2003年12月31日
私の好きな漫画家たち
私の好きな漫画家たち
特に、最初の3人は私の人生に大きな影響を与えました。(どんな?と聞かれても困りますが)。全作品を所有し絶版をオークションで集めているくらい好きです。
■1位 諸星大二郎
諸星作品は無論全作品を所有しています。先日の新作発表の際には、サイン会にもでかけてサインを頂いてきました。オフィスに飾って拝んでいます。天才。神。私が評論するなどおこがましいのですが、先生は鎮守の森の奥に棲むもののオドロオドロしさを描かせたら古今東西かなうものがいません。(水木しげるがいるって?レベルが違います)。特にここに挙げた作品は各10回は再読しています。
諸星先生、今年生まれた息子には、諸星先生と星野先生絡みの名前をつけてしまいました。私の夢は会社を成功させ億万長者になって、諸星先生の著書専門の出版社を起こすことです。
上記は、妖怪ハンターシリーズと呼ばれる(ひどいネーミング)偉大な4作。
パプアニューギニアの酋長の息子コドワと仲良くなった日本の少女波子。ふたりは、定められた運命と戦いながら、人間の起源へ遡る長く不思議な旅へ。名作。
上記2作は連作といってよさそう。日本と中国の古代史をモチーフに宇宙の成り立ちまでを語ろうとする意欲作。
・諸星大二郎ファンのページ
http://www.tama.or.jp/~hos/morohoshi/
■2位 星野之宣
ある意味、諸星先生と星野先生は共に現人神でいらっしゃり、似ているのですが、諸星先生が天賦の才とすれば、星野先生は努力と才能で、その域に達した方と思います。緻密なプロットで古代日本とSFを描かせると超一級。宗像教授伝奇考を読まずして何が日本人でしょうか。踊る阿呆に見る阿呆。ああ、ヤマタイカ、ヤマタイカ。イザイホー。
2001夜物語の出だしが某映画に似ているのは唯一の汚点ですが、その壮大な構想力がそんなことなどどうでも良いほど偉大なSF漫画作品を生みました。無論、星野全作品読破しています。
日本の古代史の謎に挑む教授の話。
沖縄の巫女が覚醒し、古代日本と現代が交錯する壮大な呪的物語。
宇宙開拓者たちの数百年に及ぶ未来史。
・星野之宣ファンサイト
http://www.kcn.ne.jp/~bluecity/starfield.htm
■3位 安彦良和
安彦良和は一般にはガンダムのイメージがありますが、私にとっては古事記シリーズの人です。歴史解釈のユニークさ、緻密さ、女性の情念の描き方は日本一。感動して涙ぐむことができた貴重な漫画をありがとうございます。先生このシリーズ、続編出してください。10年でも20年でも待ちますよ。
日本の神様、大国主命を実在の人物と捉え、歴史の紐解きを試しつつ、人間ドラマとして鮮やかに描いた大傑作。
ナムジの続編。神武はいわずとしれら初代天皇だが、この作品の主人公は彼を補佐したヤタガラスのツノミの物語。泣ける。
もうひとりのジャンヌダルクの物語。
・安彦良和の宮殿
http://www.asahi-net.or.jp/~sj2n-skrb/yas/
■4位 水島新司
私は野球をしませんが、阪神タイガースと野球漫画が大好きです。数ある作品の中でも選ぶとすれば次の2作品がいいな。
岩田鉄五郎よ永遠なれ。
水島作品において少し異色作。
■5位 手塚治虫
やはりこの先生ははずせません。作品数が多すぎて、傑作が埋もれがちなので、私のお薦めを2冊。
いわずと知れた名作シリーズですが敢えて一作選ぶなら未来編。壮大で気が長いにもほどがあると呆れるくらい手塚先生の構想力は大きなものだったということですね。
因習と国家に支配されたムラ社会の時代錯誤感を感じつつも、とらわれているのは現代の都会生活者も同じかなと思ったり。
■次点的番外編 作品ベースで
少女漫画系で次点を構成。
中国の古典で男女の秘め事をあからさまに描いた禁書「金瓶梅」の漫画化。ねっとりたっぷり男女の変わらぬ営み、情愛と嫉妬など、が延々と描かれてます。
他のとりみきとは作風が違います。日本の民話をベースにした異色作。線画が印象的。
少女漫画なんてと思っていた、私の考え方を変えてくれた作品。薦めてくれた妻には感謝。素直で明るい性格の大切さ、職業人としてプライドを持って生きることの素晴らしさを真面目に学びました。コックになりたいと思ったほど。うっとりするほど魅力的な主人公。
・どうぶつのお医者さん
動物と学生時代をこよなく愛する人に。ほんわかした気分に浸りたければ。DENの松山さんも大ファンなんだとか(ってばらしちゃった)。
2003年12月30日
私の好きな映画たち(2)
昨日に続いて、映画評論第2弾。
古典的な作品から。10年以上前の私が書いた映画評論に、今の私が赤字でツッコミを入れるという、時空を超えた独りチャットをやってみます。
オフコースの名曲「はたちの頃」の唄いだしフレーズ。
「君とは良く話したな、アパートの狭い部屋で。お互い認め合えずに夜更けまで話した」
二十歳の頃。私は大学生。あるNPO団体の機関誌で、誰も読まないのに、映画評論を連載していました。はっきり言って、文章がめちゃくちゃ青いですが、この頃、評論した映画は未だに名作という評価は変わりません。古いワープロからテキストデータを救出しました。若気の至りな部分も多くて恥ずかしい気もしますが、そのまま掲載。26作。
みなさんは二十歳の頃、どんな映画が好きでしたか?
