2007年10月30日

美について

・美について
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美についての哲学的考察。

映画のエンドロールで「この物語は実話にもとづいています」という字幕を読む、とか、作者が死を覚悟して描いた遺作ですという説明を聞かされる、とか、作品の背景を知ると感動が増すということがある。美しさという感動は純粋な知覚体験というわけではなさそうだ。

まず美は理性による発見=解釈というプロセスを必要とするものだと著者は述べる。

「こう考えてみると、美はたんに直接的な知覚や感覚の実の問題ではなく、なんらか成長するにつれて発達する知性と関係があるように思われてくる。たしかに、複雑な構成の長篇小説や単色の墨絵の美など、知性の不足している頃には無縁の存在ではなかったか。そこで、背景に秘めている教養の高まるにつれて、われわれが美と感ずる対象、つまり、われわれに美しいという知覚を呼びさます事物が変化してくるという事実を認めねばならない。」

解釈とは作品との対話であり、背景知識による分析をベースとしている。だから「換言すれば、作品は体験の浅い人にはその深さを示さないということになる。体験の深浅は決して事実体験として自己が経験したか否かという直接性の問題ではなく、意識がとらえるものをわれわれがどれほど深く理解するか否かということにかかっている。」ということになる。

感受性という言葉はこの本に一度も使われなかった気がするが、美を深く味わうには、感覚と知性の総合的な感受性の高さが必要であるということになる。そして教養だけでは不足で「愛」も要るのだという考察がある。

「ということは、われわれは与えられた作品との美的経験において、想像力を理性的に働かせて、その作品が、元来置かれていた場所では、いかなる背景を持ち、いかなる条件に基づいて輝き出ていたのか、ということを補い考えてみなければならない。この配慮は、言わば、作品に対する愛情なのである。作品はしばしばこの愛に応えて自己を開示する」
そして美の体験とは「日常的意識の切断」という意識の位相だという。日常を忘れてうっとりしてしまう状態が美の体験なのである。「真が存在の意味であり、善が存在の機能であるとすれば、美はかくて、存在の恵みないし愛なのではなかろうか。」

美について各章で哲学的、歴史的、社会的、芸術的に多角的な分析が行われる。美の正体を考える入門書として名著だとおもう。

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2007年10月29日

戸閉めヒエログリフ

・戸閉めヒエログリフ
http://www.vector.co.jp/soft/win95/writing/se222586.html
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「ヒエログリフ(聖刻文字、神聖文字)は、古代エジプトで使われた文字の1種。エジプトの遺跡に多く記されている。」Wikipediaより
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%82%A8%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%95

ヒエログリフは基本的に象形文字だが、表音文字として使う用法もあるので、日本語の発音をヒエログリフで書くこともできる。上のサンプルはHASIMOTO DAIYA JOHO KOUGAKU KAITEMASU(はしもとだいや 情報考学 かいてます)の意味。古代エジプト人に読ませれば理論的には近い発音になるらしい。

エンボス加工で彫刻風にするオプション機能もある。

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2007年10月28日

形の美とは何か

・形の美とは何か
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形の美しさを理論的に解明する大胆な内容。

著者は、機能美と装飾美、具象と中小、定形と非定形、自然と人工、理念と現実など、原始時代から現代までの東西の美の歴史にあらわれた美の構成要素を見直し、ひとつの大きな構成原理の体系にまとめあげた。

そして西洋の黄金比やシンメトリーの美、日本の等量分割やルート矩形の美などを分析して、人間の美的感性の本質を、美の中に数理性を見出す人間の能力だと指摘する。「私たちには、ものごとを秩序づけて見ようとする傾向が根強くあるため、自然の中にある規則性を知覚すると、いつも本能的に驚いてしまうのである」(E.H.ゴンブリッジ「装飾芸術論」)。数理性を基本とする定形は再現しやすいので、美術の伝統に繰り返し使われるようになったという。

自然の美は非定形であると 長い間考えられてきたが、現代のフラクタルやカオス、複雑系の研究から、自然の美もまた数理的に理解できるということがわかってきた。今ではその応用で本物とみわけのつかない自然な枝葉の樹木をCGで再現できるようになった。

自然の美の特徴をこの本では次のようにまとめている。

・自然の法則(造形の秩序)に準拠した機能の形である
・形状が滑らかで無駄がなく有機的形体(オーガニック形体)である
・フラクタル性の形では、自己相似性による黄金比のもつ美しさを内包している
・セルオートマトンによるリズミカルなパターンが見られる(貝類や動物の模様や柄)

そして自然の非定形の美を取り入れてきた日本の伝統美、ジャポニズムの先見性を、こうたたえている。

「先に述べたように非定形は、出鱈目な形、不規則な形だけで、さしずめ美の原理の存在しない形、複雑で偶然生じた形にすぎないと思われていた。しかし、実はこの非定形にある秩序があることが発見された。これがフラクタルであり、このフラクタルと黄金比とはきわめて近い関係にあることも科学的に解明された。こう考えると日本人は、何もやみくもに不規則な形や歪んだ柱や、単なるひび割れを好んで、芸術作品や美の対象としたのではなかったのである。日本人は自然の中に潜む黄金比にも通じる、きわめて高次元の美の原理を本能的に知っていたのである。」

形の美を、秘められた数理性に一元化して説明するアプローチがたいへんわかりやすい。天邪鬼な私は、できのいい理論を前にすると、美しさって本当にそれだけかなと疑問に思ったりもするのだが、それ以外の美の説明を考えるのは、きわめて難しい。

あるとすれば「ただ美しい」というのが、別にあるのだと思う。言語化や理論化できる美とできない美というのがあって、言語化や理論化できる部分については数理性での理解が説明として有効ということなのではないかなあ。

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2007年10月27日

よもつひらさか

・よもつひらさか
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短編ホラー集。怖いというより、不思議な話が多い。

ふたつの意味で粒ぞろい。まず尺の長さが粒ぞろい。本編は約370ページで12編だから、一作あたり約30ページである。1時間に2本か3本読めるこのボリュームは、通勤時間や休み時間にちょっと読むのに最適だった。そして、各作品の完成度も高レベルで粒ぞろい。一編を読むともう次も読みたくなる。はずれがなかった。

主題は幅広い。幽霊、ドッペルゲンガー、のろいなどのオーソドックスなオカルトものから、猟奇犯罪やネットストーカーまでバリエーションがある。個人的には最後に収録された表題作の「よもつひらさか」が好きである。現世と黄泉の国の境界にあると言われる坂に迷い込んだ男の話。諸星大二郎の漫画好きには特におすすめ。

黄泉比良坂は神話上の場所であるが、島根県東出雲町にある伊賦夜坂がそれであると比定されており、現地には石碑も建っているらしい。一度行ってみたい場所であるが、なかなか島根県に行く用事がないのであった。来年こそは出雲大社と一緒に見に行くぞ、と計画中。

・黄泉比良坂物語 
http://www.town.higashiizumo.shimane.jp/1497.html

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2007年10月26日

神社若奥日記―鳥居をくぐれば別世界

・神社若奥日記―鳥居をくぐれば別世界
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いきなり関西の神社に嫁いだ女性ライターのドタバタ体験記。

一般人にとって神社の舞台裏は謎である。全国に神社は8万社以上あり、神職として働く人は約2万人といわれるそうだが、どうやったら神職になれるのか。神主や巫女は祭事がない日は何をしているのか?どうやって神社は収入を得ているのか。神主というのは、やっぱり毎日清く正しく生活しているのか?結婚前は神社と寺のちがいさえ知らなかった著者なので、軽妙な文章の中で神社の基礎知識をわかりやすく教えてくれる。

神社の若奥様の1年間を日記のように綴ったドキュメンタリである。小さいけれど歴史のある、この神社は大阪の街中にある。御神輿はガレージに格納され、まつりの日には神楽殿にミラーボールが回り演歌歌手がショーをする。「えべっさん」に日には境内は近所のおじさんおばさんの酔っ払いでいっぱいになる、ような地元密着型である。

