2005年12月30日

ディアスポラ

・ディアスポラ
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今年のベストSFも、やはり、イーガンの最新の邦訳。

めまいがするほど壮大な物語。現代SF作品の最高峰。グレッグ・イーガンと同時代に生きている幸運に心から感謝したくなる。こんな作品には一生で、あと何冊めぐりあえるだろうか。邂逅である。

正直、今回は圧倒的に難解だった。この本を読む行為は作家の創造力の極限と読者の想像力の極限の知的格闘とも思える。これは極端に読者を選ぶ本だ。最新の宇宙論や量子論、先端科学の概要を予備知識として把握しておく必要がある。できればイーガンの過去の主要作品も読んでから挑戦すべきだ。そうでないと序盤から物語の意味を理解できないかもしれない。

書評したイーガン作品:

・万物理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002774.html

・祈りの海
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003779.html

・宇宙消失
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003824.html

・しあわせの理由
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003869.html

イーガンの大ファンの私でも、この本だけは序盤で何度も放り投げそうになった。しかし、イーガンが意味のない作品を書くはずがないと信じて粘ってみた。中盤で世界観を理解した後は、いっきにひきこまれた。驚愕のストーリー。もう無我夢中で読みすすめた。読後は圧倒されて、しばらく何も手につかなかった。

西暦2795年。人類は肉体を捨てソフトウェアとして仮想空間に”移入”する道を選んでいた。あらゆる物理法則から自由な世界で、人類の存在様式は過去とはまったく様相の異なるものに進化している。この世界では人は永遠に生きることができる。他者の精神と融合することもできる。自らの複製をつくって偏在することや、時間の感じ方を制御して自分の時間軸で生きることもできた。

情報ネットワークの中で生成された人工生命も、人類と同じように生きている。情報化された存在は変幻自在である。外観は好きな形態をとることができるし(外観などなくてもいいのだが)、言語を超えた超越的なコミュニケーション方法が当たり前になっている。
不老不死とあらゆる束縛から逃れたかのように思えた人類を襲う宇宙規模の危機。外宇宙への大移住計画「ディアスポラ」が始動する。人類は自らの存在の意味を探して、銀河に散らばっていく。何千年にも及ぶ果てしない旅の果てに、人類が知るこの宇宙の真理とは?。

ウルトラスーパー・ハードSFという宣伝文句がついているこの大作。本当にウルトラでスーパーハードである。イーガンはいったいこの先どこまで想像力の跳躍を続けるのだろう。読者として次の作品もなんとかついていける範囲であることを祈ろう。

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2005年12月29日

フリーの高機能画像認識 SmartOCR Lite

・SmartOCR Lite
http://www.smartread.biz/index.htm
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フリーソフトでは珍しい高機能な画像認識ソフト(OCR)。スキャナで読み取った文書データや、デジカメの画像、Web上の画像ファイルなどから、文字列を自動検出し、テキストデータとして抽出することができる。ルビや表組など複雑な背景も解析するのが特徴。
機能を強化した商用版もあるのだが、フリーのLite版でも一般的な利用者にとって必要十分な仕様になっている。読み取ったデータは、画像と一緒もしくはテキストのみのデータとして、PDF、ワード、エクセル、HTML、CSV、テキスト形式でのファイル保存が可能だ。
装飾が多い新聞の折込みチラシの画像を読み込ませてみたら、想像以上にうまくテキストを拾い上げることができた。ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムを使った高精度な認識が特徴。誤認識した場合にも、レイアウトを調整するなどして、読み取り精度を調整する機能がたくさん搭載されている。

ふだん、あまりOCRは使わないのだけれども、ブログで活用するとしたら、どんなものがあるだろうと考えてみた。

・プロジェクター投影された講演スライドの写真からデータを抽出する
・製品の紙の説明書からテキストを抽出してデジタルで再利用する
・マンガの吹き出しからテキストを抽出してブログネタにする

画像認識、音声認識、自動翻訳など、従来精度が問題とされたソフトウェアも、近年、精度が高くなってきたようで、動向を常にチェックしている。特にアナログ→デジタル変換を行うツールをうまく使いこなせれば、相当のPC作業の効率化、差をつけること、につながりそうである。

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2005年12月28日

このブログがすごい! 2006

・このブログがすごい! 2006
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書評の前に。

ところで、先日の忘年会議の報告続きがこちらにあります。大賞に選ばれたはてなブックマークの運営会社はてなの伊藤直也さんにトロフィー代わりの一升瓶を贈呈してきました。ついでに取調べ、ではなくてロングインタビューを敢行。

・無敵会議 - 「はてなブックマーク」優勝記念を渡してきた
http://www.muteki-kaigi.com/2005/12/post_2.html
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この記事自体、はやくもはてなブックマークされまくりです。
はてなブックマーク - 無敵会議 - 「はてなブックマーク」優勝記念を渡してきた
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.muteki-kaigi.com/2005/12/post_2.html

このインタビューとライティングはすべて百式管理人によるものです。私だけしか写真に登場しないため、誤解されている方がいらっしゃるようなのですが、私は実は座っていただけなんですねえ(笑)。いろいろとはてなの裏側がのぞける内容になりました。


さて、この本「このブログがすごい! 2006」の話ですが、忘年会議と同様に、編集部が独断と偏見で面白いと思ったブログを何百も紹介しています。私のブログもビジネス部門の必読ブログに入賞し、前代未聞のほめ殺し紹介をいただきました。「連邦のモビルスーツは化け物か?」という賞賛は一生忘れないでしょう。多分。

読者投票やアクセスランキング、著名人の形式審査では、絶対に出てこないような濃いブログが多数発掘されています。知る人ぞ知るブログを知りたい人には気楽に読めるし、いい本です。

■極私的このブログがすごい!2006

さて、先日の忘年会議で真性引き篭りを今年のマイベスト?ブログだと発表したところ、共感と当惑のご意見をいろいろ頂きました。調子乗って、私の愛読ブログベスト3を紹介します。

日常的にどんなブログを読んでいますか?と聞かれるのですが、知りたいことを検索して読むことがほとんどなので、特定のブログをRSSリーダーで追いかけることはしていません。でも、この3つはついついブックマークを呼び出して読んでしまうのです。

・真性引き篭り
http://sinseihikikomori.bblog.jp/
極めていまどきのネット的感性。殻にこもっているのに超クリエイティブ。ポジショニングは違うが、切込隊長と芸風が似ている気がする。とりあえず昼休みに読む。

・唯ゲーム論
http://d.hatena.ne.jp/walkinglint/
創造的傍観者、プロ・コメンテーター、思考代行者。いい具合に適当に私が気になる記事をピックアップしてくれて、あるべきツッコミを書いてくれて、おしつけがましくない”視点”を提供してくれる。コメント機能付人間RSSリーダー。

・更新日記 日曜プログラマのひとりごと
http://homepage1.nifty.com/kazuf/renewal.html
情報技術、研究、開発の話題を適度な文章量で評論している。私と関心がそっくりなため、そうそう、それは私も考えたと思ったり、先にヤラレたと思ったり。記事内容に関するリンクも多数あるため、情報源としても貴重。


さて、「そういうのが好みだったらこのブログもいいのではないですか?」という、皆さんの推薦があったらぜひ教えてください。

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2005年12月27日

なぜ日本人は賽銭を投げるのか―民俗信仰を読み解く

・なぜ日本人は賽銭を投げるのか―民俗信仰を読み解く
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お正月に人々は寺社で賽銭を投げる。神様に対して投げるという行為はかなり乱暴な動作であるし、願いをかなえてもらう対価として小銭というのも、よく考えると妙である。「なぜ日本人は賽銭を投げるのか」という疑問につながる。

貨幣はケガレの吸引装置であり、神社はケガレの浄化装置であるというのがこの本の結論である。参拝者が賽銭を投げ込む行為は、ケガレがよりついた貨幣を投げ捨て、カミの浄化機能で清めてしまう意味があるのだそうだ。

そして、日本神話では黄泉の国から帰還したスサノオが海で禊をしたときに、幾柱もの神々が目や鼻から誕生したように、ケガレを祓え清める展開からは新たなカミが生まれる。だから寺社がケガレのゴミ捨て場になってしまうことはない。

贈与交換という人類学の経済観念からの考察もある。通常、贈与交換はモノで行われる。モノを贈られたら、贈った方の立場が上位になってしまって、落ち着かないのでお返しをする。この繰り返しによって上下関係がなくなり、平行で安定した人間関係、すなわち絆が強化されていく。贈与交換はモノを介した連続的なコミュニケーションなのである。

ところが貨幣が交換に使われると、単なる経済的な取引になってしまって、コミュニケーション機能は失われてしまう。手切れ金や退職金が現金であるように、貨幣の支払いは、関係を絶つことにつながる。お歳暮、お中元に同金額の現金を支払いあうようなものであり、人間的な絆の強化にはならないわけである。

だが、贈与には、脱社会的関係における贈与という特別なモードがある。賽銭を投げたり、厄年の人間がお金を撒いたりする儀式がそれにあたる。この場合のお金はケガレのよりついたものであり、それを投げ捨てている儀式だから、カミとの間に上下関係が生じるわけではない。社会関係や経済行為とはまったく次元の違う、儀式的行為だと解釈されている。

この本は著者が書いた民俗学についての論文やエッセイの寄せ集めで構成されている。このほかにも日本のさまざまな習俗の背後にある意味が解説されている。

・日本人の神
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003868.html

・日本人はなぜ無宗教なのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001937.html

・仏教が好き!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001708.html

・「精霊の王」、「古事記の原風景」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000981.html

・脳はいかにして“神”を見るか―宗教体験のブレイン・サイエンス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000134.html

・禅的生活
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002275.html

・神の発見
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003728.html

・科学を捨て、神秘へと向かう理性
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002634.html

・神の発明 カイエ・ソバージュ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000314.html

・古代日本人・心の宇宙
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001432.html

・日本人の禁忌―忌み言葉、鬼門、縁起かつぎ…人は何を恐れたのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000809.html

・宗教常識の嘘
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003966.html

・神道の逆襲
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003844.html

・古事記講義
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003755.html

・日本の古代語を探る―詩学への道
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003206.html

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2005年12月26日

もうひとつの愛を哲学する―ステイタスの不安

・もうひとつの愛を哲学する―ステイタスの不安
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ドイツのフィナンシャルタイムス紙 年間最優秀経済書受賞作品。

大人の人生はすべて、二つのラブストーリーで決まる。第一は性的な愛の探求の物語。もうひとつは世間からの愛=ステイタスの物語。他者に認められたいという思いは、組織中心の時代になって、一層、一般的で、切実なものになってきた。

