家事だ!」は適切とのこと。
早口言葉などの研究を通じて、言葉のいいやすさも解明している。母音では/i,u/ 子音では/ch,ts,k,sh,g/が多く含まれると発声しにくく、音量も小さくなってしまうらしい。こうしたノウハウは、企業名や商品名のネーミングにも活かせそうだ。

カラオケ採点機で高得点をあげる方法と言う、長年知りたかった章もあった。カラオケの採点アルゴリズムの説明がある。結論的には、

・できるだけスローなテンポの曲を選ぶこと
・上手に歌おうとせずに、音程とテンポを重視すること

という指南があった。

「昴」―谷村新司 あたりの曲を何の思い入れもなく、淡々と歌うと良いと言うことか。嫌がられそうだが。

こんな実用的なTipsや、ヘリウム空気を吸うとドナルドダックの声になるのはなぜ?、いっこくどうの腹話術はどうなってるの?といった日常の疑問に答えるトリビアも多いが、音声認識や音声合成の技術的な仕組みや研究の課題も、技術用語を使って説明されている。興味を持った人の、研究のとっかかりになるように書かれているようだ。


・大語彙連続音声認識システムJulius
http://julius.sourceforge.jp/
オープンソースの音声認識エンジン。Windowsでも動作するので試してみると楽しい。

・7秒のイメージ・マジックであなたの声はもっとよくなる―相手を説得する、声の印象が変わる、気持ちが伝わる
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003015.html

・怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001944.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

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2005年10月11日

一瞬で信じこませる話術コールドリーディング

・一瞬で信じこませる話術コールドリーディング
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占い師の「人の心を読む」話術を暴露し、営業や日常生活への応用をたくらむ本。

■バーナム効果、ストックスピール

まずは、ほとんどの人がそうだと思えるセンテンスを多数用意する。これをストックスピールと著者は呼んでいる。

バーナム効果、フォーラー効果と呼ばれる心理学の実験では以下のようなセンテンスが使われる。


外向的で愛想がよく、付き合いがいいときもある半面、内向的で用心深く、ひきこもってしまうこともある

外見は自信があるように見えるけれども、心の中はくよくよしたり不安になってしまう面がある

これが自分に該当しているかを問うと、被験者は5ポイント中、4.3ポイントという高い率でYESと答える。

著者のサンプルでは、


あなたは自分に対して厳しすぎることがある

あなたはどんなに頑張っても本当の悪人にはなれない人です

あなたのこれまでの人生はもらうよりも与えることの方が多かったですよね

のようなものが例示される。

我の強いMeタイプと協調性重視のWeタイプの2種類に大別し、それぞれにヒット率の高いストックスピールやそれを誘導する質問群を用意しておくのが秘訣らしい。

■当たったことが強く印象に残るセレクティブメモリ効果

傑作だと思うのは「あの、あなた左利きじゃないですよね?」という質問。これを会う人、会う人に投げかけてみる。これは一種の賭けであるが、失敗のリスクは小さい。

もし相手が右利きなら「そうですよね」「どうしてですか?」「いや、ここのところ、会う人が自然とみんな左利きだったんですよ。まさか今日は違うよなと思って」などとやり過ごせばいいという。結局、人は当てたときのことが強く印象に残るセレクティブメモリのおかげで、はずれたことは無難にやりすごせれば、印象に残らない。

もしも本当に左利きだったら「え、なんでわかるんですか!」と信じ込ませるための第一歩を踏み出すことができる。

相手から間接的に答えを誘導する質問や、当たったことになる予言、「あなたは普通の人よりも....」という人が信じたがる言葉のテンプレートがこの本にはいっぱい紹介されている。営業やコンサルに応用できるかもしれない。

ただ、この手の話術は詐術に近いこともあって、この技術だけでは信頼されない気がする。信頼のベースがあって、より一層満足度を高めたり、顧客を安心させるために、こうした小手先のテクニックを駆使して、お化粧するというのが正しい使い方である気がした。

愛読ブログの俺100にも紹介されていた。

・[俺100]:幻のセミナーの音声ファイルをスペシャルプレゼント :なぜ、占い師は信用されるのか? 「コールドリーディング」のすべて石井裕之著
http://blog.zikokeihatu.com/archives/000822.html
著者はテレビで活躍中らしい。
・[俺100]:一瞬で信じこませる話術コールドリーディング
http://blog.zikokeihatu.com/archives/000684.html

以下、「話術」関連書評。

・「心理テスト」はウソでした。 受けたみんなが馬鹿を見た
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003417.html

・人を10分ひきつける話す力
hhttp://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・ワルに学ぶ「実戦心理術」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003180.html

・NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003031.html

・トップに売り込む最強交渉術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000324.html

・心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000609.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・悪の対話術
hthttp://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002109.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000150.html

・ソリューション・セリング―賢い売り手になるための10の戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000145.html

・外見だけで「品よく」見せる技術 ファッション、しぐさ、話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003381.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

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2005年10月02日

人を10分ひきつける話す力

・人を10分ひきつける話す力
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著者はベストセラーメイカー斉藤孝氏。毎月のように新刊を出すためか、この人の本は玉石混交な印象があって、買うときに警戒しているのだが、この本はあたりだった。

この本では、話で人をひきつけるには、意味の含有率、ライブ感、ネタの豊富さ、身体性の4つが重要なポイントである、とまとめている。

話すときの語数は、文章量に換算すると1分間で400字一枚程度。5分で2000字、10分間では4000字相当になる。3分間を超える話は、「意味の含有率」は相当濃くないと、仲間内の会話ではノリの良さでごまかせても、パブリックな場所では通用しないという。

そしてライブ感の重要性。著者は次のように表現している。


今ここで、自分たちを目の前にしているからこそ湧き出ている言葉だと思ったときには、聞き手は積極的に受けとる姿勢を持つ。

ライブ感を重視すると意味の含有率が低くなりがちであるが、逆に事前に原稿を準備しすぎるとライブ感を失う。このジレンマを乗り越えた向こうに「最高の話」があるようだ。日頃からネタを豊富に用意した上で、


話すときには、頭を二分割することが必要だ。もちろん、今話している話に一つの頭を使うが、もう一つの頭では、次に何を話すかを考えるのだ。

という冷静な判断で適宜、適材適所な持ちネタを使って、ライブを組み立てるのが極意である。人の記憶に残るには身体性を強調しなさいというのも参考になる。


私は、話の基盤には、つねに身体性を置いている。あるいは、技、コツなどから絶対に離れない工夫をしている。すると、その場が盛り上がったか、盛り上がらなかったかとはまた別に、聞いた人に影響を与える可能性が高い。

「人の心に種子を蒔く」べきだという。話の内容が難しくても行動や習慣を変えるアドバイスが入っていると、その部分だけは聴衆に伝わり、長く記憶されているものだという著者の経験談がある。

さすがに売れっ子の話し手であるだけに、実践者のノウハウと達人の境地がいっぱいで参考になる部分が多かった。

まだ10月だけれども、私が今年取り組んだ能力開発は「話す技術」だったなあと思う。大学で一回り以上年下の集団(しかも彼らはこちらが気を抜くと遠慮なく寝てしまう)に毎週教える機会があって、随分勉強になった。特にライブ感は鍛えられたなあと思うが、まだまだで、年初にこの本を読んでおきたかった気もする。

・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003657.html

授業やイベントでは、たくさんのゲストをお呼びしてきた。数十人のゲストのトークを見ていて思ったのは、もうひとつ「個性、人柄」というのも大切な要素としてある、と感じている。

事前の準備と完璧なテンプレートに従って自己の表現を徹底管理する「MBA的な話し方」はビジネスシーンでよく見られるが、あまり記憶に残らないことが多い。意味は伝わるが、心に残らない。スポーツで言えば「記録に残る」プレイであって、「記憶に残る」プレイではないと感じる。

身近でみたゲストスピーカーでは、アイデアマラソンの樋口健夫さん、「メール道」の久米信行さん、の話し方が、うまく個性、人柄がにじみ出るお手本だったと思う。お二人とも「MBA的」とは違う、人肌感が残る話をされていた。

・デジハリ大学「リサーチ&プランニング」 第6回講義録
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003521.html

・無敵会議第8回 「Re:会議」 満員御礼に感謝 報告第2弾
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002081.html

私も10年、20年後になって学生に「あのときの話が今も印象に残っています」と言われるような話をしたいなあと思う。これには場数と経験が必要なのかもしれない。

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2005年09月01日

「伝わる!」説明術

・「伝わる!」説明術
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著者によると、人間の頭はなんでもアナロジー(類推)で理解するようにできている。「わかる」というのは、アナロジーによって物事の相互関係をわかりやすい状態にすることであるという。

「わからない」→「わかった」の間には「難しさ」という山があり、アナロジーはこの山を低くする触媒である。わからないことをわかりやすい状態に変化させる。頭のいい人・悪い人の違いは、理解のために、ものごとをアナロジーでわかりやすくする能力の差なのであると著者は考えている。

アナロジー(類推)には2段階があって、


類:ものごとの間に、共通する点や類似する部分を見つけ出し、そこに着目する
推:共通する部分を土台として、考えている話題について、考えを推し進めていく

つまり、既知の関係と似ているものとして、新しいものを説明するということだ。

アナロジーを使った説明法は私も随分考えた。たとえば自社開発した連想検索エンジンを売るために、ややこしい多次元ベクトル空間の計算ロジックを、こんな風に色に置き換えて説明したことがある。5年前のこと。

・データセクション株式会社 :: SemanticWeb Company といえばサーバ技術概要
http://www.datasection.com/index.php?page=toieba
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このアナロジー説明の効果は?

まあまあだった。なぜかというと、色空間との相似はばっちりだったのだけれど、色空間自体が説明としては、複雑性が高かったのだと思う。

この本ではアナロジーの基本条件として以下の3つを挙げている。

1 おおまかにいって正しいか
2 よく知られた題材か
3 関係図を描けるか

私の色空間のアナロジーは2が怪しかったのだろう。

わかりやすい関係性はパターンがあるという。本では10パターンのアナロジーの基本形が紹介されている。どれも比較的簡単な内容だ。関係性が難しすぎてもいけないのだ。

因果関係、きょうだい関係、共起関係、じゃんけん関係、トレードオフ、ボトルネック、ピラミッド、鏡、無関係

こうした原型それぞれに自分なりの使いやすい比喩を用意しておくことで、説明の効果が高まると言う。たとえば「それは軽いギアと重いギアの関係ですね」であるとか「つまり、この二つは兄弟ではなくて従兄弟みたいな関係なんですよ」、「それはコンピュータのハードディスクとメモリーの違いです」といった調子である。

理解や説明のための、アナロジーの脳内ピースを増やしておくことが、頭の良さ、回転の速さにつながっているのだという内容であった。

もっとアナロジーのピースを増やしてみようと思う。

今、考えた。こういうのはどうだろう。

「なにかに還元できない人間のこころって”割り算の余り”みたいなものですね」

この表現、我ながら味はあると思うのだが、分かったような、分からぬような。

煙に巻くのにもアナロジーは使えるツールだ。

濫用するなとこの本にもちゃんと書いてあったのであった。

・「わかる」とはどういうことか―認識の脳科学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000973.html

・「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・「分かりやすい表現」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000451.html

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2005年08月31日

頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!