ある種の店を構えているわけであるから、神社の1年間は結構忙しいのであった。一に掃除、二に掃除で、神社を清潔に保たねばならない。関係者、協力者への気遣いのこまやかさも求められる。祭りのイベントの前後は大忙しで、大晦日から元旦は36時間不眠不休で働いている。そしてなにより大切なのは毎年同じことを繰り返すということだった。

「神社では、どんなに小さな行事でも、かならず心待ちにしている人がいるし、どんな小さな木を一本植えても、その生長を楽しみに見にきている人がいるのだという。だからおかあさんは、境内の植物の世話と掃き掃除を絶対にかかさないし、いちどやり始めた行事は、途中でやめたりしない。「今は人が来なくても、三十年やれば増えてくるやろ」「あと五十年もすれば立派な木になるやろ」などという、スパンの長い発言は、おかあさんだけでなく神社にたずさわる人たち全般の特徴である。」

軽妙に神社の裏話を書いているのだが、暴露的ではない。一般読者の神社への興味を深めてもらおう、好きになってもらおうという著者の意図が伝わってくるのが、読んでいて気持ちがよかった。現代の神社や神道の実態を楽しく知ることができる。

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2007年10月25日

CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ

・CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ
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小寺信良と津田大介の二人がキーパースンとコンテンツの未来を探る対話集。

登場するのは以下の顔ぶれ。

土屋 敏男(第2日本テレビ エグゼクティブ・ディレクター)
草場 大輔(東京MXテレビ 報道制作局ディレクター)
椎名 和夫(音楽家、実演家著作隣接権センター運営委員)
遠藤 靖幸(価格.com マーケティング部)
江渡 浩一郎(産業技術総合研究所 研究員)
西谷 清(SONY ビデオ事業本部長)
長谷川 裕(TBSラジオ「Life」プロデューサー)
中村 伊知哉(国際IT財団 専務理事)
松岡 正剛(編集工学研究所)

松岡 正剛の「プロセスがコンテンツになる」というやりとりが、ふだんネットを使っていて感じていた私自身の問題意識と重なって、参考になった。

「松岡 PCの世界じゃないところでは、例えばゴールデンウィークに旅をする。するとどこか観光地に行くのはいいけど、その間はみんな疲れて車を運転しているわけですね。それを何とか忘れて「楽しかった」と言っている。ところがPCの世界ではそれがなくて、その手続き上で何があったか全部消えているわけです。そこを増やせば、情報社会というか、情報世界にもうちょっと何か実際に体験した身体的なものが蘇るはずです。」

小寺 そういう意味では、アマゾンで本を発注して、本が宅急便で届くていうのは、多少アフォーダンスがあるような気がしますね(笑)。買うときは、書店に行って買うのよりも便利は便利ですけど、本が届くまでのタイムラグがあるから(笑)。

松岡 その「行ったり来たり」をウェブにも入れて欲しいわけ。そういうプロセスにおいては梱包を解くとか、どーんと届いて、「え?こ、こんなに買ったっけ?」って驚いたりすることが残るんだけど、ウェブではそれがなくなってしまっている。だから、それを手がかりとして本来ならば編集が始まるものが、始まりにくいんですわ」

テクノロジーによって人間は高い山の頂上へいきなりヘリコプターでいける時代になったが、それでは登山者の心身の変化ってないと思うのである。あらかじめ準備をして、訓練をして身体を慣らし、緊張しながら仲間と助け合いながら上っていくプロセスがあるから、頂上で大きく感動すると思うのだ。人生観も変わるかもしれない。

先日、ニュースで取り上げられていた比叡山の千日回峰行、9日間断食不眠の修行者の話だって同じだと思う。千日回峰行はこの堂入りの前後に1000日間で地球一周分の約四万キロを歩く荒行。達成できない場合は自殺しなければならない掟がある(この現代に、驚きである)。その途中のクライマックスが「堂入り」であった。

・9日間断食不眠の難行達成 比叡山中の「堂入り」
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200710210156.html

無事、この修行者は難関を達成した。悟りを開くこと、ある究極的な境地に達することを目的としているのだろう。長いプロセスが重要であって堂入りだけ達成しても無意味なのだ。そういえば、この発言者の松岡 正剛氏は、千日で千冊の書評(毎回4000字以上)をブログで公開する荒行の成就者である。プロセスが大切というのは自身の最近の経験もあっての発言なのかもしれない。

・千夜千冊
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/toc.html

情報やコンテンツとの見合い結婚が増えているってことだと思う。検索やSNSは強力な仲介サービスとして機能している。すぐに最適な属性の情報がみつかってしまう。「勇気を出して初めての告白」まで悶々とするってプロセスが失われているのである。コンテンツとしての醍醐味や人間的な価値は、本来はそういう最適化できないプロセスの中にこそ存在しているはずなのに。この本にでてくるキーパースンたちの多くは、デジタル化された現場で取りこぼされているアナログ的なプロセスの重要性を、再度見直すべきと訴えているように読めた。

他の論点では江渡 浩一郎氏の創作性と著作権法に関する考察も鋭い指摘と思った。

「ただ重要なこととして、創作性って謎な部分が多いくせに著作権法では明確に規定された概念だってことなんです。著作権法的に書かれていることによれば、著作物とは「思想を創作的に表現したもの」ですよね。<中略>でも実際には、これが著作権法を支える根本的な概念でもあるはずで、現実の世界では裁判官がそれを最終的にジャッジするということになっている。僕はそれが著作権法内に潜む矛盾だと思うし、現実的に一番処理に困る瞬間じゃないかなと思ってます。」

長い間、コンテンツとメディアそして流通方式は不可分で三位一体だったのだろう。だから、音楽業界が法律によって守ろうとしてきたのは、音楽とCDと流通網の利益分配システムだった。決して著作権者の権利でもなければ、作品の中の創作性でもなかっただろうと思う。それらが分離解体されて、純粋に創作性を評価しなければならなくなったが、既存の法律では記述があやふやなわけだ。

最小の創作性ってなんだろうか。

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2007年10月24日

青い鳥

・青い鳥
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重松清、学校を舞台にした8本の短編連作集。傑作。

私は小学校も中学校も高校も、学校生活というものが嫌いで、毎朝、行きたくないなあ、と思っていた。登校時間は本当に憂鬱だった。教室に友達がまったくいないわけでもなかったけれど、同質な「みんな」の輪に入るのは苦手で、一人でいることが多かった。小中と長期の欠席が日常茶飯事で「義務」でなくなった高校は1年行かずに中退した。私の人生はどうなっちゃうんだろうと自分でも思ったが「みんな」には同化したくなかった。落ちこぼれでいいから、私はみんなと違う存在でいたかった。家や図書館でひとり、本ばかり読んでいた。ああ、なんと寂しく惨めな少年時代...。

学校が大好きだったという人も世の中には多い。ウチの妻などはそうなのだ。だから小学校や中学校のお互いの思い出を話したりすると、基調においてかみ合わない。私は学校というのは嫌なところだった、教師は敵、やれやれ大人になって良かったよ、という”恨みマイナー調”で話す。妻は大切な青春時代の一コマ、あの先生どうしているかな、できれば戻ってみたいなんて考えているのであろう、”幸福メジャー調”で話す。メジャーとマイナーが衝突し、この話題では常に平行線をたどる。最近はそれが我が家の子供の教育方針問題において、火種となりかねない不穏な様相をみせている、のであった。(まあ気にしませんがw)。

で、この本は私と同じように、学校が嫌いだった人に、おすすめである。

選択国語の臨時講師、村内先生の短期赴任先は、いじめや自殺、学級崩壊や児童虐待などの問題を抱えた問題クラスばかりである。吃音でうまくしゃべることができない先生は、最初の授業から好奇の眼で見られ、からかわれて、迷惑だとまで言われる。だが、村内先生は、多くをしゃべれない代わりに、生徒に寄り添い、たいせつなことだけを話す。孤独な先生だからこそ、孤独な生徒に語りかけることができる。