米国の労働者のうち、他人に雇われている人間の比率は、1800年には20%だったものが、1900年までに50%になり、2000年までに90%に達したという。500人以上の組織に所属する人間の比率は1900年には1%だったのに対して、2000年には55%に達した。大きな会社組織の中で、一定のステイタスを得たい人間が過半数を占めることになった。それは希望の裏返しとしての、ステイタスの不安に悩む人々の社会になったということでもある。

「勝ち組」「負け組」という言葉もステイタスの不安が生んだ言葉だろう。能力主義社会は、富めるものは役に立つものであり、貧しいものは愚かで役に立たないものだという価値観を人々に押しつける。古代では腕力が強い人間が勝ち組で、弱い人間は負け組であった。いかにキリストの正統な教えに近いかが社会的地位を決めた時代もあった。

ステイタスの不安の根源は、そうした時代状況や権力関係がつくりだす画一的な価値観にある。この本では、近代以降の社会における、ステイタスの不安と超越の歴史が語られる。世間からの愛を感じる、その感受性を変えることで、人はもっと自由に生きることができると説く。


ステイタスの不安の成熟した解決は、ステイタスとはさまざまに異なる観衆から受け取ることができるものだと認識するところから始まるーーー産業資本家からも、ボヘミアンからも、家族からも、哲学者からも。そして誰を観衆に選ぶかは、わたしたちの自由だし、わたしたちが欲するままだと認識するところから始まる。

哲学、芸術、政治、宗教、ボヘミアの5つの分野で、人々がいかにオルタナティブな価値観や生活経済の基盤をつくり、ステイタスの不安を超越してきたかが、後半の主要テーマとなっている。これらの分野では大衆に認められずとも、既成の価値観に対して、批判的価値観のヒエラルキーを打ちたて、独自の社会的ピラミッドの中に生きることを選んだ人たちがいる。

プライドを持って生きること、少数でも尊敬しあえる人間関係を築くこと、金銭的報酬以外の報酬で豊かなライフスタイルを形成すること。愛を求める観衆を誰にするか、理想とする価値観は何か、を自分なりにとらえなおすことで、人はもっと幸福で満ち足りた社会関係をつくりだせるはずだというのが著者の結論である。

たとえばその「観衆」がブログやメールマガジンの読者だっていいはずだ、と思う。インターネットで個人の情報発信が盛んな理由、オープンソースプロジェクトに腕のあるプログラマが好き好んで参加する理由、ソーシャルネットワークで日記を書くのが楽しい理由。そうした行為の多くは、この本が語るもうひとつの愛の物語と関係が深そうな気がしている。

・世間の目
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002046.html

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2005年12月25日

ゲームロボット21

・ゲームロボット21
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2歳の息子へのクリスマスプレゼント。

何にしようかなあと相当迷いましたが、自分も子供の頃遊んだゲームの復刻版にしました。

「1981年に発売され、3年間で100万個を売り上げた大ヒット作「ゲームロボット九」。あれから24年、デザインやサウンドを一新し、前作にはなかった新ゲームも加わり2005年「ゲームロボット21」として堂々復活しました!」

ということは、私は11歳の頃遊んでいたわけですね。2歳にはちょっと難しいかも?いや、遊べるゲームも入っていたはずと信じて、これを枕元においておきました。

光と音を使った21種類のゲームが内蔵されています。私が好きなのは03の音感トレーニング。

01 演奏にトライ!
02 作曲にトライ!
03 音感トレーニング
04 サウンド神経衰弱
05 集中力トレーニング
06 メモリー間違い探し
07 光と音を追え!
08 3つの宝さがし
09 潜水艦を見つけろ
10 ピコピコモグラをやっつけろ
11 帰ってきたピコピコモグラ
12 がんばれゴールキーパー
13 連射にチャレンジ
14 がんばれ消防士
15 判断力トレーニング
16 たし算にチャレンジ
17 ひき算にチャレンジ
18 かけ算にチャレンジ
19 一触即発バクダン
20 スロットにトライ!
21 ロボットビンゴ

詳細なレポートがなぜかインターネットウォッチにあがっています。

・気になるe-Toy遊んでレポート
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20051020/toy198.htm

とりあえず演奏モードで彼は遊んでいます。

このハナヤマというメーカー、以前取り上げた知恵の輪を販売しているメーカーです。おもちゃは大人の世代が子供の頃に遊んだものを自分の子供に与えるという流れができると、息の長いロングセラーになるのかなあと思いました。さて、学研の「電子ブロック」は何歳になったら買ってやろうか(自分がほしいわけですが)。

・大人の知恵の輪 キャストパズルシリーズ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001376.html

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2005年12月24日

図解 ブログ・マーケティング

・図解 ブログ・マーケティング
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先日、私が企画した「デジタルコンテンツ2006」で、主な話題のひとつがブログマーケティングだった。企業はネットコミュニティとどうつきあうか、関心のある参加者が多かった。

・“Web 2.0”の導入、従来メディアは「恐る恐る」
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2005/12/20/10287.html

このイベントではどちらかというとコミュニティ側から見たブログの企業利用の理想が語られた。企業は「外国人に道を尋ねられた状態」でお客さまから親切にいろいろ教えてもらえるような関係を作るべきだという発言は、会場でも表現の面白さに笑いが起きると同時に、その意味に共感した人も多かったようだ。

どうしたら企業は、そんな理想的な関係のインタフェースとしてのブログをつくることができるのだろうか。ネットマーケティングの専門家、カレンの四家さんが、簡潔にまとめたのがこの本である。

・shikeの日記
http://d.hatena.ne.jp/shike/

・カレン広報室 ベスト・メッセージングBlog
http://www.current.co.jp/blog/

トラックバックの数を表示することで「行列を見せる」機能だとか、担当者の雑談から顧客とのコミュニケーションへひきこむ「商談の場をつくる」がある、という風に、ブログが企業の営業活動において、どのような役割を果たしえるのか、ネットに詳しくないビジネスマンにもわかりやすく説明されている。

企業ブログには大きく次の3類型があると定義される。

・メッセージング型
 販売促進を目的にしてお客様に情報発信を行い商品理解から共感形成を目指す。

・コミュニティ型
 消費者の声を主役にしたコミュニティを形成し自社や商品のファン層拡大、顧客間交流、集客促進、販売促進へつなげていく。

・ブランデッド・エンターテイメント型
 映画・テレビ番組・演劇などエンタテイメントコンテンツを利用してブランド訴求を行う。

それぞれ多数の成功事例が紹介されている。著者自身がてがけたケースも多いので、試みの意図や、現場の雰囲気もわかってくる。

有名人やオピニオンリーダーに企業の宣伝ブログを書いてもらうという手法だとか、開発や販売の担当者が顔出しで書く手法など、いろいろ紹介されているけれど、インパクトの点では社長ブログが最強だろう。

久々にGoogleで「社長ブログ」を検索したところ、上位にはこんな顔ぶれが表示された。
・渋谷ではたらく社長のblog
http://shibuya.ameblo.jp/
サイバーエージェント

・livedoor 社長日記 - livedoor Blog(ブログ)
http://blog.livedoor.jp/takapon_ceo/
ライブドア

・高橋がなりブログ 虎の声 - SOD
http://blog.livedoor.jp/sod/
ソフトオンデマンド

・【クマガイコム】GMOインターネット社長熊谷正寿のブログです
http://www.kumagai.com/
GMO

・エキサイト社長、山村幸広のインターネットブログ
http://blog.excite.co.jp/yamamura
エキサイト

やはり勢いのあるベンチャー企業ばかりだ。多くはインターネットビジネスの企業である。社交的な個性派で、いかにもワンマンそうな社長が多いのが特徴だろうか。上場企業の代表でありながら、歯切れの良い意見をどんどん書いているのが見所。リスクもあるが、日々の発言で「顔が見える」というのはネット上でのコミュニケーションでは強力だ。会社案内で社長が正装して椅子にふんぞり返ったような写真で「顔が見える」のとはわけが違う。

企業のインタフェースとしてのブログ、2006年はどんな展開があるだろうか。巻末の、シアトル在住のコンサルタントアドイノベーター織田浩一氏とのチャット対談公開もライブ感があって興味深い内容だった。

・Ad Innovator
http://adinnovator.typepad.com/ad_innovator/


・できる 100ワザ ブログ アフィリエイトも楽しめるアクセスアップの実践テクニック
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004087.html

・アルファブロガー 11人の人気ブロガーが語る成功するウェブログの秘訣とインターネットのこれから
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003916.html

・ウェブログ超入門!
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001771.html

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2005年12月23日

人に言えない仕事はなぜ儲かるのか?

・人に言えない仕事はなぜ儲かるのか?
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裏稼業の暴露本のようなタイトルだが、内容は税制、税金対策についての本である。つまり、税金を払わない、ごまかせる、水面下のビジネスはとにかく儲かるという話につながる。

一般にはあまり知られていない商売の裏側もでてくる。


なぜソープランドの経営は違法なのに堂々と営業できるのだろうか?じつはソープランド業界には、売春防止法をクリアするための巧妙な建前がある。

その建前とは、自分たちが営業しているのは、高級感あふれる「お風呂屋さん」で、店にくるお客さんは入浴料を払って、ゴージャスな入浴を楽しんでいるだけという理屈だ。

個室のなかで、何かいかがわしい行為があっても、それは自分たちの知らないお姉さんがお店の中に勝手に入ってきて、お客さんと自由恋愛をしているのであって、自分たちの営業とはなんら関わりがない。

ソープランドは自由恋愛の場であると言う建前を知って衝撃である。

風俗にせよ、違法ドラッグにせよ、ニセモノ販売にせよ、多くのアンダーグラウンドビジネスは、禁止する法律があるから市場が形成されているのだと著者は指摘している。麻薬が合法化されているオランダでは、日本では闇市場で価格が高騰している薬が、お小遣い程度の価格で買えるそうだ。禁止する法がなければ需要と供給の市場メカニズムに従って生産と流通が増え、価格は安くなる。禁止が背後で誰かを儲けさせている。

裏稼業の中で、私が気になっていると同時に迷惑を蒙っているのは、毎日何百通も受けとるスパムメールのビジネスである。この内情については、オライリーがドキュメンタリ本を出している。

・スパマーを追いかけろ―スパムメールビジネスの裏側
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メールは送るのはタダなので、1万通に1通、10万通に1通でも反応があれば、広告ビジネスとして成り立ってしまう、と言われていた。だが、スパム業者の数も増えてきた。そろそろ反応率も100万分の1だとかになってしまうのではないか。スパム業者も採算割れを起こしてはいないだろうか。これに対して、カタギには、アンチスパムソフトの市場があってスパム増大に伴い、大きくなっている。

すると、ふとこんなことを考える。

スパム業者とアンチスパム業者、どちらが儲かっているのだろうか?

もしかして既に、後者ではないか?

