2004年01月31日
情報イノベーター―共創社会のリーダーたち
1999年の本。でも、本質は今もほとんど変っていない気がする。
この本は現代日本をVIS社会と定義している。VISとは、多様化(Variety-Orientation)」「情報化(Information-Orientation)」「社会の変化の速さ(SocialSpeed-Orientation)」の頭文字をとったもの。このプロジェクトでは、VIS化の進んだ高度情報化社会で影響力を持つ層を情報イノベーターと定義した。そして、この新しいオピニオンリーダー層の全貌を明らかにすべく長期間の調査を字視した。
この本は少し古く1999年の出版なので、インターネットは先端的で情報感度の高い層の使うものと想定されていたため、調査対象はネットユーザとなった。YAHOO!JAPANを使った大規模なアンケートとグループインタビュー手法により、情報イノベーターの姿を浮き彫りになる。調査手順を追ったドキュメンタリ風の調査レポートである。
情報イノベーターの度合いを測る指標は3つ定義された。「ネットワーク人間尺度」「情報機器利用尺度」「メディア情報接触尺度」。情報機器を自在に使いこなし、多様なメディアから情報を大量に吸収し、ネットワークの中で積極的にコミュニケーションを行いながら、共に新しいものを創りだしていく(イノベーション)。それができるのが、「情報イノベーター」という説明である。
調査が進むにつれ、情報イノベーターのプロフィールや、行動特性が明らかになって行く。社会性や興味の広さによって、情報イノベーターと「おたく」の分類。イノベーターの中にも5つのタイプがあるとラベル分け。情報イノベーターの消費行動や政治行動や接触メディアの種類と度合い調べ。などなど、どれも興味深い視点の分析と分かりやすい説明が続く。企業は消費者や社員の中の情報イノベーターをどう活用して利益を産むことができるか、の提言もある。
調査から5年が経過したせいもあるのだが、情報イノベーターの姿に予想外の要素は少なかった。調査者も実施時から大枠、結論は想定していたのではないか。ただ、それを実際の調査の数字とグループインタビュー結果で、定量的、定性的に裏づけたことが、この本の価値だと読み終わって感じた。マーケティング会議で使えるデータで一杯の本だ。
読みながら考えたこと。情報イノベーターこそ重要で目指すべきものという考え方がこの本には感じられる。しかし、全員がリーダーである組織や社会はないだろう。リーダーだけでは世の中が動かない。そもそも、リーダーとフォローワーの比率は、いわゆる歴史の方程式=べき乗則に従い、どの時代も不変であるはずと思う。
情報イノベーターの中にも「スーパーイノベーター」がいて、この数は情報イノベーターの20%であり、全消費者の2,3%だそうである。
皆が皆、情報感度が異様に高く、話し好きで、情報機器のエキスパートという社会も不気味である。皆がそれを目指す社会も疲れそうだ。不健康な社会で健康志向が流行るのと同じ気がしてくる。
むしろ、大切なのは軽視されがちな「フォローワー」が、満足しながら能力を発揮し、イノベーターを賢く利用して生活レベルを高めていくか、の方の気がしてならない。フォローワーがいないとリーダーがそもそも存在しえない。次は、リーダーとフォローワーの二つの視点の調査をこのプロジェクトでやってほしいなと思った。フォローワーに積極的なネーミング、ラベリングをしたら、流行るキーワードに、なったりしないだろうか。
2004年01月30日
超本格会議開催、満員御礼に大感謝 報告その2
さて、会議で事前に提出していただいた150冊を超える「究極本リスト」。無敵化するツール第一弾として私も活用していきたいと思います。当日の会議では、この投稿の中から主宰者が10冊を選んで「究極の究極本」(候補)として紹介させていただきました。
ただ誤解なきよう。
主宰者はこの10冊を読んでおりません。純粋に投稿文やWebの書評を調べて、「これは読んでみたい」と思ったものを取り上げました。全投稿を読むのは結構大変ですから、選ぶのを代行させていただいた形です。本当の究極は皆さんの手でリストから見つけてください。
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■投稿文で気になったリスト
投稿内容:「ここ数年読んだ本の中では、もっとも「自分のために書いてくれた」と錯覚させてくれたから。」
橋本解説:この本は私の取引先でも話題になります。「ビジネス人生を変えた」と手放しの絶賛をする人が何人もいて、気になっておりました。
投稿内容:「人望=生まれ持った才能」という概念を覆してくれた。日常の具体的な行動に落とし込んでいるため、その日すぐに行動に移せる。「人望」がすぐに身につくわけではないが、自分自身を変えるきっかけになる一冊である
橋本解説:人望は生まれつきのものと考えがちですが英語と同じようにスキルで身につくという発想が面白いです。
投稿文:「随分前の学生時代に読んだ小説以外の本で今でも一番記憶に残っているから」
橋本解説:アマゾンの書評はこうでした。「ジェリー・ワインバーグとその仲間たちの〈計算機の人間学〉の本。この本は問題発見についての本である。問題は解くより発見する方がずっとむずかしく、ずっと面白い。―実人生で本当にものをいうのはそこなのだ。」
投稿文:「巷ではもう“常識”になっているかもしれませんが、やはりこの「オトナ語の謎。」を推薦します。わりと忘れがちな、社会人としての会話やメールでの微妙なニュアンスが再認識できました。もちろん、新社会人にはもってこいの“究極の辞書”だと思います。」
橋本解説:リンゴラボ加藤代表のブログで紹介されていて気になってました。オトナ語の例:「「ペイする」、「言った言わないの問題になってもなんですから」、「手前どものにんげん」、「地雷を踏む」、「名刺を切らす」、「おいくら万円」、「切ったはったの世界」、「上様でいいです」、「視野に入れつつ」、「アンドをとる」、「良いか悪いかはべつにして...」。あるあるあるある〜。アマゾン書評より。「ほぼ日刊イトイ新聞にて連載開始され、異常ヒット数を記録した人気企画が待望の書籍化。「なるはやで仕上げて、午後イチにはお届けできるかと」「見切り発車の垂直立ち上げでしたから物理的に難しいんです」「要は、クリティカルなアイテムがマストかと思われます」学校では絶対に教えてくれない謎めいた言葉、「オトナ語」を、おもしろおかしく徹底的に解説。昔話や歌謡曲の「オトナ語」バージョンも抱腹絶倒。
」
投稿文:「インタネットの活用技術が飛躍的に上がり、ビジネスにもプライベートにも役立ったから。」
橋本解説:検索は私もセミナーをやっていますが、どんなことを書かれているのか気になります。
投稿文:「人間とはこんなものです、というのを力強い写真と文言で僕に伝えてくれます。日本の都会で生きていると忘れがちになりますね、残念なことに。」
橋本解説:アマゾンの書評より。書名の『メメント・モリ』とは、「死を想え」という意味で、ヨーロッパ中世末期にさかんに使われたラテン語の宗教用語だ。この本には、著者の短いコメントが付けられた74枚のオールカラー写真が収められ、生の光景に潜む無限の死の様相が極彩色で提示されている。たとえば、「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」とのコメントがつけられた写真には、荒野に打ち捨てられたヒトの死体を野犬が貪るように食らい、それをカラスが遠巻きにしている光景が写し出されている。また、大河のほとりで遺体の野焼きをしている光景には、「ニンゲンの体の大部分を占める水は、水蒸気となって空に立ち昇る。それは、雨の一部となって誰かの肩に降りかかるかもしれない。何パーセントかの脂肪は土にしたたり、焼け落ちた炭素は土に栄養を与えて、マリーゴールドの花を咲かせ、カリフラワーをそだてるかもしれない」と、少し長めのコメントが付けられている。
ど、どんな写真ですかそれ?。気になります。
■楽屋裏より
ここでは橋本選出の本のみ紹介させていただきました。田口分もと思ったのですが、手元に資料がなく、きっと彼がどこかで書いてくれるのを待ちます。ここでは敢えてビジネス系ばかり取り上げましたが、究極の150冊リストは小説や娯楽も多くありました。いやあ、これでしばらくの読書生活充実しそうです。
2004年01月29日
超本格会議開催、満員御礼に大感謝 報告その1
究極の一冊を教えあう、超『本』格会議!。告知期間が6日間と短く心配していたのですが、告知をお手伝いしていただいた方々のご協力もあって、満員御礼となりました。「究極の一冊」の熱い投稿は150冊を超え、軽く1年分の読書生活に困らないリストができました。(投稿者、参加者の皆様向けのデジタル版配布は月曜を予定)
イベント終了後、終電近くで帰り、翌日が朝から1日外出だったので、詳しい報告を書くのが遅れたところ、既に参加者の皆さんのWebに、超本格報告を見つけてしまいました。
こ、これでいいのでは(笑)、内容そのとおりでございます。(特にひとつめはプロの編集者さんに書いていただけるとは...ツイてます)
・超「本」格会議に行ってきました
http://kotonoha.main.jp/2004/01/30books.html
・超『本』格会議!
http://nais.to/~yto/clog/2004-01-29.html#2004-01-29-3
・本格会議行って来ました
http://naoya.dyndns.org/~naoya/mt/archives/000898.html
(参加していただいた方向けの「ここだけの話」へのご配慮にも感謝です)
というわけでこんな感じだったのです。
■会議の結果報告
内容は予定通りで、前半は私と田口さんのフリートーク。後半は全員参加の会議でした。特に盛り上がった後半の会議のテーマは「2004年にバカ売れする書籍のタイトルとその理由を考えてください。」でした。
最初に、全員で以下のサイトを見て、橋本・田口が簡単にレビューし、最近はどんな本が売れているのかの情報を会場で共有しました。
・年間ベストセラー(日販のランキング)
http://storefront.linksynergy.com/fs-bin/store?eid=KDApI1JJ0Kw&offerid=33310&stid=57&subid=
・年間ベストセラー
http://storefront.linksynergy.com/fs-bin/store?eid=KDApI1JJ0Kw&offerid=33310&stid=80&subid=
・ビジネス書ベストセラー
http://storefront.linksynergy.com/fs-bin/store?eid=KDApI1JJ0Kw&offerid=33310&stid=59&subid=
・フィクション
http://storefront.linksynergy.com/fs-bin/store?eid=KDApI1JJ0Kw&offerid=33310&stid=58&subid=
・単行本 週間ベストセラー(1)◆
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/best_wa.cgi?subj=tanko
・アマゾンの今週
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/browse/-/497532/249-3840969-3395553
その後、個人で10分ほどタイトルを考えてもらった後、5,6人のグループに分かれていただいて、20分の会議セッションを行いました。今日の報告ではまず、このグループ単位で発案されたアイデアをご紹介したいと思います。
【グループ討議結果シート】
● 10日間で幸せになる技術 〜幸せの人が知っている10の法則〜
誰もが持っている願望。短期間で簡単。ノウハウが身に付く。「技術」を付けることで胡散臭さをなくす。
● ボケる技術
昨今のお笑いブームの中で、素人は自分でも面白いことを言って人気者になりたいと思っている。そんな中、お笑いの要であるボケについての本である。この本はバカ売れ間違いない。
● マトリックスを実現する50の方法
脳にチップを埋め込む時代が近づいている。ブレーンマシーンインターフェイスの紹介。脳ブーム。
● おじいちゃんは水戸黄門を見ない 〜3000万人の10兆円マーケット〜
シニア層の人口が増えている。どの業界もビジネスマーケットとして狙っている。でもその実態はあまり分かっていない。
● 2004年東京方舟の造り方 〜古代人の知恵に学ぶ99のサバイバル術〜
関東大震災が間近に迫った2004年。首都機能を失った日本を脱出する最終兵器とは?
● 萌える闘魂
生産的なものに萌えをそそげ。「お前らは負け犬じゃない」、「世界を萌えで埋め尽くせ」。対談:イノキ&オグラユウコ
● だめなんだよ、その成功法は!
成功オタクが語る成功法の実証例。巷に溢れている成功法のアンチテーゼ。成功法を試した100人のキャッシュフロー付き。
● 少食党宣言
少食党が世界を救う。「食べる」ことをあらためて考える新しい食生活の本。1日500kclで仙人になれる。ダイエット本に見えるのが保険!
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力作ばかりですが、私が個人的に好きなのは、
「おじいちゃんは水戸黄門を見ない 〜3000万人の10兆円マーケット〜」
「だめなんだよ、その成功法は!」
かな。
ちなみに私個人もタイトルを考えました。
「マンガで読む 2ちゃんねる よのなか学
モナー博士とギコネコ教授のニューススレ解説」
田口さんの「90日で結婚する方法」の方が受けてましたかね?。
■楽屋裏より
今回も忘年会議に引き続き「面白かったよ」といってくださる方が何人もいて次回へのモチベーションが高まります。シリーズ化第1回ということもあり、まだまだ内容や進行上、至らない部分あるかと思いますが、主催者自身も皆さんのお力で、テーマ名のとおり「無敵化」したいと思います。ご意見よろしくお願いいたします。
途中私がしゃべり過ぎて時間延長の提案と参加者のご許可を頂き、エクステンデッドバージョンでお送りするハプニングはあったのですが、アジェンダ通りの内容をお話しすることができてほっとしました。予定外は、俺と100冊の成功本の聖幸さんの話が面白すぎて、私と田口さん負けそうだった上に、最後のジャケン大会で優勝し、自論の「ツキ」を実証して会場大爆笑だったこと、くらいです。
報告はまだ明日続きます。
2004年01月28日
話題の電子書籍端末ΣBook届きました!
明日のイベントで松下電器産業様からお借りした電子書籍端末のシグマブックが、オフィスに届きました。発売は2月20日。価格は37,900円とのことです。詳しくは、次のニュースが詳しいです。オフィシャルサイトではマルチメディア、3D技術を駆使したデモがあります。
・松下、電子ブック「ΣBook」を書店・ネットで発売
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/29/1921.html
・ΣBook(シグマブック)
http://www.sigmabook.jp/
早速、説明書を熟読。仕様は以下の通り。煙草の箱を横に置いて実物を写真に収めました。予想よりずっと、小さいです。
仕様:
液晶:7.2インチ液晶*2
1074ドット*768(XGA) 16階調グレースケール
開けた時の寸法:292 * 205 * 12.7 mm
閉じた時の寸法:154.5 * 205 * 25.4mm
重量:520グラム
特筆すべきは記録型液晶です。電源が切れても表示が残る液晶技術を使って、乾電池2本で3ヶ月も使えるのです。
肝心のコンテンツですが、上記のインプレスの報道によると、
「
同社が運営する「ΣBookサイト」「10DaysBook」で購入できる。当初のラインナップは、マンガ、小説、ビジネス書、実用書を中心に5,000点が用意され、書店店頭でコンテンツ購入が可能になるダウンロード端末の設置も検討されている
」
とのことでいきなり5000冊はすごいですね。
デモ機には、マンガや小説、地図と活用法の書が7冊入っています。
・サイボーグ009
・シティマップる
・1ダースチルドレン
・なつ祭り
・我輩は猫である
・黒
・ΣBookで行こう
インタフェースはシンプルさが気に入りました。モードが書籍を選択する「書棚」と、書籍を読む「書誌」の二つしかありませんが、これで十分です。開発コンセプトの明確さが伝わってきました。
1日使って、満足と不満のポイントを並べてみました。
【満足】
・見開き型ということで手にしっくりくる
・電池が3ヶ月切れない安心感
・絞り込まれたシンプルインタフェースは迷わず使える
・それほど重くない(調べてみましたがハードカバーの厚い本は500グラムを超えます。シグマブックならば500グラムで数十冊を持ち歩ける)
・質感。冷たくなく、スウェードのような表面の手触りは好感
【不満】
・期待していた検索機能がない(コンテンツを画像として扱うため)
・液晶コントラストが不明瞭
液晶については、やはり白は白、黒は黒ではっきりと表示されるといいと思いました。でも、これは技術革新ですぐに実現して、2,3年後にはカラー化されてしまうかもしれません。期待して待ちましょう。検索については規格のもとづくものですがユーザニーズは大きいですから、何らかの形で対応してくれることを望みます。
個人的にはこの端末、発売後に買ってしまうかもしれません。もし自分の作成したテキストを持ち歩けるユーティリティソフトがあれば、間違いなく買いです。
ソニーも対抗馬を準備しているようですから、かつてのVHS対ベータ規格のような熱い業界戦争が繰り広げられるのでしょうか。今年の後半が楽しみです。果たして今年は、電子書籍元年と呼ばれることができるでしょうか?
2004年01月27日
企画がスラスラ湧いてくる アイデアマラソン発想法
■17万6千個のアイデアを書いた超人の本
この本には「有効発想密度の法則」という言葉が出てくる。アイデア1000個のうち、現実に使えるアイデアは3個程度という意味で、よくマーケティングの世界で言う「千三つ」とほぼ同じである。このメソッドは、アイデアは数を出し続けることに意味があるという考え方に基づく。著者は毎日発想をノートに書くという作業を、1984年1月に開始して2003年11月末までの20年間で、276冊のノートに17万6000個以上の発想を記録しているという。
著者は1946年生まれで三井物産カトマンズ事務所長。バリバリのビジネスマンであり、書かれていることも学者、研究者のアカデミックな発想学とは一味もふた味も違う。ビジネスの現場と生活の中での実践的発想術として活き活きとしている。
・著者樋口健夫氏によるアイデアマラソンシステム(IMS)公式サイト
http://www.idea-marathon.net/ja/index.html
アイデアマラソンについて説明やFAQ、プレゼンテーション、著者の書籍の紹介などがある。
アイデアマラソンは、言ってしまえばただノートに毎日アイデアを綴るだけ、である。だが、それを毎日続けて何万件も蓄積することは普通は不可能だ。この本は、ビジネスシーンや生活シーンの中で著者が、どのようにモチベーションを高め、習慣化しているかのディティールと、このメソッドの広い効用が熱く語られる。著者はこの本の燃料を使えば一ヶ月は無着陸飛行ができるはずと書いている。読み終わってそれは強く感じた。メソッドは簡単でも、この本はスタートダッシュのブースターとして価値があると思う。
■アイデアを人に話す
アイデアマラソンのルールのひとつは「アイデアは人に話せ」。
ちょうど、そのくだりを読んでいる間に、パートナーの田口さんから、連絡が来た。「橋本さん、今度のイベントで、パナソニックさんが電子書籍のシグマブックのデモ機、貸してくれることになりました!」。え、発売前のあの話題の端末の実物が会場に出せるの?。イベントのひとつの売り物として参加者にも喜んでもらえる。とても嬉しかった。
・無敵会議 Σブックも登場だ!