問題学級を渡り歩く、吃音でうまくしゃべれない臨時の国語講師。かなり寓話的な初期設定だが、8本の連作の中で、少しずつ、そのキャラの存在感が濃くなっていく。村内先生ならきっとこういうときには、こういうにちがいない、なんていう想像ができてしまう。重松清はまったく新しい教師の理想像を確立したと思う。これテレビドラマや映画にしたら、金八先生や夜回り先生を超える名キャラクターになりそうだが、学校好きのマジョリティには、あんまり受けないのかなあ?。

・送り火
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005057.html

・ビタミンF
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005084.html

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2007年10月23日

バチカン・エクソシスト

・バチカン・エクソシスト
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バチカン公認のエクソシストの実態を、ロサンゼルスタイムスの女性記者が、エクソシスト本人や患者たちへの取材を通して明らかにしていく。

「そのとき、この会堂に汚れた霊に取りつかれた男がいて叫んだ。「ナザレのイエス、かまわないでくれ。我々を滅ぼしに来たのか。正体は分かっている。神の聖者だ。」イエスが、「黙れ、この人から出て行け」とお叱りになると、汚れた霊はその人にけいれんを起させ、大声をあげて出て行った」マルコ伝 第一章二十三節〜二十六節

聖書にはイエスが人間に憑依した悪魔を追い出す場面が何度もでてくるので、カトリックでは悪魔祓いの儀式が公式に認められてきた。その儀式を執り行う聖職者はエクソシストと呼ばれる。前ローマ法王ヨハネ・パウロ二世も在任中に三度、エクソシストとして悪魔祓いを行ったという。エクソシストはバチカンが公認しているのである。司教のエクソシストもいる。

現代イタリアでは悪魔憑きに悩まされる人が増えていそうで、エクソシストの数は1986年には20人だったが、現在ではほぼ350人に増えた。バチカンはエクソシストの公開講座まで開いていて、その存在や活動は決して秘密というわけではない。しかし、バチカン首脳部は、悪魔祓いが扇情的にメディアで取り上げられることを嫌って、その宣伝活動を控えめに抑えている実情があった。

悪魔の憑依が増えているとはいっても、本物は珍しいそうだ。エクソシストたちが最初にすることは、偽者の憑依を見抜くことにある。毎日相談を受けるエクソシスト曰く、自分でも十数年で十人しか本物の憑依現象とは出会うことがなかったと述べている。大半の事例は、精神的な病やオカルト好きの妄想に過ぎない。

「本物の憑依に見られる4つの症状」というリストが紹介されている。

・人間の能力をはるかに超えた力を発揮する
・本人が持っている本来の声とはまったく違った声で話す。もしくは被術者が知るはずのない言語を話す
・遠い場所で起きていることや、被術者には知りえない事実を知っている
・聖なるシンボルに対して冒涜的な怒りや嫌悪を感じる。

著者が立ち会った悪魔祓いの記述はまるで映画「エクソシスト」のワンシーンのようである。エクソシストが聖水や聖書をふりかざして、獣のような声で叫ぶ患者と霊的に戦う。他のどんな手段でも直せなかった病が、悪魔祓いによって治ってしまうケースがある。

著者はジャーナリストの中立的立場から、悪魔の憑依現象が本物なのか偽者なのかを断定はしない。カトリック教会と悪魔祓いの歴史、本物のエクソシストと患者たちの実態の報告をした上で、後半では悪魔祓いは解離性障害の一種ではないかなど、科学的な見地からの批判的分析も紹介されている。

日本のイタコが思い浮かぶのだが、訳者解題で翻訳者が日本とキリスト教国の文化の違いを指摘していた。憑依現象において、キリスト教圏では神と悪魔の二項対立になるが、日本ではキツネ憑きのようにもっと混沌とした物が憑く。だから、悪魔祓いというのは日本の土壌にあわず、普及しなかったのではないかという。

キリスト教圏の文化の影の部分を垣間見ることができるドキュメンタリだ。

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2007年10月22日

William Eggleston's GuideとWilliam Eggleston in the Real World

・William Eggleston's Guide
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最近集めているニューカラー系写真集。

ウィリアム・エグルストンは、写真芸術の大半が白黒だった1960年代後半から1970年代にかけて、カラー写真による新しい表現を追求した「ニューカラー」派の代表的なフォトグラファー。米国テネシー州、メンフィス生まれで、アメリカの原風景を写す。

「William Eggleston's Guide」は、エグルストンが1976年にニューヨーク近代美術館(MOMA)で、史上初のカラー写真の個展を開催した際の歴史的な作品集である。洋書。映画「アメリカン・グラフィティ」のような、当時のアメリカの空気が思いっきり写っているのが印象的だ。

エグルストンは特別な被写体や、意味ありげな構図を選ばない。ふつうの、どこにでもありそうなクルマや通行人や、店の看板や建築のファサード、ホテルの部屋の中などを、ありきたりな構図で写す。目新しさではなく、ありきたりさに心を動かされる。私は70年代のアメリカに住んだことなどないわけだが、そこに映る日常のリアリティにどっぷり浸かれてしまうのが不思議だ。懐かしい気がする。

エグルストンの作品の魅力は、被写体でも構図でもなくて、色合い、光、質感なのだとおもう。だから、ちょっと輪郭を見ただけでは満足できず、質感を味わうためにじっくり鑑賞することになる。全部見るのにずいぶん時間がかかる濃厚な作品集だった。

エグルストンの過去の写真集は国内では売り切れか、高額のプレミアがついたものが多くて入手が難しいものが多い。別の作品を2冊、米国Amazonで注文したのだが、数か月しても商品が見つからずキャンセルになったこともある。オークションでは数万円台に高騰しているものもある。

そこで最近のエグルストンの制作活動のドキュメンタリDVDを発見したので見てみた。未公開の写真作品も収録されているのでお買い得である。(というか、こういうDVDが出て話題になったから写真集が高騰しているのか?。)

・William Eggleston in the Real World
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このDVDはリージョン1 (アメリカ合衆国およびカナダ)なので再生環境に注意。

日々の撮影風景を淡々と記録している内容でエグルストン本人が中判カメラ片手に、南部や中西部の町をうろうろしながら被写体を探している。なにか見つけるとおもむろにパシャっと撮影する。三脚を使わず手持ちが多い。一枚一枚に思い入れを込める風ではなくてあっけなくシャッターを押しているのが印象的だった。撮影場所の映像と作品を見比べることができるのも貴重な体験である。

・Official website of William Eggleston and the Eggleston Artistic Trust
http://www.egglestontrust.com/

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2007年10月21日

PCで楽器の調律ができるSoftTuner

・PCで楽器の調律ができるSoftTuner
http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se403802.html
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私はアコースティック、クラシック、エレキなどギターを4本、ウクレレを1本持っているのだけれど、今世紀に入ってからは、ほとんど弾いていない。忙しかったこともあるのだが、弾かなくなった直接のきっかけは「チューナーがどっかにいっちゃったから」だったりする。ぴったりに合わせないと気になるので、耳で適当にというわけにはいかないのだ。

SoftTunerはマイク入力で楽器の音を拾って、音程を表示してくれるソフトウェア。昔からこういうのがあったらいいなと思っていた。基準音、誤差の修正など細かく設定が可能なので、いろいろな楽器に対応できそうである。携帯電話でできるとさらによいのだが。

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2007年10月20日

YAHOO!オークションのユーザーの取引履歴を調査する ポチ探偵社

・ポチ探偵社
http://www.fureai.or.jp/~yoichi37/soft/pochi.html
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ポチ探偵社はYAHOO!オークションのユーザーの取引履歴、評価、プロフィール情報を一覧して調べることができるソフトウェア。出品者が信頼できる相手かどうかを確認するのに使える。

さらに、そのユーザーが出品した過去のオークションの入札者を一覧表示して調べることもできる。同一のユーザーが常に入札して評価を意図的に高めているようなケースがあったら要注意ということ。