税金対策にせよ、裏稼業にせよ、対策ビジネスにせよ、立ち回り方の才覚一つで儲けが決まる。人に言えない仕事も、言える仕事も、儲けるには創意工夫なんだよという妙な教訓を得た一冊であった。

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2005年12月22日

次世代デスクトップアプリケーション デスクトップドドド

・次世代デスクトップアプリケーション デスクトップドドド
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ある意味で今年紹介する中で、最強のアプリだ。ある意味で。

次世代デスクトップアプリケーション『デスクトップドドド』はデスクトップを猛烈にドドド化する。ドドドの大きさや配置は任意にカスタマイズできるだけでなく、振動の幅や速度までも自在に変更できるのである。

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いまひとつ乗り切れない雨の月曜日だとか、気合が必要なプレゼン作成時に、なんとしても勢いや迫力が欲しいときに、デスクトップドドドは心強い味方である。キャプチャだけで使い方や効用はわかっていただけると思うので、敢えて説明しないことにする。

ちなみにこのキャプチャーの背景に映っているページはなかなか面白かった。敢えてURLをドで隠したわけではないのだが、偶然隠れてしまったので、気になった方は、ドドドの気合で探して欲しい。

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2005年12月21日

できる 100ワザ ブログ アフィリエイトも楽しめるアクセスアップの実践テクニック

・できる 100ワザ ブログ アフィリエイトも楽しめるアクセスアップの実践テクニック
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お、いい本です。

人気ブロガーである田口和裕さん、松永英明さんが書かれたブログ入門書。入門書籍の名門ブランド、インプレス「できる」シリーズから出版である。ブログの開設方法や投稿の仕方といったハード的な事柄はまえがきで取り上げられるだけにとどまる。本編はブログの内容の書き方や、人気の出し方、アフィリエイトでの儲け方、継続のための楽しみ方など、ソフト面のノウハウに集中している。

ブログを作って一週間とか一ヶ月やってみたけど、誰にも見てもらえないし、何にもいいことなくて、ブログを楽しくするには、どうしたらいいんだろう?という人に絶好の本であると思う。

「インパクトのあるタイトルをつけよう」「タイトルに有名人や事件の名前を入れよう」。これだけでも随分効果があるし、「トラックバックで読者を呼び込もう」「PINGを送信して更新を告知しよう」と組み合わせれば、100人や200人の読者を呼び込むのは簡単である。本文に何が書いてあっても(変な話、本文がなくても...)、それくらいは確実にいけるはずだ。

「自分のブログ内の関連記事にリンクを張ろう」は忘れがちであるがとても有効な方法で、私のブログでも効果が実証されている。

著者はたまたま友人だったので、よく知っているのだが、著者の松永さんは特に、自分のブログの人寄せに必死だな(藁)的な人物である(笑、いやこの文脈では褒めてるんですよ!)。時事的な問題や人気タレントの話題を先取りしては、要約記事や関連記事を書いて人気を集めてきた。そのやり方がアグレッシブ過ぎて、私の周りのブロガーでは客を取りに行く積極的手法を「ことのは式」と呼んでさえいるほどである。

・絵文録ことのは
http://kotonoha.main.jp/

・ブログの「次」はこれが来る。DWS(デーサイ)=データベース→サイト化ツールの時代 [絵文録ことのは]2005/11/29
http://kotonoha.main.jp/2005/11/29dasi.html
タイトル絶妙の最近の例。

もうひとりの田口さんは音楽をはじめトレンドに詳しいライターなのだけれど、彼も人寄せがうまい。うまいというか、うますぎて大変なことになっている。

・rickdom
http://www.rickdom.com/田口さんのブログ。

・rickdom: パキシル
http://www.rickdom.com/archives/000744.html

抗うつ剤で自殺の危険増 18歳未満への投与禁止(Yahoo!ニュース)
うーん、このパキシル、僕毎日飲んでるんだけど、ほんとに止めたい。
サラリーマン時代軽鬱で通院してたとき処方されたんだけど、いまだにやめられない
何度かやめようとしたんだけど、2日飲むのを止めると、頭がピリピリしびれてなにもできなくなる。医者にも相談したんだけど、薬を売りたいためか、もうしばらく続けてみてくださいと言うばかり。
仕事の隙間を狙ってがんばって断薬するしかないんだろうな。

この記事は、薬関係に関心のある人たちがコメントを書き始めたら掲示板化してしまい、コメント数919、印刷すると200ページを超えてしまうほどの盛り上がりになってしまった。「パキシルで検索してgoogleは7個目になった」との本人談。

このような人寄せ実績のある二人が経験から抽出した100のワザ集なので、納得のいくものばかりである。「「荒らし」は放置するのが無難」という対処法なども、経験から学んだ人でないと出てこない結論である気がする。

ブログを始めたけど人気がなくて悩んでいる人はこの本のワザを黙っていくつか実行してみるといいと思う。ブログの運営のための初心者本としてオススメ。


ところで、昨年このブログは影響力のあるブログ投票「アルファーブロガー」のコンテストに選んでいただきました。読者に選んでいただけたことが大変な励みになりました。昨年投票していただいた方ありがとうございました。

今年も同じコンテストがあるそうです。第一回受賞者として宣伝を主宰者から依頼されています。

・アルファブロガーを「もっと」探せ-2005 - Alphabloggers.com
http://alphabloggers.com/
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私のブログに限らず、いいと思うブログを投票してあげてください。ブログの活性化につながる企画だと思います。また選ばれるように私もブログを強化していこうと思っています。

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2005年12月20日

忘年会議報告3、ジャパンブロガーカンファレンス、デジタルコンテンツ2006

1日空いてしまいましたが報告の第3弾です。

Japan.internet.comにも詳細なレポートがあがっています。

無敵会議で選ぶ「2005年 究極 Web サイト」と、検索ランキングから見る2005年のトレンドとヒットの法則
http://japan.internet.com/busnews/20051220/4.html

さらに司会の2人のつぶやきや、スライドの写真まで記録されている

・[ス] 忘年会議2005ログ (残りはあとで書く)
http://www.lacrime.net/item_1601.html

で、裏の裏までわかってしまう感じです。


第3部の会議では、以下のような問題が出題されました。個人と6人のワーキンググループで発想を競い合いました。


2006年末、"KAIZEN","KEIRETSU"に続いて、"MUTEKI"が英単語のリストに加えられた。この年のはじめ、インターネット業界に察そうと登場したムテキエイプコミュニケーション者はネットスケープの再来と呼ばれた。

おどけた猿の顔がトレードマークのこの新興ベンチャーは人々の生活をがらりとかえることできる無敵ブラウザーをリリースした。イヌ年だったのにもかかわらず、だ。

そして無敵ブラウザーは「戻る」「すすむ」「更新」「ホーム」に続く新しいボタンを搭載していることが特徴であった。

そのボタンは、今までのブラウザーが着目していなかった
(  ?  )と連動し、
(  ?  )を実現することにより、現代人のストレスの一つである
(  ?  )を解決することに成功していた。
その名も(  ?  )ボタン。

候補5案を主宰の二人が選出し、会場投票を行った結果、優勝したのは以下のアイデアでした。


そのボタンは、今までのブラウザーが着目していなかった
(ブラウザ以外のアプリケーションが開いているファイル)と連動し、
(ユーザの作業目的の予測)を実現することにより、現代人のストレスの一つである
(そもそもなにやろうとしてたのか忘れちゃう)を解決することに成功していた。
その名も(われにカエル)ボタン。

優勝チームには、主宰の二人が選んだアップルのマイティマウスを6個(人数分)差し上げました。

・Apple Mighty Mouse
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このマウスは逸品。

スポンサーのYahoo! Japanさんから今回も豪華なおみやげが全員に配布されました。スタッフブログにも当日のレポートを発見。

・Yahoo!ブログ - Yahoo!検索 スタッフブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/yjsearchblog/20013757.html

関係者各位と参加者の皆さんに感謝をお伝えして、今年の忘年会議も終了しました。今年も本当にみんなありがとう。来年も楽しい忘年会議を開催できるよう、がんばりたいとおもいます。

■ジャパンブロガーカンファレンス、デジタルコンテンツ2006

ところで、ここ数日、イベントを連戦していました。

報道された記事を報告代わりに紹介します。


12月16日 【ジャパンブロガーカンファレンス】
「ブログは自分を伝えるブランドに」有名ブロガーがブログの魅力を語る
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/event/12253.html

12月17日 【忘年会議2005 Sponsored by Yahoo!検索】
Japan.internet.com Webビジネス - 無敵会議で選ぶ「2005年 究極 Web サイト」と、検索ランキングから見る2005年のトレンドとヒットの法則
http://japan.internet.com/busnews/20051220/4.html

Yahoo! JAPANの検索データから浮かび上がるトレンドとヒットの法則
http://bb.watch.impress.co.jp/cda/event/12252.html

12月19日 【日本印刷技術協会 デジタルコンテンツ2006】
“Web 2.0”の導入、従来メディアは「恐る恐る」
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/event/2005/12/20/10287.html
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2005年12月19日

駅伝がマラソンをダメにした

・駅伝がマラソンをダメにした
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「お正月はどう過ごされるのですか?」と聞かれるのだが、私の場合、まったく面白い答えができない。子供の頃からずっと、家族と紅白歌合戦を見て、行く年来る年を観て、年越しそばを食べて寝るだけの、典型的な日本の年越しスタイルを何十年も続けているのだから。

そして2日、3日は何をするのかというと、家から歩いて1分の国道に出て、箱根駅伝の往路復路を応援するわけである。走者を見送ったら、母校の応援者が集まる場所があるので、そこへ行き、校歌を歌って帰る。新聞社の配る旗ももらって喜んでいたりする。同じような過ごし方をしている近所の友人知人や親戚と顔を合わせたりもする。

お正月の風物詩に欠かせない駅伝なのだけれど、真剣にスタートからゴールまで観ているわけではない。だらだら観ている。駅伝という競技についても詳しいことは知らない。背景がわかったら面白そうだなと毎年思っていたのだが、いい新書が刊行されていた。

この本はジャーナリストの駅伝論。内容のほとんどは箱根駅伝の話である。駅伝批判かと思わせる題名であるが、著者は駅伝大好きな人間で、駅伝の魅力をたくさん語っている。あまりに駅伝が魅力的なのでマラソンをダメにしてしまった、という程度の意味である。
箱根駅伝は1987年に日本テレビが中継を開始してから、「甲子園化」したそうである。陸上の長距離の選手たちは、全国放送される駅伝に憧れて大学に入ってくる。かつてはマラソンなどの選手が息抜きに箱根を走っていたそうだが、90年代に入ってからは、男子マラソンが衰退し、駅伝が長距離のゴールになってしまったそうだ。