・頭の良くなる「短い、短い」文章術―あなたの文章が「劇的に」変わる!
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朝日新聞夕刊で毎日8年間、210文字のコラム「素粒子」を書き続けた元記者・論説委員による「短い」文章術。

■伝えるべきメッセージをつくる「短い文章」の技術

ただ短い文章を書けという技術論ではない。ほとんど人生論でもある。

考えるということは「短い文章」を作ることであるとし、頭の中で「短い文章」を作ることこそ、生きる営みの出発点なのだと著者は力説する。

基本は、伝える価値のあるメッセージを短く表現せよということである。

1 具体的な事柄を書く
2 感想や抽象的な記述は避ける
3 決まり文句、常套句は使わない

たとえば、

「昼食にカツドンを食べた。」

という文章をこう変えろと指導している。

「昼食にカツドンを食べた。二日連続である。」

ふたつめの文章を続けたことで、ニュース性やユーモア、意外性、若干の思想性などが加わって「伝えるべきメッセージ」になると教えている。その後が読んでみたくなる。

■文字数を決めて書く

「長さを先に決めることで文章が光る」という章では、新聞コラムと言う文字数の制約のある紙面で書き続けた著者のノウハウがさすがである。短歌や俳句も良いが、形式にとらわれない五行歌も練習に良いという。五行歌は初めて知った。

・「五行歌の会」公式ホームページ
http://5gyohka.com/

五行歌とは、日本のこれまでの詩型から、新しく考えられた自由で、書きやすく、また完成しやすい短い詩の形です。

 日本人、和歌(五七五七七)ができるまえは、自由に短い詩を書いていました。それらを古代歌謡といいます。

 というように、字数、音数にはまったくこだわらず、自分の呼吸に合わせて、いきいきとした詩歌をつくっていました。

 それが、和歌になったのは、630年頃、先進文化国だった中国の整った漢詩を見たときでした。このために、日本人はみんなが1400年にもわたって、嬉しいときも、悲しいときも、楽しい時も、怒った時も、オルゴールのように一つのメロディを奏でてきました。
 自由に書いたら、どうだろう。こう考えて、呼吸の切れ目がよくわかるように、五行に分けて書くようにしたのが、五行歌です。

五行歌の優秀例として、この本では、よみうり五行歌年間大賞 佐々木祈美さん作の歌が引用されていた。


だんだん畑に
水を運ぶ
老夫婦
耕して
天に至るか

字数が限られていることで、逆に表現力が豊かになるのが不思議だ。

■軽やかに手放せ


文章とは、主観を客観的に表現する手段なのである。喜ぶ、怒る、悲しむ、笑う、嘆く、呆然とする-----。広い意味での感動のすべてが、文章の出発点だ。

という意味で、新聞記者はつねに冷静でなければならないと、いうのはウソ。作家だって学者だって同じだ。素直に感動することができなくて、何が書けるというのか。

だが、感動したことを真正面から書こうとすると面白みがなくなる。

そこで、イギリスの演出家ピーター・ブルックの言葉を、著者は座右の銘として紹介している。

あらゆる道の極意にも思える深いことばだ。


きまじめになってはいけないぞ。死守せよ。だが軽やかに手放せ。

具体的には、与えられたテーマに対して3番目くらいにおもいつくことで書いてみよとアドバイスしている。

毎日、決められた時間内に、決められた文字数で、意味のある文章を書き続けるための工夫のあれこれがいっぱいある本であった。

関連書評:

・大人のための文章教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002489.html

・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002952.html

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2005年08月24日

科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式

・科学者が見つけた「人を惹きつける」文章方程式
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古今東西の名文を科学者が選び、ひとつひとつの名文が読むものを惹きつける理由を分析し、解説した本。

・成功術 時間の戦略
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003654.html
この本と同じ著者。

ジャンルごとに名文方程式をまとめている。

・「恋」の名文方程式
・「青春」の名文方程式
・「食」の名文方程式
・「笑い」の名文方程式
・「元気」の名文方程式
・「美」の名文方程式
・「逃避」の名文方程式
・「人生」の名文方程式
・「知性」の名文方程式
・「静寂」の名文方程式
・「旅」の名文方程式

恋の名文なら、具体性を省き、日常を超越し、繰り返しや相似形を使って、催眠をかけろ。美の名文なら色のコントラストや使え。静寂を表したいなら、無機質な用語で時間を静止させよ、など、事例ベースで具体的なアドバイスがある。

紀行文や食のコラムを突然書かねばならないといったときに、個別に参考になりそうな本である。事例が実際、名文が多いので、引用された本を読みたくなってくる。

■私が見つけた名文 茨木のり子、笹 公人

最近、個人的にはまっている名文は詩である。

詩はあまり詳しくない分野だったが、本屋で気まぐれに手に取った詩人 茨木のり子の作品には感動した。詩というと、よそいきの気取った言葉を使うと思いがちだが、茨木のり子は違う。日常の思考の言葉を使って、人生や心の真実を、語りかけてくる。

・自分の感受性くらい
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・倚りかからず
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もう一人、まったく違った名文を見つけた。詩人、笹 公人。この人の文章はおかしい。ズレている。どのようにおかしいか。たとえるなら、2ちゃんねるや電車男的なズレである。そのズレが映像的に見えてくる。新しいタイプの名文だと思う。

・念力図鑑
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2005年08月23日

「速く・わかりやすく」書く技術―原稿用紙3枚をラクラク30分!

・「速く・わかりやすく」書く技術―原稿用紙3枚をラクラク30分!
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速読ではなく速く書く速書ノウハウ。著者のSRS能力開発法の営業色もある本だが、個人の情報処理能力を高める一般的な方法論が中心。医学博士、薬学博士。東京大学理学部数学科、同医学部医学科卒で医師で教授を兼任。効率よく知的作業をこなす技には長けていそうな人だということで読んでみた。

この本、実は速く書くことは目的とされていない。


「スピード」に関しては、「結果として速く書ける」ことを目指すのではなく、「速く書くことを追求する過程で従来とは異なる意識の新しい領域を巻き込む」ことが本質的に重要だ

というスタンス。書くことで全能力の統合効果を発揮し、潜在能力を開発しようというのがねらい。

■敷衍訓練と補間訓練(2単語、3単語))

2,3のキーワードから文章を書き出す練習方法が紹介されている。このやり方はピンときた。私は日々、キーワードメモをベースに、このブログを書いているのだけれど、それとまったく同じだからだ。

たとえば、

「経済、曲がり角」「子供、インターネット」「経験、再雇用」

といった組み合わせでなにか意味のある文章を書いてみよう、であるとか、

「         通り雨          虹    」

というテンプレートの隙間を埋めて文章化してみるという練習。

要集観展創力の6つの要素を重視して文章を書け、と指導している。

要 文章の目的を定める
集 文献や関連情報を集める
観 全体の見取り図を決める
展 具体的な内容を配置する
創 主張の価値や独自性を設定する
力 相手に与えるインパクトを工夫する

文章の文字数が足りないときや、推敲時にチェックリストとして使えそうだ。

■1行1分法はほとんどブログ

速く書く速度については1行40字が目標値とされている。10分あれば10行、30分あれば30行。30行は1200字なので原稿用紙3枚書ける計算になる。

1日に3つのニュースにコメントを3行書くという訓練法が紹介されている。かかる時間は3分である。ただし毎日続ける。すると1年間で1000個を超すニュースの要約が蓄積される。1000件あれば、1年間の世の中の動きについて、自分の視点でコメントし続けた日記は、世の中を俯瞰する世間史であり、同時に自分史になるという。必ずコメントには日付をつけるのも忘れるなとのこと。

あれ、これって、ほとんどブログではないか?と思った。

「編集の時間最適性の追求」という項で感銘したのが次のノウハウ。


まとまった時間や集中力がない場合でも、ひとまずおおざっぱなアイデアに従って下書きをしておき、意識下で時間をかけて熟成させて、別なチャンスに編集し完成する方法も有用だ。最初から一気に完成させよう意気込んで取りかかるより、このような2段階方式で行う方が、全体としての作業時間は短縮できることが多い。これは間の活用ともいえる。」

これその通りだなと思う。集中できないときに、メモ、下書きレベルの部品をいかに作っておけるか、が生産性を左右している気がする。

■アイデア「ベスト3作成」

私が最近編み出したのが「ベスト3の作成」による部品作成。個人的にはかなり役立っている。混雑した電車で何もできないときや、集中力がないときに1日1回はやるようにしている。

まずテーマを決める。映画、音楽、書籍の特定テーマのベスト3でもいいし、自分の知り合いの中で最強デザイナーベスト3、最強プログラマーベスト3など、なんでもいい。手元に雑誌があれば記事のベスト3でもいい。3つくらいは思い浮かぶ。

順位づけをするには頭を使わねばならないが、好きなものの順位を考えるのは楽しい。集中力がいまひとつのときでもできる。1位が1位である理由を考える。2位と3位の違いを考える。説明つきのベスト3は、文章の部品として使えるし、雑談でも興味を持ってもらえる。話しやすい。ベスト3メモが何百もたまると文章書きにとってはちょっとした情報資産になる。

おおざっぱなアイデアや下書き、メモをどう作り出し、どう蓄積し、どう再利用するか。そのプロセスをどうITで効率的に進めるか、が、これからどんどん重要になっていくのではないかと思う。研究中。

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2005年08月22日

その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!

・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
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営業力で知られるリクルート社でトップセールスとして6期MVPを受賞した、現「アントレ」編集長の書いた営業・会議ノウハウ本。理屈というより、こういうスーパーマンが日常、何を要点と考えているか、を知りたくて読んでみた。

著者は「会議の時間はコスト」だと意識せよ説く。営業課長を10人集めて2時間会議すると、時給4000円ならば8万円以上のコストがかかるのだと例を出している。だから、参加者全員が「会議は共同作業」と認識して、まとめることを最優先すべきだというのがこの本のテーマ。

話し好き、人好きであれば、社内会議でも営業先でも、盛り上がるのは比較的簡単だ。だが、盛り上がるだけ盛り上がって何も決まらないことは多い。「商談で話をまとめるためには、盛り上げることにより、事実を確認しながら前に進む仕切りが大切なのです」

「まずは今日の商談のゴールを確認しませんか」で始めるのが効果的だという。

時間がないから別の機会にと言われたら、「今日前進した内容をまとめましょう」と言って「中間決算」を出せ、他者と比較させて欲しいと逃げられそうなら、「一番の比較ポイントは何ですか」と聞け、「時期尚早な気がする」とやられたら「次回の検討日時を決めてください」とつっこめ、など、営業や会議を無駄に終わらせないための切り返し術もいくつか紹介されている。

次回に「持ち越し」 「時間稼ぎ」 「チャブ台返し」といったネガティブパターンにいかに突っ込みを入れて、状況の停滞や後戻りを避けて前進させていくか、こそ極意である。「資料を持ち帰って検討」で本当に次回までに熟慮してくれるひとなどほとんどいないというのは本当だろう、と思った。

「ドウドウ巡りする5つのパターン」として以下のパターンが挙げられている。

 チグハグ 議題に対して出される意見がまったくかみあっていない
 我が強い 参加メンバーが自分の話したいことばかり話す
 わがまま 人の意見に耳を傾けない
 的はずれ 質問に対する適切な回答を行っていない
 脱線   まとめ役が議題を自ら横道に逸らしている


この本で個人的に私の弱点(=話しすぎる)に効きそうなアドバイスもみつかった。

「言いたいことの6割を話せば十分である」、一点集中で適量で話せ

「企画書の説明よりも議論に時間をとりましょう」、資料を3分で各自読んでもらう

「聞き上手から一転まとめに入る」、メリハリのある営業

この話の目標は何か、時間内に何をまとめるべきか、を片時も忘れずに、脱線しそうな状況に対して適宜テクニックで応酬できるのがスーパー営業マンなのだ、と分かった。

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2005年05月12日

外見だけで「品よく」見せる技術 ファッション、しぐさ、話し方

・外見だけで「品よく」見せる技術 ファッション、しぐさ、話し方
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著者は元日本航空の国際線スチュワーデスで乗務時間2万時間を初めて達成し、女性初の客室乗務員管理職として定年まで勤めた人物。経験から培われた何百もの「品よく」見せるノウハウがまとめられている。女性向けの部分も多いが男性にも役立つ。

「上品」は武器だと思う。鼻につく上品は下品だけれど、ほどよい品のよさを持った人は特に初対面での待遇がまったく違ってしまうと思う。上品は運を呼び寄せる技術とも言えるかもしれない。

大変な数の注意ポイントが一冊に紹介されているのだが、個人的に勉強になった、共感した、知らなかった項目を抜き出してみる。

・一度にするのはひとつの動作だけ
 席を立ってテーブルの上のコーヒーカップをかたづける、という一連の動作をする際にカップを持ちながら立たないことという例が挙げられている。上品さの基本かもしれない。急いでいるときほどゆっくりと、という項目もあった。

・人や方向は手のひらで示す
 女性向けかと思ったがやってみると男性でも様になる気がした。指差さず手のひらを上にして方向を示すという動作。

・紳士は食事中以外も手をテーブルにのせておく
 そういうものですか。解説によると本来このマナーは男女が交互に並んだテーブルで、下で手が何をしているかわからないのを避ける意味があったそうだ。

・注文のときはウェーターの目をしっかり見る
 これは確かに上品だ。メニューを見ながら注文してはいけない。

・中華料理の回転卓は主賓から右回りが原則
 知らなかった。

・「すみません」ではなく「ありがとう」

・チケットを贈るときは金額を消して
 コンサートや演劇のチケットをプレゼントする際に金額を墨で消してから贈る。

・順番を待った人へはひと声かける
 駅の切符売り場など公衆の場で列の後ろに対して「お待たせしました」。

・自分から挨拶する

著者は日々意識的に気をつけてこうした振る舞いを身につけているようだ。すべて読んでみて、上品さというのは性格や育った環境というより、注意と訓練の賜物なのだと思った。

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2005年04月05日

品のいい人と言われる言葉づかい──ものの言い方ひとつで、あなたの品性を疑われる!