評価一覧や出品リストはCSVとして出力することができる。「疑惑リスト」管理機能もある。頻繁に売り買いしているオークションのヘビーユーザーには特に役立ちそうである。

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2007年10月19日

Apple iPod touchとAresTubeで動画三昧

iPod Touchの感想。

・Apple iPod touch
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iPod Touchを購入して2週間ほどメインのMP3プレイヤーとして毎日持ち歩いて使っている。ユニークなタッチパネルのインタフェースと軽快な動作が気持ちがいい。が、みんなが褒め称えている状況で、こういうことを書くと怒られそうだが、iPod TouchってMP3プレイヤーとして便利で使いやすいかというと、そうでもないんじゃないかというのが率直な感想である。斬新なインタフェースは新鮮だが、大量の楽曲から求めている楽曲を素早く探すには、旧バージョンやクラシックのインタフェースのほうが効率的だったと感じる。
友人とこういう会話もあった。

「これ、咄嗟に音を止めるにはどうしたらいいんだろう?」

「イヤホン端子を引き抜けばいいじゃないですか」

「それもまた革新的なインタフェースですね」

そんなこともあるが、大画面で写真や動画を見るためのマルチメディアプレイヤーとしては最高のデバイスだと思う。無線LANによるインターネット接続機能は今後のキラーアプリの登場を期待させる。PCなしで音楽や映像を購入ダウンロードできる便利さは衝撃的だった。コンテンツ配信のプラットフォームとしてビジネスも育ちそうだ。

iPod Touchは無線LAN経由で直接YouTubeを見ることができるわけだが、無線がない場所で使うことが多い私は、PCでダウンロードしてTouch用に形式を変換して視聴している。移動中にワンセグでテレビを見るより、好きなものを安定した環境で見られるのがいい。

世界の主な動画投稿サイトからのダウンロードと形式変換を、簡単に行えるAresTubeがとても便利だ。


・AresTube
http://www.benjaminstrahs.com/
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内蔵ブラウザーで動画サイトを見てまわり、欲しい動画があったら+ボタンをクリックすると、ダウンロードリストに登録される。ダウンロードされた動画はiPod用に形式変換されるので、iTunesを経由してTouchに取り込む。

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2007年10月18日

おいでよロコロコ!! BuuBuu Cocoreccho!

PSPで本当に面白かったゲームはまだ2本しかなくて、ひとつは「モンスターハンター ポータブル」、もうひとつが「ロコロコ」である。このブログで紹介したのは2006年07月16日だから、もう1年以上前の話になる。

 LocoRoco(ロコロコ)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004633.html

その後、よく売れたのだろう、ベスト廉価版となって再リリースされている。私はあの脳内リフレインが強烈な歌に魅せられて、サウンドトラックCDも買ってしまった。

・LocoRoco PSP the Best
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・PSP 「LocoRoco」オリジナル・サウンドトラック 「ロコロコのうた」
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だから、PS3のネットワーク配信タイトル「おいでよロコロコ!! BuuBuu Cocoreccho!」は速攻でダウンロード購入した。大画面で大音量のロコロコはPSPと同じか、それ以上に中毒性がある名作。

・おいでよロコロコ!! BuuBuu Cocoreccho!
http://www.jp.playstation.com/scej/title/cocoreccho/

ムービーあり。

PSP版では地面を傾けてロコロコを移動させたが、こちらではココレッチョという蝶を操ってロコロコを誘導する。6軸コントローラの傾きセンサーを使って、コントローラーを傾けたり、振ったりすることで、画面内のオブジェクトを操作することができるのが、PS3版の最大の特徴である。より体感要素が強くなった。

上のサイトのギャラリーを見れば一目瞭然なように、大画面のロコロコは、もはや動くアートなのである。ポップでカラフルだが優しい印象のシーンが流れていく。難易度は今回もそれほど高くないので、のんびり遊ぶのに適した作品。

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2007年10月17日

セミナー「デジタルコンテンツの利用・流通・著作権の行方」

こんなセミナーを開催します。
いつもの登場人物に加えて

BitTorrent株式会社戦略顧問 株式会社Jストリーム副会長 クロスコ株式会社 代表取締役 古株 均さん
IT・音楽ジャーナリスト 津田大介さん
という豪華ゲストをまじえて、デジタルコンテンツ問題を語ります。

10月25日(木)「デジタルコンテンツの利用・流通・著作権の行方」
テレビとネットの近未来カンファレンス 緊急番外編
〜デジタルコンテンツの利用・流通・著作権の行方〜

私的複製、違法ファイルダウンロード、PtoP、ファイル共有、動画共有、二次創作…。

デジタル化されたコンテンツは無限の可能性を秘めていながらも、既存の法規制やアナログ時代のビジネスモデルとの狭間で、いくつもの衝突を繰り返している。コンテンツホルダーの権利、ユーザーのベネフィット、コンテンツデリバリー、ライセンス、権利プロテクション、デバイスフォーマットなどの諸問題の解決策はあるのか?

デジタル化されたコンテンツの正統なビジネスモデルを模索しながら、デジタルコンテンツの可能性をさぐる特別セッションとなります。

【日時】
2007年10月25日(木) 13時30分〜16時30分
【場所】
渋谷T'sビジネスタワー
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-18-3 東宝ビル別館
http://www.tsrental.jp/access/map_toho.pdf
【費用】
1万円(消費税込み)

【申込】こちらのフォームからどうぞ
http://www.tvblog.jp/tvnetevent/200710/form.php

【プログラム】

・「新サービス"Mitter"のご紹介」
http://mitter.jp/
株式会社メタキャスト
代表取締役 井上大輔

・「その後の"YouTube革命"」
Joost.com Veoh.TV heynielsen.com で変わるテレビ
KandaNewsNetwork,Inc.
代表取締役 神田敏晶

・「ダウンロード視聴ビジネスの今後」
BitTorrent株式会社戦略顧問
株式会社Jストリーム副会長
クロスコ株式会社 代表取締役古株 均

・「著作権法改正を巡る現状について」
IT・音楽ジャーナリスト 津田大介

・パネルディスカッション
司会 神田敏晶
   橋本大也

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2007年10月16日

事故と心理 なぜ事故に好かれてしまうのか

・事故と心理 なぜ事故に好かれてしまうのか
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交通事故はなぜ起きるのか、事故を起こしやすい人とはどんな人か。著者自身と世界の学者の近年の研究成果を多数引用しながら、交通心理学者として科学的に結論できることを書いている。

運転者には事故を繰り返す事故多発者というグループが存在するそうだ。

事故多発者には以下の特徴がある。

・安全への動機づけ(価値観)が低い
・注意がうまく機能しない
・隠れた刺激を見つけない(危険の予兆の発見ができない)
・自己認知が的確でない
・反応が突出する

こうした事故多発者は適性検査によってある程度事前に判別できるという話が興味深かった。適性検査は「なにを計測しているのかわからない」という批判がなされるにも関わらず、なにかを計測しており、判別結果に有意性が見いだせるというのだ。

「事故に好かれる状態は人生のある一定期間持続することがある。自己多発者は、車社会に参加する際の安全への動機づけが希薄な人である。自己を避けるためには危険をあらかじめ察知し、回避できなければならない。そうであらねばならないと思っても、なにしろ人間は言行不一致で、合理性は徹底しない。さまざまな危険に同時に遭遇したときに、注意の配分バランスが崩れたり、反応の一部が突出する。いつのまにか認知や反応に偏りが生じることがある。それを防ぐには、絶えず自己モニター機能を働かせ、自分の状態を監視する必要がある。そうでないと事故に好かれてしまう。」

事故に好かれる一定期間を経過すると、事故を起こさなくなったりするそうである。毎日長時間車に乗るタクシー運転手を調べたところ、少数特定の運転者に事故が集中していることがわかった。長期の調査を行ったところ、事故多発の傾向は、一生継続するわけではなく、数年間程度の持続した後に、事故を起こさなくなるものらしい。