大学としても1月は入試の願書の受付時期である。テレビでの選手の活躍は大変な宣伝効果を持つ。特に知名度の低い新興校にとって意味は大きい。ケニア留学生を起用して箱根の常連になった山梨学院大学などは、駅伝をうまく宣伝に使った例であるが、最近では伝統校までも、駅伝強化に乗り出し始めているらしい。

主要各校の歴史や近況が細かくまとめられている。なんといっても注目は4連覇を達成し5連覇に挑戦する駒澤大学の動向であろう。立役者である大八木監督の指導方法や戦術が分析されている。今年も強そうである。復路を重視しているらしいので、今年は注目してみよう。

長い練習の期間をチーム一体となって頑張るのためには監督の役割は大きい。著者は主要校の出場選手の髪の長さを調べた話が面白い。すると髪が長いロン毛派が11校、短髪派が8校という結果になった。そして優勝記録との関係を分析すると、


このロン毛派と短い派の比較に何の意味も見出せない人もいると思うが、日テレ時代になってからの優勝校を振り返ってみると、ロン毛校の学校は、1990年、91年に連覇した大東文化大と、96年優勝の中大しかない。そのほかはすべて短い派の大学が優勝しているのだ。

髪の長さや服装には指導者の個性が表れるからだと著者は説明している。長距離の世界では、監督が食事や睡眠も含めて生活全般を管理できなければ、強い選手が育たない。髪の長さと優勝回数の関係は偶然ではないはずだという。髪の長さを気にして、今年は観戦してみよう。

さて、観戦には日テレの中継映像を見ながらNHKラジオの中継を聴くのが著者のスタイルだと紹介されていた。CMの中断がなく、NHKが独自の中継者を走らせているため、情報も濃いらしい。今年はそうしてみよう。ちょうど忘年会議のおみやげでYahoo! Japanさんからラジオをもらったし。

・SAIJO'S箱根駅伝・金利HOMEPAGE
http://www31.ocn.ne.jp/~j_saijo/
駅伝に大変詳しいサイト。通過時刻予想があるため、沿道の応援者にも参考になる。

『東京箱根間往復大学駅伝競走』
http://www.ntv.co.jp/hakone82/main.html


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2005年12月18日

満員御礼 忘年会議2005 報告第2弾

ランキングの発表に続いて、スポンサーのYahoo! Japanの関さんから、今年のキーワードランキングと分析がありました。

1位 2チャンネル
2位 Google
3位 楽天
9位 Livedoor
12位 Mixi
18位 壁紙
39位 価格
50位 たまごっち

・Sailing Notes: 忘年会議2005に行ってきました
http://www.sailing-notes.com/2005/12/2005_1.html

を読むともっと詳しい内容がわかります。

そして、「主宰者2006」今年の総括と来年の予測を主宰の二人がお話しました。私の部分のプレゼンを公開します。




この資料はパワーポイントを「いきなりPDF FlashPaperでFlashに変換しています。PDF版はこちら

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2005年12月17日

満員御礼 忘年会議2005 報告第1弾

3年目の忘年会議も無事、満員御礼、終了いたしました。たくさんのご参加とご支援ありがとうございました。

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例年通り、参加者の究極サイト投稿の中から、主宰の二人が、独断と偏見でベスト10を選出しました。まずは報告第一弾として今年の忘年会議のベスト10を発表しました。

10位 自分のサイト
自分のサイトを究極のサイトとして投稿された方が何人もいました。その考え方が最高だと思って、10位に入賞です。

9位 「30日間0歳生活」
http://baby30days.exblog.jp/

8位 「おいしゃさんのタマゴ」
http://white-bears.cocolog-nifty.com/top/

7位 「広告会議室」
http://www.koukokukaigisitsu.com/

6位 「○○だけど何か質問ある?」シリーズ
http://d.hatena.ne.jp/dangerous1192/20051128/p1

5位 「アキバBlog」
http://blog.livedoor.jp/geek/

4位 「コトノハ」
http://kotonoha.cc/

3位 「sidefeed」
http://sidefeed.com/

2位 「最速インターフェース研究会」
http://la.ma.la/blog/

1位 「はてなブックマーク」
http://b.hatena.ne.jp/

はてなブックマークはユーザにとってもブロガーにとっても、便利で楽しいコミュニティでした。1位の記念品として「最優秀賞 あなたが究極」というラベルの日本酒一升瓶を進呈いたしました。

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詳細なレポートは参加者による以下のサイトが詳しいです。

・たつをのChangelog
http://nais.to/~yto/clog/2005-12-17-3.html
・ueBLOG: 2005/12 無敵会議 忘年会議
http://ash1no0to.dyndns.org/htdocs/archives/2005/12/200512.html
・Sailing Notes: 忘年会議2005に行ってきました
http://www.sailing-notes.com/2005/12/2005_1.html

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2005年12月16日

マイクロソフトの次世代ゲーム機 Xbox 360 ファーストインプレッション

マイクロソフトの次世代ゲーム機Xbox 360ですが私はamazonで事前予約で入手しました。こう書くと、熱心なXboxファンなんですねえと思われそうですが、2003年のXBOX発売時には、報道陣つめかける渋谷ツタヤに、早朝から並んで購入した一人でした。今回はそれと比較すると、燃えておりません。

・Xbox 360 発売記念パック(初回限定生産) 特典 ファイナルファンタジーXI ベータバージョン付き
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ゲームはというと、


・リッジレーサー 6 特典 カレンダー付き: ゲーム
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一緒に買った「リッジレーサー6」はゲーム雑誌のレビュー評価も高かったですが、大満足です。レースゲームが特別好きというわけでもない私でも、面白さが伝わってきます。グランツーリスモシリーズのように、運転のリアルさの極限を追求するのではなく、ゲーム性を極めた内容です。多少、ハンドルワークが下手でも、エンジンを瞬時に加速する”ニトロ”システムをうまく使えば、上位に入賞できるから、快感です。

ハードウェアのパワーはうわさどおり、凄いようです。

高機能なパーツを惜しみなく採用した結果、原価割れしているようだという、報道もありました。

・「赤字価格」のXbox 360、原価はいくら?
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0511/24/news027.html
「同社によると、Xbox 360(プレミアムパッケージ)の製造・テストに掛かる
コスト総額は推定552.27ドル、これに対して小売価格は399ドルだ。」


さて、以下、勝手に私見を述べてみます。Xboxってどうよ?。

期待はしているのですが、これが日本でヒットするには今のままでは厳しそうです。

スタートは失敗したようです。

・NIKKEI NET:企業 ニュース
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20051213STXKC024513122005.html

「Xbox360」、出足は低調・従来機の約半分か
 ゲーム情報誌出版のエンターブレインは13日、マイクロソフトが10日に日本で発売したゲーム機「Xbox360」の最初の週末販売台数が約6万2000台と、2002年2月に発売された従来機Xboxの最初の週末に比べ約半分にとどまったと発表した。

マーケティングが前回同様、海外仕様な気がします、マイクロソフト。

エンジンパワーで売ろうとしても、日本ではなかなか売れそうにないんですよね。

広告のキャッチがまずだめです。

「Jump in」「ゲームはハイデフへ」。

・XBoxのユーザ参加型サイト
http://jump-in.jp/
・Xbox公式サイト
http://www.xbox.com/ja-jp/default.htm

なんですかそれは???。

「未知なる世界へ飛び込もう」と「高精細エンタテイメント」ということらしいのですが。

ハイデフは売りになるのでしょうか。

3D描画の限界に挑むことがユーザエクスペリエンスの向上に直結するようなタイプのゲームって、つまり、HALOやQuakeのようなFPS(第一人称視点の三次元アクション)以外はあまりないだろうという気がしています。でも、日本ではFPSが、あまり盛んではないような気がしています。私は大好きなんですけど...。

RPGやシミュレーションの場合、美しい3Dが必要なシーンというとシナリオ進行の幕間映像だと思いますが、これってリアルタイム描画じゃなくても、ムービーで間に合ってますよね、FFなど見てそう思います。

つまり、日本の公道でスーパーカーをぶっ飛ばせる道がないのと同じで、この凄いマシンスペックを使うニーズが日本ではあまりないのかもしれないと思います。そういえば、誰かが言っていましたが、日本人は、3D描画の映像って萌えにくいですものね。

でも、チャンスがあるとすれば。。。

今度のXBOX360にはWindowsとの連携機能があります。パソコンのメディアファイルを、XBOXで再生し、テレビで見られるという機能です。今後、アップデートされそうですが、なぜか、最初のバージョンは対応が中途半端なのが残念。

WindowsPCとの親和性というのは、他社にはできないことであり、日本市場における差別化として有効だと私は思っているのですが。

いろいろ書いてしまいましたが、発売日に自腹で購入しているくらいですし、最初のゲームも良かったです。私は、マイクロソフトの挑戦には大変期待しています。PCユーザのためのゲーム機という方向性で、なにかやってくれないかなあ。

・Passion For The Future: 私の好きなゲームたち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000745.html


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2005年12月15日

ホテル戦争―「外資VS老舗」業界再編の勢力地図

・ホテル戦争―「外資VS老舗」業界再編の勢力地図
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高級ホテルの予約サイト 一休.comは、ときどきチェックしている。メディアで話題の一流ホテルに、1万円台という格安のプランがみつかったりして嬉しくなる。

一泊5万円、6万円というクラスになると手が出ないが、この価格帯の宿泊が、いま市場で急成長しており、多数の外資系ホテルが東京へ進出し、サービス競争を繰り広げているようである。

・[一休.com]高級ホテル・旅館予約
http://www.ikyu.com/

日本のホテルには暗黙の格付けがある。

【御三家】

帝国ホテル
ホテルオークラ東京
ホテルニューオータニ

は私も知っていたが、新しく新御三家も成立している。

【新御三家】

フォーシーズンズホテル椿山荘 東京
パークハイアット東京
ウェスティンホテル東京

そして、この本の著者によると2005年以降に開業する新しいホテルによって新々御三家まで誕生しようとしているそうである。

【新々御三家】

マンダリン オリエンタル 東京(2005年開業)
ザ・リッツカールトン 東京(2006年開業)
ザ ペニンシュラ 東京(2007年開業)

旧来の御三家やそれに準じるクラスの国内資本系では、圧倒的なブランドと資金力の帝国ホテル以外は、外資の進出に相当の苦戦を強いられているようだ。

外資が一斉に東京に参入を始めたのは、

・海外観光客の増加
・東京の地価の下落による外資の参入意欲高まる

といった理由があり、地方都市では先行して外資ホテルが次々に成功をおさめてきた。東京はその内外対決の最終決戦の場となっているらしい。

高級ホテルは生き残りをかけて、

1 スモールラグジュアリーホテル
2 グランドホテル
3 老舗ホテル

といったポジショニングを明確にし、差別化をはかっているそうである。ホテルの要は一流のサービスを行うことの出来る人材。ホテルマンの人材獲得合戦も盛んになっている。お客の要望にきめ細かに応えるという部分では、国内資本のホテルは定評があったというが、経営とのバランスを取る点では外資の方が強いという。