・品のいい人と言われる言葉づかい──ものの言い方ひとつで、あなたの品性を疑われる!
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品のいい言葉遣いについての本。

冒頭で品についてなるほどという考察がある。

「本日はおいでいただきまして、ありがとうございます」
「本日はおいでくださいまして、ありがとうございます」

どちらが品があるか、という質問があり、後者が良いという。

前者は自分の立場を下にして相手を立てる言い方だが、後者は相手を上にすることで相手を立てている。ただ丁寧にへりくだるのではなく、相手を立てつつ卑下もしないのが上品だという例だ。コンセプトはよくわかる。

■意外に少ない尊敬語と謙譲語の例外

尊敬語と謙譲語をきちんと使えることが上品な言葉遣いの第一歩。多様なようでいて尊敬語と謙譲語は例外が少ないのでこれだけ覚えておけば大丈夫と言うリストは参考になる。
尊敬語:

基本原則は、お〜になる、で、

読む→ お読みになる

と変化するが、例外は5つ。

食べる→ 召し上がる
行く、来る→ いらっしゃる、おいでになる
見る→ ご覧になる
言う→ おっしゃる
くれる→ くださる

謙譲語:

基本原則は、お〜する、または、ご〜する、で

取る→ お取りする
説明する→ ご説明する

と変化するが例外は7つ。

見る→ 拝見する
会う→ お目にかかる
言う→ 申し上げる
もらう→ いただく 頂戴する
行く、来る→ まいる、伺う
する→ いたす
思う→ 存ずる

これだけ知っていれば完璧ということだ。

ネガティブな表現をポジティブに変換することで上品さをアップするテクニックも紹介されている。

趣味が悪い→ 個性的な装いをなさる
鈍い→ おっとりしていらっしゃる
太っている→ ふくよかでいらっしゃる

こうしたリストは、こんなページも見つけた。

・書きかえたい言葉
http://www.kyo-sin.net/reframe.htm
「通知表などの所見欄に,書きたいけど書けない言葉を書カき換カえる一覧」

確かに、こうした尊敬語や丁寧語がTPOに応じて自然に出てくる人は品があるなあと思う。

他にも、「どうも」「すみません」の代わりに、魔法の言葉「恐れ入ります」といいというアドバイスがある。

1時間で読めて随分勉強になる本だった。新人にオススメ。

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2005年02月12日

7秒のイメージ・マジックであなたの声はもっとよくなる―相手を説得する、声の印象が変わる、気持ちが伝わる

・7秒のイメージ・マジックであなたの声はもっとよくなる―相手を説得する、声の印象が変わる、気持ちが伝わる
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なぜか家に転がっていたので30分で読んでしまった本。

歌唱指導のボイストレーナーである著者が、歌うためではなく、話すための「いい声」発声法を語る。歌声と違って話す声は一概に何がいい声とは言えない。たとえば結婚式とお葬式ではいい声が違う。だから、状況に応じて幾つかの声を使い分ける能力を持ちなさいという。

まずは綿棒を使った自己診断チェックや、割り箸、ピンポン玉、ティッシュ、ペットボトル、ハンガーを使った基礎的な発声練習の紹介がある。だが、この本のメインテーマは技術指導よりイメージつくり重視のメンタルトレーニング部分。

著者によると声には、のどの付け根方向に向かって出す「押して出す声」とのどの外に向かって空気を出しながら出す「引いて出す声」がある。男性の場合、この二つの声から7つの型が派生するという。

引く声
  押し型
  説得型
  声援型
中間
  受身型
押す声
  口説き型
  ささやき型
  癒し型

各型の出し方が簡単に説明もつけられているが、これだけでは分かりにくいので、具体的に各型の有名人、芸能人が数十人挙げられて誰がどの型かを説明してくれる。

いい声の代名詞の森本レオは癒し型で、ささやきと口説き要素が少し入っていて、ほとんど鼻濁音で発声しているそうだ。プロの男性アナウンサーも鼻濁音が上手らしく、男性の場合、鼻声というのは、制御できればかなり得なのだそうだ。

こういうときにはこういう声がいいというシーン別のノウハウもあった。目上の人と話すとき、催促をするとき、デートを申し込むとき、断るとき、謝るとき、言い訳をするとき、などシーン別のいい声のイメージ説明。

自分の声質を診断して、近いタイプのいい声の持ち主の発声法を、状況に応じて、真似してみなさい、というのがこの本のいいたいことであるようだ。なかなか難しいのだが、有名人の発声法が文章化されているので、イメージには役立つ。

発声というのは話し方の基本で、言葉以上に大きな影響を与えていると言われる。何をするにしても、声の研究は役立ちそうである。もう何冊かこの分野は読んでみようと思った。

関連書評:

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

ところで、この本を読み始めたのはタイトルの「7秒」というキーワードが気になったから。結局、7秒に根拠はなく、7秒くらいで出したい声を明確にイメージして発声するだけで、だいぶ変わりますよということがいいたいようだ。

7秒のノウハウ本は他にあるかと探してみたら結構あった。どうやら7秒は発声と幸福とダイエットに効く、らしい。

・Amazon.co.jp: 本: 「ひねり運動」7秒ダイエット
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062741423/daiya0b-22/

・Amazon.co.jp: 本: 7秒の幸福論
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4087483967/daiya0b-22/

・Amazon.co.jp: 本: 7秒の開運帳―自分を幸せにするカギ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4413062566/daiya0b-22/

・Amazon.co.jp: 本: あなたは7秒でやせられる―FYTTEプロポーションブック
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4056028516/daiya0b-22/

・Amazon.co.jp: 本: 体幹ダイエット―1ポーズ7秒間の刺激でムダなしボディ!
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847014855/daiya0b-22/

・Amazon.co.jp: 本: 部分やせ7秒間ボディシェイプ
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4576007165/daiya0b-22/

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2005年02月01日

伝わる・揺さぶる!文章を書く

・伝わる・揺さぶる!文章を書く
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■自分の立場を発見する

ブログでこうして文章を毎日書いているとたまに「感動しました!」という読者からメールをもらえる。誰かの心を揺さぶることができたときは、嬉しい。毎日そんな文章を書けたらと思うが、なかなかそうもいかない。秘訣を知りたくてこの本を読んでみた。

文章のゴールの基準を著者は

「自分の書くもので人に歓びを与えられるかどうか」

におけと簡潔にまとめている。これは心から共感した。当たり前のことなのだが、

文章を書く上での心得として「自分の立場を発見する」ことの重要性が語られている。同じ発言でも読者が違った意味にとらえる可能性があるから、関係性に注意せよというアドバイス。この部分、事例で説明されているが、私にも同様な心当たりがある。こういうことだ。

私が小学生の頃の話。

両親が友人の家族を家に招いて、母がつくる夕食で歓談した。

こどもだった私は食べ終わった後で「今日はすごい豪華なご馳走だったねえ」と何気なくお客さんの前で話した。

私は率直に「今日の料理はおいしかったなあ」の意味だったのだが、お客さんが帰ってから母に怒られてしまった。「いつもの食事がおいしくないみたいに聞こえるじゃないの」というわけらしい。お客さんや父はどう思ったのだろうか知らないが、人の受け取り方はさまざまだと思った。

同じ文章が相手から見た自分の立場で意味が変わって受け取られる。特別な意図のない言葉が、人を喜ばせたり悲しませたりする。文章がうまい、へたの前に、読者との関係性を知ることが、良い文章を書く出発点になる、という。

これも共感した。

ブログは特にこれが難しいメディアだと思う。雑誌や単行本であれば、出版社や雑誌社の文脈や全体のテーマがあるから、立場は書かずとも明確になりやすい。一方、ブログは基本がテーマのない日記だから、自分の立場が読者にみえにくい場所だと感じる。検索エンジン経由でたどりついた読者にはなおさら文脈が伝わらない。

ブログやWebでは、書き手は、突然迷い込んだ一見さんがその記事だけを読んだらどう見えるか?も意識しておく必要があるなと思った。文脈のレイアウトデザインが感動の極意だと言えそうである。

■お母さんのひと言要約

この本、核心をついているなあと感動した箇所が何箇所かあった。

たとえば、見事な要約として例示される”お母さんのひと言要約”


息子 「俺は、別に彼女をしばる気はないんだ。彼女は自由だし、やりたいことをやればいい。だから、彼女が留学するのは、ちっとも反対じゃない。
ただここで問題なのは、彼女の動機だよ。安易な留学ブームにのっかってるだけじゃねえか。だいたい、そんな、あいまいな気持ちで留学したって、逃げてるだけじゃ.......」

母 「淋しいんだね、おまえ」

そう。そうなのだ。これこそ見事な要約なのだ。

息子は淋しいという言葉は一度も使っていないけれど、淋しいが真意に違いない。学校で習う要約術では「私は彼女の自立性を尊重するが考えが甘いと思う」あたりがマルをもらえる要約なのかもしれないが、それは本当は間違いなのだ。著者は要約とは根本思想と関係性が見えるように文章を短縮せよと述べている。

この”お母さんのひとこと要約」を自分のもやもやとした想いに対して行えることが、良い文章の秘訣なのだと感じる。

この本は、お願い、お詫び、議事録、志望理由などケース別の対策や、初心者から上級者までのクラス別技法の紹介が、小論文指導のエキスパートによって簡潔にまとめられている。

関連書評:

・大人のための文章教室
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・40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

・分かりやすい文章の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

・人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

・人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

・大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

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2004年12月21日

論理サバイバル―議論力を鍛える108問

論理サバイバル―議論力を鍛える108問
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アキレスと亀、クレタ島の嘘つき、囚人のジレンマ、マーフィーの法則など、古今東西のややこしい論理ばかり集めては、根気よく説明していく本。この本を読んでも議論力につながるとはとても思えない。説得材料にしてはややこしすぎる。だが、ロジックのパターンをたくさん知っておくということは物事を考える上でとても役立ちそうである。頭の体操をしたいときには楽しく読める。

「韓非子の矛と盾」。これは矛盾という言葉の由来になった問題のようだ。

ある武器商人が賞品の矛と盾を売っている。矛を売るときには「この矛はどんな強力な盾でも突き通すことができるのだ」。「この盾はどんな矛でも破ることはできないのだ」。」。それを見ていた客が商人に「その矛でその盾を突いたら、どうなるんだ?」。商人はつじつまがあわず答えることができなかった。

という比較的よく知られた話。

以後、辻褄があわないことを矛盾というようになりました、嘘つくのはやめましょう、マル、で普通の本は終わってしまうのだが、この本では先へすすむ。商人が嘘を言っていない可能性があり、その場合、

ずばり盾の勝ち。

になる確率が高いのではないか、というのだ。

矛が最強の最強を証明するには盾を貫かなければならない

だが、

盾が最強を証明するには貫かれなければ良い

という違いがあり、どちらにせよ、実際に突いてみないといけない。

どのくらいの強さで突けば良いのか。弱く突くこともできるし強くも突ける。仮にどちらも無敵の矛と盾であったならば、人間の有限の力では盾は破られない可能性が高い。すると、盾が最強だということになってしまうのである。あるいは矛が実は無敵であったとしても、強さが足りなくて無敵ではない盾を貫くに至らない可能性がある。確率としては盾は破られない可能性の方が高くなる。

矛と盾を対等の関係と思ってしまっていると、この「矛盾」は解けない問題だったが、前提条件を疑うと違う答えが見えてくる。

こうしたロジックはへ理屈扱いされる可能性が高いので、実際の議論に使うのはどうかと思うのだが、議論で劣勢を泥沼ドローやエンドレス議論で粘り勝ちへ持ち込みたい場合、この手のパターンは知っておくと得なのかもしれない。

・Miura TOSHIHIKO's World (三浦俊彦の世界), designed by Akiyoshi MATSUSHITA.
http://members.jcom.home.ne.jp/miurat/index.html
著者のサイト。関連情報多い。

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2004年11月10日

大人のための文章教室

大人のための文章教室
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さすが清水義範。楽しくてためになる文章教室。

清水義範は他の有名作家の文体をコピーして語ることができる、特殊なモノマネ能力で有名な作家。自分の声で語るコラムも軽妙でとても面白い。どうやって変幻自在に文体を操っているのかをこの本で垣間見せてくれた気がする。

■ワープロに乗っ取られるな

プロとアマの書き手の違いはワープロを使ったとき、文章が変わるかどうかだという話が冒頭にある。プロは紙に筆で書いたときと同じになるが、アマは妙に漢字や漢語が増える傾向があるという。

たとえば、ワープロで

ひどい 酷い
おののく 戦く
すさまじい 凄まじい
ものすごい 物凄い

という漢字を使ってしまいやすいし、語の選択も、

ためらう 躊躇する
ふみにじる 蹂躙する
いきどおる 憤慨する

という漢語的表現を使いやすい。

筆で書いた場合、まず「躊躇する」なんて書く気にならないだろうというのだ。ごもっとも。ひらがなの分かりやすい表現が、筆をワープロに乗っ取られることで失われてしまうから気をつけよという指南。