そして、事故の当事者になりやすい(事故に好かれる)人は若者、女性、老人である。特に10代の事故が突出して多い。他の年齢層の倍以上である。

「年齢と性とで区切った免許人口のなかから、死亡事故の第一当事者となった人がどれだけでたかの発生率が死亡事故惹起率である。有責死亡事故率という呼び方もある。各カテゴリーの死亡事故の件数を免許保有者の人口で割って、免許保有者一万人当たりの死亡事故の発生件数としたのが図中の縦軸(死亡事故惹起率)である。たとえば十八〜十九歳の男性の免許保有者一万人のうち八人弱が死亡事故を起こしたということになる。」

若者の死亡事故惹起率は世界で共通して高く、その理由に俗説は多いが、科学的にはわかっていないと著者は正直に述べている。この本全体を通して、著者は統計や実験から、科学的に結論できることを慎重に選んで結論を述べているところが、良印象をもてた。事故の調査分析の手法を知る上でも参考になる点が多い本だ。

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2007年10月15日

レゴ モザイク

・レゴ モザイク モザイク(L) 6163
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レゴブロックは、基本セットと応用セットをいくつか買ったので、大抵の部品はそろったから、もう新しいのは買わないでもいいかな、と思っていたら、店頭で「レゴモザイク」を発見して衝動買い。

レゴモザイクは透明な板の上にレゴの最小単位のブロックを並べて平面的なモザイク絵を組み立てるセット。初心者向けには9つの組み立て図があらかじめ用意されている。その図を半透明ブロックの下に入れて、上にブロックを写し絵のようにおいていくだけで、こんな絵が完成できる。

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ブロックで絵を描くのは新鮮。このセットは透明な板が2枚あるので親子で同時に夢中になることができる。ブロック数も598ピースもあるのでだいたい間に合う。これは面白かった。

レゴの英語サイトにはさらに追加の設計図がPDFでダウンロードできるのをみつけた。

・Lego Mosaic
http://creative.lego.com/downloads/building.aspx

ネットをさらに調べたら、このレゴモザイクというのは昔からあるようで、本格的なアートに取り組んでいる人もいることがわかった。2,3セット買ってきて大きな作品に取り組んだらおもしろそうである。

・Starry Night LEGO Mosaic
http://www.brillig.com/lego/starry_night/


・LEGO bookmuseum Vol.1
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004648.html

・Lego Crazy Action Contraptions: A Lego Inventions Book
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004659.html

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2007年10月14日

統計でウソをつく法

・統計でウソをつく法
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「この本は統計を使って人をだます方法についての入門書のようなものである。どちらかといえば、サギ師のための手引書のようなものであるが」とまえがきにあるように、統計にだまされないために、だます方法を教えた本。原著は1954年出版、邦訳は1968年出版だから半世紀のロングセラー。

「統計というものは、その基礎は数学的なものであるが、科学であると同時に多分に技術でもあるというのが、本当のところである。」。たとえば「平均」には平均値(算術平均)、中央値(中位数)、最頻値(並み数)の3種類がある。どれも「平均」として使うことができるが、大きく数字が異なることがあるという基本や、グラフ化することで差異を拡大して印象づけるテクニックなど、実例をたくさん使って説明している。

「米西戦争の間、米軍の死亡率は1000人につき9人であった。一方、同期間のニューヨーク市における死亡率は、1000人につき16人であった。さて、米海軍の徴募官たちは、最近、この数字を使って、海軍に入隊した方が安全だと宣伝していた。」

軍隊には頑丈な成人男子しかいないが、都市部には老人や赤ん坊がたくさんいる。なにもなくても都市部では人が亡くなっている。

「今日では、次のような事柄のどの二つをとってみても、その間にプラスの相関関係を認めることは容易にできるのである。それらはすなわち、大学生の数、精神病院の収容者数、タバコの消費量、心臓病患者数、義歯の生産量、カリフォルニア州の学校教師の給料、ネバダの賭博場の儲け。」

風が吹くと桶屋が儲かる式の三題噺がいくつも作れそうだ。

統計を見るときには

1 誰がそういっているのか?
2 どういう方法でわかったのか?
3 足りないデータはないか?
4 いってることが違ってやしないか
5 意味があるかしら?

というポイントに気をつけよとまとめられている。著者が取り上げた事例は、新聞やテレビ、政府や大学が発表する数字が多かった。権威の発表する数字を鵜呑みにしてはいけないわけだ。

ところで最近、統計で疑問を持ったのが、新聞社発表の、この記事である。

・大学発VBの経営厳しく、55%が経常赤字・06年度日経調査
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20071010AT1C0900409102007.html

「 大学発ベンチャー企業の経営が厳しさを増している。日本経済新聞社が9日まとめた大学発ベンチャー調査では、回答企業の55%が2006年度の経常損益が赤字で、7%は「3年内に会社を売却する可能性がある」と回答した。政府が2001年に1000社育成計画を打ち出した大学発ベンチャーの数は1500社を超えたが、社員や営業ノウハウの不足から事業を採算に乗せられない姿が浮き彫りになった。(詳細を10日付日経産業新聞に)」

詳細な記事を読んでいないので恐縮だが(これは同じ発信者による要約記事)、この記事は統計を使ったミスリードではないか。

一般的に大学発ベンチャーは技術開発系であろう。営業系と違って初年度は赤字になるのがふつうである。また、そうしたベンチャーの多くは大企業への「売却」が目標である。「3年以内に売却」見込みがある企業の中には、成功が見えている会社も含まれているのではないか。さらに言えば、55%が赤字を裏返せば、45%もの企業が黒字なのである。ベンチャーキャピタルの投資成績として考えたら、悪くない数字であろう。そもそもベンチャー市場は多産多死、競争淘汰の中から、少数の大きな成功者がでてくる世界である。平均成績が悪いからといって、全体が悪いと言うことは言えないと思う。

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2007年10月13日

iPod Touch対応のパーソナルメディアサーバー Locura? Personal Media Server

・iPod Touch対応のパーソナルメディアサーバー Locura? Personal Media Server
http://www.villainousmind.com/Locura-Media-Server/
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PC上の動画、音楽、静止画を、iPod TouchやPSPのWebブラウザーから再生することができるようにしたパーソナルメディアサーバ。動画はダウンロード、Mp3音楽はストリーム再生、写真は自動リサイズしての表示に対応している。

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インストール後に設定パネルから、クライアントソフトにiPodを選ぶと表示が最適化される。デザインのテンプレートとして用意されている”iPhone”を選ぶとさらにそれっぽくなってうれしい。

私は数万枚の写真データをPCに入れているのだが、iTunes経由でこれらをTouchへ同期させようとすると、とてつもなく時間がかかるので100枚くらい転送するだけで、あきらめていた。メディアサーバを使えば、自宅にいる間はTouchから自在に閲覧できるようになった。

フリーで遊べるが、フル機能を使うにはライセンスを購入する必要がある。

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2007年10月12日

デスクトップのアイコンが回って踊るマイムマイム うぃんど渦

・うぃんど渦 デスクトップのアイコンがぐるぐる回る
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/amuse/se396741.html
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通常モードとマイムマイムモードとブラックホールモードがある。

通常モードではデスクトップのアイコンが渦を巻いて回る。マイムマイムモードにすると、マイムマイムを奏でながら、その渦の半径を大きく、小さくと変えながら、楽しげに回転する。ブラックホールモードを選ぶと、回転しながら、アイコンが少しずつ中央から消えて行く(画面の外側へ退避する)。

おすすめはマイムマイムである。会社のPCで昼休みにスクリーンセーバーのかわりに、マイムマイムモードにして離席すれば、午後のみんなの話題はあなた、かもしれない?。
およそ何の役にも立たないであろうソフトウェアだが、800アイコンまで対応しているそうであり、回転半径や渦の向き、渦の巻き数、隣り合うアイコン間隔の比、更新間隔、回転方向、1周にかかる時間など、細かく動作をカスタマイズすることができる。