http://www.project-on.com/archives/000386.html
・シグマブック関連過去記事:ブック革命―電子書籍が紙の本を超える日
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000837.html
田口さんに聞いてみると、パナソニックさんのこの部門と直接のつながりがあったわけではないらしい。たまたま、最近別件での訪問先で面識を作ったご担当者に、今回のイベントのアイデアをメールしてみたらしいのだ。これなどまさに、「アイデアは人に話せ」である。アイデアが拡張され、連鎖され、実現した良い例だなあと思った。
もうひとつ、私もこのイベントのアイデアを話した方がいる。いわゆる成功ノウハウ本を100冊読んで成功できるか検証するというサイトの主催者の方。面識はないが、あまりにユニークなサイトコンセプトに感動して、今回のイベントにきてお話いただけないか、一か八かでメールしてみた。
すると、こういう展開になった。
・俺と100冊の成功本
http://blog.zikokeihatu.com/archives/000105.html
イベントの内容にひとつ何か(私もうかがっていないので)楽しいことが加えていただけそうな気がしてワクワクしてきた。アイデアを人に話す目的は、言語化によりコンセプトを精緻化すること、他者の視点で正当性を検証評価してもらうこと、だけではないのだなと思った。アイデアを人に話すとコトが実現に近づくということなのではないかと思う。この本の著者もアイデアを話すことは「ツキ」を呼ぶと書かれていた。
■ネタ切れがアイデア発想のチャンス
特に感動したのが、ネタ切れこそチャンスと考える著者の言葉だ。20年間で17万件以上考えたアイデアの達人が言うのだから、励まされる。
ネタ切れと言えば、私にとって原稿が連想される。
このブログでも仕事の原稿執筆の仕事でも、連載は最初のうちは簡単である。蓄積したファーストアイデアの在庫があるから小出しに使う。小出しにする本当の理由は長期連載で何度も分けて使えるから、ではない。ファーストアイデアは思い入れが強いから、出し惜しみをしてしまうのだ。もったいぶってなかなか全部を使わない。
1000本以上、商業媒体で原稿を書いた自分の経験からすると、ネタを隠し持っている間は、次のアイデアはでてこないことが多い。使い切ってはじめて、次の、その次のアイデアが出てくる。これは私個人の特性なのかもしれないが、アタマのアイデア格納スペースはきっと有限なのだ。抱え込んだアイデアを表現して追い出さない限り、次のアイデアはでてこない。
そういう感覚を持っていたので、ネタ切れがチャンスという言葉は心に響いた。アイデアマラソンは、ノートに書くことで吐き出すという行為なのだ。この本には脳の学習や認知モデルの話はほとんど出てこないが、アイデア発想の大先輩の暗黙知に溢れている。
この本を半分まで読んだ時点で、別のコラムを書いた。ひとつのソースでアイデアを広げてみた。この話題にご関心のある方はこちらもどうぞ。
・パフォーマンスアートとしてのアイデアマン
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20040127-01.htm
2004年01月26日
快楽の脳科学〜「いい気持ち」はどこから生まれるか
疲れ、笑いと書評が続いて次、快楽です。情動と脳の仕組みに関心があって関連本を続けて読んでいます。
この本は、医学博士で理研にも在籍経験のある学者の書。およそ考えられる「気持ちいいこと」、「快楽」について語られている。
■管理職のサル
ここで紹介されている米国のジョー・ブレイディ博士の実験の紹介は面白い。
サルを椅子に座らせ、2頭並べて実験をする。どちらの目の前にもスイッチがあるが、一頭の前のスイッチは機能しないダミーである。ときどき不快な電気刺激がやってきて、本物のスイッチを押した方は、それを回避できる。ダミースイッチの前のサルは何をしてもだめである。
つまり、ここには二種類のサルがいる。
1 嫌な刺激を自分の力で回避できるサル
2 嫌な刺激を他人任せにするしかないサル
会社で例えると、前者は言わば「管理職」のサル。後者は「平社員」のサルとみなすことができる。
どちらがストレスを強く感じたかを計測すると、「管理職」の方が強くストレスを感じるという。サルの管理職は完璧な仕事をするストレスにやられてしまうのだ。逆に、完璧な仕事をする知能のないラットで同じ実験をすると、「平社員」にストレスがかかるという。有能な管理職はストレスが高い。無能な管理職の下の平社員はストレスが高い。世の中の構図そのものになってしまった。
心理学の世界ではこれらの実験の積み重ねから、「予測できないこと」「対処できないこと」がストレスの主因であると考えられるようになったという。
■低次脳と高次脳のはたらきの統合
一般的に脳科学の世界では、快楽は報酬系と結びつけて考えられがちである。有名なパブロフのイヌの実験のように、餌と刺激の関係を学習し行動に反映させるような考え方だ。この本も前半は、そのような報酬系の基本原理から始まる。
報酬系の考え方では、生存確率を高めるような行動が「快楽」に対応している。栄養価の高いものを食べること、社会関係の中で認められること、気持ちの良い環境で過ごすこと、魅力的な異性と性関係を持つこと、など。快楽を得て、その行動を繰り返したいと思うおかげで、動物は生存や繁殖の確率を高めている。そういう古典的な考え方だ。
しかし、著者は、ヒトを報酬系による単純なシステムとはみなしていない。単純な報酬系では説明できない実験データや、最新の脳科学の研究で分かってきた事柄が次々に論じられる。現代的テーマが多数織り込まれているのが、専門家でない読者としては興味深かった。クスリやゲーム、過食、性的倒錯、暴力などへの依存、幻聴や統合失調症など分かりやすい事例満載。
著者の文章を引用すると、
「
私たちはこれまで「自分」という自我の主人公で、それが脳の各部に命令を出して、全身を統率しているのだと考えてきたが、本当はそうではないかも知れない。食欲や性欲の中にも「自分」が散在し、それぞれがそれなりに自己主張しているように思われる
」
低次の情報処理を行う動物的な脳と、高次の処理を行うヒト的な脳は複雑に相互作用していて、快楽や感情は、その織り成す綾なのだ、という議論が説得力を持って展開される。
特に後半は、精神の正常や異常を分ける現代精神医学への批判や、それを個性とみなして受け入れることで、実現できる豊かな社会へのビジョン提言など、脳科学、精神医学の範囲を超えた著者の深い洞察と哲学が語られて、深く感動してしまった。
一般向けに感情や快楽と脳の関係を語った名著。
■インターネットの快楽
この本にもほんの1行、インターネット依存症についても触れられていた。著者は「本気にしていない」らしいのだが、参照されたのはこの2003年の論文だ。
・Internet over-users' psychological profiles: a behavior sampling analysis on internet addiction.Whang LS, Lee S, Chang G.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=12804026&dopt=Abstract&itool=iconabstr
韓国で13,588人のユーザを調べたところ、3.5%が「インターネット依存症」で 18.4%が潜在的な依存症であると診断できるらしい。基準はともかくとして、精神的にインターネットによるつながり感が生活に欠くべからざるものとなった人が増えているのは間違いないだろう。
私はブログ依存症になっているような気がしている。情報をオンラインで発信することが快楽になっている。アクセス数が増えたり、読者から良い反応がもらえると嬉しくて、多忙な時期でも時間をなんとかとって書こうとする。仕事に支障がでないように、通勤時間と帰宅後しかブログの記事を書かないとルールは作り守っている。が、ぼうっとしていると脳はついついブログのネタを考えてしまう。
当初はブログが仕事の邪魔をしないように気をつけようと考えていたが、最近では、ブログを仕事と統合して折り合いをつけようとしている。コンサルタントという仕事柄、それは不可能ではないように思う今日この頃である。
正常と異常は多様性とみるこの著者の意見と同じように、結局、この依存症を正とするか負とするか、考え方次第の気がする。ああ、今日も快楽に負けて記事を書いてしまったのはダメな私なのだろうか?。
・あなたも「インターネット依存症」かも?
http://japan.internet.com/busnews/20031202/7.html
・米国のインターネット依存症の権威による治療サイト
http://netaddiction.com/index.html
2004年01月25日
もっと笑うためのユーモア学入門
■世界一面白いジョークの可能性
テレビ番組「あいのり」を見ていたら、スリランカを一行は訪問中で、悪魔祓いの祭りのシーンがでてきた。悪魔にツッコミを入れて笑わせることで、厄払いを行うらしい。昔、本でこの風習は読んだことがあった。神様や悪魔にもボケとツッコミ関係はあるのだ。
笑いが神事に登場する例は古今東西に多々ある。日本神話にも、アマテラスが天岩戸に隠れたとき、アメノウズメら八百万の神々が宴を開いた。岩戸の前で、ストリップショーや、どんちゃん騒ぎを行い、笑いでアマテラスを外へ誘い出した。笑いは秩序を取り戻す役割を果たしている。
これほど世界に共通で重要な社会的役割も果たしている笑いであるが、国や文化、時代が違うと同じユーモアを笑うことは難しい。映画でも小説でも、海外の悲劇作品には泣けるが、喜劇は笑えないことが多い。大衆演劇に始まった歌舞伎や、格調高く感じられるシェークスピアの古典喜劇も、恐らく当時の聴衆は心から笑ったに違いないが、今はそれほどでもない。
関東と関西のお笑い文化もやはり違う。年齢によっても違う。こどもをあやす口調で「いないいないバア」とやっても、笑う大人はいない。同じ社会人でも、職場の笑いというのもある。「部長の口癖のモノマネ」など、部署が違えばまるで笑えない。
それほどまでに、笑いは高度化、細分化されている。世界中が涙を流す悲劇はできても、世界中を大笑いさせる喜劇を作ることの方が難しそうだ。英国の心理学者が、オンライン投票で世界一面白いジョークを決定したというニュースがある。
・LaughLab was a huge scientific experiment to discover the world's funniest joke.
http://www.laughlab.co.uk/winner.html
・「世界で最もおもしろいジョーク」のオンライン調査結果発表
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20021004207.html
ここに邦訳がある。
「米ニュージャージー州のハンター2人が狩りに出た。1人が木から落ちてしまった。仰天した連れのハンターが携帯電話で『息がない』と緊急通報した。救急隊のオペレーターが『落ち着いて。大丈夫。まず死んでるのか確かめなさい』と声をかける。一瞬の静寂後、オペレーターの耳に1発の銃声。続いて、『死んでる。これからどうしたらいいの?』というハンターの声が響いた」
面白いかもしれないが、「世界一」とは誰も納得しないのではあるまいか。
■ユーモアの効用と分類
この本では、プラトン、アリストテレス、ニーチェ、ベルグソン、フロイトといった哲学者、心理学者のユーモア論が次々に紹介される。ちなみにユーモアは18世紀に始まる言葉で、語源は「体液」だそうだ。当時、医学の世界に体液学説という概念が重要視されており、血液、粘液、胆汁、黒胆汁の4つの体液バランスによって人間の気質が変化すると考えられていた。だから、体液(ユーモア)に変化を与えて人を笑わすという意味から、「ユーモア」という言葉が発生したらしい。
ユーモア、笑いにはいろいろな効用があると著者は分類している。
1 笑いの生理的効用
ユーモア療法のはじまり・笑いは百薬の長
2 笑いの心理的効用
気分がよくなる・緊張の緩和・カタルシス・抑圧された欲望の解放・自己防衛機能
3 笑いの社会的効用
笑いとコミュニケーション・集団凝集性と排除作用・社会化と社会統制・攻撃性と笑い・風刺と社会批判
人はくすぐられて笑うし、エレベータで見知らぬ人と目が合っても笑う。悲しくても笑う。赤ちゃんの新生児微笑という本能的な笑いまである。この本では、主に愉快な笑いを分析しており、「感覚」、「感情」、「知性」の3つの次元と、単純に愉快で笑う「満足の笑い」と撹乱や、パニック、ズレによる苦笑系の「カオス的笑い」の2系統があると分けている。
次元|系統 | 満足の笑い | カオス的笑い |
知性 | 知的満足の笑い | ユーモラスな笑い |
感情 | 感情的満足の笑い | 苦笑 |
感覚 | 感覚的満足の笑い | イリンクス笑い |
笑いは、心身の病気を治し、社会的対立を緩和する。著者はユーモアを理解する「カオス型」人間が増えることが、世界の平和や発展に寄与するのだと強く信じてユーモア研究とその成果の啓蒙に取り組んでいるらしい。真面目に笑いを研究する本。
・国際ユーモア学会
http://www.edu.kutc.kansai-u.ac.jp/ISHS2000/
2000年の時点で世界30カ国、1000人以上の研究者が所属しているれっきとした学会。この本の著者も所属する。
■オンラインで伝播する笑い
数年前に流行した、いわゆるチェーンメールで、かなり可笑しかったものを受け取った記憶があった。どこかに全文がないかなと、Webを検索していたら見つかった。長いけれど引用させてもらうと(面白くても他人にメールしてはいけません)。
・連鎖メール情報流通拡散防止プロジェクト実験推進協議会(C3M)
http://www.kurata.to/cgi-bin/chain_amigodb/database.cgi?cmd=s&sc=allindex
より。
「
この文章は、東芝、NEC、富士通、松下、日立造船、NTT、IDC等を回って来たメールだそうです。だれしも、このメールを仕事中に読んで、大笑いをして、周りの人に変に思われたとのことです。
このメールを受け取った女性は、このメールを知人に出して、回り回って、また、自分の所に戻ってくると、めでたくお嫁にいけるという事で、幸福のメールと呼ばれているそうです。(ほんまかいな。)
では、始まり、始まり...。
先日、ぼくが友達とファミコンをしていると 通りかかった母が、「おまえたちはいいねぇ、毎日がエブリデイで」と言った。母はいったい何がいいたかったのだろぅ・・・・
家族揃って夕食をとっているとき、何かの拍子に怒った父が、「誰のおかげでメシが食えると思ってるんだ」と言おうとして、「誰のためにメシ食ってんだ!」と怒鳴った。私と姉は「自分のためだよ」と答えた。
夫婦ゲンカのとき、父が母に「バカモノ!」と言うのを、間違って、「バケモノ!」と怒鳴ってしまった。ケンカはさらにひどくなった。
うちの母は、頭が痛くなると氷でおでこを冷やします。先日も夜中にかなり痛みがひどくなり、暗闇の中をフラフラしながら台所へ。冷凍庫から、あらかじめビニール袋に入れてある氷を取り出して、おでこにのせて眠りました・・・。翌朝、目が覚めてみると、母の枕元には解凍されたイカが転がっていました。
甘味屋さんで、母は田舎汁粉を、私は御膳汁粉を頼みました。店員さんが、「田舎はどちらですか?」と聞いたら、母はとっさに、「はい、新潟です」と答えてしまいました。
先日、父は、男にフラれて落ち込んでいた姉をなぐさめようとして、「おまえ、人間は顔じゃないぞ」と言うところを、「おまえの顔は人間じゃないぞ」と言ってしまった。
妹が夕食にスパゲティを作ってくれることになりました。妹は、「今日はカルボナーラを作るね」と母に言っていました。夕方、私が外から帰ると母が、「もうすぐボラギノールができるってよ」と言いました。ソレって痔の薬じゃ‥‥‥?
エアロビクスを習いに外出していた私に、友達から電話がありました。横文字に弱い母は何を思ったのか、「娘はアクロバットに行っています」と答えたそうだ。
弟は、誰に似たのかとても勉強ができる。それで、高校1年生のとき、アメリカに留学することになった。そのとき、母は親戚や近所の人に、「うちの息子をアメリカにホームレスにやるんですよ」と言って、自慢して歩いていた。ホームステイとホームレスを間違えていたのである。
先日、プロ野球ニュースを見ていたときのこと。「ヤクルトのルーキー、伊東」と聞いて、母は、「日本人ぽい人ネ」と言った。
私の母は62歳。記憶力が悪いからと、キャッシュカードの裏に黒のマジックで大きく、その暗証番号を書いている。
先日、父はメガネを作りに行った際、「無色ですか?」と店員にレンズの色を聞かれると、何を勘違いしたのか、「いえ、銀行員です」と、自分の職業を答えていた。
うちの父は、沖縄に向かう飛行機の中でエラソ〜に、「沖縄は島全体が『さんしょううお』なんだぞ!」と言った。それを言うなら、サンゴ礁だろ!!
」
これは結構、面白いのではないか?特に真面目にパソコンで仕事をしているときに開封すると、ふきだしてしまう人が多いのではないだろうか。この面白さのせいでチェーンメールも爆発してしまったようだ。
システムを麻痺させるチェーンメールはいけないが、笑いの効用は著者も述べているように人や世界を救うものである。ユーモアの伝播性を伴ったメッセージなら、たまにはネットに増殖しても許せそうな気もする。
2004年01月24日
デスクトップの生産性を5%高めるツール
革命的に便利ではなく、毎日使うわけでもないのだけれど、面倒な作業プロセスを確実に短縮してくれるツールを3本。作業効率が5%は確実に高まること間違いなし。
・PractiSearch 選択文字列をキーボードでGoogle検索
http://www.practisearch.com/
PractiSearchは、常駐型の検索支援ソフト。あらゆるアプリケーションで、選択中の文字列を、指定したホットキー(例:CTRL+C、C)を押すことでGoogle検索する。ニュースを読んだり原稿を書きながら、気になる言葉を左手のキーボード操作で検索できるので便利。似たものにTCPIQ( http://www.tcpiq.com/tcpiq/Free/Default.asp )というクリップボードに入っている言葉を検索するツールがある。
・ClipFan テキスト変換作業をクリップボード内で一発処理
http://www.vector.co.jp/magazine/softnews/040124/n0401243.html
単純な変換作業がクリエイティブな作業を中断してしまうことがある。このソフトはクリップボード内のテキストに対して以下の処理を行う。「かな・カナ変換」「小文字・大文字変換」「漢数字変換」「ローマ字変換」「文字列置換」「空白削除」「連番挿入」など、文字列の編集機能が十数種類。「行挿入」「行ソート」「行順反転」「連番挿入」「同一行除去」。原稿の文字数チェックもできる。これで面倒な単純作業も手軽に可能に。
・椿 -list editor- 表形式データ処理をEXCEL起動せずに手早く処理
http://hp.vector.co.jp/authors/VA015850/software/camellia.html
ExcelやCSV形式のデータを加工したいときに手早く変換、修正ができる。Excelを立ち上げるまでもなく、Web上の表形式データやCSVデータを加工できるのが便利。読み込み可能な形式は CSV、TSV、RSV。書き出し可能な形式は CSV、TSV、RSV、HTML、LaTeX、Text。このブログで簡単な表を入れたいときにも使用。
こういう5%生産性を高めるツール、皆さんもご存知でしたら教えてください。
2004年01月23日
人はどうして疲れるのか
タイトルを見て「え?身体の中の乳酸が増えるからでしょう?」と保健の時間に習った知識でツッコミを入れながら書店の棚から取り上げて、中身を確認。どうやらもっと突っ込んだ話が一般向けに書いてある。著者は、医学博士で自由時間デザイン協会理事、日本ストレスマネジメント研究会会長。
この本を読んでの私の結論は疲れるのは自然なことだから、疲れたら休もう、ということ。そういうことが疲れの計量化や、癒しと複雑系(ゆらぎ)、体内リズムなどのテーマを織り込みながら科学的に書いてある。意外にも疲れの正体はこの物質と特定できてはいないらしい。こころとからだの疲れも別々ではなく影響しあっている。
エネルギー代謝率という観点から、何をするとエネルギーをたくさん使うかの数字が面白い。エネルギー代謝率={(作業時の消費エネルギー)−(安静時の消費エネルギー)}÷基礎代謝量。この計算では体の大きさの違いは無視してよい。
読書 0.1 ふとん上げ 4.3
裁縫 0.3 ふとん敷き 5.3
身支度 0.4 徒歩1分40m 1.5
食事 0.4 1分60m 1.8
通勤徒歩 3.0 1分80m 2.8
乗車 1.0 1分100m 4.7
電気ミシンかけ 0.6 1分150m 8.0
入浴 0.7 子供を抱く 0.4
タイプライター 1.4 子供を抱いて歩く2.1
炊事 1.5 階段上り 11.0
洗濯 1.4〜1.5 階段下り 3.5
この表を活用して、最も疲れない生活ができそうだ(ほんとか?)
また、消費カロリーで計算した場合は、安静時は72カロリー、筋作業時216カロリーで6倍。心臓だけで見ると安静時3.16、筋作業時9.6で約3倍違う。ところが脳は安静時2.16、筋作業時2.4でほとんど変化がない。その他の臓器の数字も併せてこの本では紹介されている。
後半では有効な疲労回復法が語られており、実用的である。結局、生きていれば必ず疲れるし、疲れないと働きすぎて身体を壊す。疲れの効用としてプラスに捉える考え方もあることを知った。
結局、この本を一言でまとめると「疲れたら休め」なのでないか?
疲れたら休め。我ながらこのまとめ方は、当たり前すぎる。当たり前でない人の話をして今日の記事を終える。
■疲れを知らない男から聞いたノウハウ3つ。
疲れを知らないといえば、私が最初に思い浮かべるのが何度もハードスケジュールで取材旅行したビデオジャーナリスト神田敏晶氏。長期間行動を共にした経験から、この人は24時間大ハッスル(死語)状態ということも確認した。精神的に落ち込むときを除いて、バイタリティの塊みたいな人である。今も一ヶ月ピースボートに乗ってインドに降りて、来週頃バグダッドを目指しているはずだ。
・KNN
http://www.knn.com/
神田さんから学んだこと。
ノウハウ1 寝る前に時計を見るな
「
橋本君、寝る前に時計を見ないことだよ。起きたときに時刻を見て睡眠時間を確認した時、短いとよく眠れなかった気がするじゃない?。寝る前に時刻をみないで、いつも「あーよくねた」といって起きればいいんだよ
」
無茶かもしれないが合理的かもしれない。
ノウハウ2 飛行機は乗ったら跳ぶ前に寝ろ
神田さんは米国との往復の飛行機に乗ると離陸前に寝てしまうことが多い。飛行中は寝ている。飛行中は耳が痛くなるからという理由もあるらしいのだが、これによって睡眠時間を調整し、時差ぼけを回避できている。
ノウハウ3 マラソンで最初に飛ばせ?(ノウハウでないかもしれない)
神田さんは琵琶湖マラソンやらホノルルマラソンに参加したことがある。トライアスロンもやっているはずである。テレビ中継されるマラソンに参加した際、スタートダッシュすることでしばらくの間、先頭ランナーとしてテレビに映像化されたことを自慢していた。彼の目的は参加することではなく、テレビに映ることだった。スタートダッシュを使うことで、完走できたかどうか聞かなかったけれど、目的を達成してしまった。
2004年01月22日
究極の一冊を教えあう、超『本』格会議!
150人の方々にご参加いただき感激した忘年会議。橋本&田口のコンビは調子に乗って、毎月テーマを変えて開催を企みました。前回では、究極のWebサイトを持ち寄り知識の交換をしましたが、今回はテーマはずばり本。究極の一冊ネタで盛り上がりませんか?