この本は最近話題の高級ホテルの内情(客室稼働率、平均単価、経営状況)や、業界地図が説明されているのが参考になった。ウェスティンとシェラトン、ザ・リッツカールトンとマリオット、コンラッドとヒルトンは、それぞれ経営母体が一緒の系列関係にあるなどは知らなかった。各グループの成り立ちの丁寧な説明もある。ホテルについての薀蓄が語れるようになってうれしい一冊。

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2005年12月14日

脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説

・脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説
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私は心脳問題に答えをみつけたと断言した挑戦的な仮説本。

知情意(知性、感情、意思)、記憶と学習といった脳のはたらきは、脳の中の無数の機能モジュール(こびと)の相互作用の結果であると、脳科学では考えられている。「私」=意識は、この一連のプロセスを川とみなすなら、一番上流にいて、全体をコントロールする存在だと、従来は考えられてきた。

しかし、著者は、意識は川の最下流にいて、小びとたちの民主的な議論(相互作用)の結果を、ただ眺めている(追体験する)だけの受動的な存在なのだという仮説を提案している。そこには、あたかも意識が上流にいるかのような錯覚をさせる、無意識の仕組みがあるのだという。根拠にする研究データも含めて、ノーレットランダーシュのユーザイリュージョンに近い意見である。

だから、


意識は小びとたちの決定に従っているのに、あたかも「意識」が「自分」を従えているかのように錯覚していると考えても、何も矛盾はないのだ。

意識は小びとたちの自律分散的な処理を眺めた結果、個人的体験としてエピソード記憶を行うために存在していると、意識の存在理由まで説明している。受動仮説は、<私>とは何かという哲学的問題、バインディング問題、クオリア問題に対して、明確な答えを打ち出せると著者はいう。

この本は一般向けの要約なので、詳しい理論はその後公開されたこちらの学会論文が詳しい。

・ロボットの心の作り方
―受動意識仮説に基づく基本概念の提案―
http://www.maeno.mech.keio.ac.jp/Maeno/consciousness/rsj2005kokoro.pdf

さて、読み物として、心脳問題のトピックを統合しようとする面白い内容だったのだけれど、本当にこの仮説が正しいのかどうかは、よくわからない。「私」も「意識」も錯覚であるという結論なのだが、じゃあ、錯覚ではない正しい知覚とはなんなのだろうか。

検証することができるとすれば、著者は、心のメカニズムを理論解明したので心を持つロボットを造ることが可能になったと述べているので、実際にこの考え方で誰かが心を持つ機械を作ってくれるのを待つしかないだろう。

・ユーザーイリュージョン―意識という幻想
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001933.html

・脳のなかの幽霊
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003130.html

・脳のなかの幽霊、ふたたび 見えてきた心のしくみ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003736.html

・脳のなかのワンダーランド
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002735.html

・マインド・ワイド・オープン―自らの脳を覗く
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002400.html

・脳の中の小さな神々
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001921.html

・脳内現象
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001847.html

・快楽の脳科学〜「いい気持ち」はどこから生まれるか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000897.html

・言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000718.html

・脳と仮想
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002238.html

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2005年12月13日

花街 異空間の都市史

・花街 異空間の都市史
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80年代、ポートピア連続殺人事件という往年のPCゲームの名作があった。神戸を舞台とする探偵アドベンチャーゲームだが、物語の中で「シンカイチ」という地名が登場していた。これは新開地のこと。新地、新開地と呼ばれる土地は日本中にあるが、多くは元花街、色街であることが多いようだ。神戸の新開地の研究も一章割かれている。

まず冒頭で、花街と色街(遊郭)の違いが述べられている。遊郭は娼妓を中心にした売春宿が一定の空間の内部において認められていた地域である。これに対して花街は、「飲食店で男性をもてなす酌婦、歌・舞踏・三味線などの芸をもって宴席に興を添える芸妓」が中心の地域を指す。実際には二つの要素が重なっていた地域もあるので、完全に分離することができないようではある。

全国に500もあったといわれる花街は独特の業界システムで運営されていた。芸妓を抱える置屋、遊ぶ場所である待合茶屋、料理も出せるし配達もする料理屋が主な業界プレイヤーで、この3つが三業地(あるいは二行地)と呼ばれる組合を、各地に形成していた。この他、待合茶屋、料理屋に介在して芸妓の派遣や花代清算を請け負う検番という組織もあった。

この本は全国の花街の興亡を、都市開発の観点から分析した本。芸妓やお客の談話や逸話のような色っぽい話があるわけではないが、男女の欲望コミュニケーションが駆動して、江戸、明治の街が発展してきたという側面がわかって面白い。


田を埋め、畑を潰して、家が建つ、すると某所へ上記のような商売屋[銘酒屋]が出来る、人が寄ってくる、周囲に並の町家が出来て来る、町の形がだんだん整ってくる、何時の間にか、ヘンな商売屋の数が減る、やがて、全く並の町になって了ふといふ順序であったのだ。
」 (「にごり江になる迄」よりの引用)

花街はできたての町を繁盛させ、かたちが整うと消えていく、都市の「インキュベーター」の役割を果たしてきたのではないかというのが著者の意見。また、芸者遊びは当時も高級な遊びであったため、花街の形成には、各時代の有力政治家や財界人も深く関わっていたことが明かされる。一般に日本の近代化は風俗の取締りを強化する方向で動いてきたと思われているが、実際には意図的に花街を維持形成する動きもあったようなのである。

その後、花街は昭和に形成された「赤線」に呑み込まれ、その制度の廃止とともにほとんどが消滅した。代表的な料理屋や建築はいまも細々と残って昔を今に伝えているのみだが、花街、芸者の文化は、江戸文化の代表として、海外にも広く伝わっている。外国人にゲイシャってなに?と聞かれたときに、この本の薀蓄を「まず都市論的な観点からみるとね...」と教えてあげられると、たいへん尊敬されそうである。

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2005年12月12日

グノーシス―古代キリスト教の“異端思想”

・グノーシス―古代キリスト教の“異端思想”
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面白い。

「人間は<偽りの神>が創造した偽りの世界に墜とされている。われわれはこの汚れた土地を去り、真の故郷である<天上界>に還らなければならない」

最初に至高神と女性的な「エンノイア」という神がペアをなして存在した。そこから順次「アイオーンと呼ばれる神々が男女のペアで流出し、最後のペア「テレートス」と「ソフィア(知恵)」に至るまでに30人の神々が成立した。この上位世界は「プレーローマ」と呼ばれる。

プレーローマには厳密な階列関係があり、至高神を直接見る、知ることができるのは、至高神から直接生まれた「ヌース」という一組のアイオーンだけであった。しかし、あるとき、序列で最下位のアイオーンのソフィアが、直接至高神を見たいと欲した。この企ては失敗し、ソフィアはプレーローマから転落しそうになる。

そこで「ホロス」という神がソフィアの過ちを思いとどまらせることに成功する。ソフィアは心に抱いていた「情念」を下界に捨てることで、プレーローマにとどまった。この事件の再発を防ぐため「ヌース」から「キリスト」と「精霊」のペアが生まれて、神の不可知性をプレーローマ全体に通達した。

一方で、キリストは下界に捨てられたソフィアの「情念」を哀れみ、それに形を与えた。これが私たちの人間界の天地創造であり、創造神の起源であった。こうした経緯故に、私たちには、プレーローマの構成員であるソフィアの情念という、至高神につらなる要素が内在していることになる。

キリストは、人間の肉体に閉じ込められている「霊魂」「本来的自己」「光の粒子」の存在を人間に認識(グノーシス)させ、覚醒させ、プレーローマへ帰還させるために、下界に派遣された。呼びかけに応えた人間は、偽りの神「創造神」に与えられた肉体を捨て、真の神である至高神のいる上位世界へと戻っていく。この過程が完了したとき、物質世界は燃え尽きて消滅する。


以上が、2世紀に誕生したキリスト教異端のグノーシスの教義の一パターンである。グノーシスというキーワードは、宗教史だけでなく、さまざまな思想やフィクションにも題材として登場する。オカルト心霊が好きな人にもおなじみのキーワードだろう。曖昧にしか理解していなかった私としては、歴史に厳密でありながらもやさしく解説するこの本はとても参考になった。

この本は、グノーシス思想の登場した2世紀当時の、原初形態についてのみ語る内容である。ウァレンティノス派プトレマイオス、バシレイデース、マルキオンという3人のグノーシス派の教師の思想を解説している。この3者の間でも教義が微妙に異なるのだが、共通する点として3つが挙げられている。

1 反宇宙的二元論
「まずこの世界、この宇宙は劣悪な創造神が造ったもので、この創造神は善なる至高神と対立的な関係にある」

2 人間の内部に「神的火花」「本来的自己」が存在するという確信
「人間は創造神の造ったものであるが、その中に、至高神に由来する要素がわずかだけ閉じこめられている」

3 人間に自己の本質を認識させる救済啓示者の存在
「人間はそのことに気付かないでいるが、至高神から使いがやってきて、人間に自分の本質を認識せよと促す」

正統派のキリスト教では人間は知恵の果実を食べたから楽園から追放されたことになっている。グノーシスでは逆に知恵の果実を食べて覚醒することで上位世界へ帰還することを薦めているように思えた。グノーシス研究上、重要な古文書ナグ・ハマディ写本には、プラトンの「国家」も収録されているそうだ。理性重視のギリシア哲学やプラトン思想に影響を受けていることが強く感じられる。

そういえば、最近、まさにグノーシス的な映画を観た。私が崇拝する諸星大二郎先生の作品の映画化「奇談」は、隠れキリシタンがテーマなのだが、内容がとてもグノーシス的だと思う。

・『奇談』 公式サイト
http://www.kidan.jp/index2.html

この映画は諸星ファンか民俗エンタメファンなら必見。

・妖怪ハンター 地の巻集英社文庫
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原作「生命の木」はこの本に収録されている。

・私の好きな漫画家たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000741.html
諸星先生について

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2005年12月11日

生命記号論―宇宙の意味と表象

・生命記号論―宇宙の意味と表象
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生命圏を記号圏としてとらえる新しい見方を提示した本の新装改訂版。初版は1993年。