これは実際、文化庁の調査報告にも関連する数字が出ているのを見た。

平成15年度「国語に関する世論調査」の結果について
http://www.bunka.go.jp/1kokugo/15_yoron.html

情報機器の普及による言葉遣いへの影響の項目では、「影響はあると思う」が78.9% で具体的には「漢字が書けなくなる」がトップである。ところが「常用漢字以外の漢字の使用」では積極的に使っていくべきと4割が回答したし、「常用漢字以外の漢字を使う言葉の書き表し方」の項では「愕然」「剥製」「破綻」などの、漢字(及び交ぜ書き)使用の支持者が多いのである。

筆で書けない難しい字を、ついつい使ってしまう人が多くなっているわけだが、書けない字はまだ自分のものになっていないから、文体の味わいとしては使えないということだろう。逆にワープロ時代はひらがなや平易な表現の使い方が効果を発揮するということなのかもしれない。

宮沢賢治だとか谷川俊太郎などの美しい文体を見ていても、平易な文章の力を感じる。

・ThinkQuest入賞作:「銀河鉄道の夜」
http://contest2002.thinkquest.jp/tqj2002/50133/story-top.html

■ですます と だである

「です・ます」「だ・である」どちらで書くべきかは私もこのブログで悩むところ。私は96年から2000年まで、オンラインでは「です・ます」中心で書いていた。だが、ある時期から「です・ます」で意見を語るのは、ある種の”逃げ”姿勢だなと感じて「だ・である」中心に変えた。「だ・である」には覚悟がある。

「です・ます」は上下関係を意識した文体だという指摘はなるほどと思った。著者の経験では学校で生徒に作文させると9割以上が「です・ます」で書いてくるという。逆に偉い先生は敢えて読者に「です・ます」で語ったりもする。「です・ます」の私は私人であり、話しかける対象に対して格上か格下か、どちらかの立場が意識されていると指摘されている。

社会人は特に理由がなければ、「私」が公人として不特定多数に語る「だ・である」を選びなさいと著者は忠告している。

高等技術としては、基本は禁じ手の「です・ます」体と「だ・である」体を混ぜて効果を出す手法などが紹介されていた。この方法は私も時々試すのだが、成功すると劇的効果がある。でも大抵はすべってしまう。難しいので普通はやめておきなさいとのこと。はい。
■文章を書くときに気になる二つのこと

この本で一番、核心をえぐられたのが以下の率直な指摘。


文章を書くときにいつも気になっているのは、次の二つのことのバランスをどうとるかである。その二つとはこうだ。

1 言いたいこと、伝えたいことが曇りなく読み手に伝わるかどうか
2 この文章を書いている私が利口そうに見えるかどうか

先生その通りです、その正直さに脱帽です。

1だけであれば噛み砕いて書けばいいだけだから推敲を重ねれば、ある程度はうまく書ける。だが、わかりやすく書くと平坦で面白みがなくなる。逆に2ばかり考えていると凝った難しい文章になってしまう。余程の書き手でなければ失敗する。スケベ心はいったん忘れて、1を意識して書きなさいとアドバイスがある。


品格は文章テクニックでは生み出せない。それをめざすなら、人間性を高めるしかないのである

まあ、それはそうですが根がスケベなもんで...。

精進しなければ。

この本は著者の書き下ろし文例がたくさん掲載されているのが参考になる。身近な上級者が、キミのフォームはここをこう変えたらいいよ式の、実技指導をしてくれる内容で分かりやすい。とっかかりやすい。

Passion For The Future: 40字要約で仕事はどんどんうまくいく―1日15分で身につく習慣術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002286.html

Passion For The Future: 「分かりやすい文章」の技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001598.html

Passion For The Future: 人の心を動かす文章術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001400.html

Passion For The Future: 人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001383.html

Passion For The Future: 書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

Passion For The Future: 大人のための文章法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000957.html

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2004年10月25日

人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意

人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
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5月に上巻を書評してから、下巻について書くのを忘れていたので思い出したように書評を書いてみる。デール・カーネギーによるスピーチ術。上巻はスピーチ前の準備と心構えを説いていたが、下巻ではより実践的な内容となっている。登場するのは上巻同様、歴史上の英雄や著名な経営者が多い。

とにかく分かりやすくしゃべることが大切だというのがこの本の要旨である。それには終わり方が重要で、最後にしゃべったことを要約する。私はこれこれこういうことについてお話いたしましたと簡潔に総括することで、聴衆の印象がよくなるというもの。上下巻2冊で語る極意は意外にもシンプルなオチだった。

何を話しているか、とらえどころがないスピーチは、相当の味を持った人物でないとうまくいかないのは事実。聞く側としても、ひとつかふたつのまとまった情報を得られれば、短いスピーチには満足するものだ。一生懸命準備する際には、ネタリストに追加するのではなく、絞り込む部分にこそ重点をおけということになる。

何を話すかについて、人は人について一番興味があるものだから、できる限り人について話なさい、というのは良いアドバイスだなと思った。スピーチでは、人物評は確かに気になる。

ところで、偉い人のスピーチというと先月、かなり笑えたのがライブドア・楽天球界進出を喜ぶ宮城県知事のこんな会見議事録。うっかり差別用語を喋ってしまったのだが、その後の記者のツッコミに対する受け答えを見る限り、本当に知らなかった可能性が高い。広報課長まで調子を合わせて「いや、知りませんでした。」と話したのは日本型タテ社会の悲しい性なのだろうか。それとも広報課長もまた知らなかったのだろうか。差別用語について知識がない広報課長は役目が勤まらないと思うのだが...。

日本の政治家のスピーチは、まず失言しないことが第一のノウハウなのかなと思った。日本の政治家の名演説というのを一度聞いてみたいものだが、最近の法相のしどろもどろな受け答えを見ても、望むべくもないレベルにあるようだ。こういう本、少しは読むべきだなあ(笑)。

・宮城県知事記者会見(平成16年9月21日)
http://www.pref.miyagi.jp/kohou/kaiken/h16/k160921.htm


◆Q
 先ほどの「バカだ、チョンだ」というのは明らかに差別用語である。取り消しと言ったが、その言葉を使った趣旨と、取り消すに当たってやはり何らかの釈明も要るのではないかと思う。

■浅野知事
 ごめんなさい。間違いました。ちょっと、があっという流れの中でつい言ってしまいました。さっき言ったようにおわびして訂正をします。

◆Q
 趣旨はどのような趣旨だったのか。

■浅野知事
 ちゃんと問題を正しく理解していく、正しい理解がないという意味で使いました。批判されていますよね、無能だとかいうようなことで。それを差別用語と言われる形で言ってしまったということについては、おわびして訂正します。

 趣旨は、いろんな言い方でされています。統治者能力がないとか無能だとかというようなこと、そういう趣旨のことを言いたかった。

◆Q
 あくまで特定の人種を指定したような発言ではないということか。

■浅野知事
 そういうのは人種とは言いません。

◆Q
 民族ですか。

■浅野知事
 民族……。

◆Q
 「チョン」という朝鮮人に対する差別意識があってそういう発言をしたのではないということか。

■浅野知事
 あら、私は前者の方をあれだ(適切を欠く表現)と思ったけれども、認識は全然ありませんでした。それはいろいろ言われているかもしれないけれども、それは学術的にというか、言語学的に正しいあれなんですか。分からない。認識すらなかった。

◆Q
 「バカだ、チョンだ」というのは朝鮮人に対する差別用語であるのだが、いかがか。

■浅野知事
 そうなの。いや、それは認識すらなかった。そういうのは皆さん知っていた。広報課長。

■広報課長
 いや、知りませんでした。

■浅野知事
 それはそうだとすれば無知も恥じます。

---

◆Q
 先ほどの「バカだのチョンだの」という発言を聞いていて、個人的にあまりにも知事が無知なのにショックを受けた。もしこれが全国知事会等の場であれば、他県の知事から「何だこいつは」という目で見られたのは間違いないだろう、特に西日本など在住の方が多いところの知事はそう思うだろうと思ったが、知らないということで、問題意識をどのように持っているのか、在日外国人の地方選挙の参政権の問題等どのように考えているのか伺いたい。差別という問題と絡めて参政権の問題というのはあると思うが、そこでどう考えるかということを伺いたい。

■浅野知事
 事実の問題として、私が無知であったと、これは非常に恥ずかしいことだ。これはそれで情報開示を今いたしましたから、これは仕方がないことです。47県知事で私だけがこれ知らないとしたらすごく恥ずかしいことですが、それは分かりません。

 後でちょっとメモが入ったということもあって、差別用語であるということは確認をいたしました。「チョン」というのはお話しのとおり改めておわびをして訂正させていただきたいと思います。

 この表現は明治以前から使われていたんですね。それが、その後、語呂合わせ、「チョン」ということをかけ合わせて、使われ方としては朝鮮人を差別する用語として使われてきたという歴史があるということを今確認いたしました。でありますから、そういう民族差別ということでは使うべきではないという表現だということを改めて確認をし、したがって、先ほどの表現は改めておわびをし、訂正させていただきます。


関連:
The History Channel - Great Speeches
http://www.historychannel.com/speeches/archive1.html
世界を動かしたスピーチがダウンロードできる

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2004年09月06日

悪の対話術

・悪の対話術
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■礼儀正しく生意気な人

第一印象を制する対話に必要なものの話がなるほどなあと思う。

「あなたがどれほどの存在であるか、ということは、多少とも頭を使うことを知っている人間であるならば、会った場所や機会などで大体解るのです。では何を云うべきなのか」

それはごく短く印象に残る「批判的な意見」であるとし、「礼儀正しい生意気さ」が大切だと説く。

「私が云う「生意気な人」というのは、組織の中、特に課とか班といった小規模の集団において、自分のおかれている境遇や評価に対する不満、反発を、自身の「分」を意識的にでも、無意識的にでもはずれることで、表明しようとする人たちです。」

もちろん批判の対象や表現をよく選び「トゲから伝わる敬意」が感じられると良いとし、
「大体、ある程度の地位なり力量を持った人間にとって、若い人に期待するものとは、生意気さだけなのです。」

これは分かる気がする。

ビジネスシーンである程度の役職にある人と話す際、そういった人たちは普段、賞賛の言葉と大人しい若手の部下に囲まれている。それに甘んじている人は、つきあうに値しないし、若者を引き上げてくれる力がないような気がする。だとすれば、生意気な一言の持つ違和感で「見所」をアピールする戦略が、その人物の真価を見抜く試金石としても機能して、一番効果的だということだろう。

■適度に緊張させる無口な人

「キャラ立ち」するのではなく、キャラに収まりがつかない緊張感、容易には安心できない雰囲気を漂わせる、ミスティフィカシオン(神秘化)の技術の話も面白い。そのひとつの手法に無口がある。

「例えば明治の元勲西郷隆盛は、きわめて無口なことで知られていました。きわめて少ししか言葉を口にせず、しかも語るとしても相撲や犬といったどうでもいいことしか語らない。政治向きの話はいっさいしないのです。けれども話さないからこそ、周囲の視線は西郷にずっと注がれている。西郷が何を考えているのか忖度し、片言隻句を聞き逃すまいと耳をすましているのです。ですから、一度言葉を発するとその影響力は絶大でした。西郷が進めと、一言発すれば、それで大山が動くように衆がみな従うのです。」

場に緊張感を持たせる人というのは、会議などでも重要な役割を担うと思う。ただし、効果的な無口は、作為的な無口の結果であると著者は言う。緊張によって場を生成していくことで、効果的な対話ができる。

■悪の対話術=意識的で作為的な対話=大人の優しさ?