このシリーズは、参加者の皆さんの知識を結集して無敵のビジネスパースン、無敵の生活者を目指しましょうという、趣旨で、「無敵会議」シリーズと名づけました。1月はその第一回です。少し日程が急になってしまいまして恐縮ですが、ご満足いただけるような共創の場をプロデュースできるよう頑張りますのでぜひご来場を!
超 『本』 格 会 議 実 行 委 員 会
究極の一冊を教えあう、超『本』格会議!
〜 書籍のビジネス活用ノウハウで2004年も完全武装 〜
http://www.project-on.com/
2004/01/29(木) 19:40-22:00
日本では年間8万冊近い新刊本が出版されています。なかなか読みきれません。
ただ、読書で得られる知識は無限の可能性があります。
最近、Webやメールマガジンといったネットの情報への依存度が高まる中、紙
の本の情報はビジネスや生活で、同僚や友人に大きく差をつけるポイントになっ
てきているなと思うのです。
そ・こ・で、私たちは考えました。
「ひとりの力は小さいけれど無数の本好きの人たちの知識を結集すれば!」
あなたの究極の一冊は何という本ですか?
明日、世界が終わるとして、もう一度読み返したい一冊。ビジネスで役立った
あの一冊。「コレで私、会社を辞めました」な一冊。この本があったから納期
に間に合った一冊。一儲けさせてもらった一冊。無人島へもって行きたい一冊。
重要なのは究極に絞り込んだ、ただ一冊。それを簡単な理由付で教えてくださ
い。みんなで、そのベスト本情報を交換しましょう。参加者が50人いれば、一
夜で究極の50冊を知ることができるのです。
■ 実施要綱
日時 2004年01月29日(金) 19:40-22:00(19:30受付開始)
場所 デジタルハリウッド渋谷校
〒150-0042 東京都渋谷区道玄坂2-25-12 道玄坂カブトビル4F
(地図)
費用 3,000円(税込、当日現金払)
定員 50名(先着順)
持ち物 筆記用具
主催 橋本大也(Passion for the Future)
百式管理人(百式)
協賛 デジタルハリウッド株式会社
■ 参加の方法
これは会議です。全員参加です。参加するには、あなたの究極の一冊とその理
由を教えてください。
どんな意味で究極というと、例えば、
・人生観を変えた一冊
・あなたの行動を変えた一冊
・無人島に持って行きたい一冊
・これで儲かった一冊
・これでモテまくった一冊
そんな自由な意味での究極です。そして理由を一言お願いします。思い入れこ
そ大切です。内容の解説よりも、他の人にお薦めする文章がベストです。
参加者の皆さんには当日投稿結果を印刷して配布させていただきます。
また、投稿だけの参加も可能です。投稿していただいた方全員に、後日「超本
格会議、あなたを変える究極の一冊!(要約版)」を配布いたします。
■ プログラム
第一部 フリートーク (60分)
巷の速読メソッド徹底解剖。本当に3倍速く読めるのか?体験と比較分析(橋本)
本探しの7つ道具。書店で、ネットで、上手に探す方法とツール
読書術と一口に言いましても十口くらい言わせて。本を理解し、使って、稼ぐ術。
洋書で読み解く海外動向。次はこれが日本上陸と独断予報を3連発(田口)
本を書きたい、雑誌に書きたい、儲かるの?ライター仕事の裏側お見せします
電子書籍がブレイク?するかしないか大検証。先端技術、ビジネスをピックアップ
第ニ部 超本格会議 (30分)
会議のファシリテーション技術を使ったインタラクティブセッション。グループに分かれてあるテーマについて議論していただきます。テーマは当日発表します。
第三部 結果発表 (30分)
会議内容の発表
橋本、田口が参加者投稿から選ぶ独断と偏見の『究極の究極のベスト本』
第四部 名刺交換と交流会
名刺とそれ以外のあらゆるものを交換。
■ 投稿・お申込みはこちらから
会議への参加お申込み、究極本の投稿は下からどうぞ。
・参加お申込み、投稿受付
http://www.project-on.com/detail.html
■ お問合せ
このイベントに関するお問合せ、取材のお申込みは info@project-on.com ま
でお願いいたします。
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超 本 格 会 議 実 行 委 員 会
http://www.project-on.com/
info@project-on.com
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2004年01月21日
百式2冊同時出版と管理人への7つの質問
百式2冊同時出版と管理人への7つの質問
■百式発の2冊同時出版、2月3日発売、予約開始
2月4日に友人であり、仕事のパートナーであり、ライバルの百式田口さんが書籍を2冊出版する。説明不要と思いつつ、説明すると、百式はドットコムのドメイン名を持つWebサイトを、田口さんの独自の発想の切り口で、土日も休むことなく一つずつ紹介しているサイトである。ちなみに百式は100の様式、さまざまなスタイルという意味らしい(ガンダムのネタではないのだ)。
校正前の原稿をちょっと見せてよと頼んだら、気前よく全部読ませてくれた。感謝。
・百式本特設サイト
http://book.100shiki.com/index.html
1冊目は、アイデア×アイデア
「
『アイデア×アイデア』のご紹介
あの『百式』が本になりました!
海外のビジネスアイデアを紹介する人気サイト『百式』から100例を厳選して掲載。奇抜なアイデアから、なるほど!と小膝を叩く絶妙なアイデアまで。やっぱり海外の発想はおもしろい!
人とは違った発想は、人とは違った情報源から。海外のユニークな事例を読みこなして他の人と差をつけよう!
」
という宣伝文。
百式サイトで紹介された厳選サイトが書き下ろしの解説と発想、図解と共に100連発。毎日Web版をマニアックにチェックしている人にも売れるように、付加価値がつくように念入りに設計されている。感想としては、百式Pro版。ビジネスのマーケティングに使えそうな話題が満載。身近に著者がいる私でも買いの判断。
2冊目は「起業・企画・営業・雑談のネタは日常の諦めている不便利から」。長いタイトル。
「
『起業・企画・営業・雑談のネタは日常の諦めている不便利から』のご紹介
あの『百式』の人気コーナーが本になりました!
海外のビジネスアイデアを紹介するサイト『百式』の人気コーナー、『起業のネタは諦めている不便利から』に寄せられた投稿から150のアイデアを一挙掲載。
世の中の人は何を欲しているのか?何に不便を感じているのか?全国から寄せられた生の声にそのヒントがある。ビジネスの企画からデートの話題まで。あなたをクリエイティブな人にするアイデアがここにある!
」
こちらは読者投稿の諦めている不便利に大して田口さんが、ビジネスも意識した提案コメントをびっしり書き込んだ本。仕事のネタ帳としてコンサルタントの虎の巻になりそう。面白い。こういう濃い投稿者がたくさんいるサイトってどう作っているのだろう?
というわけで、友人ということもあることを差し引いても、両者読み応えのある推薦できる本であると思います。
さて、毎日サイトを更新しながら全国を飛び回る生活の田口さん、どうやると2冊も本を書く時間があったの?といった湧き上がる疑問を7つにまとめて投げかけてみました。
■百式管理人への7つの質問
Q:ドットコムばかり毎日みていて飽きませんか?
---------------------------------------------------------------------
飽きないですね・・・毎朝5時とか6時とかに起きてネットサーフィンをするのですが、毎朝一つは「うーむ!」と唸ってしまうドットコムがあります。ビジネス的には「?」でもそこはそれ、発想として「ありえない!」と思えるものばかりです。
毎朝頭の中に変な液体注入してもらうような気分です(そんなことされたことないけど)。目が覚めます。
Q: 百式ではまだとりあげていない、最近気になるサイトを一つ教えてください。
---------------------------------------------------------------------
毎朝ネットサーフィンをしていると、ドットコムじゃないけれど、これは是非みんなに教えたい!というサイトによく出くわします。最近一番よかったのは、下のサイト。
・2004年
http://www.panoramas.dk/fullscreen3/f1.html
今年のNew Year's Day、ニューヨークのタイムズスクエアをパノラマ画像と雰囲気のある音楽で。こういうのいいですよね。
あとは真面目にビジネス、ということだったら、
・Tickle
http://web.tickle.com/
ですね。ここではいわゆる性格診断を有料で行っているのですが(無料のもあります)、すでに1800万人の会員がいて、利益を出しているというからすごいです。ここが注目したのは「自分の性格診断結果は人に転送したくなる」という心理です。これって経験ありますよね。「僕はこうだったけど、お前はどう?」というメールです。これによって口コミをひろめ、一大メディアに育てたのがTickleなのです。
Q:無人島に持って行きたいサイトはありますか?
---------------------------------------------------------------------
無人島で毎日見れるサイトが一つだけあるとしたら、というご質問でしたら下のサイトですね。
・AlwaysOn
http://www.alwayson-network.com/
業界の動向が地道に集められているので参考になる記事ばかり。特にRafeさんという人のファンですね。彼はRed Herring、Business2.0と渡り歩いている人で、かなりの業界通です。
・Rafeさんのコラム
http://www.alwayson-network.com/blogtopics/index.php?id=22
Q:情報収集したデータ、発想はどのように保存、知識ベース化していますか?
---------------------------------------------------------------------
情報収集(=毎日のネットサーフィン)で見つけたサイトは、自分宛にメモ書きとともにメールして保存しておきます。その際に役立つツールはこれです。
ZakuCopy
http://a-h.parfe.jp/zakucopy/zakucopy.html
ブラウザから右コピーで、今見ているサイトのタイトル、URLをメールに転送してくれる。
その後、なにか書きとめておきたいメッセージがあればWikiに書いておきます。Wiki、知らない人が多いのが不思議ですよね。
・PukiWiki
http://www.pukiwiki.org/
ウェブ上でページを更新していくことのできるツール。コメントを追加していく掲示板と違い、一つの文書の精度を編集することでどんどんあげていくことができる。FAQや辞書など、追加するのではなくて更新するようなコンテンツには最適。
Q:百式1日分の記事作成に費やす時間は?
---------------------------------------------------------------------
「ネタ探し」としてのネットサーフィンにだいたい45分。記事を書くのはだいたい15分ぐらいですかね。最速で7分ぐらいでかけます。調子が悪くても30分ぐらいですね。
(これは本当です。彼が目の前で書くのは何度か見た:橋本)
Q:面白いWebをみつける「てがかり」はなんですか?
---------------------------------------------------------------------
「面白い=人と違う」と思っています。そう考えるとやはり海外の人のコラムやサイトを見るのが一番ですね。日本人にとっておもしろいものがたくさんあります。海外の情報に定期的に触れるのがコツだと思います。そういった意味では『アイデア×アイデア』おすすめですよ(宣伝)。
Q:ここに手持ちの有り金全額投資しちゃうぞというドットコム教えてください
---------------------------------------------------------------------
というのは冗談として、
でしょうか。日本にもある郵送DVDレンタルですが、こうした「生活習慣を変えてしまう」サービスは素晴らしいですよね。特に企業名が動詞名になるような企業は全部好きです。「これ、FedExしておいて!」とか、ですね。
2004年01月20日
・サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ
百式田口さんに教わったWeb上の手品のサイト。今日のテーマと微妙に関係あり。
・Pick A Card(オモシロイのでとりあえずクリックをおすすめ)
http://www.caveofmagic.com/pickcrd1.htm
5枚のトランプのカードが提示されるので1枚を選ぶ。そして、選んだカードを強く念じてクリックしていくと、あら不思議!というもの。
潜在意識への働きかけ、サブリミナル効果をうまく使った手品だと思う。
■潜在意識が意思決定に大きく影響している
著者はカリフォルニア工科大学生物学部教授。1999年、『〈意識〉とは何だろうか――脳の来歴、知覚の錯誤』(講談社現代新書1439、講談社、1999/02)によりサントリー学芸賞思想・歴史部門を受賞。
純粋に、映画「RAMPO」などで話題になったサブリミナル効果についての本かと思って読み始めた。漫画風イラストが随所に挿入されていたりして、マーケティングや感性評価の軽めの話題なのかとパラパラめくった段階ではあたりをつけていた。
違った。
読み進むにつれ、認知心理学、社会心理学、発達心理学、脳科学、そして哲学を学際的に横断し、サブタイトルにある「潜在的人間観」を描き出そうとする哲学書なのだと納得した。講義録形式で、第一講から第九講まで、緻密に構成が練られている。各講の情報量がかなり多い。若干の消化不良を起こしつつも、知的好奇心を刺激され、次の講義で論が進んで分かったりもする。こんな講義を実際に受けてみたい。
トビラの解説を引用すると、「人は自分で考えているほど、自分の心の動きをわかっていない。人はしばしば自覚がないままに意思決定をし、自分の取った行動の本当の理由には気がつかないでいるのだ」ということを、科学的根拠や事例を多数参照しながら語る本。
■見えなくても見えている
米国の心理学者ザイオンスの有名な単純接触効果の実験。これはマーケティングの世界でも良く知られている。人はその接触内容とは無関係に、会えば会うほど、親しみや好感度を高めていく効果のことだ。だから選挙宣伝でポスターを貼りまくったり、名前を連呼するというのは、一見、無駄のようでありながら、有権者の意識へ働きかける知恵である。繰り返し同じコマーシャルを消費者に短期間に見せるのも効果がある。知っているものは確率論的には親近感が沸き、好きになる場合が多いのだ。
この本では学者ボーンシュタインの実験紹介でさらにこの説が詳しく解説される。最初500ミリ秒という短時間、ある図形を被験者に見せる。この時間であれば見たことが分かる。時間を少しずつ短くする。最終的には5ミリ秒という知覚が不可能な一瞬だけ、図形を呈示する。その後、図形に対する好感度を試験すると、知覚できていないはずの時間の図形に対する好感度も上がっているのだ。見覚えはないが、なんとなく見知っている気がする、好感を持つという結果が出るそうだ。
その他無数に、見えなくても記憶しているという実験例、臨床例がこれでもかといわんばかりに登場する。盲目なのに見えているように振舞える盲目視の謎の解明など、人間の感覚と意識は思ったより大きくずれていて、そのずれは意識できていないことが分かる。
■首無し鶏マイク、身体に分散した記憶の謎
この本に紹介される断頭実験による研究は残酷で気分は良くないのだが脳にすべての思考や知識があるわけではないことの証明として、興味深くはある。ゴキブリやカエルに電気刺激を使った学習を行った後、頭部を切断して刺激を与えると、学習した動きを再現し続けるという。微妙な判断もするらしい。イヌのような高等動物の例も出ていた。一般にはかなり知的な学習内容と思えることも、学習を記憶しているかのように身体が振舞える。
この話を聞いて昨年見たテレビの内容を思い出した。英語の熟語で「running around like a headless chicken」というのがある。首のないニワトリのように走り回る。ものすごく忙しいという意味だが、これに似た実話があるのだ。
首を切られた鶏が18ヶ月もの間普通に生きていたという話。しかも育ったのだ。
・Mike The Headless Chicken
http://home.nycap.rr.com/useless/headless_chicken/
・奇跡の首無し鶏 マイクの残したもの
http://x51.org/archives/000454.php
X51.orgより引用
「
反射作用の大分部を司る脳幹が依然マイクの体内に残存していたために、マイクは至って健康なままであったという。そしてその後マイクは18ヶ月に及び生き続け、「驚異の首無し鶏」としてその奇跡的な生涯を全うすることになるのである(首を切られた当時2ポンド程だったその体はその後8ポンドになるまで成長したという。)。
」
私たちは自分の行動を、自分の脳で考えて決めていると思いがちだけれど、身体(末梢神経レベル)でも記憶し、ある程度インテリジェントに動作を行うことができるということが分かる。
この本では投げられた速いボールを咄嗟に受けとめた人に「今どちらからボールが飛んできました?」と聞くと方向を間違うことがあるという事例が紹介されている。行動した後に自分の体位から、方向を大まかに判断していたりする。サブリミナルCMによる好感度評価と同様に、咄嗟の行動も意識がベースになっていないのだ。
■サブリミナルな新しい人間観
視覚に一瞬入っただけで、見た記憶はないもの。憶えていないけれど昔に通り過ぎたもの。そういう意識にのぼらないものに、人間の意思決定が大きく依存していることが、この本を読めば読むほど分かってくる。
後半では、裁判における意識的判断と犯罪の量刑(例えば末必の故意の問題)という観点から、現代社会が人間のサブリミナルをどう捉えているか、という問題。そして、動物が過密に増えた場合の個体数調整の現象(自殺や子殺し、不妊や同性愛の増加)を人類の都市の人口現象になぞらえる話など、社会学、自然科学などを総動員して、人間存在の根源へと切り込んで行く。スリリングな展開。
恐らく著者は最終章で語るサブリミナルな新しい人間観という哲学を語るために、すべての章を書き下ろしていたのだと最後に分かった。終章のまとめ方は秀逸。
なにかいい方向にこの研究がITにも使われるといいなと思う。毎日ニュースを読んでいるだけでモチベーションが上がるポータルとか、仕事が好きになるメールソフトとか、自然に技能が向上してしまうデスクトップとか。
参考URL:
・PositiveNews
http://www.positivenews.org.uk/mainframeset.html
ポジティブな内容のニュースだけの新聞社。
サブリミナルとはちょっと違うか。
#最初のトランプ手品のネタバレはこのブログのコメントに分かっても書かないでくださいねえ。
2004年01月19日
オンラインコミュニティの3つのややこしい問題の浅い考察
オンラインコミュニティの3つのややこしい問題の浅い考察
風邪でダウン。頭が回らないので、まとまったことは書けない日。いつもと文体を変えて、ですます調で書いてみます。
最近、はまってしまったオンラインコミュニティにおけるディスカッションに3つのテーマがあります。「口にできないこと」「儀礼的無関心」「ツッコミビリティ」という話題。どれもオンラインならではの要素が強く、従来のコミュニケーション理論の概念ではこれだと言い切れない、新しい要素を含んでいるような気がします。
自分の考えていることを世の中に向けて書くという行為は、その意味を一旦考え始めてしまうと、いろいろと、ややこしい諸問題を内に含んでいるなあとは感じます。特にWebは、言及する側、される側が両者同じレベルにいるので、気を使い始めるときりがなくなる気がしています。そのきりのなさの問題といって終わってしまえばいいのかもしれないのですが。
気になるのです。
最近気になったのは次の3つの問題。
■口にできないこと(邦訳)
・口にできないこと ---What You Can't Say---
http://www.shiro.dreamhost.com/scheme/trans/say-j.html
Paul Grahamさんという人が書いてオンラインでディスカッションが大きくなったテーマらしい。冒頭を引用すると、
「
(これは、異端に関するエッセイである。いかにして禁じられたアイディアを考え、それによって何をするか。後者は、近年まではごく少数のエリートが考えれば良いことだった。しかし現在、誰もが考えなければならないことになった。 Webによって誰もが意見を公表できるようになったからだ。)
」
という概要です。自分が属している世界やコミュニティでは、禁じられているアイデアを思いついたとき、私たちはどうすべきか、という小論文です。処世術とまとめてしまうには、あまりに深い考察の数々。ややこしい。でも、読み応えあり。意味もあると思いました。
■儀礼的無関心
こちらは、
・ネットでの儀礼的無関心の可能性
http://d.hatena.ne.jp/TRiCKFiSH/20031130#p1
どうやらこの記事に端を発したディスカッションらしいです。この問題についてのリンク集もあります。
・儀礼的無関心反応リンク集
http://sheepman.parfait.ne.jp/wiki/%B5%B7%CE%E9%C5%AA%CC%B5%B4%D8%BF%B4%C8%BF%B1%FE%A5%EA%A5%F3%A5%AF%BD%B8/
ここでは「書き手がリンクされることを想定していないページにリンクすることに関する議論」と説明されています。最初は単なる無断リンク禁止論かと思っていたのですが、最近よく読んだら、ネットコミュニティの現状を反映したマナー論、モラル論だったことが分かりました。
関連して、新たにこういう問題も持ち上がっているらしいです。
・リンクしないで言及するという行為
http://artifact-jp.com/mt/archives/200401/nonlinkreference.html
むむむ、さらにややこしくなってきました。
■ツッコミビリティ
友人のnightnoise氏と雑談する中で話題になった話。
・ツッコミビリティ
http://www.doblog.com/weblog/myblog/428?blogid=6675#20031114
ある記事がコミュニティで話題になるには、話題としての面白さや、作者の謙虚さ、突っ込みを入れる余地だとか、突っ込みを入れるためのボケなどを用意しておかなければいけないのではないか、みたいな問題です。
いわばツッコミを誘うアフォーダンスの話。
うーん、風邪のねつがぶり返しそうです。
この3つの問題は考えれば考えるほど、ややこしさが倍増して自分なりの答えも出ません。明日からまた書けなくなるので、深くは考えないでおこうと思いました。茂木健一郎さんのクオリアの本で書かれていた「難しい問題は考えてもきりがない」という意味の問題のような気がしてきました。
でもその先に何かあるのでしょうか?あるような、ないような
2004年01月18日
ボツネタ公開:Webドメインマーケティング
風邪でダウン。体調は回復するも山積みの仕事を消化中で更新停滞しています。手持ちのボツ原稿で埋めちゃおう。。。(編集部のTさん、いいですよね、これ宣伝になるから...)