(以下の文章が書かれたのは恐らく1991年〜93年頃時点です。赤字はその評論を読んだ今の私のツッコミ感想)。
「ラストエンペラー」では皇帝の家庭教師レジナルド・ジョンストン役を演じ たピーター・オトゥールが、真面目な英国名門パブリックスクールの堅物教師 を見事に演じきった名作。駆け引きだとか欺瞞だとか、日常生活の中にある、 人生のそんな近道があることは分かっていても、ひたすらまっすぐにしか生き ていくことのできない不器用な男の一生の物語は、どこか共感を覚えてしまい ます。出世や名声などを考えず、仕事に真剣に取り組み、一人の女性をずっと 愛し続けるチップス先生は、何か気詰まりな気がしないでもないけれど、素敵 な人物ではあります。ラスト近くの迫真の演技には、感動して涙が出てきます。 いい映画だなあ。
今の私はチップス先生にそれほど共感しないかな。無口で実直はいいけれど、それだけじゃ、つまらない気がして。近道もそう簡単なことではないなあと思う、悪知恵のついた今日この頃。
「2001年宇宙の旅」で有名なスタンリー・キューブリック監督作品。ドラッグ、 暴力、レイプ、強盗、殺人などなどなど、刺激を求めてなんでもありの近未来 社会で、不良グループのリーダーが主人公。やりたい放題の結果、警察に捕まり、国家に洗脳されて...という映像も物語もショッキングな内容なのです が、見おわるとなんか快感という麻薬的映画作品。こんな内容なのに、テーマ 曲がスタンダードの名曲「雨に唄えば」で、これがまた不思議にはまっている。 Singing in the rainと唄いながらの暴行シーンは名場面。でも、万人向け の映画ではございません。世の中なんか違うよなあ、とお考えの、そこのあな たの為の映画であります。間違っても御家族の団欒に見る映画ではございませんのでご注意を。
今となってみるとそれほど刺激に思えないけれども私がスレちゃったかな。キューブリック的という意味では、「CUBE」のヴィンチェンゾ・ナタリ監督に期待しています。
重厚な映像が「ゴッドファーザー」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ アメリカ」を連想させます。もちろんそれらを超えることはできていませんが、 裏切りと欲望渦巻く非常な男の世界を、魅惑的な女性やら、派手な銃撃シーン やらの彩りを加えて、迫力ある鮮やかな映像を作ることに成功しています。知 名度は低いですがお薦めです。
10年経ったけれど同じ感想。B級マフィア映画にしてはよくできてたな
デンマークの作品。本国では絶賛されていたようですが、日本では上映館の少 なさや地味な内容のせいか、あまり評判にならなかったようですが、これは名 作だとおもいますよ。老夫婦が別荘に昔の友人を呼んで、ささやかなパーティ ーを開くところから物語は始まります。パーティーの間、老夫婦は二人の出逢 いから、平坦ではなかった長い人生の軌跡を回想していくのですが...。小 説でも映画でも音楽でも、優れた作品というのは、人間の生き方について語っ ているものですが、この映画もまた生きること、愛することという人間の抱え ている永遠の課題を扱っているように思います。泣かせます。ハンカチの御用 意を。しかし、日本ではなぜこういう名作が大々的に上映されないのでしょうか?