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2007年10月11日

十牛図―自由訳

・十牛図―自由訳
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禅の悟りに至る道を、十枚の牛の絵を使って表したものが十牛図である。

この牛とは自分の心を象徴しており「心牛」である。人は失われた牛を探し求め、見つけ、手なずけ、連れ帰り、牛を忘れ、自分も忘れて、悟りの境地に至るのだ、という内容。詳しくは目次にあるとおり。

自由訳 十牛図(じゅうぎゅうず)のもくじ

第一図 尋牛(じんぎゅう) 牛を捜しにゆく
第二図 見跡(けんせき) 牛の足跡をみつける
第三図 見牛(けんぎゅう) 牛を見つける
第四図 得牛(とくぎゅう) 牛をつかまえる
第五図 牧牛(ぼくぎゅう) 牛を飼い馴らす
第六図 騎牛帰家(きぎゅうきか) 牛に乗って家に帰る
第七図 忘牛存人(ぼうぎゅうぞんじん) 牛は消え私だけがいる
第八図 人牛倶忘(じんぎゅうぐぼう) 人も牛もいなくなる
第九図 返本還源(へんぼんかんげん) 生まれ変わる
第十図 入てん垂手(にってんすいしゅ) 俗に入り教化する

それぞれの絵には教えの漢文漢詩がつけられている。十牛図の自由訳、現代語訳は他にも複数出ているが、これは「千の風になって」の新井満による自由訳。原典のコンセプトを守りながら、できるかぎりわかりやすい日本語で訳すというコンセプトで貫かれている。イメージ写真や、章ごとの重要部分のまとめもあって、とっつきやすく、読みやすいのが特徴である。

「本書は悟るための手引書です。どうか本書を活用して一日も早く悟ってください」と著者は帯に書いている。やさしい日本語になっているが、当然、読めば誰でも悟れるわけはない。やはり第七図以降の理解が難しいと思う。全身全霊で分かった!という「大悟」段階の先は、頭でわかるという次元を超えてしまうからである。だからこそ昔の人は言葉ではなく絵にすることで、悟りのツールとしたのだろう。

悟れるかどうかはともかく、何らかの求道者であれば、共通の極意として受け取れる古典だなあと思った。30分で本文を読んで、そのあと2時間くらいその意味を考えてみる。そういう読み方で読む本だと思う。

・現代語訳 般若心経
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004792.html
・タオ―老子
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004803.html
・現代語訳 風姿花伝
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005081.html

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2007年10月10日

箱舟の航海日誌

・箱舟の航海日誌
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初版は1925年だから80年以上前だ。医師で神秘思想家のケネスウォーカーのロングセラー作品。イギリスでは児童文学の古典として読まれているが、日本ではほとんど知られていないという。旧約聖書のノアの箱舟をベースにした別バージョンを、子供向けにわかりやすく語る。

ノアが箱舟をつくり、あらゆる動物を乗せて漂流するという骨子は、旧約聖書の原作通りなのだが、動物たちが意思を持ち、しゃべっている点がまず違う。救われるべき動物たちは、無垢な存在で箱舟ではオートミールの食事を食べている。漂流中の不便に多少の不平はあっても、みんなで仲良く暮らしていけるはず、だった。

一頭の「スカブ」という、禁断の肉食動物が紛れ込んでいたことから、物語は妙な方向へ展開していく。はじめは根暗で陰気な存在に過ぎなかったスカブだが、しだいに箱舟の動物社会に不穏な空気を広め始める。動物社会の分裂。そして、聖書の中では語られなかったノアの方舟の大航海の真相がここに明かされる。

本来は児童文学なのだが、大人のための寓話として、随分と考えさせられる小説である。最初は良き意図を持って秩序正しく暮らしていた社会が、小さなきっかけから、次第に悪徳に魅せられるものが増えて、堕落していくという、人間社会の普遍的な様子を描いている。

もともとスカブは、根っからの悪魔的存在ではなく、ある偶然で、肉食という本能に目ざめることになった弱者である。生来の悪人ではなかったのだが、結果的には悪の扇動者になってしまう。悪の起源とは何か、なぜ人は悪徳に魅かれることがあるのか、なぜ社会は分裂していくのか、など、子供向けの文学であるが、背景で扱われているテーマはどれも大きくて深い。

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2007年10月09日

寺山修司ラジオ・ドラマCD「犬神歩き」「箱」「鳥籠になった男」「大礼服」「まんだら」

このCDを教えてくれた小鳥ピヨピヨ(a cheeping little bird)さんに感謝。

1960〜70年代、寺山修司にとって20代から30代にかけて精力的に制作したラジオドラマの復刻シリーズ。本シリーズには1時間近い大作を1話収録したCDと、20から30分物×2話収録したCDの2種類がある。どれもクオリティがとてつもなく高い。

長時間のラジオドラマをじっくり聴くというのは、読書とも映画鑑賞とも違う、独特の体験だ。かなりの集中力を必要とする。その代り、物語の世界にどっぷり浸ることができる。

この最初の2枚は短編×2本収録系なのでとっつきやすい。

・寺山修司ラジオ・ドラマCD「犬神歩き」「箱」
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「幻の寺山修司のラジオ・ドラマ、奇跡の復刻! 放送当時、事件にもなった寺山修司の想像力の出発点、現代に失われた美しい日本語が蘇る。解説:船越一幸/小林猛/白石征
「犬神歩き」は1963年(昭和38年)製作。寺山修司27歳。精神錯乱に陥った犬神憑きの母。そこに現れた祈祷師が行なう「犬落とし」の療法。古い習わしや伝承世界に特有の不条理をモチーフにした、寺山修司ならではの凄惨な御伽草子。
「箱」は1964年(昭和39年)製作。寺山修司28歳。現実逃避のために「箱」の中に隠れる人々が急増する──、という童話風の作品。寺山修司は重い内容ばかりでなく、こうした軽いタッチも非常に好んでいた。湯浅譲二作曲の児童合唱が絶品。」

・寺山修司ラジオ・ドラマCD「鳥籠になった男」「大礼服」
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「幻の寺山修司のラジオ・ドラマ、奇跡の復刻! 放送当時、事件にもなった寺山修司の想像力の出発点、現代に失われた美しい日本語が蘇る。解説:松谷敦/白石征
「鳥籠になった男」は1960年(昭和35年)製作。寺山修司24歳。主人公は詩を書くことが趣味の水道局勤務のサラリーマン。勇気をもって行動しようとすると、なぜかきまって頭の中に鳥が現れて邪魔をされる。やがて彼の頭は本物の鳥籠になってしまう…。
「大礼服」は」1965年(昭和39年)製作。寺山修司28歳。「大礼服(たいれいふく)」を着た男が現れると、人々はみな甘美で非日常的な詩的世界へと誘われてゆく。それを食い止めたい「権力」側は、平凡な現実世界を社会に取り戻すべく闘いを挑む。」

1時間近い大作としてはこれがよかった。

・寺山修司ラジオ・ドラマCD「まんだら」: 音楽: ドラマ,奈良岡朋子,山谷初男,吉田日出子,原泉,諸石茂,鈴木光枝,大森暁美,高橋昌也,山本学,及川広夫
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「幻の寺山修司のラジオ・ドラマ、奇跡の復刻! 放送当時、事件にもなった寺山修司の想像力の出発点、現代に失われた美しい日本語が蘇る。解説:沖野暸/寺山修司/湯浅譲二/白石征
「まんだら」は1967年(昭和42年)製作。寺山修司31歳。ねぶた祭りで出会った二人の若い男女──婚礼を控えた謙作と、前世の自分を探しに東京から訪れたチサ。むせ返るような祭りの熱気のなかで、二人の黄泉の国への道行が始まる。」

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2007年10月08日

肖像写真

・肖像写真
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19世紀後半のナダール、20世紀前半のザンダー、二十世紀後半のアヴェドンの3人の写真家の、代表的な肖像写真の差異を分析することで、顔の意味の歴史を考察する本。