・Webドメインマーケティング
http://webdomainmarketing.jp/
この連載用に書いたWebドメインについてのコラムでしたがテンポがよくないということでお蔵入りした原稿です。
なおWebドメインマーケティングについては、
の巻末の方の特集で私も写真入で登場中。企業ウェブマスターの皆様ぜひご覧くださいませ。
ここ数日でも、Webドメイン関連はこんなニュースもあってホット。
・JPRS、IDN未対応ブラウザから日本語JPドメイン名が利用できるサービス
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/19/1783.html
・PIR、“日本語.org”などIDNの一斉抹消は中止へ
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/19/1785.html
■汎用.jpドメイン、日本語ドメインの魅力
あなたが勝ちのある企業や組織のWebマーケターだったとして、自社のドメイン名
を選ぶことになったとする。考えた名前の候補に対して、あなたは次の4つの質
問に自信を持ってYESと答えることができるだろうか?
・DNS管理の安定性は大丈夫ですか?
・もしも訴えられたら対応できますか?
・取りたい名前を取ることができますか?
・印象に残る、間違わないドメインですか?
ドメイン名候補を考えるという作業は会議のひとつもすればたくさん思いつくだ
ろう。ドメイン名を登録するという作業は、多数の代行業者がサポートをしてく
れるから手間もかからない。
だが、このドメイン名選びひとつで、不要なリスクを背負い込んでしまったり、
お客を遠ざけてしまったりする可能性がある。4つの質問に対してすべてYESのド
メイン名を選ぶのが、企業のマーケティング担当者として賢い選択なのだ。
■質問1 DNS管理の安定性は大丈夫ですか?
.jp、.com、.net、.tvなど、日本語のサイトには、さまざまな種類のドメイン名
が使われている。専門的な言葉を使うと、ドメイン名の最後の部分=トップレベ
ルドメイン名は国際管理されているgTLDと国別で管理されているccTLDの2種類に
分けることができる。
ドメイン名の種類がいくつくらいあるかご存知だろうか?
・gTLD(Generic Top Level Domainの略)
.com、.net、.org... 10個
・ccTLD(の略)
.jp(日本)、.kr(韓国)、.ch(中国)... 約250個
ドメイン名はこの2種類の合計で約260種類も存在している。日本語サイトで多い
のは、.jpや.comであるが、以下のようなドメイン名を使ったサイトもちらほら
みかけることがあるだろう。
.tv ツバル
.to トンガ
.cc ココス島
.cx クリスマス諸島
.tvや.toはキーワードと組み合わせると意味の通った魅力的な名前になることが
あるため、企業のドメインでも採用例があるようだ。これらの小さな国や地域の
ドメイン名の多くは、比較的、資本力の小さな管理組織、場合によっては海外の
ベンチャー企業によって運営されている。
あまり知られていないことだが、トップレベルドメインの安定したDNS管理には
莫大な費用がかかる。小さな管理団体のケースでは運用上のトラブルが起きてア
クセス不能になる事故も実際に起きている。
2000年には、クリスマス諸島の.cxドメインがドメイン管理にかかる費用を納め
るのが遅れて、一時的にアクセス不能になるという事件があった。.cxドメイン
を利用していた主なお客である海外企業がこの影響を被ってしまった。企業サイ
トのダウンタイムはそのまま営業機会の損失につながってしまう。重要なドメイ
ン名に使うには、本当にそのドメインが信頼できる品質の運用体制を持っている
かどうか、調べておく必要がある。
汎用.jp及び日本語jpドメインの運用はその開始以来、大きなトラブルもなく、
品質は国際レベルでもトップクラスと高く評価されている。
■質問2 もしも訴えられたら対応できますか?
多くの企業がドメイン名を持つようになり、紛争も多く発生する。ドメイン名に
まつわる訴訟がニュースで話題になるようになった。
・米人気プロレス団体のドメイン「WWF.com」に商用使用差し止めの決定
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/0813/wwf.htm・横行する「ドメイン乗っ取り」、登録会社の責任は?
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Business/story/20030625102.html
・「goo.co.jp」ドメイン名使用権でNTT-Xが勝訴〜東京地裁が判決
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0426/goo.htm
・日本初のドメイン裁判,原告のジャックスが全面勝訴
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20001206/1/
.comドメインの裁判は米国で行われる。当然のことながら訴訟対応は英語を使っ
て現地で行うことになる。米国事情に詳しい弁護士を雇って、英語で現地との打
ち合わせをすれば、旅費や通信費、翻訳費もかさむ。この点、.jpドメインには、
企業名や商標名の権利を保護するための仕組みが用意されている。
1 サンライズピリオド:異議申し立て期間による権利保護の仕組み
他者が勝手に自社の権利の名称をドメイン登録したことを発見した場合に、30日
以内に異議申し立てを行えば、その登録を解除することができる。
2 DPRS(ドメイン名紛争処理方針):悪用されたら取り返す仕組み
jpドメイン名に関して紛争が発生したときに正当な権利者を守り、訴訟を含む紛
争解決を円滑に行う手順を決めた方針。
・ドメイン名紛争処理方針(DRP)
http://www.nic.ad.jp/ja/drp/index.html
■質問3 取りたい名前を取ることができますか?
.comドメインには既に2千万件を超えるドメイン名が登録されている。.comはイ
ンターネットの草創期から運用されているため、世界中のユーザが先を争って登
録を行った結果、名前の空間が埋め尽くされてしまい、今からでは、取りたい名
前を登録することは困難な状況である。
ドメインブローカーによるドメインの値段の吊り上げの結果、一般名詞の取引価
格が1千万ドルクラスの名前まで現れてしまった。例えば、ITニュースサイトの
Hotwired記事によれば、『business.com』、『drugs.com』、『wallstreet.com』
はそれぞれ750万ドル、82万5000ドル、100万ドルで販売されたという。ドットコ
ムIPOバブル全盛期ならばともかく、これだけの投資を単にドメイン名から回収す
ることは現状ではほとんど不可能であろう。
・参考記事:ドメイン名で大儲けの夢を追い続ける再販業者たち
http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/20030514106.html
そもそも.comドメインは古くからあること、登録時の制約が緩いことという理由
だけで安易に選ばれがちであった。
日本の企業のWebマーケターは冷静にこの事実に気がつき始めている。
jpドメインの中でも、co.jpという属性ドメインには、1組織1ドメインの原則と
いう登録時のルールがある。最初に企業名で登録するとブランド名やサービス名
でco.jpを登録できないという制約があったが、汎用jpや日本語jpドメインは自
由に取得することができる。
■質問4 印象に残る、間違わないドメインですか?
日本語jpドメインには印象に残る、間違わないというメリットがある。
例えば「小学校」のドメイン名として、メディアに登場させるときに、次のふた
つはどちらが分かりやすいと感じるだろうか?
1 「shogakko.com」
2 「小学校.jp」
ほとんどのユーザが2のほうが目にしたときに分かりやすい、印象に残ると答え
るはずだ。1はローマ字としてはSyogakko.comともShougakkou.comなど数パター
ンで書けるから間違えて入力するユーザも多くなる。
もうひとつ例を出してみよう。
1 meti.go.jp
2 経済産業省.jp
これもまた2のほうが万人に分かりやすく間違えられないはずだ。
国際化ドメイン名として日本語.comというドメイン登録も可能ではあるが、漢字
は日本以外でも国際的に使われている文字だ。「現代.com」というドメインを取
得して、隣国の財閥からクレームが起きたり、「美食.com」と書いたら同名のブ
ランドから注意が来たり、実は他国ではこの漢字が妙な隠語であったという事態
も考えられる。前述したように日本語jpであれば日本企業の持つブランド名が保
護されやすく、訴訟リスクは小さくなる。
現段階では日本語ドメイン名の採用例は決して多くはない。ブラウザーが日本語
jpドメインの直接入力に対応しておらず、追加プラグインソフトのインストール
を必要とするからである。この状況も、一部のブラウザーが標準対応したという
ニュースもあったりで、変化の兆しが見えてきた。
・日本語ドメイン名プラグイン(JPRS提供)
http://jprs.jp/i-Nav/・RFC準拠方式で日本語JPドメイン名のWebアクセスが可能に
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0710/jprs.htm
漢字やカナ文字とローマ字を比較すると、前者の方が日本人には圧倒的に認知さ
れやすく記憶に残りやすい。将来的には、雑誌広告や交通広告の表示は日本語
.jpが主流という状況も十分に考えられそうだ。
2004年01月17日
赤ちゃん学を知っていますか?―ここまできた新常識
2002年1月から12月まで産経新聞朝刊に連載された記事の単行本化。脳科学、認知心理学、霊長類学、教育学など多彩な分野の研究者を、新聞記者が取材して書いた赤ちゃん学の最新事情。日本赤ちゃん学会推薦の書。
・日本赤ちゃん学会
http://www.crn.or.jp/LABO/BABY/
この学会は2001年に設立された新しい団体で、学際的に赤ちゃん研究に取り組んでいる。学会誌投稿論文が読める。
我が家には5ヶ月の息子がいるので、妻から子育ての本を読むよう薦められる。マニュアル本、カリスマ子育て論、トレンド本などを目の前の床に積み上げられてしまう。一応手に取るのだが、なぜか読む気がしない。大抵は写真入で、何ヶ月の子にはこうしましょうとノウハウや体験記が丁寧に並べられている。でも、どうも興味が続かない。目の前に実物がいるのだから自然に接すればいいではないか。
「この本なら数字とか実験とか書いてあるよ」とそんな調子の私を見て、妻から戦略的に渡されたのがこの本だった。いや、別に私は数字や実験が好きなわけじゃないけど、ちょっと読んでみようか、パラパラ、そうそう、こういうのが読みたいのですよ、陥落。簡単に読破。
■笑う赤ちゃん
新生児微笑。産まれたばかりの赤ん坊が眠っている間に微笑する現象。この微笑は一部のサルにも起こるらしいが、本能的なもので、感情の表出というわけではないらしい。この微笑は母親の注意を惹き世話をさせる効果がある。自然の生き残り戦略の上で、遺伝子に組み込まれた仕組みなのだろう。
そして3ヶ月を過ぎると、目を見て笑うようになる。昔、「イヌに遊んでもらう本」というのを読んだことがある。イヌは、基本的にはみつめあってはいけないらしい。イヌ社会では目と目を長く合わせるのはケンカを売るような行為なのだそうだ。(だから、知らないイヌに真正面から目を見て近づいてはいけない)。他の動物もほとんどそうらしい。そして、この本によると、人間と一部のサルは愛情を持ってみつめあう珍しい例だそうだ。微笑みかけると微笑み返す。
ウチの息子も目を見てこちらが笑うと笑うようになった。興味深いのは、息子の機嫌が悪いとき、あやそうとして笑いながら目をみつめると、なんと、首を曲げて目をそらすのだ。何度続けてもそらす。意図的にやっているのは間違いない。彼としては喉が渇いたとか暑いとか暇だとか、問題が解決されるまでは、笑いたくないのだろう。パワープレイ的なコミュニケーション戦術は、生後5ヶ月で既に始まっているのかと感心した。
■赤ちゃん言葉の科学
この本に「日本人の母親が使う赤ちゃん言葉を調査したところ、言葉の途中に「ん」「っ」「−」を含む、三拍または四拍の言葉(例:ねんね、くっく、ぶーぶ、わんわん)が多いことが分かった。」と書かれている。そして多数の実験の結果、赤ちゃんはこれらの言葉に強く反応することが分かった。
私の息子も同じである。他のやり方では、そう簡単に笑わないのだが、「にらめっこしましょ、あっぷっぷ」と「わらいまーしょ、わっはっは」は、90%以上の確率で笑ってくれる。明らかにタイミングも「あっぷっぷ」と「わっはっは」の部分で笑う。まさに実験の通りである。
誰しも赤ん坊に話しかけるときには、声が高くなる。ゆっくり抑揚を大きくする。この言葉遣いは、別の本によると、マザーリースと呼ばれて世界共通の言語現象だそうだ。マザーリースを使うことで、赤ん坊の耳に最も聞こえやすい周波数で、聞こえやすく好ましい声の波形になる。結果としてコミュニケーションが活性化し親は子育てに熱心になる。親子のインタラクションにはまだまだ科学的分析の余地がありそうだ。
赤ちゃんの言葉と言えば、半信半疑のこんな製品もある。買おうかな。
・赤ちゃんの声分析器ホワイクライ
http://www.yasashisa.jp/goods/whycry/index.html
イヌの鳴き声をマイクで音声分析し感情を液晶に表示するバウリンガルというヒット商品があったけれど、その人間版。「。「ホワイクライ」は、赤ちゃんとのコミュニケーションを強力にサポートします。泣き声(欲求サイン)を分析し、空腹・退屈・不快・眠気・ストレスの5パターンに分類します。」
■赤ん坊の姿が可愛いのは
昔読んだ本に米国の心理学者ヘスによる瞳孔の条件反射作用についての研究成果が書かれていた。人間の瞳孔は関心を持った対象をみるときに拡大する。実験では、何枚かの写真を被験者に提示し瞳孔サイズの変化を記録した。すると、男性被験者は女性ヌードの写真に、女性被験者は男性ヌードの写真に、瞳孔を拡大することが判明したという。だから、肌の露出の高い女性の写真は男性向け商品広告に使うと認知度が高くなるという結論になり、マーケティング業界の有名な薀蓄話になっている。
だが、ヌードの影で忘れられがちだが、この実験で、もうひとつ、瞳孔を拡大した写真があった。赤ちゃん、そして赤ちゃんを抱いた女性の写真である。別の学者の認知心理学の実験では、三頭身で手足の大きな比率の赤ちゃんのような形状は、他の形状と比較して、好ましく認知されるというデータも出ている。
新生児の無意識の微笑、赤ちゃん言葉を使う親と聞き取る子どもの能力、赤ん坊の姿とそれを好ましく思う親の認知特性。どれも親子のコミュニケーションを活性化し、好ましい感情を発生させる仕掛けになっている。親に奉仕させ子どもの生存率を高めることに貢献する。これは人類の遺伝子レベルに織り込まれた愛情発生の秘密なのかもしれない。
さあ、被験者も起きてきたし、そろそろベイビーサインによる非言語コミュニケーション実験でもはじめますか?今日はユニバーサル方式にする?それとも日本手話式にする?
2004年01月16日
創造学のすすめ
失敗学会という妙な名前の真面目な学会がある。「特定非営利活動法人「失敗学会」は、広く社会一般に対して失敗原因の解明および防止に関する事業を行い、社会一般に寄与することを目的とする」もので、失敗事例の研究を行っている。会長は東大名誉教授の畑村洋太郎氏で、科学技術振興事業団の失敗データベースも統括している。
・失敗学会
http://www.shippai.org/shippai/html/
・失敗データベース
http://shippai.jst.go.jp/
この畑村教授は本来は創造学の研究者でその近著がこの本である。失敗と創造の両方を研究しているところに興味を持った。
■科学的創造の理論TRIZ
創造学というとTRIZ理論が知られている。この本でも少し紹介されたし影響を受けているという。
・TRIZホームページによる解説
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/IntroJCS011104/IntroJCS011104.html
「
旧ソ連で1946年に, 海軍の特許審査員G.S. アルトシュラー(当時20才) が, 多数の特許の中には, 似た発想や類似の考え方が, 別の分野で, 別の時代に, 別の問題で適用されていることに気付いた。"独創的" な発明にも, 自ずからパターンがあると認識した。そこで, 優れた特許から, 発明のパターンを抽出し, それを学ぶことによって, 誰でも発明家になれるだろうと考えた。試行錯誤と偶然のひらめきに頼らなくてよくなるだろうと考えた。
」
250万件以上の世界の特許を分析し、創造の法則を抽出した結果、アルトシューラーは、
40の発明の原理、76の発明の標準解、技術システムの進化のトレンド、アルトシューラーの矛盾マトリックス、ARIZ (発明問題解決のアルゴリズム)などからなる一大発明理論を確立した。
このTRIZ的な発想をコンピュータ支援するソフトとしてインベンションマジックがある。米国Invention Machine社が開発した発明支援アプリケーションである。実は私、このソフトをある方から頂いて手元に持っている。
・“発明”を支援するソフト登場 科学技術原理をリンクし,複合技術を提案抗
http://nmc.nikkeibp.co.jp/kiji/c5303.html
光や音や熱、摩擦や重力など科学技術原理が1600種類データベース化されており、ユーザはそれらの原理データを組み合わせて、回路のように、発明品を作る。各種係数を変化させて、出力の違いを検証したりすることができる。
私は科学者ではないから、よく分からなかった。結構高いソフトなので、猫に小判だったのかもしれない。この本ではTRIZの限界が語られている。TRIZの原理や発明法を組み合わせて、ある程度自動的にアイデアを得たり、構造を作れても、具体的な発明品にまで落とし込むのは極めて難しいという。ソフトだけではだめということか。
とても参考になった著者の言葉があった。引用させていただくと、
「
「最近私は具体化とは具体の世界から上位概念へ『登ってみる』ことだ」と考えています。たしかにプロセス上は上位概念の世界から具体の世界へ「降りる」のですが、実際には自分の頭の中にある具体の世界のものを、上位概念の世界でつくりあげた全体構造に当てはめてみるのが具体化の実体です
」
発明も企画の発想も、頭で考えるのだけれどそれだけではだめで、実感や経験を伴わない創造は大抵は無意味なただの組み合わせに過ぎない。そういうことと思った。
■アウトプット型創造法:思考平面図から思考括り図、思考関連図、思考展開図
著者の創造の定義は明快である。すべては要素、機能、構造の3要素から構成され、創造とは「新しい機能を果たすものを作り出すこと」である。そして、模倣、定式を経て真の創造があるとし、ベースとなる模倣や思考の定式も解説される。
理論よりも実践部分が本論と思った。思考平面図から思考括り図、思考関連図、思考展開図という順でKJ法的にアイデアをまとめた地図を作成するアウトプット型創造法が紹介される。例えば最終形である、思考展開図は要求機能、機能、機能要素、機構要素、構造、全体構造の6つの領域に横軸に並べて、対応するアイデアをこの流れに置いていく手法である。
一人一人が自分なりの思考展開図を作った上で、ディスカッションを行うことで、グループの創造性が豊かになる。一般的にグループでは、参加者が提出した、部分的アイデアを集めても、意味のある創造にはなりにくい。各自思考回路が違うからだ。展開図の構造理解を経験した参加者同士ならば、共有する知識ベースができて共創が可能になる、ということである。
創造法や思考法は、メソッドやフレームを共有したメンバー同士であるとうまく共創原理が働くと思う。さらに多数の思考法を状況に応じて繰り出せる人、メタ創造ファシリテーターというのがいるともっとうまくいく、ような気がしている。創造の技法、アイデア勝負の今の時代に求められている技術と思った。
読みやすい本で勉強になった。企画プロデューサ、商品開発に関わる人におすすめ。
#忘年会議おもしろかったよーと言ってくださる方の声に嬉しくなって今年は、創造法を試す会議イベントを連続開催しようと田口氏と企画しています。もうすぐお知らせできるのでぜひ一緒に試してください。よろしくお願いします!。
2004年01月15日
ブック革命―電子書籍が紙の本を超える日
電子書籍の最近の動向や可能性、外部からでは分かりにくい、業界事情をジャーナリスト視点で解説してくれる。出版業界の返本率は4割。本と雑誌の売り上げ減少が7年続く出版不況の中で、電子書籍が注目されている。大手出版社が電子書籍に乗り出したものの、業界団体の電子書籍コンソーシアムは、意見対立で瓦解、分裂し、形式の標準化は相変わらず統一できていない。そういった経緯の裏側にある、プレイヤーの思惑を、著者は目に見えるように説明する。
やはりビジネスマンとして興味深かったのは、唯一儲かっている電子辞書の話。
辞書出版の市場では2002年の段階で、電子辞書の売り上げ(420億円)が紙の辞書の売り上げ(250億円)を抜いてしまったそうだ。本来、年間1000〜1200万冊は売れるはずだった紙の辞書は、800万冊しか売れず、単価の高い電子辞書は390万台も販売されたとのこと。百科事典も同様の傾向があるらしい。検索して読むタイプの書籍の電子化は自然なことのように思える。
専用端末を使ってネットワーク配信される電子書籍を読むというモデルは、また最近注目されている。
・2004年は“電子書籍元年”に? ソニーが本格参入
http://www.itmedia.co.jp/news/0311/13/nj00_pub.html
構図としてはソニーと松下のシグマブックとの戦いである。
・シグマブック(松下)
http://www.sigmabook.jp/
記憶型液晶と省電力設計により数ヶ月間電池交換不要というのが素晴らしい。電源を落としても液晶に表示が残る液晶を使う。読書中は電源が切れていて良いという逆転発想。
どちらも紙と比べたら持ち運びしやすいとは言えない。まだまだ技術革新が必要な気がする。以前より注目されながらなかなか実用にならない、紙のように薄く折り曲げられるディスプレイe-Inkは期待できそうだ。電源部や操作部も含めて紙のように薄く柔軟ならば電子書籍リーダーは本当に普及するかもしれない。
・e-Ink
http://www.eink.com/index.html
■本はなくなるのか?