この本のタイトル「悪の対話術」から、最初は「パワープレイ」のような小手先心理操作と交渉術がテーマかと思ったら、もっと深いレベルの本だった。自分のいいたいことを直球でさらけだすのではなく、相手の立場を理解した上で、作為的に対話をしかけましょうというのがこの本の趣旨。作為性がこの本のいう「悪」であるが、それこそが大人同士の対話の、誠意であり、思いやりなのだ。

ある程度の年齢になると天然の「いい人」は必ずしも善い人ではないなと私も最近、感じるようになった。思ったままを口にするのではなくて、どう状況を変えたいかを考えた上で、将棋の駒の次の一手を置く。そんな対話ができるのが優しい大人なのだなと思う。作為性を仕込んだ言葉は、中途半端ではだめだとも書かれている。中途半端な優しさはダメなのだ。愛にも通じるかもしれない(笑)。

この本には、一般にはネガティブなものとして考えられている悪口や噂、お世辞の、良い使い方なども書かれている。ノウハウ本ではないのだけれど、対話の場の構築術として参考になることが多かった。

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2004年05月26日

「分かりやすい文章」の技術

「分かりやすい文章」の技術
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ベストセラー「分かりやすい説明」の技術、「分かりやすい表現」の技術の著者が書いた「分かりやすい文章」の技術。芸術的名文ではなく、分かりやすくて、目的を達成するための文章術のポイントが、今回も分かりやすく、簡潔にまとめられている。

ソフトウェアエンジニアでもある著者の理想は、プログラムのように論理的で、機能的な文章にあるようだ。重要ポイントを先に書き、要点ファースト、詳細は後、不必要な情報を書くなが基本としている。学校で習う作文では、感じたことを書くのが良いと指導されてきたが、実務文では、主観的な形容詞がだらだらと続くと、意味が理解しにくくなる。
実務文には「斜め読み耐性」をもたせるべきという視点はユニーク。読み手がすべてを読んでくれるとは限らないから、飛ばし読みされても、書き手の意図が伝わるように書けという。最初に予告をすることが大切で、パズルのピースを見せる前に、それをはめ込むパズルのボードをみせてやることが、意図の理解につながるという比ゆは分かりやすい。

分かりやすい文章を書くための5つの技術として、構成、レイアウト、説得、センテンス、推敲が挙げられ、章別に合計18の各テクニックを紹介する。この本の文章が、分かりやすさのお手本のように書かれているので、納得度が高い。

たとえば、読みやすいセンテンスの4つのポイントとして挙げられているのは。

・センテンスを短くする(40字で、「が」の分割など)
・事前分解しておく(読点で意味を確定させる、など)
・曖昧さをなくす(修飾語は近くに、など)
・キーワードを作る(文章に取っ手をつける、とっかかりやすさ、など)

どれも日ごろ文章を書いている人なら、実感できるノウハウのリストになっていると思う。読点の打ち方については、何が正しく効果的なのか、迷っていたので大変参考になった。

ところで、分かりやすい文章を書く機会が、私には毎月一回やってくる。無敵会議の告知文である。ここまでのところ、毎回満員なので、内容理解と誘う効果を持つ文章として成功している例だと思う。

これは、いつも私が下書きを書いて、田口さんが推敲する形で完成させている。田口さんが削って足す操作をする結果、だいたい原文は50%程度残るので、まさに共同作品を作っている感じ。開発手法のひとつ、エクストリームプログラミングのノウハウに、ペアプログラミング(二人でひとつのコードを書く)があるけれど、それに似ている。二人で書くことで、共通了解している部分に集中し、無駄を刈り取ることができる。

来月はこれを参考にさらに分かりやすい文章で告知を書いてみたいなあと思う次第。

取り扱い説明書や、プレスリリースを書くのが仕事の人に特にお薦めの一冊。

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2004年05月06日

人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意

人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
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学生時代に、スピーチが受けてスタンディングオベーションになったことが一度だけある。日米の学生が合宿する2週間のイベントの、初日のパーティで、緊張しながら、カタコトの英語で話したときのこと。初対面でまだ打ち解けていない会場。みんなの視線がこちらに集まり、静寂の中、冷や汗たらたらでスピーチは中盤まで進んでも何を話したのかわからないような状況。

さあ、このスピーチをどう収拾しようと困りながら咄嗟に思いついた言葉を最後に、ゆっくりと言ってみた。「私たちはこのイベントを通して、言葉や文化の壁を一緒に乗り越えていける。私はそう信じています」。これが大ヒットで、参加者の拍手と笑顔と、「いいスピーチでした」との日本と米国側の仲間からコメントをもらうことができた。

そこに集まった参加者の大半が、これから始まる合宿に、語学力の不安を持っていて、「言葉や文化の壁を越える」というのが、皆の共通のテーマだったのだ。私がたどたどしい英語で話していたから、この最後の締めの言葉が効いたのだと思う。私が本当にそう思っているというのが痛々しいくらい伝わったのだと思う。流暢にしゃべれていたら、定型文のように響いていただろう。

この本は成功哲学で有名なデールカーネギーが、古今の著名人の歴史的名スピーチを題材に、よいスピーチ方法について語る本。登場するのは、ナポレオン、リンカーン、ルーズベルト、チャーチル、ヘンリーフォードなどの歴史上の人物たちが多い。この上巻は準備編で、スピーチの心構えや、内容の準備の術について話される。

準備メモを入念にたくさん作り内容を構成することが推奨されるのだが、本番ではメモに頼るなという部分が特に参考になった。話すことをすべてメモに書いておくと安心はするが、経験的にもそれでうまくいくことがほとんどなかったから。

リンカーンが、ある裁判で、感動的な演説をしたときに使ったメモが紹介されている。数日後に同僚が偶然、発見して、これだけのメモであの名演説ができるのかと、大笑いしたらしい。

「契約書なし、法的奉仕はなし。法外な料金。お金は被告が保持し、原告には渡されない。革命的な戦争。バレーフォージの被害を証明すること。被告の夫。軍隊へと向かう兵士。被告を酷評すること」

こんな風に、伝えたいことの材料や方向性だけを軽くメモしたものが最高のスピーチメモと言えるのかもしれない。カンニングするにしても、長いメモでは読みにくい。スピーチの中で使う固有名詞や数字の暗記法なども、この本ではいくつか紹介されているが、要は、自然に出てくるくらいには、詳しく、熱意のあるテーマで話せということでもあるらしい。

また「極意」として「何を話すか」より「どう話すか」だという。音楽家が同じ曲を演奏しても、まるで評価が異なることがあるように、誰が言ったか、何を言ったか、以上にどのように言ったかが評価を決めるという考え方である。先ほど挙げた私の体験も、どのように言ったか、が重用だったのだなと思った。

デールカーネギー本なので、小手先のテクニックより、精神論に重きが置かれている。スピーチの心構え論としては、かなりよく書かれていると思った。歴史上の英雄のような大演説の機会は、私にはないのだけれど、結婚式や設立パーティなど、ちょっと畏まった場で、話さねばならない時には、参考になりそうなことが多い。続いて下巻を読んでみよう。

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2004年04月28日

人の心を動かす文章術

人の心を動かす文章術
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ああ、これは、大絶賛です。

20年間で6万通の小論文を添削した人気講師が書いた文章術の本。最近、文章術についての本を立て続けに書評しているが、実践的という点ではこれがベストである。

「小論文指導の第一人者が明かす 面白い文章を書くテクニック 作文 エッセイ メールがちょっとした工夫で見違えるように上手く書ける」

と帯にある。ノウハウ本は多くが過大キャッチコピーに負けてしまうものだが、この本に1限っては、看板に偽りはないと思った。

大学の先生や作家が書いた文章術本と決定的に違うのは、実際に何十本も添削のビフォア&アフターを提示して見せたこと。生徒が書いた下手な文章に、著者が赤ペンで、少し文章を挿入したり、順番を入れ替えるだけで、読みやすく、いきいきとした文章に生まれ変わる。指導のプロのワザが見事である。ホンモノだと思った。

私は小学生の頃、美大生の家庭教師に数ヶ月だけ、絵画を習ったことがある。私の描いた絵に、先生が輪郭に、薄い絵の具で光や影をスーっと書き添えるだけで、風景や建造物が立体的に浮かび上がるのに、感動したのを覚えている。この著者の添削もそれに似ている。ちょっとしたお化粧が作品に命を吹き込む。

著者は学校教育の作文授業がテクニックを小手先のワザだとして軽視していることを嘆いている。逆に、大切なのは、まず、いくつかのテクニックをみにつけることだと主張し、その「いくつか」を本当に教えてくれる本だ。

テクニックとしては、

・リアリティを演出するテクニック
・効果的な書き出し
・修飾語の使い方
・感情を移入させるテクニック
・リズム、メリハリを与える工夫
・主題の打ち出し方

などが紹介される。

向田邦子らの名文に技術を学ぶ章もあったりして、小論文の授業の枠をはるかに超えている。下手とはいえ、原文の持つ味を尊重する指導のやり方もこの先生は、立派だなと思った。原文を完全には壊さず、良いところを残しながら、本当に言いたいことや、持ち味を引き出す添削指導ができる著者は偉大な師だと思う。

後半の推敲論だけでも大変な勉強になった。アマチュアがしばしばやってしまう、文章のつまづきポイントを著者はよく知っている。「私が思うに...と思う」「理由は...だからである」「よく〜している人をよくみかける」「もっとも多いのは〜、〜が多い」など。私もこのブログで年中、そういった作文ミスをやってしまうのだが、陥りがちな罠を最初に知っていれば、推敲効率が上がるはずだ。

・白藍塾公式ウェブサイト
http://www.hakuranjuku.co.jp/著者の主宰する作文セミナー。今度、時間のあるときに受講してみたいと思っている。

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2004年04月24日

人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室

人生の物語を書きたいあなたへ −回想記・エッセイのための創作教室
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回想記やエッセイを書きたい人に向けた指南書とあるが、ビジネス文書以外のほとんどの文章に役立つと思う。著者のビル・ローバックは大学の創作学科教授で、自身も短編小説でO・ヘンリー賞、フラナリー・オコーナー賞を受賞した作家。指導法と実践の実績がある。

この本自体が著者の文章セミナーの回想と、エッセイ風である。生徒の文章が多数引用され、巻末にも著者のお手本も掲載されている。以前、書評した芥川賞作家の「書きあぐねている人のための小説入門」が概念的だったのと比べると、より実践的な内容となっている。

・書きあぐねている人のための小説入門
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001082.html

いきなり面白かったのが「一般的な言い訳」の話。指導者として長年生徒を観察してきた著者の経験からできたノウハウ。自分の文章をクラスで発表する際に、多くの書き手が「時間がなかった」「疲れていた」「慣れていない」などの言い訳から始めるのだという。そういう言い訳は毎回なのだから、カードに「一般的な言い訳」と書いて、それを最初に一瞬掲げるだけでよろしい、というアドバイス。こうした言い訳は私もここで年中やってしまう。ブログのトップに「一般的な言い訳」と表示しようかとさえ思うくらいだ。

そうした言い訳は読者に関係ないし、条件が良かったら名文を書けたのかと自問しても、意味のある答えはない。書いたからといって読者の評価が下がることはあっても上がることがないので、確かにこれは省いてしまった方がよいのだろう。

各章では、「地図を作る」「画面外の声を取り締まる」「曜日を特定する」「原稿を半分に削る」など、文章修行の上で、効果的な方法と、課題が与えられる。この本は答えは与えてくれないことが多い。自分なりの答えをみつけるための練習方法を教えてくれる。練習をこなしながら読み進めるのが、重要だと感じた。

文体、スタイルについてのアドバイスは思わず唸ってしまう。少し長く引用。


新しい作家が自分の「スタイル」の正当性を主張すると、教師がにやりとする(あるいはうんざりする)のは、ほんとうのスタイルは小手先の工夫ではないからです。ほんとうのスタイル---声---は、作家の特性の延長としておのずと出てくるものなのです。それが意識的に、目的をもって出されると、スタイルはいかにも見えすいた、見せかけのものになります。

紙面にその人となりがあらわれる声の不思議とは、何よりも長い年月書きつづけてきたことの結実であり、自分の媒体に---このばあいは声に---精通するようになった結果、それが表現の障害にならなくなったということなのです。

声はまたやむにやまれぬ気持ちから発するものなのです。情熱からくるものです。自分の主題とそれを読者につたえることに心をくだく、作家のこだわりがはっきりしていることからくるものなのです。

その通りだなと思った。

物書きの仕事をしていると、年に何度かうまく書けて、編集者から「今回の記事は橋本節、全開で良かったですよ」と褒めていただけることがある。私にはその橋本節がなんなのかは分からないのだけれど、そういうときは大抵、寝食を忘れるほど関心のあったテーマの時である。文章技術のことなど考えもせずに、あっという間に書いてしまった文章にこそ、節があるようだ。節=スタイルを、毎回、自然にだせるようなら、ライターとして成功できるのだろうなと思う。早くそうなりたい。

ライターの仕事も長くなってきたが、幾つか教えてもらったり、自分で発見したノウハウがあるので最後に二つ、紹介。

・一行にする

文章が長くてダラダラしてきたときには自分に問いかける。「で、結局、一言でいうとどういうこと?」。言いたい事を一行にまとめる。その一行を残して、他をすべて捨てる。これは間違いなく効果があるように思う。しばしば、捨てるのが惜しいという気持ちが、邪魔をするので、そんな時には、捨てる文章を別のファイルに保存して供養する。この本の「原稿を半分に削る」に近い。

・短く切る

テンポが悪いときには、センテンスを短く切ると躍動感が生まれると思う。言葉を切る。ばっさり斬る。スキップ感覚、言葉のリズム。話す言葉が踊りだす。音の流れとしてスムーズな文章というのは、大抵は読みやすい。書き出しやキメの部分で使うと、形になりやすいのではないか?。