「ナダールは自分の好みの人物たちを選び、彼らをできるだけ自由な状態に置きたいという応対をしながら相手を見ていた。ザンダーは、ピンからキリまでの人間のだれにも共感を抱きながら見ていた。アヴェドンは決して冷淡ではないが、善人に対しても悪人に対しても、権力者にも犠牲者にも、できるだけ冷やかで空虚な視線を投げかけた。」

肖像写真の出発点がナダールである。

・Nadar
http://en.wikipedia.org/wiki/Nadar_%28photographer%29
ナダールの肖像写真の作品が多数掲載されている。

「いずれにせよナダールが撮ったのは、貴族でもなく、もともとの金持ちでもなく、自らの知的な能力を磨き、活動させることによって、たんなる知識人ではなく有名人になっていく人びとであった。ナダールによって写真に撮られるとともに、ボードレールによって評価されていく人々でもあった。」

「ひとつの時代を共有する群れのなかから、このような歴史的な意義をもった人びとを差異化し、「同時代のびと」たらしめることこそ、ブルジョワ社会の特質であった。<中略>ナダールの肖像写真が明らかにしたのは、こうした歴史的なブルジョワジーの特徴であった。このエリート主義の社会だからこそナダールは浮かび上がれたのだ。」

まだ写真が珍しい時代では、ナダールに肖像写真を撮られるということは、特別な知識人として列聖されることなのであった。そして、それらの肖像写真を見る者には、その人物が誰で何をした人なのかという前提知識があった。

時代が下るにつれて、ザンダーはさまざまな職業、階層の人々を撮影して分類していった。多様な社会関係にある、有名無名の顔をたくさん集めることで時代を群像として写しだそうとした。

・August Sander
http://www.masters-of-fine-art-photography.com/02/artphotogallery/photographers/august_sander_01.html
多様な職業の人々の肖像作品集が掲載されている。

そして、20世紀のアヴェドンは「20世紀最後の奴隷」や「殺人者」の肖像写真を撮ることで、それが歴史的真実であることを伝えるパフォーマンスを行った。

・Richard Avedon Foundation
http://www.richardavedon.com/

後半の総括部分では、「仮面」と「観相術」というキーワードを使った分析が、肖像写真の被写体、写真家、観客の3者の関係性の変化をうまくとらえていてわかりやすかった。


・Portraits
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/005048.html

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2007年10月07日

「世間遺産放浪記」「奇想遺産―世界のふしぎ建築物語」

ユニークな写真集を2冊。


・世間遺産放浪記
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世界遺産とは無縁でそこらへんにありそうだが、よく見ると職人の技が光る価値のある古い建築物を247件も、大きな写真と記事で紹介する。著者はそうした地味だが味のある建築に「世間遺産」という名前を与えた。30年の研究の成果。

「さて「世界遺産」や「近代化遺産」が脚光を浴びる中、社会からはなかなか見向きもされない、これら「世間遺産」たちとの出合いは、筆者自身に強い印象を与えるものばかりでした。長く人の生業やくらしとともにあった、「用の結果の美」としての建築や道具。または庶民の饒舌、世間アートとでも呼びたくなるような不思議な造形の数々...」

著者の狙いは、世界遺産の相対化にあるのだろう。それはかなり成功している。

田舎の田圃の片隅に打ち捨てられた農具小屋や、小川に架けられた名もない石橋、明治の頃に長者が建てた村一番の蔵。どの村や町にもありそうな、ありふれた遺産なのだけれど、TBS世界遺産風、ナショナルジオグラフィック風の撮り方の写真に、著者が調べた由来の解説が付けられると、不思議と風格を帯びて見えるのである。

・奇想遺産―世界のふしぎ建築物語
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奇想遺産は、世界の奇妙な外観の建築を集めた写真集。朝日新聞の連載の書籍化。まず表紙の「ル・ピュイ・アン・ブレ」をみて驚く。フランスの奇観というとモンサンミッシェルが有名だが、町はずれの野原に85メートルの岩があって、その上に教会がたてられている様は圧巻だ。

奇想遺産にはシドニーオペラハウス、大阪の通天閣、首里城正殿など、有名な建築も紹介されているが、建築にまつわるエピソード紹介を読むと、知らなかった事実がでてきて驚かされる。この本があると、旅行の計画をたてるときに、ちょっとユニークな味付けができそうである。


こういう世間遺産、奇想遺産って探すと身近に結構ある。たとえば市谷の奇妙なパイプ?橋と釣り堀の景観って、東京の世間遺産として残すべきものだよなあと思う。いつもあの釣り堀を見るとほっとする。

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2007年10月06日

静止画や動画に水面反射効果を適用する Sqirlz Water Reflections

・Sqirlz Water Reflections
http://www.xiberpix.net/SqirlzReflect.html
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Sqirlz Water Reflectionsは静止画や動画に水面反射のアニメーション効果を与える画像処理ソフトウェア。水面に何かが写り込んでいる写真や絵に適用すると、とても印象的な映像をつくりだすことができる。

これは先日、サンフランシスコで撮影した写真。

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水面反射効果を与えたい範囲を投げ縄ツールで選択し、適用効果の内容(波の大きさ、頻度など)を設定する。プレビューで気に入る状態になったら、Flash、AVI、アニメGIF、連続した静止画で出力できる。

・出力結果
http://toieba.sakura.ne.jp/files/waterfl01.swf




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2007年10月05日

書籍、文庫、コミックの発売予定一覧をチェックするBookChecker

・BookChecker
http://www.chessmat.jp/chmt-prog2.html
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BookCheckerは書籍、文庫、コミックの発売予定一覧をネットから取得して、購入チェックができるフリーソフト。過去に購入した本などを登録しておくと、同じ著者の本が発売予定一覧に含まれていれば、マークを付けて教えてくれる。

所有本登録の画面ではネット書店を検索して、既刊情報も検索ができる。作家の作品を年代順に並べて見ながら、蔵書リストへ一括選択を行うことができる。蔵書リストはHTMLやCSVデータとしてエクスポートが可能。

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Webで蔵書の情報を公開したいときにも、このソフトは重宝しそうである。

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2007年10月04日

たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)

・たった2分で人の心をつかむ話し方(CD付)
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今月末に結婚式のスピーチを頼まれているのでノウハウを研究中。この本はよかった。

「長すぎる話は聞いてもらえません。人が話を聞く限界は3分といわれています。ですから、それ以上の長すぎる話は、最後まで聞いてもらえない可能性があります。「5分で話をしてください」とか、「話す時間は5分準備しております」というのであれば、聞き手もそのつもりで集中するかも知れませんが、それでも内容は3分以内にまとめるべきです。たとえば1時間の講演を頼まれた場合は、持ち時間は60分ですから単純に3分の話を20回すればいいわけです。」

「人民の、人民による、人民のための」で有名な、リンカーンのゲティスバーグ演説も、実際には、たった2分間の演説だったそうである。長い話を、小さなネタの連続としてとらえる発想は目から鱗であった。

そして、無駄を削ること。何を話すかと同じくらい、何を話さないか、が大切なわけである。話し方の「かきくけこの法則」という原則が最初に示される。

か 簡単(短く)・明瞭に
き 起承転結(序論・本論・結論)
く 具体的(体験・実例)に
け 結論をはっきりと
こ 言葉に気配りを

事前に話の材料を集めて、全体構造を設計し、それを意識しながら話しなさいということだろう。準備が十分だと余裕が生まれる。人を笑わせたり、驚かせたり、アドリブで楽しませるということもできるようになる。

「仕事・趣味・特技についてもう少し説明を加えるなら「ユーモアを交えて話す」ということです。たとえば「私は手品を趣味にしておりますが、タネはすぐばれるのが特徴です」と言えば面白くなります。こう言うと、聞き手は「タネがばれる」ということより、「手品をやっている」ということがより印象に残るものです。」」