記号というと普通は言語を連想する。だが、著者は記号の指す範囲を大きく拡大して次のように定義する。


記号圏とは、大気圏、水圏、生物圏と同様に地球上のある領域を指す。記号圏は他のどの圏内にも入り込み、その隅々まで広がっており、音、匂い、身振り、色、形、電界、熱放射、全ての波動、化学信号、接触その他のありとあらゆる種類のコミュニケーションを統合して出来上がった一大圏である。一言で言えば、生命に関する記号全てのことである。」

基本はパースの記号論であり、意味するものとされるものの二項の意味世界に、解釈する主体を加え、3項のダイナミックな関係として、全体を捉えなおそうとする思想である。メッセージは単独で存在できるものではなく、解釈する主体があってはじめて記号の意味が確定される。

この記号関係でやりとりされるインフォメーションとは何かについては、解釈者の志向性によって生み出されるもの説明されている。


インフォメーションとは何らかの志向性を持った生物と結び付けられる。この志向性を持った生物とは、栄養濃度を感受して、餌が最も豊かであるスポットに向かって偽足を伸ばして行こうとするアメーバであったり、あるいは木の上に熟した果物を見て、それを取るために手を伸ばしている人間であったりする。別の見方をすれば、インフォメーションは翻訳にその基盤を求め、この意味で、パースの定義による記号に対応する。

生物はそれぞれの環世界に生きている。必要な情報を選択的に感覚器官から受けとっている。これが志向性であり、インフォメーションの基盤である。そしてインフォメーションの量と質を決めるのは、記号論的自由の大きさにあるというのがユニークな意見である。ここでいう自由とは、個体や種が周囲と相互に伝達できる「意味の深さ」を指している。
次に、対象を生物個体同士の水平関係という視点から、系統という垂直関係という視点に移動して考えると、生命記号圏においての究極の内部観測者は、人間や生物の個体、もしくは脳や意識ではないという。

つまり進化という目でみると、


人間において思考を行っているのは脳ではない。身体全体でもない。考えることができるようにしているのは私たち全てがその産物である自然の歴史そのものである。

たとえば、DNAの遺伝情報のネットワークは、塩基配列の組み合わせという記号関係そのものである。交配が行われれば、二つの系の間で情報交換が行われ、新しい世代の記号が決まっていく。ここには、人間の個体の意識は入り込む余地がない。そのメッセージ交換の意味を解釈しているのは、ヒトの系統そのものであり、さらに大きく見れば、自然史そのものであることになる。

ヒトが登場する何億年も前から生物はいたのだから、意識が観測者ではありえない。現在の生命圏は、過去の生命情報のやりとりの結果なのであるから、その歴史そのものが観測者であったとする。人間の意識は特権的な存在ではなくなる。

意識の解体もテーマの一つとなっている。

「意識とは身体の実存的環世界を、肉体が空間的物語的に解釈したものである。」

という結論がある。

これは、ノーレット・ランダーシュの「ユーザイリュージョン」とほぼ同じことを指している。私たちが見ているものは本質じゃないのである。幻想なのである。だが、その幻想を信じて必死に生きている私たちがつくりだす歴史は本物なのである、というのが私の理解。

この本は訳者 松野 孝一郎氏のあとがき「記述の限界とそれへの開き直り」も読みどころになっている。内部観測者について本も出している訳者は、あとがきにおいて、本文を引用しながら自論をどんどん展開している。総括にもなっていて読解の参考になった。

・動物と人間の世界認識
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000786.html

・ユーザーイリュージョン―意識という幻想
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001933.html

・基礎情報学―生命から社会へ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001216.html

・こころの情報学
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001034.html

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2005年12月10日

新作情報チェッカー Windows版

・新作情報チェッカー Windows版
http://homepage.mac.com/dsaitoh/FileSharing4.html
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「しまった。発売日を逃した!」という経験はよくある。

新作情報チェッカーは、指定したキーワードでAmazonをチェックして、新作情報を常にデスクトップに表示しておけるウィジェット。MacOS版もある。

使い方は簡単で、書籍、マンガ、DVD、音楽の種別と、著者名かキーワードに該当する言葉を登録しておくだけ。さっそく私も好きなマンガ家を登録してみたのが上の図。定期的に更新されるので、日々チェックのためにサイトを訪問する必要がない。

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2005年12月09日

コマンドラインで2ちゃんねる閲覧 MonoView

・MonoView
http://www.geocities.jp/cen_hp/monoview.html
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ブログとSNSのブーム以降、2ちゃんねるを読む機会がめっきり減ってしまった。だが、まだまだ2ちゃんねる発のオモシロは続出している。VIP板くらい読んでいないと、置いていかれてしまう(誰に?)。

MonoViewはコマンドラインで2ちゃんねるを閲覧するフリーソフト。主にカーソルキーでメニューを選んでいくだけで、板の間を移動することができる。動作が他の2ちゃんねるビューアと比べて軽快なのが特徴。背景が黒(コマンドプロンプトの設定で変更は可能)なのも、昔風の怪しいパソコン通信が連想されて、味がある。閲覧だけでなく、書き込みも可能だ。

スレッド閲覧中にhキーを押すと、Webブラウザ表示をする。oキーを押すとお気に入りに登録する。aとzでページアップ・ダウンができる。ショートカットキーでほとんどの操作ができるのは、便利だ。

表示したスレッドの内容やメニューなどのデータは、アプリケーションのフォルダにテキストファイルとして蓄積されている。GoogleDesktopなどデスクトップ検索ソフトを利用しているユーザは、スレの内容も後で、高速に検索することができるだろう。

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2005年12月08日

ホーキング、宇宙のすべてを語る

・ホーキング、宇宙のすべてを語る
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「ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで」の続編。

最初に古代から近代までの宇宙観の変遷が説明される。世界は亀の上にのっかっているという伝説や、地球を中心に天空が回転しているとした天動説など、科学者が各時代の考え方をいかに乗り越えて、現在に続く宇宙モデルを作り上げてきたかの歴史。ホーキングの語り口は平易で、わかりやすい。

そして、最新のモデルの理解に必要になる一般相対性理論と量子論について、比喩をたくさん用いた解説がある。どちらか一方では宇宙のモデルを完全に記述できない。


私たちの最も大きな望みは、宇宙の最初から最後までの完全な理解を得ることです。この望みは、量子論と一般相対性理論という、一方だけでは世界を記述するには不完全である二つの理論を、一つの量子重力論に統一することで可能になるでしょう。この理論では、時間の始まりを含む宇宙のどの時刻でも、特異点なしで一般的な科学の法則が成立するのです。

超ひも理論、pブレーン理論、超重力理論など最新の理論も紹介される。科学者が目指しているのは、万物の4つの根源的な力(重力、電磁力、強い力、弱い力)を、一つの統一理論で説明すること。つまりは万物理論のこと。

ホーキングの万物理論についての予想が興味深い。


研究者はこの根元的理論を探し求めましたが、今までのところまったく成功していません。ゲーデルが示したように、算術を一つの公理系だけで定式化することができないのと同じく、根元的理論も一つに定式化することはできないという可能性があります。その代わり、それは地図のようなものかもしれません。

それは人間の知識の深まりと共に漸進的に精度を高めていくような理論なのではないかと言う予想に対しては、


(前略)より高いエネルギーを研究対象にするようになると、だんだんと精度が高くなる理論の連続には、何らかの限界があるべきだと考えられます。こう考えると、宇宙には何らかの究極の理論があるはずです。

と反論している。


宇宙の初期状態と数学的無矛盾性の要件を研究していけば、私たちがまだ生きているうちに完全な統一理論が得られるチャンスは十分にあるように思われます。

万物理論の解明に、この車椅子の大天才、まだまだやる気まんまんなのである。

文中によく「神」という記述がでてくるのが印象的であった。ホーキングは明らかにすべてに超越的な神の存在を、肯定しているようだ。科学の最先端の象徴の人物が直接、一般読者に語りかけるこの本、とても楽しめた。また次が出てほしい。


・奇想、宇宙をゆく―最先端物理学12の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003562.html

・広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003540.html

・科学者は妄想する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003473.html

・人類はなぜUFOと遭遇するのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002440.html

・宇宙人としての生き方―アストロバイオロジーへの招待
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001273.html

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2005年12月07日

JAGAT技術シンポ 「デジタルコンテンツ2006」

・JAGAT 技術フォーラムシンポジウム
 デジタルコンテンツ2006
 テクノロジー、コミュニティそしてビジネス
http://www.jagat.or.jp/forum/digital2006.html
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開催日時:2005年12月19日 13:00〜17:00

デジタルメディアの技術や活用のビジョンをより見通すものにしていくため、ネット、紙、テレビ、メディア、コンテンツ流通などメディアのビジネスや技術にたずさわる人を招き、2006年のデジタルコンテンツのビジネスや技術の見取り図を展望する。

ネットによって個人の意見がジャーナリズムへ大きな影響を与えている。テレビはハードディスク録画による従来の広告ビジネスへの影響に関心が高まる一方、ネットによる新たなビジネスも期待されている。情報やコンテンツがあふれる中、本当に売れるコンテンツや広告が模索されている。次世代のWebをWeb2.0というように、ここではデジタルコンテンツの次のフェーズであるデジタルコンテンツ2.0を考える。

今回、データセクションの橋本大也氏に企画の協力をお願いするとともに、当日のモデレーターもつとめていただく。橋本氏は、大学在学中にはWebのユーザビリティを考える「アクセス向上委員会」,最近では「テレビブログ」を立ち上げるなど,メディアやネットにおいて、常に最先端の話題を提供する。また、百式の田口元氏やKNNの神田敏晶氏と、斬新でユニークなセミナーを企画・開催し、若き技術者やクリエイターに絶大なる支持を得ている。


こんなイベントをプロデュースすることになりました。

詳しくはこちらをご覧ください。

http://www.jagat.or.jp/forum/digital2006.html
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積極的なご参加をよろしくお願いします。

なお、私のブログから参加申請した方は会員価格で参加が可能だそうです。

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2005年12月06日

忘年会議2005 Sponsored by Yahoo! JAPAN検索 - 詳細&お申込 -

満員になりました。究極のサイトの投稿は受け付けております。たくさんのご応募ありがとうございました。

告知当日は私が出張中で、一時サイトにつながらないミスがありました。たいへんご迷惑おかけいたしました。

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無敵会議ロゴ、ひさびさに復活です。

忘年会議2005 Sponsored by Yahoo! JAPAN検索 - 詳細&お申込 -
http://www.muteki-kaigi.com/event/
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ポータルサイトやマスコミが年末になって今年のベストWeb大賞を発表しています。主宰の二人はこういうリストを見て【昨年の末】にふたつの感想をもらしました。

ひとつめは、

「本当に人気のあるサイトの顔ぶれってこれか!(納得)」

ふたつめは、

「でも、全部知ってるなあ...(もっともっと)」

入賞しているのは誰もが知っている大手企業の人気サイトたち。まさに今をときめく売れ筋サイトです。どのサイトもしっかりしたコンテンツで、この結果もうなずけます。ただ、既に有名だということは既に皆が知っているということでもあります。

そこで私たちは考えました。大きなコンテストの最大公約数とは違うやり方で、無敵のサイトを選ぶ会議をやってみよう、究極無敵のリンク集をみんなの知恵と思い入れを集めて作ってみようと思ったのです。

そう、無敵ユーザのための、無敵ユーザによる、無敵のリンク集を。

そして昨年の12月に開催された第2回の忘年会議は大成功を収めました。知る人ぞ知るサイトを何百も発掘できたのです。大きなメディアでは難しいことを小さなメディアである、私たちのブログが可能にできたのだと嬉しくなりました。

そこで、今年も同じ趣旨で忘年会議を開催します。ですが、【今年はパワーアップです】。私たちのコンセプトに、いつもおなじみ検索でお世話になっているYahoo! JAPANさんが、協賛してくださることになりました。おかげでなんと!【参加費無料】【特別講演】を実現できそうです。

ただ、スポンサーがついたからといって、コミュニティが選ぶと言うポリシーは今年も変わりません。究極ウェブの審査、会議の進行はすべて我々が行います。

さて毎回のお約束ですが、この無敵会議シリーズは問答無用の全員参加形式です。会議に参加するに当たっては事前質問に投稿していただく必要があります。

※1 今回は当日都合により参加できない方のために投稿のみも可能となっております。投稿していただくとイベント後に皆様から集まった「究極Webサイト」集を送付いたします。当日参加できない方もふるってご投稿ください!