皆さんの文章ノウハウ教えてください。

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2004年02月27日

書きあぐねている人のための小説入門

・書きあぐねている人のための小説入門
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私は万年、小説家志望。いつ書くのだオマエは?ええ、そのうちそのうち、といいながら、日々は過ぎ、青年老い易く学成り難しといいますな、いいませんか、意味分かりませんか、そうですか、南無。

書きあぐねてるとはそういう自問自答状況のことに違いない。この本を手に取った動機である。

95年に「この人の閾」で芥川賞を、その後の作品で数々の文学賞に輝く小説家、保坂和志による小説作法の書。さすがに気鋭の小説家が書いただけあって、文句なしの一級品だと感じた一冊。作法論にも関わらず、感動した部分も少なくない。

冒頭の小説の本質を語る部分からまず引き込まれる。少し長めに引用してみる。

「小説とは何か?」を考えるとき、私は小学校時代の二人の同級生のことを思い出す。一人は四年のときのMさんで、社会科の授業で先生が「”昔”というのは、いつのことでしょう」という問題を出し、生徒全員に小さな紙に答えを書かせていたときのことだ。

集まった先生がパラパラ見ながら、読んでいく。「10年前、佐藤、100年前、山本さん。10年前、保坂、50年前、鈴木。また50年前、大久保.....」こんな感じで続いていったのだが、Mさんの答えだけは違っていた。

「お母さんのお母さんのお母さんが生まれる前」

二人目にこんな例が続く。

二人目は小学校六年の同級生だったW君で、卒業文集にまつわる思い出だ。全員がそろいもそろって「桜が満開のなかをお母さんに手を引かれて歩いてきた六年前が、昨日のように思い出されます」「四月からは希望に胸をふくらませて、中学校に進みます」なんてことを書いているなかで、W君だけはこう書いた

「四年のとき ながしの すのこで ころんで つめを はがして いたかった」

小説の原型、小説の書き出しとして使えるのはこの二人の文章だけだと著者は自論の語りをはじめる。もうこの引用だけで、先が気になってくる。個の手触り、社会科されていないもの、身体性、小説の生まれる瞬間。著者の経験と感性に裏付けられた、小説に対する哲学が展開されていく。既にあるものは書くな。同時代の小説の表現論として、小説家志望の人間なら読んでおくべき貴重な情報だと感じた。

会社員時代にいかにしてデビュー作を書くに至ったか、一作目をどう書くべきか、など、成し遂げた人間でなければ語れないノウハウ、風景を書くことは特別な意味を持つと言うアドバイスや、ストーリーとは?テクニックとはという各論が続く。どれも、実際にこれから書くものへの、真摯な姿勢の書き方がいい。無論、著者の作品は独特なので、小説論としては偏りも感じられるが、素人の投稿作品にありがちなパターンの批判などはすこぶる具体的で参考になる。

丁寧にかけばかくほど伝わるとは限らず、抜けや雑な文章の方が、伝わることがあるという意見は、なるほどなと思う。ビジネス本執筆の仕事とは、ある意味、対極にあるわけだ。ビジネスや技術の記事ばかり書いている私は、どんどん、小説家から遠ざかっているのだなと感じた。

前半の本質論から後半の各論まで、思想系の小説論並みの内容の濃さを持っている。実践者が理論を語れるとは限らないものだが、この著者は例外のようだ。自分の仕事をメタな視点で冷静に観察し、持ち前の筆力でそれをまとめあげることに成功している。名著。

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2004年02月18日

話し方の技術が面白いほど身につく本

話し方の技術が面白いほど身につく本
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■話し方の技術

人前で話す仕事が多くなってきたので勉強のために読んだ本。セミナーやパネルディスカッションといったイベントだけでなく、名刺交換の直後、他人のプレゼンの準備時間や、休憩時間の前後の、2,3分の隙間時間で、自分を印象づけられる話ができると、いいなと思いながらページをめくる。

・サンドイッチ法
挨拶ではじめる→名乗る→内容を話す→再び名乗る→挨拶で終わるといった具合で、形式を作ることで、突然求められたスピーチにも対応できるというノウハウ。

・ライフル型アイコンタクト
たくさんのオーディエンスの前で話すときに目のやり場に困るという問題の解決法。オーディエンス1人につき3秒ずつアイコンタクト。話の区切りで目線を変える。電車内でのトレーニング法など。

・カラスの声トレーニング
ある種の発声法。口を閉じ、鼻で息を吸う。

など、大量のノウハウがイラスト入りで解説されていく。フムフムいいながら1時間で読み終わる。自分の話し方のスキルはまだまだだなと思った。

自己分析して、ひとつだけ自信を持ってできているのは、腹式呼吸法。子どもの頃、喘息で治療のために医師から勧められ、身についたこの習慣、病気が治った今でも役立っている。おかげで運動音痴でスモーカーなのに肺活量だけは5000を超えている。長く通る発生だけはできている気がする。今となっては喘息万歳。

・肺活量とは肺の換気能力を示す数値
http://health.www.infoseek.co.jp/library/0800/w0801019.html

肺活量の平均値の求め方:
男性={27.63−(0.112×年齢)}×身長
女性={21.78−(0.101×年齢)}×身長

私の場合、平均値は4285だから平均を超えることができた。

「健康な成人では男性は3000〜4000ml、女性は2000〜3000mlくらいになります」

最近、仕事術でベストセラー連発の斉藤孝氏も呼吸法の本を出版している。腹式呼吸は健康にも良いらしいのでおすすめ。

■音声によるお手本と魅力的な声質

この本にはCDがついていて著者の話し方セミナーが丸ごと収録されている。本だけでは分からないニュアンスがここで補完される。話し方の本にCDをつけるのは大正解だなと思った。聞いてみると、話の内容はともかく、確かに聞き取りやすい。間の取り方が特に勉強になった。

話し方に理想形はなくて「らしさ」って重要だなと思う。経営者らしさ、研究者らしさ、営業マンらしさ、やり手コンサルタントらしさ、個人ブランドの人なら○○さんらしさ。聞き手が求めている像を守りつつも意外性を打ち出していく。個人的に惹きつけられるのは、言葉を慎重に選びながら落ち着いて話す人。それでいながら、話の内容が大胆で本質を突いていると、すごいなこの人と思う。

声質というのは生来のもので練習で変えるわけにはいかないのかもしれないが、最近、テレビで興味深い番組を観た。世界的にも数えるほどしか存在しない奇跡の声を持つ岡本知高のライブ&トーク。

・ソプラニスタ
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・岡本知高オフィシャルサイト
http://www.p-and-d.co.jp/okamoto/
男性でありながら、女性ソプラノの音域を持つ世界でも稀有な存在の男性ソプラノ“ソプラニスタ”

まずはこんな声が出せるのかと驚愕。さらに声質を科学者が分析したところ、波形も特殊で、美空ひばり、ビートルズなどと同じ1/fゆらぎが計測されるとのこと。声を聞くことでα波による癒し効果があるそうだ。声の世界は奥が深い。

■自分の話す姿を撮影して眺めてみる

前回の超本格会議はビデオで録画していた。DVDへコピーをしながら、自分のしゃべり方を見直してみた。悪い癖をいくつも発見。自分の話す姿をビデオでみるのははじめてだったけれど、非常に勉強になった。無意識に出ている言葉や動作、意識して行っていることの効果、が客観的に分析できる。

私は話の中に「要するに」「つまり」「結局」がとにかく多い。10分のうちに10回以上使っている部分が何箇所もあった。ほとんどは、なくても意味が通じる。これは今後、意識して直した方がよさそうと思った。歩き回ったり、身体を傾けると見栄えがよくないことも知る。
この本のチェックリストを見ながら、今まで聴いた講演を思い出す。話す内容のプロは多いけれど、話し方のプロって案外少ないのではないだろうか。面白い話をもっと面白く伝えるための技術として、話し方の技術、重要に思った。

次のイベントに向けて練習、練習と。

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2004年02月11日

大人のための文章法

大人のための文章法
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今、一番欲しいスキルは、考えていることをもっと短い時間で文章化する能力である。願わくば、誰にでも分かりやすく書く能力である。

超本格会議で私は、自分の書く速度を計測した実験の成果をお話した。商業媒体への完成原稿の作成能力は、私の場合は1時間に1200字から1400字程度。原稿用紙で1時間に3,4枚といったレベル。1日ではその10倍強くらいだろうか。もちろん中身にもよるし、テーマと勢いがあればその数倍で書ける時もある。平均すればの話。

会議に参加していたプロのライターの方々から休み時間に「私は1日4万字(原稿用紙100枚)くらい書ける」と教えてもらった。なるほど、文章の作成速度にはだいぶ個人差があるらしい。

■なんでこの人は年間50冊も出版できるのか?

著者は精神科医で、受験と学習術のカリスマライターとして出版界に登場し、年間50冊のペースで本を出す人である。ハズレも少なくないらしいのだが、数十万部のベストセラーを何冊も書いており、熱烈なファンも多い。「書く」を生業にするという点では、著者は大成功者だ。

アマゾンのユーザレビューに失望の書き込みが散見されるのであるが、この本にはタイトルから期待する、目のの覚めるような文章術や技法はこれといって紹介されていない。プロットをしっかり考えてから、とにかくいっぱい書け、書かねばならない状況になれば書ける、みたいなノリである。

だが、この本は役に立たない、面白くないか?というと、そうでもない。書店で立ち読みしていた段階で既に、ノウハウに目新しさがないことは気がついていた。それでも買って読んだ私にとって、参考になったポイントを書いてみる。

まず、作者の文体である。書く文章そのものに量産できる秘密があるのではないか、と思っていた。著者は1日原稿用紙1000枚を著述するという。驚異的だ。私がこの本の文体や流れを見て、その秘密と理解したのは次の要素である。

・自明に思えることもすべて説明する
 (「もともと私の話は説明が長いようだ」)
・説明に論拠を多く明示する(特に体験、事例の多さが目立つ)
・論理展開に跳躍がない
・主語、述語や言葉の省略が少ない
・幾つかのパターン化されたロジックの多用

自分の文章は文豪のような名文ではないと本人も述べている。

著者の文章は、少々、冗長に思えるのだけれど、ベストセラー作家であることを考えれば、冗長と感じる私の感性の方が市場ニーズ的には間違っていて、著者の方が恐らく正しいのだ。名文ではないが、商業レベルでマスマーケット向けに書く文体としては、このあたりが適切だという按配が著者の文章から分かる。

■著者の自己分析と戦略開示の終盤が面白い

一般的な心構え論の多い中盤まではともかく、終章の「終章 書ける人間が生き残る時代」は個人的には強烈に面白かった。なにしろ見出しに「量産することと市場の評価」「和田秀樹は生き残れるか?」という題が並ぶ。クライマックスなので中身は引用したりしないが、つまり、この著者は自分のやり方のメリット、デメリット、批判のすべてを、完全に認識している人だということが最後に分かる。著者の悩みと、なぜ今の方針を取るのかの解説は人間的で面白い。著者は精神科医ということもあり自己分析にも長けている。

味のある文体で売る作家になりたいのであれば、この本は役に立たないと思う。伝わる文章、売れる文章で、商業媒体に物を書く人や、指示を明文化して周囲に伝える必要のあるマネージャーには、入門書として役に立つ本だと思う。

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2004年01月25日

もっと笑うためのユーモア学入門

・もっと笑うためのユーモア学入門
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■世界一面白いジョークの可能性

テレビ番組「あいのり」を見ていたら、スリランカを一行は訪問中で、悪魔祓いの祭りのシーンがでてきた。悪魔にツッコミを入れて笑わせることで、厄払いを行うらしい。昔、本でこの風習は読んだことがあった。神様や悪魔にもボケとツッコミ関係はあるのだ。

笑いが神事に登場する例は古今東西に多々ある。日本神話にも、アマテラスが天岩戸に隠れたとき、アメノウズメら八百万の神々が宴を開いた。岩戸の前で、ストリップショーや、どんちゃん騒ぎを行い、笑いでアマテラスを外へ誘い出した。笑いは秩序を取り戻す役割を果たしている。

これほど世界に共通で重要な社会的役割も果たしている笑いであるが、国や文化、時代が違うと同じユーモアを笑うことは難しい。映画でも小説でも、海外の悲劇作品には泣けるが、喜劇は笑えないことが多い。大衆演劇に始まった歌舞伎や、格調高く感じられるシェークスピアの古典喜劇も、恐らく当時の聴衆は心から笑ったに違いないが、今はそれほどでもない。

関東と関西のお笑い文化もやはり違う。年齢によっても違う。こどもをあやす口調で「いないいないバア」とやっても、笑う大人はいない。同じ社会人でも、職場の笑いというのもある。「部長の口癖のモノマネ」など、部署が違えばまるで笑えない。