先日のスティーブバルマーの講演では20年後に紙の本はないというスピーチがあった。世界最大のソフトウェア産業のリーダーとして、ないと言い切る勇気を尊敬するけれど、紙は数百年の技術の集積がある枯れたハイテクでもあり、完全にデジタル文書でリプレイスできるとは思えない。
レコードはCDによって事実上なくなってしまった。ビデオテープも、DVDやHDDレコーダーによって近い将来なくなってしまうだろう。コンピュータのプログラム記憶メディアとして紙テープが消え、カセットテープが消え、8インチや5インチのフロッピーが消えた。今の3.5インチフロッピーもなくなりそうだ。あるメディアを、新しいメディアが一掃することはよくある。古いメディアの機能を完全に上回り、コストも安くなれば完全なリプレイスが起きる。
しかし、テレビが登場しても長い間ラジオは残っている。シャープペンがあっても鉛筆がある。クーラーと扇風機、エアコンとストーブ。同じ用途でも、若干の違いによって長く生き残る技術も多い。紙は電子書籍に対してすべてのメンで「ローテク」ではないので、ビデオやフロッピーのような推移にならないと考える。
書籍、雑誌、新聞がシェアを少なくすることはあっても完全なリプレイスはないのではないか。この本では、角川書籍事業部部長の「近い将来に日本の出版物の20%までは電子書籍になるのではないか」という意見が紹介されているが、さすがに妥当な意見と思う。
最近面白かった本に、「「紙」というデバイスを200%使いこなす!! 」と表紙に書かれたこの本がある。紙とデジタル文書の良いところをどちらも使いましょうという趣旨で、電子化のツールや両方の活用法を提案する本である。
・パソコン+スキャナの賢い使い方『職場の書類』はこうして作る
■紙の電子化
結局、紙の電子化が進むというオチになりそうな気がする。紙に書かれたコンテンツがデジタル化されるという意味ではなく、紙という素材が電子化していくのだと考える。既に子供向け絵本には薄いスピーカーが搭載されて音の出る絵本など当たり前のように売られているが、さらに高度な展開を予感させる研究と技術もたくさん見つかる。
・日立ミューチップ
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/030902a.html
世界最小クラス0.4mm角のアンテナ内蔵型の非接触ICチップ「ミューチップ」。紙に埋め込める。「0.4mm角のチップのみで、受信した電波を動作電力として非接触でID番号を読み取り機に送信することができます。このため、紙幣や商品券をはじめとする有価証券にそのまま埋め込むことが容易になるほか、これまでの非接触のICタグでは難しかった非常に小さなもの、薄いものに装着することも可能です。」
・Active Book
http://fig.ele.eng.tamagawa.ac.jp/~siio/projects/activebook/indexj.html
ここではバーコードを印刷した絵本と専用リーダーによるマルチメディア絵本の試作例だが、次のような用途は提案されている。「(1) テレビ番組雑誌に適用して、赤外リモコンインタフェース経由で録画予約を行なったり、チャンネルを切り替える、(2) 地図帳に適用して、ナビゲーションシステムに目的地や現在地を入力する手段として使う、(3) ビデオテープタイトルやカラオケ曲名のメニューブックに応用して、目的のコンテンツの再生を行なう、などの応用が可能である。 」
・ActivePaper
http://fig.ele.eng.tamagawa.ac.jp/~siio/projects/fieldmouse/indexj.html
・FieldMouse による実世界指向インタフェース
http://pitecan.com/papers/JSSST2001/JSSST2001.pdf
紙で家電制御のリモコンを作ったりする例。こういう方向が進んでいくと、私たちは自分の使いやすい画面設計でアプリケーションの絵を描くだけで、それがPC上で動いたりもしそうだ。
結局、パピルスが羊皮紙になり、パルプ紙になった次には、e-Paperになる。そういうことなのではないだろうかと、この本を読みながら、自分の考えをまとめていた。
2004年01月14日
「10分刻み」ニッチタイム(すきま時間)超勉強法
トビラの宣伝から引用。
■ムダを省いた徹底的に実利主義の勉強のすすめ
「わたしはムダな勉強はしない。はっきり言うと、すべて「お金に変る勉強」なのである。勉強すればするほど得する勉強、勉強した分だけきちんと成果が出る勉強とは?成果を出すためにはどんな勉強をすればいいか?を考え実践しているのである。最小努力で最大効果を生み出す勉強の数々を、これから順を追って紹介していこう。」
実利主義もここまで徹底されると逆にさわやかでさえあると感じた。著者の名前でAmazon書店を検索すると100冊が登録されている。プロデュース作品を含めると400冊を超えているそうだ。毎月1冊出版のペースを何年間も守っており、ベストセラー書となった本もある売れっ子ビジネス書作家である。実利主義だけが勉強の目的のはずはないけれど、著者の出版実績を知ると、どんな勉強法をしているのか知りたくなるので読んでみた。
1:お金につながる、2:ニッチタイムを活かす、3:10分で刻む。目的が明確でやる気になるテーマに絞って、生活の中の短時間に集中して勉強する。そのための、読書術や情報ファイリング手法や、10分で線引きした独特なメモ術、記憶術といったコツが次々に語られていく。
読了して思ったのは、著者が大量の情報(年間3000冊読むとのこと。著者の実績からして誇張ではなさそう)から、上手に取捨選択している術をよく知っていることだ。特に情報を捨てる、「知的清算」の考え方が参考になった。
・わたしが実践する「知的清算」の6大スキル
1 邪魔な記憶ファイルを捨てる
2 ポイントだけデータ化
3 書籍は読んだらすぐ処分
4 マーカー癖、コピー癖をやめる
5 語学教材を自分でつくる
6 資料の整理法を特化させる
「今使えるかどうか」を基準に必要なものだけを取り出し、他はすべて捨ててしまうポリシーである。この人の場合、物理的にも捨ててしまう。
著者は速読を実践しているのだが、こだわり方が面白い。速読する際には、本の書き手にとっての重要ポイントなどどうでもよくて、「「わたし」にとっての重要なことを勉強することだ。本は道具である。道具に振り回される必要はないのである」と述べられている。読み方も捨てることを意識しているし、道具と割り切り、消費したら、遠慮なく破いて、残りは捨ててもよいわけだ。
私は新聞記者の父の家庭で育った。子どもの頃、新聞は大切に扱わないと母に怒られた記憶がある。それに関連して、本も最近まで折る、書き込む、破るには抵抗があったのだけれど、その禁を破ってから、生産性があがったような気がしている。少なくとも原稿執筆の仕事のペースは、折る、書き込む、破って得る断片によって、飛躍的にあがった。
学校教育ではモノを大切にと教えざるを得ないが、著者の言うように、稼ぎ手ならば本代以上にその知識で稼げばよいと割り切った方が効果的ということのようだ。この考え方は気に入った。
■インターネット利用者はどのように本を扱っているか?
ちょっと面白い調査データがある。オンラインの本好きに本についての100の質問を投げかけた企画のサイトがある。1000人以上が自分のWebサイトでその質問に答えている。特にこの質問の81から90項目目までが興味深い。Webサイトを公開するタイプの個人の紙の本に対する考え方が分かる。捨てることに抵抗を感じている人が少なくない。
・本好きへの100の質問
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Shikibu/1185/
・Google検索結果(こちらの方が回答データを見やすい))
http://www.google.co.jp/search?q=%E6%9C%AC%E5%A5%BD%E3%81%8D%E3%81%B8%E3%81%AE%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90%E3%81%AE%E8%B3%AA%E5%95%8F&ie=UTF-8&oe=UTF-8&hl=ja&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=
081. 本を捨てることに抵抗がありますか?
082. これだけは許せない、そういう本の扱い方はありますか?
083.“活字離れ”について、どう思いますか?
084. 本を読まない人のことを、どう思いますか?
085. とりあえず、本を持っていないと落ち着かない。そんな癖がありますか?
086. 世界中で、本の出版が禁止されたら、どうしますか?
087. 青空文庫を利用したことがありますか?
088. 電子図書館についてどう思いますか?
089. 将来的に、本という存在は無くなると思いますか?
090. 本が無くても生きていけると思いますか?
日経BPの知識流通企画でご一緒している、情報デザイナーの松岡裕典氏の読書術は、ポストイットを使った読書術で、「本からコンテンツをはぎ取ってハンドリングしやすい形に変換する」ことを意識されているとのこと。どちらかというと、本は大切という意識の方である。
・デジタル読書法(?)のすすめ
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20031127-01.htm
ページを破る、ポストイットに書き出す、本の端を折る。自分にとって必要な情報を抽出する技術は、同時に残りをどうやって捨てるかの技術でもある。この本が語る徹底的に実利主義の勉強法、ビジネスマンには特に効果的だと思った。頭に休養はいらない、教養こそ頭の休養だ、という著者の意見に感銘。
2004年01月13日
Flashを手軽に生成するFlashMaker
「稲荷煎餅」をかじりながら、深夜に、このブログを書いている。二日間、オフラインだったため、二日分まとめて更新。
12,13日と泊りがけで、ある研究プロジェクトの合宿に参加 in 京都。日本のトップレベルの若手研究者の方々と深夜まで情報交換させていただいて、感動。私は情報活用術というセッションでお話させていただいたけれど、さすがに情報学のプロ集団の、あの場所では、釈迦に説法だったような気もする。
今回の小旅行、最後に素晴らしい体験が待っていた。終了後、会場ホテル近くの神社へ初詣してから解散しましょう、との先生のご提案。私は神社にはとても興味があって、結構詳しいつもりだったので「伏見稲荷神社」が特別な神社であることは、知識としては知っていた。
日本に神社は約8万社あるといわれ、稲荷神社系列は最も数が多く3万社もある(2位は八幡神社系列の2万5千社。)。この系列は勧請関係と呼ばれるフラットな関係で、各神社は独立しており上下関係があるわけではないのだが、この神社界、最大派閥は「お稲荷さん」であることは間違いない。その総本家にあたるのが京都の伏見稲荷神社だ。
写真で千本鳥居と呼ばれる、無数の鳥居群は見たことがあったけれど、実際に訪れて2万本以上並ぶ鳥居の中を歩いてみると、壮観さに声も出ないくらい。わざと同行者に遅れて独りになって静かに眺めてみると、異世界に吸い込まれそう。
デジタルでその雰囲気を感じられるかは分からないけれど、Flashを使ってフォトアルバムを作ってみた。少しファイルサイズが重いけれど、雰囲気を知りたい方はどうぞ。
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/fushimiinari.html
このFlashアルバムは作成に10分もかかっていない。FlashMakerというソフトを使っている。Flashの知識がなくても、写真アルバムや、広告バナー、メニューなどをウィザードを使って自動生成したり、お絵かきツール感覚でインタラクティブなアニメーションを作ることができるソフトだ。テンプレート数の少ない試用版もあるが、私は購入して気に入っている。
・FlashMaker
http://www.ifour.co.jp/flashmaker/
オフ会の写真アルバムをその日のうちに作成してアップロードしたいときなどにも重宝する。
2004年01月12日
ビジネス図解に強力なSVGcats
・SVGCats
http://www.sage-p.com/svgcats2.htm
ビジネスや技術の仕組み、製品の構造のプレゼンテーションに、概念図は有効だけれど、いつもパワーポイントではつまらない。そこで、私はテキストのアウトラインから図を作る場合にはiEditを、図から描く場合にはSVGCatsを使っている。パワーポイントは重いので発想しながら図を描くのには向いていないと感じるからだ。
SVGCatsは自分の会社のWebの製品説明にも使った。ひとつまえのバージョンで、作った実物はこんな感じである。こういう図がサクサクできるツールだ。
作成サンプル1
作成サンプル2
これだけでも非常に便利なツールだと思っていたら、最近バージョン2になりコンセプトが変わったようだ。クリッピングツール+アウトラインエディタ+概念図作成という総合的な情報収集と、ビジネス図解編集環境となっている。
主な特徴は以下の通り。
◆ キャンバスのどの場所でもメモをとることができ、どこでも 好きなところにテキストや図形を入力できます。
◆ Tablet PC を使用するか、ペン入力デバイスを使用して、 メモを手書きしたり、図形や絵を描画できます。
◆ 複数のページを、ツリー形式で管理し、 あらゆる情報をドラッグ&ドロップで構造的にまとめることができます。
◆ ウィンドウを閉じると自動的に保存を行います。 定期バックアップ機能により、まさかのエラーにも安心。
◆ メモをすばやく検索して必要な情報を見つけます。
◆ 軽快で直感的な図解作成機能により、分かりやすい資料が、 あなたにもサクサクできあがります。
◆ オープンな SVG (Scalable Vector Graphics) を採用。 プラットフォームを越えた多くのビューアが公開されています。
◆ SVG Cats 2 自身はオープンソースなので、腕に自信があれば改良もできます。 プログラミングの参考にも。
いたれりつくせり。まだ新しいバージョンを使い込んではいないので、短評になったけれど、これはおすすめ。紙、iEditと並んでデスクトップの定番ソフトになりそうな予感。
2004年01月11日
日本人の禁忌―忌み言葉、鬼門、縁起かつぎ…人は何を恐れたのか
・日本人の禁忌―忌み言葉、鬼門、縁起かつぎ…人は何を恐れたのか
■禁忌を定義する
この本の前書きによると、古今東西の人間社会で「してはいけないこと」は、犯罪、道徳、礼儀、戒律、禁忌の5つに分類できるという。この分類を使って、事例を以下に並べてみる。
「5つのしてはいけないこと」
1 犯罪
人を殺してはいけない
物を盗んではいけない
姦通してはいけない
2 道徳
人の嫌がることはしない
仕事はさぼらない
迷惑をかけたら謝る
3 礼儀
音を立ててスープを飲まない
挨拶を忘れてはいけない
フォーマルな場ではネクタイをする
4 戒律
イスラム教徒はラマダン期間中は日中は物を食べてはいけない
豚肉を食べてはいけない
5 禁忌(この項の例は本書の目次から)
敷居を踏んではいけない
13日や金曜日を嫌う
夜に口笛を吹いてはいけない
夜に爪を切ってはいけない
葬式の後は塩で清めなければ家に入ってはいけない
結婚式は仏滅を避ける
巫女は処女でなければいけない
霊柩車を見たら親指を隠す
とまあ、こんな感じだろうか?。禁忌は特殊な情報である。破ると社会的に罰せられるから、嫌われるから、経済的に損だからという理由だけで、守られてきたわけでもない。
この本では古代、平安、中世、江戸、現代の日本と世界の禁忌の成り立ちや、具体例の分析が語られていく。
評価:★★☆☆☆
■類感呪術、共感呪術と科学の接点
言葉とかかわる禁忌も多い。「4」「9」は死や苦しいにつながるから、現代でも4号室、9号室が欠番となった病院やホテルがある。有名な研究書「金枝篇」の著者である英国の人類学者フレーザーは、この種の禁忌を、類感呪術、共感呪術のひとつとして考えた。似ている言葉や連想関係の言葉はその影響が及ぶという感じ方を利用した呪術だ。
・旅研:類感呪術、共感呪術の定義
http://www.tabiken.com/history/doc/T/T136C300.HTM
ここでは、フレーザーの提示した例:「オジブワ=インディアンでは,ある人物に危害を加えようと思うと,その人物に擬した小さな木像をつくり,頭部や心臓部に釘や矢を打ちこむ。こうすると,狙われた者は,木像に釘や矢が刺された同じ時刻に,同じ身体の部位に激痛を感じる」が挙げられている。
私は会社のメンバーで残業が深夜に及んだ夏のある日、部屋を暗くして皆でこのCDを聞いたことがある。夢枕 貘原作の小説の語りのCDである(おすすめ、怖くはないです)。
・陰陽師 二人語り CD
http://www.ic-enet.com/onmyoji/index.html
鉄輪(かなわ)は怪談の古典であるが、丑の刻参りの話である。午前1時から3時くらいの時間に神社でわら人形に5寸釘を打つ有名な呪術である。
・鉄輪と丑の刻参り
http://www.hi-ho.ne.jp/kyoto/kanawa.html
・鉄輪が伝わる貴船神社(京都)
http://kyoto.kibune.or.jp/jinja/
・丑の刻参り考
http://folklore.fc2web.com/petite/ushi.html
丑の刻参りの正式作法の解説
この丑の刻参り、効果がないわけでもないらしい。真面目な研究によると、効果がある場合には大抵は自分が呪われていることを本人が気がついた場合であるらしいのだ。であるならば、心理学におけるプラシーボ効果で説明がある程度はつくという結論になる。効果のあるクスリと思って飲めば本当に病気が治ることがあるように、呪われていると思うと体調を崩すことはありえるのだ。
少し科学になってきた。禁忌や縁起は自分や他人にプラシーボ効果をかける行為なのかもしれない。故に効果を感じる人がいて、迷信は長く生き残る。そういうことかもしれない。
■デジタル、ネットワーク時代の禁忌
禁忌や縁起は現代では重視されていない?。いや、そうでもないようだ。カバヤ食品が2002年に行った調査がある。この調査によると、現代のOLの半数以上が縁起を担いでいるし、4割以上がご利益があったと考えている。
・みんなやってる!?身近な招福祈願「縁起担ぎ」
東西OL300人アンケート調査
http://www.kabaya.co.jp/news/20021120.pdf
上記資料より引用
成功した友人の会社の社長も、実は重要な経営方針はお母上の風水術で意思決定をしていると聞いて驚いたことがある。その会社の事業内容は、ばりばりのデジタル先端技術であり、テレビにも登場したりする人である。占い師も出世すると、経営者が主な収益源になると聞くが、現代においても、禁忌や縁起担ぎは脈々と生きている様がうかがえる。
例えば、賛否両論の住基ネット。このID番号が縁起が悪いといって、変更を希望する人が全国で後を立たないという。
・神奈川・三浦市民2人「数字、縁起悪い…コード変えて」
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200208/19/4.html
・住基ネット住民票コード受け取り117人拒否
http://www.nnn.co.jp/tokusyu/sokoga/kikitai020901.html
こんな製品もある。部屋のレイアウトをPCで行う人気ソフトだが、風水による「間取り診断機能」を搭載している。
・3Dマイホームデザイナー 2002 家相・風水のうそホント バンドルパック
自分自身にそういう例はないだろうか?と考えてみた。ひとつあった。パソコンのクリップボードを使う際に、私は悪い情報を長くメモリに入れておいたり、そのまま作業を終えることを避けている。具体的には、「倒産」など経営的に悪い言葉や、誰かの悪口、不吉な言葉はクリップボードに入れたままになると落ち着かない。大抵は無関係なデータで上書きしている。これには、誤操作でおかしな情報を貼り付けるのを防ぐという実用上の気持ちもあるのだが、それだけではない気がする。
■禁忌と縁起テクノロジービジネス 神社にトラックバック!