※2 今回は忘年会議ですので会議後には本当の忘年会を開催します。先着70名様までとなりますのでご希望の方は是非どうぞ。また忘年会は別途実費がかかります(3,500円を予定)。

■ プログラム

【第1部 独断と偏見の無敵ウェブサイト ベスト10 大表彰式】

ご存知の通り主宰の二人は今年もWebサイトをたくさん調べてきました。二人が1年間でチェックしたサイトの総数は1万件を超えています。超個人的な思い入れで、その上位0.1%として10件を選び出します。

【第2部 Yahoo! JAPAN検索 トレンド予測】

日本の検索シーンを支えるYahoo! JAPAN検索チームに2005年の総括、2006年のトレンド予想を行っていただきます。彼らのみが持つ極秘データから新たなトレンドやビジネスチャンスが見えてくるのかも?!

【第3部 主宰者2006】

主宰者の橋本、百式管理人は2006年も新しいチャレンジをしていきます。2006年のトレンドも踏まえ、主宰の二人がどんな活動をしていくか、どういったビジネスに注目していくかをちょこっとだけ語ります。

【第4部 究極のサイト創造会議】

もはや究極のサイト、選ぶだけでは物足りないですよね。無敵会議シリーズを通して鍛えてきた発想力、コミュニケーション力を駆使して、究極のサイトを自ら発想するセッションです。私たちの頭脳を連結して、究極のサイトを発想してみましょう。

■ 実施要綱

日付 2005/12/17 (土) 17:00-20:00 (16:45開場)
場所 デジタルハリウッド大学 秋葉原メインキャンパス 地図)
〒101-0021 東京都千代田区外神田1-18-13
秋葉原ダイビル7階
tel:0120-823-422
費用 無料 (会議後の忘年会は別途実費。3,500円程度)
定員 先着90名 (忘年会は先着70名まで)

協賛
会場協力
備考 全員参加の会議を行います。筆記用具をお持ちください


お申し込みはこちらをクリック

■■■ 申し込み 12月7日正午に開始 ■■■

満員になりました。究極のサイトの投稿は受け付けております。たくさんのご応募ありがとうございました。

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2005年12月05日

声のふしぎ百科

・声のふしぎ百科
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(独)情報通信研究機構本庄情報通信研究開発支援センター長。郵政省通信総合研究所長、埼玉大学教授、日本工業大学教授を歴任。音声情報処理の第一人者が書いた音声技術の本。理系の学部生くらいが対象に思われる。

「ヤマダ タロウ」と「オオヤマ ダイザブロウ」では、選挙で連呼されたとき、後者が聞き取りやすさで有利という音素の話。秘密は音量の差、発声のしやすさ。同じ大きさで話したつもりでも、母音の/i/と/u/は振幅が小さく、/a/と/o/は大きくなるそうである。だから大声コンテストで叫ぶと有利なのは「馬鹿ヤロー」「家事だ!」は適切とのこと。
早口言葉などの研究を通じて、言葉のいいやすさも解明している。母音では/i,u/ 子音では/ch,ts,k,sh,g/が多く含まれると発声しにくく、音量も小さくなってしまうらしい。こうしたノウハウは、企業名や商品名のネーミングにも活かせそうだ。

カラオケ採点機で高得点をあげる方法と言う、長年知りたかった章もあった。カラオケの採点アルゴリズムの説明がある。結論的には、

・できるだけスローなテンポの曲を選ぶこと
・上手に歌おうとせずに、音程とテンポを重視すること

という指南があった。

「昴」―谷村新司 あたりの曲を何の思い入れもなく、淡々と歌うと良いと言うことか。嫌がられそうだが。

こんな実用的なTipsや、ヘリウム空気を吸うとドナルドダックの声になるのはなぜ?、いっこくどうの腹話術はどうなってるの?といった日常の疑問に答えるトリビアも多いが、音声認識や音声合成の技術的な仕組みや研究の課題も、技術用語を使って説明されている。興味を持った人の、研究のとっかかりになるように書かれているようだ。


・大語彙連続音声認識システムJulius
http://julius.sourceforge.jp/
オープンソースの音声認識エンジン。Windowsでも動作するので試してみると楽しい。

・7秒のイメージ・マジックであなたの声はもっとよくなる―相手を説得する、声の印象が変わる、気持ちが伝わる
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003015.html

・怪獣の名はなぜガギグゲゴなのか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001944.html

・話し方の技術が面白いほど身につく本
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001029.html

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2005年12月04日

グロテスクな教養

・グロテスクな教養
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■君たちはどう生きるか

著者によると、学歴エリートが「僕は単なる受験秀才じゃないぞ」を確認しあうための孔雀の羽として、教養を肥大化させてきたのだという。日本においては受験における勝利の評価が低いので、だからこそ学歴エリートはもう一段上の自分を形成するために教養を求めたと分析されている。

そうした一部の人たち向けの典型的な指南書として、雑誌「世界」の編集長となる吉野源三郎著「君たちはどう生きるか」が何度も引用されている。

・君たちはどう生きるか
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これは私も学生時代に読んだ。ベストセラーである。

「君のような恵まれた立場にいる人が、どんなことをしなければならないか、どういう心掛けで生きていくのが本当か」を語る内容。著者曰く「どう生きるかを主体的に選びうる「君たち」というのが実は少数の特権的な男の子たちだけを指して」いるとする。

そして「きけわだつみのこえ」も同じ世代に影響を与えた一冊として紹介される。

・きけわだつみのこえ―日本戦没学生の手記
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酷薄な状況の中で,最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め,祖国と愛する者の未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち.一九四九年の刊行以来,無数の読者の心をとらえ続けてきた戦没学生たちの手記を,戦後五○年を機にあらためて原点に立ちかえって見直し,新しい世代に読みつがれていく決定版として刊行する.

学徒兵が塹壕の中でファウストやドストエフスキーを読むような教養の高さを示した。こちらは「君たちはどう死ぬか」についての本である。

かつての教養はエリート層が世界をよりよいものにしようとする責任感=ノーブレス・オブリージュの源であった。この生きがいの独り占めが教養の正統性を支えていた。

■慢性孤独病のマゾヒズムとしての教養

二十歳で哲学自殺した原口 統三の二十歳のエチュードが、学生運動世代の教養主義のいびつさを伝えるものとして紹介されている。

・二十歳のエチュード
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「原口 統三
1927年1月14日、京城に生まれる。新京・奉天・大連をへて1944年第一高等学校文科丙類入学。ボードレール、ランボーらへの親炙、ヴァレリー、ニーチェとの対決をへて純粋意識と生の相克を詳細な遺稿断章「エチュード」に遺し、1946年10月25日、神奈川県逗子海岸にて入水自殺」

この本が出て連想した「二十歳の原点」の高野悦子も似たような事例だろう。

・二十歳の原点
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「独りであること、未熟であることを認識の基点に、青春を駆けぬけた一女子大生の愛と死のノート。自ら命を絶った悲痛な魂の証言。 」


こうした形而上学的な悩みを抱えて死ぬというのは、つまるところ、教養の、慢性孤独病のマゾヒズム的な側面を表している。

■制度化に締め出された人文学と、商品化の共犯者としての出版社

一部の学歴エリートたちの教養主義であったものが、大学の大衆化によって万人のものとなる過程で、教養は実用教育の効用にとって変わられていく。そして行き場のなくなった教養が出口を求めたのが出版と言う商品化であったという。


いわば教養とはじつはこのとき〔近代国家の成立時〕制度の外に置かれ実用性を認められずに資格授与を許されなかった知識だといえる。教養とは制度化された知識の余白にほかならず、逆説的に近代国家によって生み出された私生児だったのである。そのさい自然科学と社会科学の大部分は実用性を認められ、国家の学校教育の中で制度化されたが、曖昧なのは人文学であった。さて、こうした制度化に締めだされて成立した教養を救い、たくみに社会的地位を与えたものも揺籃期の大衆社会であった。そのための唯一の方法こそ、ほかならぬ知識の商品化であり市場化だったのである

「教養の危機を超えて」山崎正和より引用

岩波書店、中央公論、みすず書房、東京大学出版会、平凡社、頸草書房、青土社、未来社、筑摩書房などの老舗人文出版社が、教養の商品化に手を貸した共犯者であるという。この本も筑摩書房から出版されているのだが...。

事例として、ニュー・アカの旗手、浅田彰の構造と力が出てくる。

・構造と力―記号論を超えて
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教養主義は、学歴エリートたちの人気投票的側面があったとして、


ニューアカは教養主義の極限の姿を示してくれる。思えば、あれは確かに「虚名」の時代であった。「浅田彰」や「中沢新一」や「栗本慎一郎」は名前として歩き回っていた。さらに言えば、それは印刷された文字だったから、四方田とか丹生谷などの読みにくい苗字は有利だったような気がする。ハスミ先生には、本書もその慣習に従っているように、かならず本字が使用されねばならなかった