笑いをとると同時に、聞く人の記憶への定着を促進するという高度な技だなあと感心した。CDに収録されている多数のサンプルも素晴らしい。話し方教室の先生と生徒の実演集で、確かに引き込まれる。本の実践イメージが明確になる。

「4つの箇条書き程度のものをポケットに入れて、どういうふうに話すのかではなく、何を話すのかを頭に入れておけば大丈夫です。」

「一番後ろの人に向かって声をかけるようなつもりで話すことです。そうすると自然に声も前に出ます。」

「ですから、相手の眼をストレートに見ないで、額や口元、目の付近を見るということがポイントです。聞き手側からすれば、それで十分見られているという感じがするのです。」

どれも知りたかったことで、参考になった。

・「頭がいい人」が武器にする 1分で話をまとめる技術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004383.html

・「感じがいい」と言われる人の話し方
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004992.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈上〉準備編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001456.html

・人生を変える黄金のスピーチ〈下〉実践編―自信と勇気、魅力を引き出す「話し方」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002404.html

・人を10分ひきつける話す力
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003857.html

・「できる人」の話し方、その見逃せない法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000445.html

・ハーバード流「話す力」の伸ばし方!―仕事で120%の成果を出す最強の会話術
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000228.html

・その場で話をまとめる技術―営業のカリスマがその秘密を大公開!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003713.html

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2007年10月03日

究極の会議

・究極の会議
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「会議とは議事録をつくる共同作業である」という思想をベースにつくられた会議の方法論。著者は会議支援のWebツール「eXtreme Meeting」を開発し販売しているほどの、会議マニア。究極の会議はどうあるべきかを考え続けている人だ。

・会議支援ツールSargasso eXtreme Meeting
http://xm.sargasso.jp/
議事録ドリブン会議支援ツール

アジェンダを書く段階からノウハウがある。よい例、悪い例が示されている。

悪い会議のアジェンダの例
 1 次回展示会の開催について
 2 予算について検討
 3 新しいPCの購入計画

よい会議のアジェンダの例
 1 次回展示会開催の課題リストを完成させる
 2 予算案の設備投資増額のしわよせ問題を解決する
 3 新しいPCの購入の必要性をヒアリングしてリストアップする

さらに「会議のトピックには、「なぜ」とつけるのではなく「どのようにして」とつけるようにしよう。人間は「なぜ」とつけると、責任の追求と擦り付け合いが始まる。」というアドバイスがある。上手なアジェンダ設定によって具体的で前向きの言葉が出やすい雰囲気をつくることができるのである。

議事録ドリブンは、参加者全員で議事録を完成させていく方法論だ。それを成功させるための15のプラクティスが、この本の主な内容である。「結論」「意見」「定義」などを明文化することで、議論がクリアになるというのが基本姿勢である。

この本を読んで、個人的によかったのは、ノートPCの会議での位置づけがよくわかったことだ。これまで私は参加者各自がノートPCを会議に持ち込むのは、本当はよくない、必要悪と考えていた。各自が自分の画面ばかりのぞきこんでいたら、せっかく顔を合わせて話す意味がないからである。それに自分のPCを開くと、ついつい会議と関係のないメールや資料を眺めてしまうものである。みんなが下を向いていたら、司会進行のやる気もでない。

そこで「議事録の共同注視」にPCを使うべきという、この本のやり方は正しいと思った。プロジェクターに投影したPC画面上で、話している内容をWordやExcelを使って議事録に書いていく。誰かが意見を言えば「意見」として記録する。結論がでたら「結論」として書く。こうすれば、ノートPCはみんなの意識をひとつに集中させるツールになる。後から、言った言わないのトラブルも起きない。

ユニークな会議手法で有名な株式会社はてな代表取締役近藤淳也氏と著者の鈴木健氏の対談も収録されている。ネットでは動画でも公開されている。本と読んでから、見ると細かいニュアンスがわかって楽しい。

 株式会社サルガッソー代表取締役鈴木健と、
http://www.youtube.com/watch?v=aYqGsLSAgmQ

・議事録ドリブンで会議の効率アップ
http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/0610/24/news008.html
著者の連載がWebでも読める。

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2007年10月02日

・凍
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東京ー名古屋の新幹線で読んだ。往路でも復路でも物語の中に心は引き込まれて、気づいたら目的地だった。沢木耕太郎の傑作。

登山家の山野井泰史・妙子夫妻が2002年に体験した、壮絶なヒマラヤ登山のドキュメンタリ小説である。このふたりはテレビや新聞で紹介されているのを見たことがあった。夫妻は手や足の指を、何度も凍傷で失っている。妙子夫人は両手両足で合計18本を切断しているそうだ。常人であればそれだけで大変な障害で、日常生活にも支障をきたすと思うのだが、彼らは困った風にさえ見えない。その後も難しい登山に積極的にチャレンジしているのだ。どうなってるの?と不思議に思った記憶がある。

この小説を読んで、その心理が少しわかった気がする。死と隣り合わせで心身の限界に挑戦しているときに、一番の生の充実を感じる人たちなのだ。夫妻がふたりとも、アドレナリン駆動の人生を選んでいるから勢いは倍増して、冒険は加速していく。

数年前にみた映画「運命を分けたザイル」を思い出した。ストーリーはかなり似ている。限界を超えて、超えて、超えて。人間の生きる力。「凍」に通じる感動がある。

・運命を分けたザイル
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「アンデス山脈にある前人未到のシウラ・グランデ峰登頂に挑んだジョーとサイモン。しかし天候の悪化によって、ジョーが片足を骨折する。サイモンは、2人とも命を落とすか、あるいは動ける自分だけが助かるべきかで悩み、ジョーとの命綱であるザイルを切る選択に迫られる。実話を基にしたノンフィクション文学のベストセラーを、ドキュメンタリーかと見紛うような映像で再現した一作。」

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2007年10月01日

日本語の作文技術

・日本語の作文技術
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1982年初版、文章術の古典的名著。ジャーナリスト 本多勝一氏が「読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」を目的とした作文技術を披露している。言語学的に正しい文法を講釈するのではなく、現場のノウハウを徹底的に理論化している。

特に「修飾の順序」と「句読点のうちかた」は、文章を書く人すべてが一度は読んでおくとよさそうな内容である。こうするとわかりやすくなるという説得力のある推敲例を多数示した上で、原理原則を抽出していく。

「修飾の順序」

1 節を先に、句を後に
2 長い修飾語ほど先に、短いほどあとに
3 大状況・重要内容ほど先に
4 親和度(なじみ)の強弱による配置転換

「句読点のうちかた」

第一原則 長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ
第二原則 原則的語順が逆順の場合にテンをうつ
#この他に筆者の考えをテンにたくす場合として、思想の最小単位を示す自由なテンがある

文章を書いていて迷った時、これらのルールを知っていれば、救われる黄金則だと思う。
前半で実践的な文法論が語られた後に、後半では表現論や日本語論が熱く展開されている。避けるべき表現法として「紋切型」、「繰り返し」、「自分が笑ってはいけない」、「体言止めの下品さ」、「ルポタージュの過去形」、「サボリ敬語」を挙げている。個性がなくて、手抜きの文章は美しくないということだと思う。日本語はこうあるべきという著者の思想が感じられる。

特に共感したのが、読者の感情を動かしたいならば、文章が感情的になってはいけないというアドバイスである。漫才師と同じで、笑わせるものは笑わないのが鉄則なのだ。「読者を怒らせたいとき、泣かせたいとき、感動させたいときも「笑い」と同様である。筆者自身のペンが怒ってはならず、泣いてはならず、感動してはならない。」。

笑わせてやろう、泣かせてやろうと思って文章を書くとき、人は作為の文章を書いてしまいがちである。その作為性が、無粋であったり、下品であったり、くどい印象などを読み手に与えてしまう。逆説的であるが、そうした作為を排して、自然に流れる文章を書けるようになるための技術や修行法を、この本は教えている。

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