禁忌も縁起も、人間社会に普遍的に存在する情報であるならば、それは情報技術で応用が可能なはずである。
例えば有名な寺社などであれば、縁起のいいページ、リンクしたいページ、自分のWebページに貼ると運が良くなるバナー画像などを有料で提供することが可能だろう。ブログであるならば、新年には神社へトラックバック(自動双方向リンク)すると、ご利益があるという風に、ネット上にも縁起は持ち込めるかもしれない。リンクとトラフィックが増えれば何らかのビジネスが可能だ。
逆に、禁忌のページ、リンクしたくないページ、行動を抑制させる効果を形成することもできそうだ。例えば平均的日本人は、神社の中では行動を慎む。そのWebサイトにも結界を張ったことを宣言し、掲示板などのコミュニティを作れば、発言行動は抑制されるかもしれない。企業コミュニティがフレーム対応のコストを下げるために聖職者を参加させるのもひとつの手だったりして。
見てはいけない開かずのページ、30年に一回ご開帳されるご本尊ページもアイデアとして悪くない気がする。「秘すれば花なり秘せずば花なるべからず」(世阿弥 風姿花伝)。隠されていることは価値になる。すごいアクセス数が集まるかもしれない。
禁忌といえば構造主義人類学者のレヴィストロースの近親相姦に関する研究も有名である。近親相姦をはじめとするタブーは、範囲の定義が異なるだけで、古今東西どの社会にも必ず存在する構造であるとした。
ネットワーク時代、デジタル時代になっても、禁忌は形を変えて生き残っていく普遍的な情報のひとつと言えそうだ。そういう特殊な情報学をこの本で学ぶことができる。
2004年01月10日
小さいことは良いことだ
今、私は学生向けプログラミングコンテストのアイデアを考えて、と言われている。ThinkQuest、ロボコンや鳥人コンテストみたいに、成功するコンテストってなんだろう?。参加ハードルが低くて、知的好奇心を刺激され、工夫次第で無限の可能性があるもの。
1998年にビデオジャーナリストの神田さんと一緒に取材した「猿岩石」企画で、米国マクロメディア本社を訪問したときに、階段が巨大滑り台になっていたり、サッカーのゴールポストが室内にあったりしたことに驚いた。発想を刺激するインテリアがあちこちに。でも、一番クリエイティブな印象だったのは、壁一面に張り出された折れ線グラフ。プログラムのソースのサイズが、開発努力によってどんどん小さくなっていく図だった。(開発の世界では、同じことをするプログラムならばサイズが小さい方が良いとするのが一般的)。
・1998年 インターネット猿岩石(マクロメディアのレポート含む)
http://www.gabby.net/expo/us-venture98/index.html
二人で米国シリコンバレー、アレイを突撃取材した記録。ネットバブル真っ只中の雰囲気。
私の文体も恥ずかしいほどノリノリ。若かった。
(妙な英語版があるのは旅行中、米国のPCショップFry'sで何十ヶ国語を翻訳できるという怪しい翻訳ソフトを見つけて買い込み、それを使ってでっちあげたもの、だったと思う。)
■富豪的プログラミング
搭載メモリの量が多くなって以来、小さくコードを書くことの重要性は薄れてきた。逆に大きくても良いから、開発者が読みやすく、保守しやすいものを大切にする文化もある。典型的なのは、著名な研究者の増井俊之氏が提唱する富豪的プログラミングである。
・富豪的プログラミング
http://pitecan.com/fugo.html
増井俊之氏 (富豪化理論研究家) による解説。
「
・メモリや実行効率を気にしないでお気楽にプログラムを作る
効率を重視したプログラムは作るのが大変ですし、ちゃんと動かすにはデバッグも大変です。富豪的プログラミングでは一番単純で短いアルゴリズムを使います。
・条件が変わる度にすべての計算や表示を行なう
再表示が必要な場所だけ書き直ししたり、出力のバッファリングをしたりする貧乏性な工夫はバグのもとになるので行なわず、条件が変わる度に計算を再実行したり全体を書き直したりします。
」
コンポーネントプログラミングだとか、オブジェクト指向と言われる最近の開発ポリシーは、どちらかというと、富豪的アプローチな部分もある。どちらが効率が良いかは一概には言えない。アルゴリズムの研究を読んでいると、どうやらプログラムの効率には3つの考え方がある。
プログラムの3つの効率
1 速度効率
高速に動作するプログラムほど効率が高い
2 メモリ効率
使うメモリが少ないほど効率が高い
3 開発効率
コードの読みやすさや保守しやすさが高いほど効率が高い
小さなプログラムは、上記3つの効率のうち、1と2を満たすことが多い。小さくする価値はある。
■小さなプログラムへの挑戦
自然言語で複雑な説明を書くときと一緒で、コードも短く書く方が一般的には難しく高度である。富豪的な時代になっても、世界中に小さなプログラムへの挑戦者たちがいる。
・256b.htm Competition
http://wildmag.de/compo/
256バイトのHTML(含むJavaScript、CSS、GIF)でどこまで面白いWebページが作れるかのコンテスト。動く、動く。
・web4096
http://www.message.sk/web4096/index.html
4096バイトでのHTML、Flash、Javaアプレットのチャレンジ。
・The5K
http://www.the5k.org/
5キロバイトでのチャレンジ。
・THE 1KB 6502 PROGRAMMING CONTEST
http://oric.ifrance.com/oric/microtan/6502contest.html
1980年の古いPC(メモリ1キロバイト)で動作するプログラムのコンテストが第8回。
・7行プログラミング作品集
http://www.isl.cs.gunma-u.ac.jp/~shingo/make/7line/7line.html
7行のJavaScriptでテトリスやぷよぷよができるなんて!。
小さいという意味が異なるがこんなものもある。
・4th BUTE International 24-hour Programming Contest
http://www.challenge24.org/main.php?main=
24時間で与えられたテーマのプログラムを開発する国際コンテスト。時間のスケールが小さい。
・Guimp
http://www.guimp.com/
物理的に世界一(タテヨコ)サイズの小さいWebサイト。ちゃんと表紙、ブログ、ゲームなどのコンテンツがある。入り口でFlash版とHTML版が選べる。
オリジナル
4倍で拡大
フラッシュでパックマンが動く!。
・パックマン
http://www.guimp.com/pacman_flash.html
オリジナル
4倍で拡大
参考URL:
「対になる世界一、日本一」
http://www.hatena.ne.jp/1065668104
「例えば、【世界一高い山】【世界一低い山】というように、コメント欄に両データを「併記」する形でご紹介ください。最高・最低、最長・最短、最多・最少、最大・最小などなど、ジャンルは問いませんから、できるだけたくさん、必ず併記でお願いします。」面白い!
・kisrael.com | gamebutton arcade
http://kisrael.com/features/gb.htmlテーマはずれますがWebフォームのボタン上で動く小さなゲーム。発想がユニーク。
2004年01月09日
顔面技術
■脳には生まれつき顔を認知する機能がある
プロデューサのW氏と仕事の打ち合わせ。アイデアマンのW氏は話題が豊富。いつも必要なことを決めてしまうと、後は話題は脱線して、延々と話してしまう。私とW氏は過去に24時間不眠休憩なしでぶっつづけの企画会議をやった過去がある。話は尽きない。この人とは雑談から生まれたアイデアが仕事になってきた過去もあり、今日も気合をいれて雑談する。
彼の会社はビデオカメラで顔のパーツの配置を機械的に読み取り、似顔絵を描く技術や、顔写真にお化粧を施すリアルタイム合成技術を企画開発していたりする。名刺と名前が一致しないという話題から、顔にまつわる話になった。ちょうど私も人間の顔について考えていたのだ。
私は記憶力があまり良くない。特に顔は苦手で、パーティなどで会った人、過去の取引先の担当者の顔を忘れる。こちらは分からないのに、相手は分かっている。この非対称な関係はビジネス上で、それだけで大変弱い立場に立たされてしまう。名刺など差し出そうものなら「あれ?何か変わられましたか?」と返されて、深手を負うこと間違いなし。
昔読んだ記事に、ある著名ホテルのドアマンは1万人以上のお客の顔と名前を一致させることができ、20年以上その記憶を保持し続けるという話が載っていた。そういうことができれば私の営業力もだいぶ違っているんだろうなと羨ましく思う。
だが、ComputerSocietyに掲載された論文を見て、それもやがては機械が解決してくれるかもという希望も見えてきた。
・DegitalDoorman Argus
http://www.computer.org/intelligent/ex2001/pdf/x2014.pdf
「デジタルドアマンシステム」のArgusは、ドアを通過する人物をカメラで認識し特定する。撮影角度や風貌の多少の変化があっても見分ける、アルゴリズムを試験している。私の眼鏡にこの機能が搭載されれば、もう大丈夫だ。
さて、実現の遠い冗談はさておき、人間の顔認識力を使った今使える応用技術は幾つかある。
■チャーノフの顔グラフ
グラフ表示の多彩さで定評のある統計処理ソフトにSTATISTICAがある。このソフトは科学的なデータを、さまざまな統計計算手法を使って分析し、グラフ化するものだが、出力オプションのひとつにチャーノフの顔グラフ形式がある。
・STATISTICA
http://www.statsoft.com/base.html
これが、顔グラフである。顔のタテヨコの大きさ、目や鼻の大きさ、口角や眉毛の傾き、輪郭種などに各データの数値の大きさを割り当てることができる。顔の表情の違いは見分けやすいから、平均顔の中に、特異な顔があればすぐ見つかるという脳の顔認知特性を使ったグラフ化手法だ。
さて、どう使うか?。例えば学校の試験の科目別成績を考えてみる。各科目を顔のパーツに割り当てる。国語はクチの大きさ、数学は目の大きさなど。すべての科目で平均点を取った生徒のデータは、すべての顔のパーツが中くらいになるから平均的なタマゴ型の特徴のない顔になる。逆に得意、不得意がはっきりしている生徒の群は、同じように偏った顔になるだろう。全校の生徒の全科目の成績分布の散らばり具合、集団の別れ具合を把握できる。
と、書いたが、本当は私の説明はあまりよくない。さらにうまく使うと、理想的なデータはニッコリ微笑み、良くないデータは泣いた顔になるように割り振るとさらに人が認識しやすくなったりもする。
統計のプロの事例として次のページがある。ここでは居酒屋の見栄えや価格や味に顔のパーツを割り当てて顔グラフを効果的に使っている。
・居酒屋チェーン店のアンケートデータをマイニングする
http://www.doyukan.co.jp/kigyou/datama/datama.04.pdf
■顔によるパスワード認証
こんな実用的な使い方もある。RealUserは、人間の顔記憶の強さをパスワード代わりに使う製品である。
・RealUser
http://www.realuser.com/
ユーザはパスワードの代わりに、5人の見知らぬ顔の組み合わせを設定する。最初に3×3の升目グリッドに無作為に9人の顔が表示されるので、そのうちの1人をPassfaceと決める。これを5回繰り返し、5人のPassfaceを選び、記憶する。練習セッションが終わって記憶が確認できたら、Passface認証が使えるようになる。
ユーザはシステムにログインしようとすると、9人の顔から1人のPassFaceを選ぶ作業を5回連続で試され、5回とも連続して当てれば認証される仕掛けだ。
一見3×3のグリッドパターンは単純すぎるようにも思えるが、実際には、3×3のグリッドからPassfaceを5回、無作為に選んだだけでは59049回に一度しか認証をパスすることはできない。これならば日常的な認証機構としては十分に使えるレベルのセキュリティを持っている。また3×3のグリッドは数字入力キーに割り当てることが可能なのでインタフェースとしてもちょうどよい大きさである。 デモで体験できるので試してみると面白い。
・RealUserの科学的根拠論文
http://www.realuser.com/published/ScienceBehindPassfaces.pdf
このペーパーには、
・人間の赤ん坊は生後1時間で顔を認識できる
・生後2日で赤ん坊は母親の顔を見分けることができる
・人はよく知っている人の顔は20ミリ秒で認識できる
・ある実験では35年ぶりの同窓会で90%の参加者が顔を正しく認識できた
といった事実が述べられており、顔を見る能力は生得的なものであり、他のモノを見るときとは異なる特別な能力であるという。
他の脳科学の本を読んでも、人間にはうまれつき顔に対しては特別な認知モジュールがあると書かれている。生物は生存のために環境に適応するが、進化した人間にとっては人間社会こそが生存環境であり、そこでは顔を見分ける能力は必須といえる。だから、人間の顔認知と記憶の能力は突出していると言われる。
■似顔絵をランダム自動作成するフリーソフト
こんなものもある。
・モンタージュ似太郎
http://www1.mahoroba.ne.jp/~matumoto/soft.html
似顔絵作成ソフト。線画でまるで警察の手配モンタージュのような似顔絵を作成できる。福笑いのように目鼻や口のパーツを配置するのだが、楽しいのは顔を指定人数分ランダムに合成してしまう機能。一定間隔で次々に、どこかにいそうな顔が表示される。
絵心がある人間でないと、福笑いで誰かに似た似顔絵を作るのは難しいものだが、何百人も似顔絵をランダム合成していくと、そのうち似た顔が見つかる。そのデータをベースに似顔絵を整形していくと目的の顔が出来上がるから便利。
と、幾つか紹介してみたけれどまだまだあるので顔面技術第2弾をそのうちに。
そーいえば、お札が道端に落ちているとすぐ気がつきますね?(守銭奴か私は...)。この認知も特別なものだとしたら、何か応用はないかな?。
参考URL:
顔といえば顔のウィルスに気をつけてください。ところで誰なんでしょう?彼女。
・メール本文に女性の顔写真を表示するウイルス「BackDoor-AWQ.b」
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/01/08/1690.html
2004年01月08日
マイポータル編集、情報レイアウトのツール
■マイポータル作成サービス YoridoriWeb
NTTの先端的な技術を集めた、実験サイトであるサイバートライアルに、面白いサービスがある。
・YoridoriWeb
http://www.cyber-trial.com/yoridori/hp/index.html
よりどりWeb(旧称KaribariWeb)は、自分専用のニュース一覧ポータルを作成するサービスである。ニュースサイトの必要な部分を範囲選択で切り取り、ひとつのページにできる。例えば、朝日新聞のトップ記事扱い部分と、百式の今日の記事と、YAHOO!のトピックスをひとつにまとめるとこんなかんじになった。
各部分は元サイトの更新と連動しているので明日になれば、各サイトの明日の内容になる。究極のスタートページを作ることができるわけだ。過去には同種のサービスとして米国にOctopus社というソフトがあったが、一瞬でマイクロソフトに買収されてサービスがなくなってしまったのを思い出す。
このよりどりWebは、ブログサイトをまとめてチェックするのにも向いていそうだ。記事をレイアウト単位で抽出できるがロジックが、実験段階の今のバージョンだと、うまく取り出せないこともあるが、ロジックがスマートになれば、相当使えるツールになる。
他にも、Javaアプレットということもあり、動作が遅かったり、不安定に感じる。私は何度か編集中に落ちてしまった。今回の実験できっとそういった部分が、修正されて安定動作版がでてくるのを期待したい。
■朝刊太郎
大量の情報を1ページで表示するには、各記事の位置、面積、修飾(フォント、罫線など)に工夫が必要である。
・「朝刊太郎」見出し作成やレイアウトも簡単な新聞作成用DTPソフト
http://www.forest.impress.co.jp/article/2000/03/27/choukantarou.html
朝刊太郎は、市販の新聞のようなページをデザインできるフリーソフトだ。Webからの直接の流し込みに対応してくれると、毎日のニュース一覧を印刷して読むことができて便利そうだ。また用途としては学級新聞、家族新聞と並んで、結婚祝いの作成が挙げられている。
ある大手経済新聞社では社員が結婚すると、二人の出会いからゴールに至るまでを本物の記者が二人の周囲を取材して、記事を作成する。そして、本物と見間違える結婚祝いの新聞を結婚式でプレゼントしているのを見たことがある。本物の新聞記者が、本物の印刷機で作るわけだから完成度では適わないけれど、そういったサプライズ感のあるプレゼントをこのソフトで作ってみても楽しそうだ。
■ブログのポータル編集サービスのプラットフォームに最適なJetSpeed
オープンソースのWebサーバApacheを開発するプロジェクトの一環として、Java製のポータル編集ソフトがある。このソフトは今もっとエンジニアに注目されていいと思っている。このサーバソフトは、ブログサイトなどのRSS/RDFのURLと、表示させたいレイアウト上の場所を指定すると、ニュース見出しを配置して表示してくれる。
・JetSpeed
http://jakarta.apache.org/jetspeed/site/customizer.html
・JetSpeed日本語版
http://jetspeed-japan.sourceforge.jp/
こんな風にレイアウトを行う。
このソフトはとにかく開発情報が少ない。付属のサンプルデータも適切な説明がなかったりして、知る人ぞ知るソフトになってしまっているようだ。ブログのパーソナルポータルを、これを使って誰か作ってくれないかなあ。
2004年01月07日
動物と人間の世界認識
ドイツの動物行動学者のユクスキュルが1930年代に唱えた「環世界」についての考察の本。ITのことは無論言及されていないのだが、つながりを考えながら読むのが楽しかった一冊。
■ユクスキュルの「環世界」
私たちヒトは五感で世界を認識しているが、動物によって感覚の内容は異なる。ヒトにはない感覚を持つ動物は多い。コウモリは超音波を認識できるし、アゲハチョウは紫外線を認識できる。逆に感じることができないものもある。ハエは50センチ以上先は見えなかったり、ワニは動いているものしか認識していない。モンシロチョウは赤が見えない。イヌは色が分からないので、盲導犬は信号を認識することはできない。そんな感じで種が異なれば、感覚できるものとできないものがある。
感覚できればよいというだけではない。ヒトも動物も生活に必要なものしか見ようとしない傾向がある。この本によれば、ハエは50センチの視野で食べ物と光しか見ていないだろうから、ヒトが見る部屋の認識とはまるで別物の世界に住んでいるはずだとしてハエの見ている世界のイラストを描いて見せてくれる。
感覚入力の内容をどう理解するかもだいぶ違っているらしい。トリはヒナを大事にしているが、ヒナをガラスの壁で密閉してしまうと、中で泣き叫んでいても助けに行こうとしないという。ヒナの泣き声がしないから、ヒナを認識できないのだそうだ。
生存や競争に必要なものしか動物は見えないし、見ようとしていない。そういう種ごとに異なる世界認識を「環世界」と呼ぶという。環世界の中で私たちは世界そのものではなく、イリュージョンを見ている。イリュージョンを生きている。
■ソフトウェアの世界認識
「環世界」の概念で面白いなと思うことに、ヒトも動物も日常生活では、自分は完璧に世界を認識していると信じていることだ。紫外線と赤外線の間の僅かな波長の色しか、ヒトは見ていないにも関わらず、感覚に不足はないと思って生きている。
同じことをソフトウェアのプログラミングの際に感じることがある。
例えば古典的な検索エンジンは、ロボットがリンクをたどりながら、世界中のWebページの情報を集めて回っている。このロボットは一般的に、テキストデータを集めているだけである。ロボットは自分自身の能力を疑わない。
ロボットにとって、芸術的にデザインされた美しいページと、そっけないページの間に差はない。文章の内容は単語の羅列としか認識しないから、重大な犯罪予告のページを読んでも特別なものとは感じない。長いテキストのうちどこが重要な主題なのかも理解することがない。
そこで、プログラマは、ソフトウェアがレイアウトの種類や、やばいキーワードや、テーマをみつけるような仕組みを実装する。特定のHTMLタグで囲まれた場所を発見したらそこはタイトルであるとか、危険なキーワードがあったら人間に報告するとか、単語の発生頻度の統計から、意味を取り出し重要キーワードを発見するように開発する。
いわばプログラミングというのはソフトウェアの「環世界」を作っているようなものと思う。特にWebページを解析して意味を見出す次世代のWeb技術「セマンティックWeb」は、人工「環世界」を拡張していくことだと考えられる。
進化の過程で動物の「環世界」は、個体の環境に対する適応度を最高にするように設計されているらしい。自然淘汰と突然変異の中で、必要な情報だけを取り出すように感覚器官や脳が発達したわけだ。この進化の過程はソフトウェアの設計に取り入れたら面白そうではある。
■遺伝的プログラミングで「環世界」強化ができる?