それほどまでに、笑いは高度化、細分化されている。世界中が涙を流す悲劇はできても、世界中を大笑いさせる喜劇を作ることの方が難しそうだ。英国の心理学者が、オンライン投票で世界一面白いジョークを決定したというニュースがある。

・LaughLab was a huge scientific experiment to discover the world's funniest joke.
http://www.laughlab.co.uk/winner.html

・「世界で最もおもしろいジョーク」のオンライン調査結果発表
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20021004207.html

ここに邦訳がある。

「米ニュージャージー州のハンター2人が狩りに出た。1人が木から落ちてしまった。仰天した連れのハンターが携帯電話で『息がない』と緊急通報した。救急隊のオペレーターが『落ち着いて。大丈夫。まず死んでるのか確かめなさい』と声をかける。一瞬の静寂後、オペレーターの耳に1発の銃声。続いて、『死んでる。これからどうしたらいいの?』というハンターの声が響いた」

面白いかもしれないが、「世界一」とは誰も納得しないのではあるまいか。

■ユーモアの効用と分類

この本では、プラトン、アリストテレス、ニーチェ、ベルグソン、フロイトといった哲学者、心理学者のユーモア論が次々に紹介される。ちなみにユーモアは18世紀に始まる言葉で、語源は「体液」だそうだ。当時、医学の世界に体液学説という概念が重要視されており、血液、粘液、胆汁、黒胆汁の4つの体液バランスによって人間の気質が変化すると考えられていた。だから、体液(ユーモア)に変化を与えて人を笑わすという意味から、「ユーモア」という言葉が発生したらしい。

ユーモア、笑いにはいろいろな効用があると著者は分類している。

1 笑いの生理的効用
  ユーモア療法のはじまり・笑いは百薬の長
2 笑いの心理的効用
  気分がよくなる・緊張の緩和・カタルシス・抑圧された欲望の解放・自己防衛機能
3 笑いの社会的効用
  笑いとコミュニケーション・集団凝集性と排除作用・社会化と社会統制・攻撃性と笑い・風刺と社会批判

人はくすぐられて笑うし、エレベータで見知らぬ人と目が合っても笑う。悲しくても笑う。赤ちゃんの新生児微笑という本能的な笑いまである。この本では、主に愉快な笑いを分析しており、「感覚」、「感情」、「知性」の3つの次元と、単純に愉快で笑う「満足の笑い」と撹乱や、パニック、ズレによる苦笑系の「カオス的笑い」の2系統があると分けている。

次元|系統 満足の笑い カオス的笑い
知性 知的満足の笑い ユーモラスな笑い
感情 感情的満足の笑い 苦笑
感覚 感覚的満足の笑い イリンクス笑い

笑いは、心身の病気を治し、社会的対立を緩和する。著者はユーモアを理解する「カオス型」人間が増えることが、世界の平和や発展に寄与するのだと強く信じてユーモア研究とその成果の啓蒙に取り組んでいるらしい。真面目に笑いを研究する本。

・国際ユーモア学会
http://www.edu.kutc.kansai-u.ac.jp/ISHS2000/
2000年の時点で世界30カ国、1000人以上の研究者が所属しているれっきとした学会。この本の著者も所属する。

■オンラインで伝播する笑い

数年前に流行した、いわゆるチェーンメールで、かなり可笑しかったものを受け取った記憶があった。どこかに全文がないかなと、Webを検索していたら見つかった。長いけれど引用させてもらうと(面白くても他人にメールしてはいけません)。

・連鎖メール情報流通拡散防止プロジェクト実験推進協議会(C3M)
http://www.kurata.to/cgi-bin/chain_amigodb/database.cgi?cmd=s&sc=allindex
より。


この文章は、東芝、NEC、富士通、松下、日立造船、NTT、IDC等を回って来たメールだそうです。だれしも、このメールを仕事中に読んで、大笑いをして、周りの人に変に思われたとのことです。
 このメールを受け取った女性は、このメールを知人に出して、回り回って、また、自分の所に戻ってくると、めでたくお嫁にいけるという事で、幸福のメールと呼ばれているそうです。(ほんまかいな。)

 では、始まり、始まり...。

先日、ぼくが友達とファミコンをしていると 通りかかった母が、「おまえたちはいいねぇ、毎日がエブリデイで」と言った。母はいったい何がいいたかったのだろぅ・・・・

家族揃って夕食をとっているとき、何かの拍子に怒った父が、「誰のおかげでメシが食えると思ってるんだ」と言おうとして、「誰のためにメシ食ってんだ!」と怒鳴った。私と姉は「自分のためだよ」と答えた。

夫婦ゲンカのとき、父が母に「バカモノ!」と言うのを、間違って、「バケモノ!」と怒鳴ってしまった。ケンカはさらにひどくなった。

うちの母は、頭が痛くなると氷でおでこを冷やします。先日も夜中にかなり痛みがひどくなり、暗闇の中をフラフラしながら台所へ。冷凍庫から、あらかじめビニール袋に入れてある氷を取り出して、おでこにのせて眠りました・・・。翌朝、目が覚めてみると、母の枕元には解凍されたイカが転がっていました。

甘味屋さんで、母は田舎汁粉を、私は御膳汁粉を頼みました。店員さんが、「田舎はどちらですか?」と聞いたら、母はとっさに、「はい、新潟です」と答えてしまいました。

先日、父は、男にフラれて落ち込んでいた姉をなぐさめようとして、「おまえ、人間は顔じゃないぞ」と言うところを、「おまえの顔は人間じゃないぞ」と言ってしまった。

妹が夕食にスパゲティを作ってくれることになりました。妹は、「今日はカルボナーラを作るね」と母に言っていました。夕方、私が外から帰ると母が、「もうすぐボラギノールができるってよ」と言いました。ソレって痔の薬じゃ‥‥‥?

エアロビクスを習いに外出していた私に、友達から電話がありました。横文字に弱い母は何を思ったのか、「娘はアクロバットに行っています」と答えたそうだ。

弟は、誰に似たのかとても勉強ができる。それで、高校1年生のとき、アメリカに留学することになった。そのとき、母は親戚や近所の人に、「うちの息子をアメリカにホームレスにやるんですよ」と言って、自慢して歩いていた。ホームステイとホームレスを間違えていたのである。

先日、プロ野球ニュースを見ていたときのこと。「ヤクルトのルーキー、伊東」と聞いて、母は、「日本人ぽい人ネ」と言った。

私の母は62歳。記憶力が悪いからと、キャッシュカードの裏に黒のマジックで大きく、その暗証番号を書いている。

先日、父はメガネを作りに行った際、「無色ですか?」と店員にレンズの色を聞かれると、何を勘違いしたのか、「いえ、銀行員です」と、自分の職業を答えていた。

うちの父は、沖縄に向かう飛行機の中でエラソ〜に、「沖縄は島全体が『さんしょううお』なんだぞ!」と言った。それを言うなら、サンゴ礁だろ!!


これは結構、面白いのではないか?特に真面目にパソコンで仕事をしているときに開封すると、ふきだしてしまう人が多いのではないだろうか。この面白さのせいでチェーンメールも爆発してしまったようだ。

システムを麻痺させるチェーンメールはいけないが、笑いの効用は著者も述べているように人や世界を救うものである。ユーモアの伝播性を伴ったメッセージなら、たまにはネットに増殖しても許せそうな気もする。

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2003年12月02日

鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ

・鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
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こんな私でも最近、長いこと仕事をしているおかげで、企業の重要なポジションの方々に直接、提案をさせてもらえる機会が増えた。要職につかれている人の共通点として、とても忙しいという事実がある。頑張って作りこんだ長い企画書は、この人たちには、読んでもらえない。全容を語るのに何百ページ必要な内容であろうと、簡潔な企画書にしないと眼にとめてもらえないような気がする。理想は1枚。

1枚企画書というと、その世界では神様と呼ばれる高橋憲行氏のノウハウ本が有名だけれど、この人の場合「文不如表,表不如図」(文は表に及ばない。表は図に及ばない)がポリシーで図解中心である。図解のメリットもあるのだけれど、よほどの名人でもない限り、一目瞭然とはいかないものである。作成にも時間と手間もかかる。

・企画書提案書大事典
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447853022X/daiya0b-22/

そんな折、まったく違うコンセプトで1枚企画書を作成するための、素晴らしい本とめぐりあった。図解も一切不要だというのだ。

■一枚の企画書

著者は、国際的に幅広く活躍するエージェントのようだ。ソニーにHDTV向け長編映画を提案したり、電力会社のマーケティング戦略、日本テレビのタイアップイベントなど大規模なプロジェクトを次々に仕掛けてきた。10分程度しか与えられていない時間の中で、経営トップやVIPにイエスと言わせるノウハウを、余すところなくこの本では、公開している。

著者の推奨する1ページ企画書(One-Page-Proposal)は8つのパートから構成される。

1 タイトル
2 サブタイトル
3 目的
4 サブ目的
5 理由
6 予算
7 現状
8 要望

それぞれを数行で、全部で1枚に仕立てる。

この本にはその作成プロセスの、ファイル整理術から具体的な文章術、活字・用紙の選び方、アポの取り方、渡し方まで、懇切丁寧にノウハウが解説されている。魅力的なのは、実際に著者が使った企画書の実物が多数、使ったそのままで収録されていることである。どの企画書も説得力がある。

もし古代エジプトでファラオにピラミッド建設を提案するとしたら?という想定の「クフ王の大ピラミッド」企画書や、出版社に向けたこの本自体の出版必要性を説いた「1ページ企画書本」企画書なども含まれていて、遊び心も楽しい。遊びも企画の大切な説得要素だなと感じる。

著者はすべての企画書が1枚でなければならない、とは一度も言っていない。長大な提案資料が必要なケースも認めている。ただし、どんなケースでも、重要人物に対しては、1枚の企画書の方が強いと考えている。

ちょっとした衝撃を受けた一冊。

評価:★★★☆☆

■実践編:成功した私の企画書もリアルタイム公開

さて、私もこの本を読んで早速実践してみた。年末に百式の田口さんと二人で、「忘年会議」イベントを計画したのだが、広い会場を借りる予算がないこと、告知力が足りないことが問題になった。

二人で相談したところ、それじゃあ、Webクリエイターの専門学校のデジタルハリウッドさんに協力をお願いしてみては?ということになった。この会社とは今年、随分お世話になった。早速、この本の通りに企画書を作成し、ディレクターの渡辺さん、社長の藤本さんにメールしてみた。

実際に送った企画書はこれ。本の指示に忠実に作ってみました。

・「今年のベストWebランキングを報告しあう忘年会議」
情報活用ノウハウの交換で来年の作業効率を3倍に高める
デジタルハリウッドさまにご提案の内容
(WORDファイル)

#企画書の公開にあたり、藤本社長よりご許可を頂きました。ありがとうございました。

結果はどうなったかですって?

大成功でしたとも!

社長の藤本さんからも10分後にはご回答を頂き、無事、ご協力の快諾がいただけました。さすが、デキル人は判断が早い。これで会場の心配もなくなりました。

というわけで、こうして成立した、年末の私たちのとっておきイベント企画をご紹介します。楽しく有意義な会合になるように頑張りますので、ぜひみなさま、お気軽にご参加ください。

・「今年のベストWebランキングを報告しあう忘年会議」
http://bestof2003.100shiki.com/

参考URL:

・正確な文章の書き方 IIJ 技術研究所、山本和彦氏
http://www.mew.org/~kazu/doc/japanese.html
IIJというと私の感覚ではサービスもサポートも上質なISP企業。こういうことを研究している人が裏側にいるわけですね。

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2003年11月18日

最強の戦略は「図」で立てる

・最強の戦略は「図」で立てる!―アイデアを一気に実現に近づける、図解発想の技術 PHPビジネス選書
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90年代にパワーポイントがビジネスプレゼンのシーンを席巻して以来、企画書や報告書は紙芝居で行われることが多くなった。概念図、関係図やフローチャートを順番に見ていくのは、分かりやすいときもあるが、「動き」や「流れ」、「重要度」をきちんと表現するにはノウハウが必要だ。箇条書きの方がまだ理解できそうな、内容がさっぱり分からないビジュアル資料も多い。

よく考えると私たちは学校で図解の授業ってなかったと思う。絵を描くことや、図形の授業はあったが、世の中の仕組みを図にするやり方は、会社に入ってパワーポイントで初めて試すケースが多いのではないだろうか。

この本は汎用的な図解の本ではなく、一般的なビジネスの流れを図解することに特化している点が参考になる。著者は方法論として、「ダイヤグラム表現法」を提唱している。

1 図形と矢印の組み合わせから、あらかじめ決まったフォーマットを用いる
2 企画の流れをあらかじめ決めておくこと

のふたつが作成方針で、図解の方法論として並列、帰納、展開、マトリクスという4つの技法を紹介している。フォーマットとして用意されているのは次のラインナップ。テンプレートを埋めて行くだけでそれなりに見えるのが楽しくもある。