こうなると人気の先生に自分の著作を引用してもらい、友愛集団の仲間入りすることが、教養の商品化への第一歩としてとらえられるようになった、と著者は言う。

■教養のグロテスク

女性の教養という視点でのジェンダー論も最後に続く。教養の意義を相対化し、古典的教養論の価値を幾重にも疑う内容であった。

教養のグロテスクさというのはなんとなくわかる。それと似通ったグロテスクさを、、毎週ジムに通って肉体美を磨き上げるビジネスエリートだとか、社長仲間のゴルフツアーにも感じる。衣食足りた人たちがそれ以上を求めて競い合う何かという点では、ジム通いも、ゴルフも同じものなのではあるまいか。

だが、本当の教養の価値というのは、スノッブ集団のプロトコルではなくて、

・古典を知っているから深く味わえる作品があること
・古今東西を知ることで全体像を理解すること
・自分と無関係の他者に対する想像力を強化できること
・”ビジョン”に幅広い支持者層を得られること
・面白いユーモアを言えるネタ元

といったことにあるのではないだろうかと、私は考える。

一読して思うのは著者自身、批判の対象であるマルクス的な階級社会観から逃れられていないということ。この本自体が、グロテスクと批判する肥大化した教養主義の一端を担う一冊になってしまっていると思うのだが、その出口のないグロテスクさが読みどころなのでもある。

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2005年12月03日

ダークウォーター

映画:ダークウォーター
http://darkwater.jp/
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を観てきました。

「仄暗い水の底から」をハリウッドでリメイクした作品。

原作はこちら。

・仄暗い水の底から: DVD
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『リング』で日本中を世紀末ホラー・ブームへ巻き込ませた中田秀夫監督が、再び鈴木光司・原作に挑戦したホラー作品。夫と別居し幼い娘と一緒に古びたマンションに引っ越して来た淑美(黒木瞳)。しかし、まもなくして恐るべき怪奇現象の数々が、じわじわと母子に襲いかかっていく…。

心霊ホラーでありながら、悲しく切ない愛の物語になっていて、私は好きな作品でした。ハリウッド版で黒木瞳役を演じるのはジェニファー・コネリー。

こちらの解説。


鈴木光司原作、中田秀夫監督の「仄暗い水の底から」を、同じ原作・監督コンビの「リング」に続きハリウッドでリメイクしたサスペンス・ホラー。監督は「モーターサイクル・ダイアリーズ」のウォルター・サレス。主演は「ビューティフル・マインド」のジェニファー・コネリー。

 離婚調停中のダリアは、5歳の娘セシリアの親権をめぐって別れた夫との争いが続いていた。娘と一緒に暮らすための部屋を求めて、ニューヨークのルーズベルト島にあるアパートへとやって来たダリア。薄暗く不気味な雰囲気漂うアパートだったがシングルマザーのダリアに贅沢は言えない。こうして、アパートの9階の一室で母娘ふたりの新生活が始まった。ところが、寝室の天上にある黒い染みが日に日に大きくなり、黒い水までしたたり落ちてくる。さらに、裁判の行方も気がかりで、ダリアの心は不安とプレッシャーで押し潰されてゆく…。

さて、感想ですが、私は面白かったです。80点くらい。

事前に日本版を鑑賞しておくとかなり興味深いです。

ストーリーはほとんど同じなのですが、日本版とはまったく違う感想を持ちました。ハリウッド版、ぜんぜん怖くないのです。理由を考えてみたのですが、母性愛(日本は盲目的、米国は契約的)、水の描き方(日本はじめじめ、米国はH2O)、あの世の存在(あの世に連れて行かれる感覚)、住む街の印象あたりが、日米でまったく異なるため、同じ物語なのに、映画全体の印象も大きく違うことになっています。

世界で評価される日本の文化を考える上で、とてもいい材料の2作品でした。

公開直後なので詳しく内容に触れるのは、今は避けますが、DVDが発売される頃、語りたいと思います

・模倣される日本―映画、アニメから料理、ファッションまで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003155.html

・私の好きな映画たち(1)
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000734.html

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2005年12月02日

ひとつ上のアイディア。

・ひとつ上のアイディア。
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CMプランナー、コピーライター、クリエイティブディレクター、アーティスト、建築家など、アイデアを仕事にするプロたち20人が、アイデアづくりのノウハウを語る。企画の仕事にかかわる人間にとって参考になる意見がたくさん。

キムタクと岸部一徳の富士通「FMVシリーズ」CMなどをてがけた多田琢氏の後味発想はいいなと思った。今度試してみたい。


だいたい、いつも扱う商品について「自分にとって理想的なCMをいま見た」と仮定することからはじめます。それを見た自分はどういう感覚になって、どういう気持ちになるのか、その後味だけをまず思い浮かべてみる。それから、その後味を味わうためには、どういうCMを見なければならないかと考えます

後味を判断基準に考えるというやり方、まるでアスリートのイメージトレーニングのようだ。

思いついたアイデアを話す作法を語ったのは、サントリーの「ボス」「モルツ」JR東海「そうだ、京都、行こう。」をつくったクリエイティブディレクターの佐々木宏氏。アイデアだしの会議では、思いつきをドンドン話すことが重要だとし、

まずは、

「全然関係ないんだけどさ」
「それって逆に言えば」(続けて、逆になっていない、言いたいことをいう)

と切り出して、言いたいことを言いあいなさいとすすめている。おもいつきを喋ることを許さないのが、日本の会議の悪いところだと指摘している。

クリエイティブの仕事において、アイデアの価値が日本では不当に低いとし、その原因を業界の構造にあると指摘したのは、「南アルプスの天然水」などをてがけた岡康道氏。


欧米ではメディアコミッションが日本の3分の1くらいしかないため、媒体をとったからといって、必ず広告会社が儲かるわけではありません。そのぶん、クリエイターがつくる広告のクオリティがフィーの多寡としてはね返ってくる。つきつめればアイディアの優劣で広告会社の利益が決まるわけです。

最初に大きなメディアの枠を電通・博報堂が買い占めてしまう、寡占市場の日本とは違う状況が、海外の広告市場にはあるようだ。


この本には実に多様なアイデア発想のノウハウが語られている。発想を生み出し続けるには、思考のバリエーションをいくつか持っていることも有効だろう。その素材が発見できる本。


・発想法―創造性開発のために
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003913.html

・企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000904.html

・「超」整理法―情報検索と発想の新システム
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003283.html

・「超」時間管理法2005
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002584.html

・創造学のすすめ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000846.html

・情報検索のスキル―未知の問題をどう解くか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000616.html

・分かる使える思考法事典―アイディアを生み出し、形にする50の技法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000725.html

・それは「情報」ではない
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000510.html

・デスクトップ発想支援ツール
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000139.html

・文書アウトライン作成支援ツール iEdit
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000317.html

・理想のアウトラインプロセッサを求めて
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000360.html

・現場調査の知的生産法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001804.html

・「挫折しない整理」の極意
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001794.html

・知識経営のすすめ―ナレッジマネジメントとその時代
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001734.html

・広告の天才たちが気づいている51の法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000686.html

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2005年12月01日

暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで

・暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
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凄い本だ。感動した。今年も年末年始に書評した本の中から、本年度ベスト本を選ぶ予定だが、これはベスト3に入りそうだ。

二人の尊敬する友人ABが絶賛していたので、暗号技術に興味があるわけではなかったが、読むことにした。ところが興味のないテーマなのに、冒頭からいきなり強くひきつけられた。暗号学の歴史は各時代の最高の知性たちの頭脳戦の歴史であった。その成果が世界の歴史を大きく左右してきたことがわかる。

この数千年間の暗号学の歴史が、アルゴリズムの変遷や、歴史上果たしてきた大きな役割、作成と解読に関わった天才たちの逸話とともに、年代を追って語られる。暗号学という難解なテーマにもかかわらず、やさしい記述を積み上げて高度な暗号技術を要約しており、極めてわかりやすい。


暗号学はきわめて異色の科学である。プロの科学者の大半は、誰よりも先に仕事を発表しようとする。なぜなら彼らの仕事は、広められてはじめて真価を発揮するからである。それに対して暗号の研究は、情報が漏れる可能性を最小限にとどめてこそ、最大限にその価値を発揮する。そのためプロの暗号研究者は、仕事の成果が外部に漏れないように秘密を守り、閉ざされた世界の中で仕事をしつつ、仕事の質を高めるための交流を行うことになる。暗号に関する秘密を公開することが許されるのは、秘密にしてもこれ以上利益はないことが明らかになった後、ただ歴史的正確さを期すためでしかないのである。

ここでいうプロの暗号解読者の多くは、国家機密の壁の向こうにある、政府機関に所属し、生涯その仕事内容を外部に話さない誓約をして、仕事をしてきた。大学や企業の研究者が、学会で華々しく発表した暗号技術と同じものを、その何年も前に発明していた政府系研究者もいる。30年以上経過してやっと自分の仕事の一部を話すことが許された。

特に暗号学が重要となる戦時下では、暗号が解けても公に発表することはできない。暗号を解けることが敵国に知られると、暗号の形式を変更されてしまうからだ。第二次世界大戦中に、英国政府の暗号解読チームは、ドイツのエニグマ暗号を解読することに成功していたが、その事実は戦後もしばらく隠されていた。解ける暗号を敵が使い続けてくれるのが都合がいいからだ。

だから、暗号学の天才たちは、どんな偉業を達成しても、名前が知られて、広く賞賛されることはない。自分の成し遂げた仕事が、どう役立ったかさえ、知らされなかった研究者も多い。この本は丹念にその歴史の闇から、天才たちの偉業を浮かび上がらせ、列聖していく。

暗号学の歴史は、暗号の発明と解読のイタチゴッコであった。古来、解読者の方が、作成者よりも強い立場にあった。解読不能といわれる暗号が登場しても、そのうち天才が現れて解読に成功してきた。しかし、コンピュータの登場以降、立場が逆転しつつあるようだ。インターネットでもよく使われるRSA暗号鍵の、十分に強度の高いバージョンは、コンピュータを何万年も稼動させないと破ることができないと言われる。この本の最後に登場する量子暗号は、歴史上初めて、破ることが原理的に不可能な技術に進化した。量子暗号を破るには、物理学そのものを根底から壊さねばならないことになる。

まだ量子暗号の実用化には壁がある。その原理を実現する技術が完成していないため、短い距離でしか暗号のやりとりができないでいる。量子暗号の長距離での利用が可能になる近未来に、暗号の進化は止まると著者は予言している。

そういえば、最近、実家で私が小学生のときに描いた水彩画が見つかった。名前の下に、子供の私は鉛筆で、

26 12 35 20 16" 2 36

とサインしていたのをみつけて、笑ってしまった。子供の頃の私は暗号にちょっとは興味があったらしい。これはこの本でも最初に紹介される換字式アルゴリズムそのものだった。これでは簡単に見破れてしまうが、いくつかの改良をすることで、数百年間も中世の国家の保安を守ってきた暗号技術になることが示されている。

科学の読み物として一級品。

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