最近関心を持って勉強している技術に「遺伝的プログラミング」がある。遺伝の「適者生存」の仕組みを使って最適化を行う手法で、フリーのライブラリもある。あまりネットのエージェント開発に使った話を聞かないので、そのうち実験で遊んでみたいと思っている
・洗練されたPerl:Perlでの遺伝的アルゴリズムの使用
http://www-6.ibm.com/jp/developerworks/linux/011123/j_l-genperl.html
・遺伝的プログラミング・ライブラリー Ruby/GP
http://akimichi.homeunix.net/~emile/aki/program/gp/index-ja.rhtml
・遺伝的プログラミングを用いた画像認識アルゴリズムの自動生成
http://chihara.aist-nara.ac.jp/public/research/thesis/master/2002/shiromaru0051047.pdf
遺伝的プログラミングで人間の顔や手書き文字を学習して認識する研究。
「本研究では,広範囲の対象に利用できる画像認識システムを提案した.また,本研究で提案したシステムを作成し,手書き仮名文字画像と人の顔写真画像を対象として認識実験を行なった.その結果,手書き仮名文字画像では90.5%,人の顔写真画像では100%で認識を行う画像認識システムを自動生することができ,タイプの異なる画像に対して単一の手法を適用して画像認識ができることを示した.」
いつのまにか技術の話になってしまったけれど、この本は情報に関わる人一般にお薦め。
この本の著者はイリュージョンのことを「色眼鏡」とも形容している。ヒトも動物もそれぞれが違う色眼鏡を通してしか世界認識が出来ないという。そうかもしれない。眼鏡をはずしてすべてを見てしまうと「あっちの世界」のヒトになって戻ってこれない、そういうことかな。
評価:★★★☆☆
関連過去記事:
・アフォーダンス-新しい認知の理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000364.html
2004年01月06日
Ucmore、ReadOne、クエリーフリー
■関連テーマとページを提案するUcmore
最近デスクトップで便利に使っているツールにUcmoreがある。海外を中心に1000万人以上のユーザがいる人気ソフト。ブラウザーのプラグイン(追加機能)ソフトとして無料で使える。このソフトには、検索アクセラレーターというキャッチコピーがつけられている。現在検索しているキーワード、あるいは、見ているサイトのテーマに関連する、ページを教えてくれる機能がある。
・Ucmore
http://www.ucmore.com/
例えば、Googleで「iraq」を検索してイラク問題について調べようとする。すると、ブラウザーのツールバー上に、上記のスクリーンショットのような表示が出てくる。イラク紛争や反戦運動、国際政治や、ニュース報道といった関連ディレクトリにまとめられたリンク集が提案される仕組みだ。検索時以外に、普通にページを見ている際にも、関連テーマやページの所在を教えてくれる。
このソフトが私にとって役立つのは次の3つの点かなと思っている。
1 少しずれたテーマの関連サイトを発見できる
例えば米国の書店のAmazon.comを訪問すると、UcmoreはBarnes and Norbleのような競合サイトを幾つか教えてくれるだけでなく、「中古書店」「レアモノ書店」「書評サイト」などのリンク集も提案してくれる。特に詳しくないテーマの調べ物では重宝する。
2 用語解説的に使えて便利
例えば「MP3」というキーワードについて調べたいとする。「ダウンロード」「ストリーミング」「リンクリスト」といった、関連テーマのサイト一覧がワンクリックで表示できる。リストを眺めればなんとなくMP3が音楽ファイルの一形式だと推測できる。
3 ブックマークが充実する
提案されるリンク集をワンクリックですべて、自分のブラウザーにブックマーク登録できる。後で見たいなというときに複数のページをブックマークする手間が省ける。リンクを友人にメールで送る機能もある。
同種の関連ページ提案ソフトにはAlexaツールバーがある。リスト化されているサイト数ではAlexaの方が圧倒的に多そうだが、Ucmoreはテーマ名で整理された代表的なサイトのリストを教えてくれるので使いやすく感じている。
・Alexa
http://www.alexa.com/
なお残念ながら日本語にはまだ対応していない。日本語で似たジャンルのものにはReadOneがある。
■ReadOne
・ReadOne
http://www.readone.net/
昨年の忘年会議にもきて頂いた慶応大学の開発チームによるニュース情報の提案ソフトウェア。ブラウザのツールバーとしても使えるし、最近Web版もリリースされた。
1 ニュースサイトを登録しておく
2 最新ニュース一覧が表示される
3 関心のあるニュースをクリックして読む
4 ユーザの興味をニュースに使われるキーワードから学習する
5 学習データからオススメを提案してくれる
という人工知能的なアプローチで、使えば使うほどユーザの関心に近いものが提案される。RSSという形式でメタデータを公開しているニュースであれば簡単に登録できる。いわゆるブログサイトの大半で使うことができる。
■クエリーフリーという概念
Ucmore、ReadOneに共通しているのは、検索語を入力することなく、関連情報が提案表示されることである。この概念は、海外の研究では、「クエリーフリー」と呼んでいる。最近興味深く読んだ論文には以下のものがある。
Query-Free News Search
http://www2003.org/cdrom/papers/refereed/p707/p707-henzinger.html
テレビ放送のキャプションデータに連動して、放送中の番組内容に関連するWebサイトを提案する仕組みの研究。ここでは、幾つかの提案アルゴリズムを実装して、どれが有効かを考えている。
・Query-free Information Retrieval
http://rii.ricoh.com/~jamey/fixit/fixit.html
こちらでは、プリンターなどの保守マニュアルの文章データベースにクエリーフリー検索を実装した研究。発生した障害に対応するFAQ情報を、キーワード検索することなく見つけることができ、サポート業務を軽減できる(かもしれない)話。
■クエリーフリーの応用範囲を考える
クエリーフリーという概念は今年流行するかもしれないと考えているキーワードのひとつである。例えば、テレビやラジオと連動したもの、携帯の位置情報サービスと連動したものがすぐに思い浮かぶ。
1 テレビ、ラジオのクエリーフリー
例えば海外では、テレビとラジオ対応のメディアモニタリングサービスがある。
・TVeyes
http://www.tveyes.com
テレビ放送をサーバが24時間監視し、音声認識で放送内容をテキスト化している。ユーザが予め登録したキーワードを、テレビの登場人物が発話すると、メールでユーザに教えてくれる。ラジオ版のRadioEarsもある。
2 会議のクエリーフリー
音声という点では、会議に使っても便利だろう。会議での発言内容に応じた関連サイトがリアルタイムにプロジェクターに表示されれば、ブレインストーミングやリサーチ支援ツールとして機能するだろう。現在の音声認識は同一人物の声を聞き取るのは特異だが、複数の話者の声を認識するのが苦手な傾向があるが、技術課題がクリアになれば有望な応用になると思う。
3 携帯、位置情報のクエリーフリー
今の携帯電話の例えばi-modeは少し不便である。今目の前にあるレストランの情報を調べるのに、いちいち検索しなければならない。open-iareaという簡易位置情報サービスも検索行為を求められる。これでは不便である。
GPSなどの高精度位置情報サービスと連動して、24時間常にユーザ付近の店舗を検索し続けてクエリーフリーになると良いはずだ。店の前に立ち止まった時に携帯を見るだけで必要な情報は既に表示されていることになる。これこそユビキタスという気がする。パケット代や電源容量の問題をクリアできれば、そのうち出てきそうなサービスだ。
キーワード入力もクリックもなしに、ユーザが求めているものをそっと教えてくれるクエリーフリーは素敵。エージェントサービスの基本要素と言えるかもしれない。
他にどんな応用が考えられるだろうか?
関連URL:
・@DATASECTION メールを使ったクエリーフリー
http://www.datasection.com/index.php?page=atds
私の会社は既にメール連動のクエリーフリーサーチを実現するサーバを販売しています(宣伝)。
・毎日のニュースチェックツールに求めるもの
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000634.html
2004年01月05日
歴史の方程式―科学は大事件を予知できるか
非常に勉強になりました。
評価:★★★★☆
■大事件の発生は一つの方程式で説明できる
「戦争や革命など歴史的大事件にはすべて原因がある(決定論)」「好景気と不況は周期的にやってくる(周期発生論)」「100年おきに大地震が発生する(これも周期発生論)」「ある英雄の強い意思によって偉業は為される(自由意志論)」
大きな出来事を前にすると、上述のような考え方で私たちは歴史を物語として理解したがる傾向がある。この本は、そんな通説を間違っているとして、物理学のアプローチで鮮やかに切り崩していく。
種の絶滅、大地震、戦争、革命、経済恐慌、科学的なイノベーション。著者は、歴史上の大きな出来事を、物理学の世界で一般的に見られる、臨界状態からの相転移過程に働く冪乗則(グーテンベルク=リヒター則など)で説明する。
この本では砂山の例を使って主な概念を説明している。砂粒を上から一粒ずつ床に落としていくとやがて砂山ができる。砂山にはなだらかな面と、急な斜面ができる。どこかの段階で、臨界状態にある急な斜面に、ある一粒が落ちたとき、巨大な雪崩が発生することがある。
雪崩の発生過程を調査すると、大きな雪崩が一回起きるとき、その半分の規模の雪崩が2回、その半分の規模は4回、さらに半分の規模は8回といようように、二乗の数で発生していることが分かる(冪乗則)。そして、絶滅、地震、恐慌、戦争、都市の人口、お金持ちの比率、落として割れたガラスの破片、などの規模を調べても同一の冪乗則が成り立っているそうだ。自然や社会を広く支配している法則なのである。
物理現象から社会現象まで幅広い実例と、分かりやすい数学的モデルの解説が展開されていく。物理学と歴史がシームレスに統合される過程が見事だ。著者は理論物理学の博士で、科学誌「ネイチャー」と「ニューサイエンティスト」の編集者を歴任してきただけに、正確で分かりやすい記述に優れる。
この本を読みながら、因果律や正規分布、単純な確率論の考え方では説明できないことの多さ、自分の安易な現実理解に幾つも気がついた。目からウロコな部分も多かった。
読みながら考えたこと、調べたことは次のようなこと。
■人気ホームページの数
この本でも紹介されているが、科学論文における参照回数(リンク)もグーテンベルク=リヒター則に従うことが分かっている。特定の論文が多数回参照され、大多数の論文はほとんど参照されない。
・Available Citation Data
http://physics.bu.edu/~redner/projects/citation/index.html
論文参照数分析に関する論文へのリンク(Sidney Redner)
・Who is the best connected scientist?
A study of scienti¯c coauthorship networks
http://www-personal.umich.edu/~mejn/papers/cnlspre.pdf
論文の共著関係を調べて誰が最も「つながっている」科学者かを調べた論文
・CiteSeer
http://citeseer.nj.nec.com/cs
忘年会議でも紹介した論文検索。参照関係やキーワードの発生回数グラフなどを調べることができる。研究の影響伝播や、流行テーマを調べるのに強力なツール。
この参照に起きた現象は科学論文に止まらない。
世の中には少数の人気ホームページと、多数の無名のページ、その中間の人気のページが存在している。1億ページビュー(PV)のページがあれば、5千万PVのページが2つ、2.5千万PVが4つ、1250万PVが8つといった具合で存在することが考えられる。実際、そのような事実も以下のページからたどれる研究で証明されつつある。
・Zipf's law
http://linkage.rockefeller.edu/wli/zipf/
ニュース記事における言葉の発生率や、WebへのトラフィックがZipf's lawに従うことが示されている。多数の関連論文へのリンク。Zipf's lawは歴史の方程式とほぼ同義。
思うに、インターネットが一般に普及した頃の方が、ポータルサイトの寡占率は低かったのではないかと思う。その理由は、この本の歴史の方程式で完全に説明できるのではないか?。それはWeb利用のツールが未発達で、ナビゲーションが整理されておらず、一部のユーザだけが必死に情報流通をしようとしていたから、ではないか。
歴史の方程式の条件は、(1)相転移を発生させる臨界状態であること、(2)個の影響力が他に伝播すること、である。ユーザが情報流通に必死になること、競争が激しくなることで(1)が満たされ、通信環境と情報流通ツールの発達で(2)が満たされる。
つまり、皮肉なことに、
・個人が情報発信をしやすくするツール
・ページ同士のリンクを張りやすくするツール(ブログのトラックバックなど)
・ナビゲーションを効果的にするツール(検索エンジン、リンク集など)
・情報発信者たちがベストを尽くそうとする気持ちと頑張り
という状況が完璧になればなるほど、ポータル寡占は今後も進行していくことが予想できる。
■都市の人口や経済規模の分布
もうひとつの問題は大都市と地方、中心と周縁の問題である。
・複雑系とまちづくり (5)
http://www.kobe-toshi-seibi.or.jp/matisen/0urban/urbantalks/200009c.htm
本の中でも世界中の都市の人口や経済規模がグーテンベルク=リヒター則に従うことが解説されていたが、このページでは日本の都市でも同様の法則が適用できることを実証している。
・An introduction to geographical economics: trade, location, and growth
http://www.few.eur.nl/few/people/vanmarrewijk/geography/zipf/
世界レベルでの人口データと分析。データはダウンロード可能。
以前、気になって読んでいた議論にこのブログのスレッドがある。地方からの人材流出とブログがテーマである。(私は地方都市出身、在住なので中立の立場で読めた)
・「blogに関する中央と周縁」と改めて言われると
http://blog.readymade.jp/tiao/archives/000518.html
一般論として、ITや通信の普及によって、大都市と地方の人口や経済規模の格差が縮まると期待する声はあるのだが、インターネット普及以降、私にはあまりその格差が縮まったように思えない。
グーテンベルク=リヒター則は、個人の影響力が伝播する確率が高い系において強く発現することが知られている。よって、ITはこの格差を縮めるのではなく、逆に固定化しようとする力になると考えることができる。
地域におけるインターネットの啓蒙、地域からの情報発信の強化など、施策を否定したくはない。ある地域をITで活性化することはできるはずだ。だが、デジタルデバイドの真の解決には、二つの壁があるように思った。
1 影響力伝播の双方向性の壁
地方の活性化について、良い情報も悪い情報も出入りする。かつてテレビやラジオの普及によって、地方が都市文化に染まり、都市へ移動した人口や経済は多い。地域振興を考える上では、もう一歩進んで、このパラダイムから逃げるための複合アプローチを探っていかねば、効果はないのではないか、と思う。
2 相対的な都市部と田舎の壁
特定の地方が振興に大成功し、人口、経済規模を大きくすることはありえる。しかし、全国レベルではグーテンベルク=リヒター則に従い、その2分の1、4分の1の小さな地方が、形成されるだけで、中心と周縁の分離が解決されるわけではない。(中央政府の施策はこちらの視点も持つべきなのではないかと思う。経済や人口規模以外の国民が納得できる多面的評価尺度の導入など)
■冷たい方程式を暖かくする考え方を探して
歴史の方程式は、カオス、複雑系、バタフライ効果、SmallWorldといったキーワードともリンクしており、インターネット、情報技術的に非常にホットなテーマと言えそうだ。
この方程式は、自由意志による決定論を否定するものである。ある行為が臨界点に落ちる最後の砂粒であるかどうか、自分が歴史を動かす英雄なのかどうかは、自身では分からないことになる。そんなタイトルのSF小説があったが、冷たい方程式のひとつと言える。
冷たさはたぶん、ある行為や状況の「偉大さ」「重大さ」「豊かさ」を単一の尺度で測る考え方に起因するのは間違いない。この計算では極一部の人に影響力と富が集中してしまう。21世紀は、多面的な尺度をどう成り立たせていくかが課題になるのではないか、と、この本を読んで考えさせられた。
私の大嫌いな評論家にテレビにもよく登場する森永卓郎氏がいる。彼は景気を一層悪くするような意見ばかり書いている。いつもうんざりする。
・年収300万円時代を生き抜く経済学 給料半減が現実化する社会で「豊かな」ライフスタイルを確立する!
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334973817/
「これから9割のサラリーマンは「負け組」の方に向かう。そのときに、可能性のない「成功」をめざすのか、割り切って自分にとって「幸福」な人生をめざすのか。安定が崩れ去った日本社会での「森永流前向き生き方」を緊急提言。」
そういう浅いレベルの価値観のすり替えの未来が理想ではないと思う。経済は重要だと思う。世界の富の所有量、お金持ちの発生率も冷たい方程式に従うことが明らかになっているが、富の再分配を諦めてはつまらない。冷たい方程式に真っ向から戦いを挑むのが正論と思う。
富の再分配を、コミュニズム以外の方法で、実現する方法をITやネットワークを使って模索できるのではないかと思っている。明確な施策が思い浮かぶわけではないのだけれど、私のアイデアは「価値観、経済を多様化し、(富の獲得の)チャンスを均等にすること」であり、以下のような施策を漠然と考えている。
1 影響力と報酬の多様化メカニズム
私が大尊敬する友人に伝播型流通貨幣PICSYプロジェクトの鈴木さんがいる。彼は20年後、ノーベル経済学賞を受賞するのじゃないかと密かに期待している。
・PICSY
http://www.picsy.org/
・ネットコミュニティ・通貨
http://www.hotwired.co.jp/matrix/0104/
PICSYはネット上の影響力の伝播を計算し、経済につなげる仕組みの研究。ITを使ったリアルタイム計算などの点が、従来の地域通貨とは質的に違う気がしている。多様な価値観を経済的報酬へつなげていく仕組みが重要と考える。
2 めまぐるしく変わる社会システム、情報技術
情報や影響力、富の分配システムが固定化しないこと。社会と情報技術が革新を加速させること。インターネットも黎明期の不安定な僅かな期間だったが、均衡を破って、新しいヒーローやビジネス成功者、ライフスタイルが生まれた。
3 臨界状態を回避する遊び、ゆとりの仕組み
生活や仕事に、遊び、ゆとり、冗長性がいきわたると、競争や集中による臨界状態の起きる場所が流動化され、チャンスの均等化が起きるのではないか、と考える。
冷たい方程式をしたたかに利用して暖かい方程式を作るための技術。私は、そういうものを開発していきたいと思った。冷たい方程式は厳然と存在し続けるのだろうけれど、めまぐるしく長者リスト(とそこに出てこない、準じる層)は数年おきで入れ替わる経済。どんな社会的地位や職業、在住地域にあっても、誰にでも経済的チャンスが期待できる社会。中心と周縁が正の効果を生むように刺激しあう社会。それを実現するための情報技術という理想。
と、年頭ということで、随分大げさに筆が進んでしまいましたが、そう思いますた。
2004年01月04日
この年末年始で楽しんだもの報告
この年末年始で楽しんだもの。
DVDレコーダー。年末年始の番組録画のために購入し、使い始めて一ヶ月。テレビの視聴形態がまったく変わってしまいました。当初はビデオ録画が簡単になると思っていただけでしたが、ライフスタイルを変えるくらいの影響力のある製品だったかもしれません。操作インタフェースなど使いにくい点はあるのですが、全体としては、大満足です。
テレビ視聴スタイルがこんな風に変わりました。
・従来のビデオ録画コスト(テープのコスト、録画の手間、テープ残量の管理)が限りなくゼロになる。
↓
・観るか観ないか分からなくても、気になったらとりあえず録画予約してしまう。面倒なので自動録画のキーワードを大量登録する。
↓
・常にハードディスクは録画で満杯にしておく(古いものから自動削除)
↓
・今の気分にあった番組を録画ライブラリから探して観るようになる
はっきりいって、リアルタイムにテレビを見なくなりました。プロ野球や甲子園、オリンピックは全部録画してしまえば帰宅後選んで見ることができるなあとシーズンが楽しみ。
■激闘プロ野球 水島新司オールスターズVSプロ野球
http://www.segawow.com/gekito/index.html
2003年度のデータで全球団実名選手+水島漫画に登場するキャラクターで、プロ野球ができるゲーム。す、すばらしい。野球ゲーム自体もよくできている。阪神タイガースのチームをベースに、岩鬼、殿馬、山田太郎、岩田鉄五郎、水原勇気をトレードで参加させて遊んでました。白鳥の湖やら、ドリームボール、G線上のアリアなど秘打、秘投が再現できるのが面白すぎる。
■GRAN TURISMO 4 "Prologue"
http://www.playstation.jp/scej/title/gt4p/
恐らく世界最高のグラフィックを実現しているレースゲーム「グランツーリスモ4」のプレリリースにあたるプロローグ版。実写と間違うくらいの美麗なグラフィック。GT3のときにも感動したけれど、4はさらに背景や砂埃などの効果が進化した感じがする。あまりに美しいので、スゴ録のHDDレコーダー経由で、ゲームのリプレイ映像をDVD録画してしまうくらい。
このシリーズは3のときにも思ったけれど、GTは完璧なシミュレーターであってゲーム性は低い。ゲームとして楽しむならマリオカートの方が面白い。CG映像マニア、車マニアにおすすめ。
■映画:火の鳥
http://movie.goo.ne.jp/movies/PMVWKPD18868/
・レビューしているサイト
http://www.page.sannet.ne.jp/nobuyuki-tk/hinotori.htm