分析:
   市場分析、競争分析、顧客分析、選択基準分析
戦略:
   競争戦略、新価値創造戦略、価値カテゴリナンバー1戦略、ブランド戦略、創造的模倣戦略
価値設計:
   手段目的連鎖モデル法、未来的差別化法、気づき法、レトリック体系法
ターゲッティング:
   ターゲッティング、ボリューム分析、プロファイル分析、購買行動分析
タイミング戦略
   中期、通年、キャンペーン
情報戦略:
   媒体戦略、PR戦略、SP戦略、表現戦略

評価:★★☆☆☆

この本には図解実例が巻末にまとめられているのだが、これではパワーポイントで入力して作り直さないといけない。非常に手間だなあと思っていたら同じ著者が、上記の本とほぼ同じ内容のテンプレートを次の本でCDROMに収録している。ふたつ合わせると即戦力になる。この著者のテンプレートは他の本と違って色が白黒などシンプルで改造しやすいのが良い。

・明日の会議で使える企画書―パソコンでの企画書作りが驚くほど楽になる!! 宝島MOOK
http://tkj.jp/pub/books/business/4796633650.html
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・著者の村山氏のサイト(企画のページに日々の実例、講義の模範解答例がある)
http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/

というわけで上の2冊の組み合わせはこの半年くらいで実務にもだいぶ使わせてもらったのでそろそろネタばらしでした。

パワーポイントを鮮やかに使いこなす友人がいるので最後に紹介。何度か一緒に仕事をさせてもらったけれど、佐々木さんの絶好調のときの企画資料はほとんど神業である。パワーポイントで作ったように見えない。やはり極めた人はツールを感じさせないのだなあと感心してしまう。その域にまでたどりつきたいけど、そうそう、できないことなので、やはりテンプレートは便利なのである。

・達人、佐々木博のプレゼンマン(BB-WAVE.com)
http://bb-wave.biglobe.ne.jp/prezenman/
・第一回(こちらがパワーポイントの話)
http://bb-wave.biglobe.ne.jp/prezenman1/index.html

第1回のプレゼンマンが主にパワーポイントのノウハウ紹介。2回目以降は他のツールや考え方の回。佐々木さんはNHK趣味悠々ホームページは難しくないの司会者として日本で一番有名なホームページの先生として活躍されている。

・佐々木氏のBlogサイトもおしゃれ。
http://www.soan.jp/

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2003年11月12日

「できる人」の話し方、その見逃せない法則

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
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私は話し方をもっと上手になりたいと、ずっと思っている。TPOに応じて、説得やプレゼンテーションが効果的にできる人というのは、仕事でもオフでも大切にされるから。これは最近読んで気になった一冊。できる人の上位5%はどのような話し方をしているか、を教えてくれるベストセラー。

この本の概略。できる人はOBT(アウトカムベース・シンキング=結果を想定した思考)を活用している。OBTには以下の9つの法則があるのだ、と、述べ、

(目次より)
1 お返し プレゼントはプレッシャーになる
2 比較 金銭感覚はこれでマヒする
3 友人 説得する相手を友人だと思え
4 期待 「思い込み」によって人が動く
5 関連づけ CMで見た物をつい買ってしまう理由
6 一貫性 口に出した信念は曲げたくない
7 希少価値 「限定品」を買いたくなる
8 順応 85%の人は、他人の目をかなり気にしている
9 権力 「権威」はそれだけで説得力だ

この9つの法則の上で、実践的には、どのような技術やツールを使って相手を説得するかのシーン別戦術を教えてくれる本。心理学に博士号を持つ著者らしく、会話における心理プロセスを分析したテクニックを次々に語る。

評価:★★☆☆☆

交渉術や話し方の本はたくさん読んだが、この本でも、後半ででてくる「ラポート」は重要な概念だと思う。ラポートとは私とあなたとの「調和的な関係」のことで、ラポートを確立することで説得する/される関係のチャネルが開くことになる。カウンセラーや教師もよく使う概念だ。仏語で「ラポール」とも言う。

自分の過去の交渉や議論のシーンを振り返り、「自分の当初の意に反して、説得されてしまった」時の過程を分析すると、議論の戦術を誤ったとか、自論の根拠となるデータが弱かったということが原因であることは少ない。むしろ、ある段階で、この人になら、今回は、議論に負けてもいいや、と、ちらっと思った途端、意識的にか無意識的にか、負けてしまうことが多い。負けたくないなら、交渉の席を立つという選択肢もあるし、延々と続けるという手もある。多くの負けはある意味、納得したもので、敗因は、相手に戦略的に、ラポートを作られてしまったことにある、と思う。

ラポート関連でさらに科学的な説得力のある、面白い心理学の論文がある。

・対人コミュニケーションの社会性(対人社会心理学研究、2001年、第1号、1-16)
http://syasin5.hus.osaka-u.ac.jp/~daibo/Public/daibo2001.pdf

コミュニケーションを愛情や金銭といった資源の経済交換とみなして分析する論文だが、、親密性が高いほど均衡を保とうとする行動が見られる親密性均衡モデルについても触れられている。壊れた恋愛関係にあった18歳から35歳の男女の間で交換された資源を分析して、何が相手に対する公正さのイメージに影響を与えたかなどの話題もある。下記の表の、個別性、具体性が高い資源が、公正さのイメージ確立に、効果的であったことなどを報告している。
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■出典:上記URLの論文より図を引用

つまり、恋愛関係におけるラポート構築では、お金や情報をいくら与えても、だめで、愛情やサービスが重要だということと言えるのではなかろうか。まあ、感覚的には当たり前の話だが、そういったことが定量的に計測され、証明されていることは面白い。何を与えれば何が戻ってくるかが分かるわけだから、ビジネスの世界での定量化の研究がなされると、最適化接待だとか、燃費の良い営業マンを育成できるかもしれない。ラポートの構築がこうして科学になり、技術になると、対人説得力を持ったソフトウェアエージェントも構築できそうだ。

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2003年11月10日

「分かりやすい表現」の技術

・「分かりやすい表現」の技術
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書店でパラパラめくった段階で名著の予感があったのだが、90分で読み終わって、その予感を遥かに超えて、感動してしまった本。目からウロコという素直な感想。内容はタイトルそのまま。「分かりやすい表現」の技術について、実際の街で目にする標識の写真や、ビジネス文書の実例を図示しながら、こう改善すれば良いと案を提示する。著者が提唱する、「意図を正しく伝えるための16のルール」の使用前/使用後の実例がまさに一目瞭然の違いなのだ。これ以上の説得力はない。

表現力だとか、文章術の本はたくさん読んできた。大家の著作もある。どれもそれなりの説得力を持った理論や心構えを教えてくれた。だが、理論や心構えが分かるだけでは実践できないし、匠の技は本を読むだけでは習得できない。それに対してこの本の事例やノウハウは、ビジネスシーンのそこらへんに落ちているような話ばかりだ。そのままでも使える。

この本の構成や文章自体が、分かりやすさの見本となっているのも、著者が「本物」であることを示しているように思う。大手ソフトウェアメーカーでエンジニアをしているとプロフィールにある。専門の研究者ではなく、ビジネスマンであり、実践者であることが、この名著を書かせたのだと思う。15万部のベストセラーだそうだ。

事例を引用するとあまりに分かりやすいため、そのままの転載になってしまうので、この本の書評ではやめた。冒頭で分かりやすさの定義をしている部分だけ引用させてもらうと、

分かるとは何か
1 「分かりやすい」とは「分かっている」状態に移行しやすいという意味である
2 「分かっている」状態とは「情報が脳内整理棚の一区画にしまわれている」状態である

短期記憶や長期記憶、チャンク、ワーキングメモリ、忘却曲線、アフォーダンス....などなど。認知論や学習の専門用語を著者はたぶん、すべて理解した上で、やさしい言葉で上記の定義をして内容を語っている深さが伺える。たくさんのことを知っているより、たくさんのことを伝えられることが知識の真価なのだなと感じた。

私も技術の複雑な事柄を、分かりやすく表現できるようになりたいと思うし、このBlogはその経験の場にしたいと思っている。

Web制作や情報システムのナビゲーションの設計者に特におすすめ。企業のアカウンタビリティという点では経営者にも参考になる。巻末の分かりやすい表現のためのチェックポイント表はツールとして仕事の現場で活用できそうだ。

評価:★★★☆☆

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2003年09月26日

ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
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会話とは、そこに参加した人たちが、それぞれに自分の話題を持ち出す「縄張り争い」に他ならない。とりわけ、ビジネスにおいてはそうである。会話を独占できる人間が勝者になれるのであり、相手の話をじっと聞くだけで縄張りを奪おうとしなかったら、敗者になってしまう。時間をどれだけ奪えるかは、ビジネスでは死活問題なのである。
」(39P-40Pより引用)

原題は「Power Talk: Using Language to Build Authority and Influence

これは巧みな自己主張と巧みな聞きかたについての本である。が、どちらかというと、上記の引用と原題が象徴しているように、攻めの姿勢のパワートークの戦術論が中心になっている。

例えば相手を不愉快にしない、うまい割り込み技であるとか、過去の実績をさりげなく匂わせる技術、相手の機先を制する意地悪な質問などが、具体例とともに列挙されていく。ただ、完璧なパワートークは人の話を聞かない奴、マナーを知らない奴と思われたり、部下の不満もたまるから、聞いているフリも上手になりましょうね、という結論に落ち着く。

いや、なかなか勉強になるのであるが、パワートークが日本で、そのまま通用するとは思えない。日本流の交渉術の本ってのも次に読んでみたいもの。誰か良い書籍をご存知でしたら教えてください。

ところで、邦題には「ハーバード流」というキーワードがついている。いかにもブランド信仰の日本で売れそうな言葉なのだが、これをAmazonで検索すると18冊の書籍が見つかった。リストを以下に示すと、

結果として、18冊中13冊が交渉術の本。ハーバード=交渉というのは「ハーバード流交渉術」のロバート・フィッシャーがイメージを決定付けているようだ。今後読んでみよう。


・決定版 ハーバード流"NO"と言わせない交渉術
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4837955835/daiya0b-22/

・ハーバード流交渉術
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484981017/daiya0b-22/

・ハーバード流 キャリア・チェンジ術 Harvard business school press
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4798103861/daiya0b-22/

・ハーバード流交渉術 知的生きかた文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4837903606/daiya0b-22/

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4837956386/daiya0b-22/

・ハーバード流 交渉は世界を変える
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4870431300/daiya0b-22/

・続 ハーバード流交渉術―よりよい人間関係を築くために
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484891158/daiya0b-22/

・日本人のためのハーバード流交渉術
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4820713663/daiya0b-22/

・決定版 ハーバード流"NO"と言わせない交渉術
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4837954847/daiya0b-22/

・ハーバード流経営士官教本―ビジネスマン・サクセスハンドブック
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478700192/daiya0b-22/

・ハーバード流交渉術 カセット版 TBSブリタニカSOUNDビジネス
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484896451/daiya0b-22/

・「ハーバード流交渉術」を超えて―日本人も交渉上手になれる
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4795233632/daiya0b-22/

・ハーバード流ビジネス金言葉
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484861046/daiya0b-22/

・ハーバード流交渉術
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484001357/daiya0b-22/

・ハーバード流「21世紀経営」4つのコントロール・レバー
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4382054621/daiya0b-22/

・ハーバード流歴史活用法―政策決定の成功と失敗
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4882940841/daiya0b-22/

・ハーバード流思考法で鍛えるグローバル・ネゴシエーション
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4893467824/daiya0b-22/


評価:★☆☆☆☆

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2003年09月16日

パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術

パワープレイ―気づかれずに相手を操る悪魔の心理術
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古今東西肌を見せるのは立場の弱いヤツである。古代から王族は厚着をしている。奴隷は薄着だ、人間は肌を見せると弱気になるからビジネスマンは半袖シャツを着てはいけない。

だとか、

同じ姿勢をする相手には協力的になるものだから、交渉相手が腕を組んだらこちらも腕を組め

だとか、

強い立場になるには場をより大きく占有しろ。例えば交渉のテーブルでは、机の上に自分の書類を広げて自分の空間にしてしまえ

などという、小手先交渉術がひたすら語られていきます。これはこれで楽しい読み物。

こういうノウハウというのは、それだけで通用するわけがないと思うのですが、強ち嘘でもないでしょう。交渉過程に与える非言語コミュニケーションの影響というのはかなり大きいものだということはさまざまな心理実験から分かっていますしね。

この本を読んでから、会議でお客さんが腕を組んだり、書類を広げたりすると、あれ?この人もこの本読んだかな?と疑心暗鬼に。

評価:★★★☆☆

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