これはCSの日本映画チャネルで年末にやっていたので、すご録へ録画しておいたものを正月に見ました。手塚治虫の「火の鳥 黎明編」を原作に、谷川俊太郎が脚本を書き、市川崑がメガホンをとった1978年の作品。出演者も超豪華に以下の通り。
若山富三郎(猿田彦)、尾美としのり(ナギ)、高峰三枝子(ヒミコ)、江守徹(スサノオ)、草笛光子(イヨ)、大原麗子(ヒナク)、林隆三(グズリ)、加藤武(カマムシ)、田中健(タケル)、伴淳三郎(まじない師)、大滝秀治(スクネ)、風吹ジュン(オロ)、沖雅也(ウラジ)、潮哲也 (マツロ王)、小林昭二、(ヤマタイ国親衛隊長)、木原光知子(女官サヨ)、ピーター (女官ヌサ)、カルーセル麻紀(女官シメ)、草刈正雄(天弓彦)、由美かおる(ウズメ)、仲代達矢(ジンギ)
内容は、いやあ、すごい。漫画の原作を極めて忠実に再現しすぎたために、漫画の実写版を期待した人には高得点でしょうけど、映画館で上映する娯楽大作としては、かなり無理のあるシュールな展開になっています。ヒミコの鬼気迫る化粧と演技、原作通りの残酷なシーンなど、実写化されると怖いです。この映画の当時の評判が気になります。
2004年01月03日
私の好きな音楽たち
昨年、私のオフィスと自宅作業環境でヘビーローテーションだったアルバムを10枚紹介します。邦楽は歌詞を頭が追ってしまって仕事にならないので、洋楽ロックオンリーです。アンプラグドシリーズが多いのも、うるさすぎないから、です。
理由はさっぱり分からないんですが、このバンドの音楽を聴いていると調子よく物事が進むので、よくかかってます。朝一番、一曲目の「スージー・Q」でリズムに乗りながらメールを書き、大好きな8曲目「ダウン・オン・ザ・コーナー」あたりで私的ノリが絶好調になり、「トラベリン・バンド」、「フール・ストップ・ザ・レイン」を聞きながら取引先へ電話をかけ、終盤のヒット曲「雨を見たかい」が鳴る頃には、手仕事の2,3本も仕上がって、新規受注の話もまとまっている、みたいな感じです。私の体内リズムと関係があるのかと思いますが、仕事がはかどるツールとして使ってます。万人に同様の効果があるかどうかは知りません。CCRはそもそも大好きですけど。
・ロッド・スチュアート Unplugged...and Seated
MTVアンプラグドのシリーズ中でも、選曲、演奏ともに完成度の高いアルバムと思います。1曲目の「ホットレッグス」で調子よく飛び出して、そのまま代表曲の「マギー・メイ」までテンポよく進みます。そこからロッドスチュアートの魅力全開の、大人バラード4連発。しびれますな。
8.People Get Ready
9.Have I Told You Lately
10.Tom Traubert's Blues (Waltzing Matilda)
11.First Cut Is the Deepest
と続きますが、トムウェイツ作曲の「トム・トラバーツ・ブルース(ワルチング・マチルダ)」が特に秀逸でしょうか。
シェリル・クロウは、現代最高の女性ロックボーカリストだと思っています。カッコイイ、ロックンロールでUSAな姉御。前回の来日時は武道館までコンサート観にいきました。CDよりうまいのに感動。アンコールに応えて星条旗模様のカウボーイ姿で登場し、ツェッペリンの「ロックンロール」を、グランドピアノの上に飛び乗ってシャウトした姿、涙出ましたよ。身体震えた。
アルバムとしては、C’mon,C’monもいいんだけど、やはり彼女のイチオシアルバムは、Tuesday Night Music Clubの方でしょう。All I Wanna Doがヒットだったけど、私は「リービングラスベガス」と「ストロングイナーフ」がお気に入り。
粋なジャケットと原題タイトル「The First of a Million Kisses」。何百万回ものキスをするうちの最初のキス、か。邦題は工夫がなさすぎ。大学時代に好きだったけど一瞬で解散したフェアグラウンド・アトラクション。そのリードボーカルのエディリーダーが2年前、渋谷クアトロでライブをやってたので観にいったら、しびれた。歌がうますぎる。フェアグラウンド時代の楽曲も聴衆の求めに応じて演奏してくれた。無論、代表曲?「Perfect」も!。で、早速、この名盤とソロアルバムを買いなおす。2曲目の歌詞の通り「パ、ア、ア、ア、フェクト」。
とにかく「スイートホームアラバマ」ですね。この1曲を聴きたくてこのCDかけてるなあ。私の頭の中では、ザ・バンドと並んでこのレーナードスキナードはバンドの達人。何を演奏しても一緒に聞こえるのも同じか(笑)。いいんです、この音が聞きたいのだから。
・ロードホーム(ハート)
ハートがなんとアコースティックでベストを歌った名盤。ジースドリームズ、アローンなど有名曲満載で、メロディの美しさ、声の美しさをちゃんと聞けるのがファンにはたまりません。
アンプラグドはなんだかんだ言って好きなんだな私。彼も(私的には)アンプラグドで株を上げた1人。秀逸なのはオープニングの「想い出のサマー」「バック・トゥー・ユー」。洒脱軽妙なドライブ感のあるエレアコのカッティングリズムに彼の美声が絶妙な配合で、演奏のその場にいたかったなあと思わせる。録音もいいのかな。
アーティストにとって実力があからさまに見えてしまう、試金石としてのMTV Unplugged出演。カートコバーンはアコースティックギターで、大音量のときと変わらぬロックスピリッツを見せつける。ラストの「ホエア・ディド・ユー・スリープ・ラスト・ナイト」の絶唱はもうぶっ飛んでいる。あの叫びは本物だったんでしょう。この録音から、頭をライフルで撃ちぬいて死ぬまでにあまり時間はありませんでした。生きていれば今のロックシーンは...、というのはもうよしましょうか。
・(What's The Story) Morning Glory? (オアシス)
で、どれBGMにかけようか迷うと、結局、このアルバムにいつも戻ってきちゃうんですよね。全曲シングルカットされているような気がしますが、私は一旦MP3に変換して、別のアルバムから持ってきたWhatEverを合わせてスペシャル版にして流してます。ヘリコプターのプロペラ音を演奏に使った「Morning Glory」、スタンドアップで歌うPVが最高にご機嫌な「Roll With It」、どこかBeatlesチックな「She's Electric」「Some Might Say」。私にとって彼らは現代の最高のロックアーティストであり、大口を叩こうが、ライブでボーカルがステージに出てこなかろうが、すごいから、何でも許す。
2004年01月02日
私の好きなゲームたち
■コンピュータゲームと私
1980年頃、コモドールというコンピュータメーカーが日本法人「コモドールジャパン」を設立し、マックスマシーンというゲーム機を発売していました。このマシンにはBASIC言語のカートリッジが用意されており、私はこれを使って初めてのプログラミングを学びました。無論、小学生時代ですから作るものもゲーム、遊ぶものもゲーム。
正月に実家に帰ったらまだ実機が物置に。メモリ512バイト。テレビへの出力。外部記憶装置はなし。プログラムは紙にペンで書いて保存しました。
当時、日本にはレンタルソフト屋という今ならば考えられない店がありました。数百円でソフトウェアパッケージを1週間レンタルするものです。著作権もなにもあったものではありませんが、当時は当たり前のように営業していました。レンタルソフトに通っては、カセットテープ媒体に入ったゲームを遊び、ソースを解析する毎日。おかげで、学校も年間欠席日数は60日以上になり、登校拒否児扱い。でも、このデジタル原経験がなかったら今の仕事に就いていないわけで、よくも悪くもゲームに左右されているなあ。
■ゲームのおかげで社長になった男の話
・Gamer'sViewバックナンバー
http://macky.nifty.com/cgi-bin/bnadisp.cgi?M-ID=0053
私は1999年から約3年間、ゲーム情報サイト(メールマガジン)ゲーマーズビューの編集長をしていました。後半の時期は忙しくて監修のみでしたが、この時期は年間50本を遊び、レビューしていました。この頃書いた文章は上記のバックナンバーの1999年6月以降に残っています。編集部にいたアクション苦手なへなちょこ女性ライターがいてレビューを手伝っているうちに、いろんなことがあって、彼女は今の私の奥さんです。私はゲームがきっかけで結婚したと言えなくもありません。
当時このサイトに寄稿を、頂いた友人に御手洗さんがいます。この記事の最後に「King Of Doomからの手紙 ゲーム大会優勝で社長になった男」という原稿を再度掲載させていただきます。彼は現在は、言わずと知れたITニュース出版社、CNET JAPAN代表取締役社長。原稿にあるとおり、キャリアがゲーム大会優勝から人脈を得て始まったのですから、たかがゲームなんて言えませんね。
・御手洗さんのブログ
http://blog.neoteny.com/mitarai/
・CNET JAPAN
http://japan.cnet.com/
■この10年間のゲームベスト10
この10年間で感動したゲームを紹介します。
ゲームとムービーのシームレスな連携と斬新なキャラクターデザイン、シナリオ。数年は先を行く当時100点満点のゲームでした。米国ゲーム誌でも歴代最高評価の伝説。
一緒に遊んだ某社長はデータセクション設立時には出資していただく仲になりました。
3位 Age Of Empire2(PC)
LANゲーム大会を会社で休日に開催して盛り上がりました。
鉄道王を目指す。緻密な戦略が必要。
最近のアクションとして白眉。
こそこそする緊張感。特殊部隊になって人質救出したり、ゲリラアジトを襲撃したり。
カードゲーム+モノポリー+ファンタジー。
8位 FF10(PS2)
RPGではこれ。
FF11はサービス開始と同時に参加して赤魔士L27までいきましたが忙しくて1年間以上ログインできていません。
コンセプトデザインの勝利。
次点:
・DeerHunterシリーズ(PC)
http://www.planetdeerhunter.com/
解説:Windows95の次によく売れたゲームDeerHunter
http://macky.nifty.com/cgi-bin/bndisp.cgi?M-ID=0053&FN=19990604014450
・街:運命の交差点(PS)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0000634MI/daiya0b-22/
ゲーマーズビュー:2000年4月28日版より。現CNET代表の御手洗さんにインタビュー。
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■ GV Express -------------> 特別寄稿
━━━━━━━━┓【King Of Doomからの手紙 ゲーム大会優勝で社長になった男】
記事:橋本大也 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今週は、私の友人である、バックテクノロジーズ株式会社の代表取締役 御手洗
大祐さんからお寄せ頂いた特別寄稿記事をご紹介します。この会社をご存知でな
い方が多いと思います。それもそのはず、まだ出来たての会社であります。
しかし、御手洗さんは知るひとぞ知るインターネットビジネス業界のキーパース
ンでもあり、その豊富な技術的知識と洞察力で広く知られています。応用技術だ
けでなく、慶応ビジネススクールなどで学ばれた学術的な研究や理論にも造詣が
深く、私もしばしば勉強させて頂いています。御手洗さんは、これまで、かつて
はテレビコマーシャルなどでも有名な、ネオテニー社長である伊藤穣一さんの下
で重要な役割につかれていらっしゃいましたが、この度、モバイル端末のレイティ
ング情報サイトなどを運営する会社を起業されたばかりです。
そして、話題のインターネットベンチャー企業のコミュニティ=ビットバレイの
オフィシャルメールマガジンの編集長でもいらっしゃいます。
・ビットバレイマガジン
http://bvm.uva.ne.jp/
バックテクノロジーズ株式会社
http://www.waag.net/
御手洗さんと話をしていて、「実は私もゲームとは深い縁があるんですよ」とい
う昔話を教えていただいたのですが、その話が非常に興味深かったので原稿に書
き起こして頂きました。
御手洗さんは日本の初代DOOMトーナメントのチャンピオンであり、King Of Doom
の称号を持つ男だったのです。そして、そのゲーマーとしての実績が縁で、マス
コミでもおなじみの伊藤穣一さんと知り合い、人生がめまぐるしく、変わって行
きます。
たかがゲームだけれど、されどゲームなのですね。秋葉原のバイト店員が一本の
ゲームを究めたことが縁で、社長になるまでのストーリーを以下にお楽しみくだ
さい。そして御手洗さん、今後のご活躍を同じ起業家としてお祈り申し上げます。
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それは"DOOM"により始まった
御手洗 大祐
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個人的にこの1〜2年はいろいろと変化の多い年だった。結婚したのも初めて
であれば、転職も初めて、胆石を患って手術をしたのも初めてだし、更に会社
を作ったのも初めてだった。漸く初のサービスも立ち上がり、ひと段落ついた
ところでいろいろと昨今の変化の元となっているものをいろいろと振り返って
いるところだ。
思えば、これらの変化は私が"DOOM"という、id Software社が作っていたゲー
ムに端を発している。少し長くはなるが、このゲームを通して私が長い遍歴の
のち、起業することとなったか、その事情を説明したいと思う。日々ゲームを
やることに意義があるかどうかを悩みつつ、それでもゲームにはまってしまう
多くの方に福音となるような話であれば嬉しいと思う。
1995〜6年ぐらいのことだったと思う。私はテクノを愛する秋葉原のバイト店
員だった。その店は秋葉原の目抜き通りである中央通り沿いにあるビルの中に
あった。このビルにはソフマップのMIDI販売コーナーや、地下にはまあまあ食
べられるカレー屋(というか喫茶店)があることでも知られていたが、とにか
くそのビルの一室で営業する、CD-ROM専門店に私はアルバイトとして詰めてい
た。
CD-ROM屋というと、当時は友人等に話をすると「いい思いをしているのだろ
う?」と下衆な勘繰りを受けたものだが、実際のところ当時CD-ROMというとシ
ェアウェア集や実用もの以外はエッチなものが殆どだったので、それなりにい
い思いをしていたような気がする(しかも、海外から輸入するものの一部は処
理がされないまま発送され、それを税関も見落とすことがあったようだ。もち
ろん、売れないものとして先方に返送してしまうのだが。)。
当時のCD-ROMタイトルに関して評論してもあまり意味はないのだが、異彩を
放つものの多くは海外のタイトルであった。その中の一つに"DOOM"もあった。
"DOOM"は軽快に動作する、3Dアクションシューティングゲームだったが、その
シェアウェアとしてインターネット等で配布されていたソフトウェアを詰め込
んだCD-ROMタイトルは当時としてはかなり人気だった。
さて、私はこうしたものをいろいろと秋葉原で販売していたのだが、実は労
務経験のあるものにしかわからない事実なのかもしれないが、秋葉原は相当恐
るべき場所であった(今もそうかもしれない)。何故か?それは日本一と言っ
ても過言でないほど、顧客の異様なまでの物欲に毎日晒されることになるから
だ。少しでもセンシティブな人間であれば、1ヶ月も働くとその疲労困憊度は
尋常ではないものになり、また中には精神状態を崩す者もいたような気がする。
多くの店員は、この尋常ではない状況を正しい精神状態(?)で貫きとおす
ために、いろいろと回避行動を取ることとなる。仕事の合間にゲームをやった
り、訳のわからない雑談を楽しんだりする訳だが、私がこのうち特にはまった
のはDOOMだった。当時店にはデモ用のIBMの一体型デスクトップマシン、Aptiva
があり、これに勝手にDOOMをインストールしては、客足の少ない午前中や、午
後のおやつの時間等にこのゲームにはまっていたものである。このように、極
限状態の中で否応なくその腕前は鍛えられていき、知らない間に全国レベルの
プレイヤーになっていたようである。
自分でもこんな技術が何の役に立つかもよくわからなかったが、それが私の
人生を大きく変えるまでに役に立つ日が来るのはそう遠くはなかった。知り合
いのDJがあるイベントでDJをやる、とのことで呼ばれていったのが、実はIBMが
主催のネットワークゲーム大会だったのである。実はその会場に行くまでその
ことは全然知らなかったが、彼のDJを聞くために入り口で大会にエントリーし、
そのまま大会に出場してしまった。
ゲームは総勢32人、8人ごとにネットワーク対戦で予選を勝ち抜き、各ブロッ
クの上位2名が決勝に進出し、またお互いに打ち合うという仁義なき戦いであっ
た。それなりに経験がありそうな人が多かったが、実際にゲームが始まると、
秋葉原の精神的圧迫の中でサバイバルのために鍛えてきた腕前(?)に勝る人
はおらず、簡単に決勝まで進んでしまった。
決勝はさすがに猛者が揃っていたが、決勝の舞台となった面に関してその地
理的優位もすべて把握していた私は、ゲーム早々見渡しのきくポジションを押
しのけて獲得し、遠くで2者が打ち合っているところを遠目から狙撃するという
いたって合理的だが卑劣な方法で、あっという間に優勝してしまった。
これには自分も驚きであったが、更に驚いたのは当時かなりの高額商品であ
ったIBMの名機、Thinkpad 230Csが優勝者への賞品だったことだ。嬉々として私
はこれを収め、舞台での優勝者インタビューに臨んだものだ。
そして、またまた衝撃だったのが、現在私の会社にも出資を行ってくれてい
るネオテニーの伊藤さん(当時はまだデジタルガレージにいらっしゃったので
はないかと思う)との出会いだった。彼はこの大会の審査員としてこの場にお
り、また同じ席に現在東大にいらっしゃる武邑先生もその場にいらっしゃった
のだが楽屋裏でこのご両名といろいろと話すことが出来、元々大学で美学を専
攻していた私にとっては願ってもない機会だった。
これを機に、私も様々な経験をすることが出来たものだ。まず、賞品で貰っ
たThinkpad 230Csはあっという間にUNIXを少しでも学びたい私の餌食となり、
FreeBSDがインストールされることとなった。これにより、私は大学では縁のな
かったUNIXというものに触れることが出来た(当のCD-ROM店ではLinuxのSlack
-wareが全盛だったが、ノートに入れるのは少し難しかったこともあり、BSDが
選択された)。また、伊藤さんにはその後アルバイト等を通じていろいろ人を
紹介して頂いたりすることとなった。
こうして大学時代が過ぎ、一度は大企業に就職をしたものの、3年経ってみ
ればやはり在野のエッジな雰囲気を忘れることが出来ず、伊藤さんの招請もあ
ったこともあり、こうしてベンチャーの世界に戻り、自分で会社を興すまでに
至ったものだ。今はこうした状況に至極満足しているが、思い返してみると一
つのゲームがこうした私の人生を変える大きな契機となっていることに今更
ながら驚く。
たかがゲームとはよく言われるが、されどゲームである。どの世界でも、た
とえそれが人にあまり認められていないことでも頭角を表すことは悪いことで
はない。ましてや今はインターネットの時代である。周囲では注目されなくて
も、ゲームで道を極めることが世界的な大きな成功に繋がることもあるかもし
れない。
罪悪感を感じながらゲームをしているこの原稿の若い読者にも、誇りを持っ
てゲームを極めてもらいところだ。
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御手洗さん、激務の中、ご寄稿どうもありがとうございました。
ゲームのし過ぎで会社をクビになる人もいるのでしょうけれど、ゲームで社長に
なった人の話は始めて聞きました。
( 編集長 橋本大也 daiya@dragonfield.com )
2004年01月01日
2004年あけましておめでとうございます:マルコフ先生に聞く今年のトレンド
新春のお喜びを申し上げます。
旧年中は大変お世話になり、
誠にありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。
さて、日本経済新聞社が早速、今年のIT業界のキーパースン34人に今年の展望を質問した結果が掲載されています。とても読み応えのある特集です。
・日本経済新聞社 特集・2004年IT展望 ――識者に聞く
http://it.nikkei.co.jp/it/njh/enq04.cfm
識者の貴重な意見ですがさすがにこれだけボリュームがあると読むのが大変です。そこで、要約をマルコフ先生に手伝ってもらうことにしました。
マルコフ先生をご紹介します。先生はJavaアプレットでできています。
・マルコフ連鎖による作文。
http://www.cc.rim.or.jp/~knagasa/jmarkov/jmarkov.html
原理は上記のページの通りです。原文テキストを学習データとして与えると、文章の要素を分解して、ありがちなパターンで並べ替える、と言う人工知能的の自動作文ソフトです。現実の人間の話を聞いて、それっぽい文章をしゃべるというわけです。
早速34人分の「2004年、ITにおける注目のテーマやトレンド、キーワードは? 」の回答部分だけを集めて、学習データとして、マルコフ先生に渡しました。先生は34人の英知をひとつの文章に自動要約してくれました。これで34人分読まなくてもよいはず。
今年のテーマ、トレンド、キーワードはこんなかんじだそうですよ。
「
Q2 2004年、ITにおける注目のテーマやトレンド、キーワードは?
生活のデジタル化、ネットワーク化 ユビキタスという「概念」が米国のブロードバンド政策を見いだすことが起こる。 デジタルアセットマネジメント 企業ITは、消費者や取引先と相互に対話のできる企業、市民と対話をいとわない行政機関、だれとでも公平に対話のできる人などが評価されるようになると思います。要注目です。 「企業のバーチャル化が本格的に取り組むテーマであるから。 RFIDを使用した手ぶら旅行の実験の開始でテレビの新規需要が喚起され、新たなステージを迎えるか。 書き込み可能な2層式DVDドライブでは、市販のDVD映画などをそのままの状態でコピーすることが不可能だが、「ネットワーク配信されるサービス」を「アップグレード」していく、という時代が、使い勝手や価格など質実ともに快適かつ楽しい物となるのか、とても気になるところ。
」
ああ、随分、いろいろなことがありそうですね。
それでは今年もよろしくお願いいたします。
#上記日経のITサイトには私も昨年取材を受けました。当時と同じかそれ以上に、今年は一層セマンティックWebが注目されると思っています。
(3/17)人間が連想するような感覚の検索技術――データセクションの橋本大也CEO
http://it.nikkei.co.jp/it/busi/enouesai.cfm?i=20030314c1000c1