もういちど見たいな。これはいい作品で記憶に残っています。老後に夫婦でみたいですね
ガープの母親は戦時中の看護婦でした。彼女は野戦病院に運び込まれてきた脳 死状態の敵兵を、子供欲しさに犯してしまいます。その結果の産物が、この映 画の主人公ガープでした。母親はこの出生を秘密にもせずにガープに教え、ガープもまた悩みもせずに、この不条理と驚きに満ちた現実世界を、しっかりと いきていくのでした。ラストが泣かせます。主演は「レナードの朝」のロビン・ウィリアムス。原作は「ホテル・ニューハンプシャー」(これもよかった)のアーヴィングです。原作の小説も名作です。
原作がいいのだよね。これ。
アランパーカーの監督作品。主演のタムリン・トミタが日系二世のヒロインを 演じて独特の魅力。彼女を見るだけでもこの作品をみる価値があるかもしれま せん。戦時中の日系二世の女性とアメリカ男性の波乱に満ちたラブストーリー を中心に、当時の人々の人生模様が描かれます。激動の時代の流れに翻弄され つつも、したたかに貫かれる愛の強さに感動します。
タムリン・トミタその後なにしてるのだろうか
アメリカの永住権を意味するのがグリーンカード。このカードがどうしても欲 しい男と、利害関係の一致したアメリカ女性とのひょんなことからの出逢いか ら幕が開きます。偽装結婚でカード取得後は2度と会わない約束が、政府の調査をかわす為に、共同生活するはめに。そして芽生える愛の物語。主演のアン ディ・マクダウェルは、元トップモデルというだけあって奇麗。「セックスと 嘘とビデオテープ」の主演も彼女でした。相手役のジェラール・ドパルデュー も、今や個性派俳優の代表格。キャストですでにこの映画は成功しています。
ドパルデューは名優という評価は揺るがず。
奇才デビット・リンチ監督の名作。「ブルーベルベッド」もそうだけれど、彼 の作品は、何だか常軌を逸した変態的なところがあって、評価は分かれると思いますが、リンチファンにはたまらない魅力です。「ツインピークス」で日本 でも有名になりましたが、本来はカルト系でしょう。リンチの映画が一般に大 ヒットしては、この国も終わりなのかもしれませんね。でも、天才の映画では あります。ワイルドでバイオレントでとってもピュアなラブストーリーです。 首がぶっとんじゃったりしますけどね...。
ロードムービーの最高峰ですねえ。
征服者ピサロの部下アギーレらの部隊はイカダで川を下る。ひたすら下る。原 住民の攻撃、食料の不足、内部分列と殺戮を繰り返しながら。やがて狂気の独 裁者と化したアギーレは、仲間を全員処刑して、一人取り残された、死臭漂う イカダの上で、ニヤリと笑い続けるのでした。人間の奥底に潜む、狂暴な虚栄 心、支配欲、狂気というダークな側面を濃縮してドロドロと吐き出させてみせ たこの作品、迫力がすごいです。
真夜中に独りで見るにはよいB級映画でした
ブラジル映画。セリフが少なく、淡々と物語が進行し、淡々と終わるという淡 々系作品。セリフが少ないので単純なストーリーも、よくみていないとわから なくなる。また、睡魔にも気をつけねばならない。私はビデオで見て途中2度 も眠ってしまった。独特の雰囲気が良い。
静かすぎる映画でしたね、っていうかつまらない映画だったんじゃないか
私の好きな小説家の一人、スティーブン・キング原作。キング原作の映画化作 品の中では、最も良く出来たホラーではないだろうか?いじめられっこの内気 な少女キャリーは、ある日自分に恐ろしい超能力が宿っていることに気づく。 エスカレートしたいじめに彼女の怒りが頂点に達したとき、戦慄の復習劇が始 まる。のですが、私は、何だか見ていて、いじめている方の残酷さが恐くなっ てしまいました。しかし、恐い映画です。心臓に自信のない方はやめたほうが いいかも。
スティーブン・キングはパターンが見えて、最近読まなくなってしまった。彼の原作の映画では「シャイニング」が名作でしょう
主演ロバート・デニーロ、ライザ・ミネリ。ジャズマンを主人公にした映画に は他にも「モ・ベター・ブルース」「バード」「ラウンド・ミッドナイト」な ど数多くの名作がありますが、これもそれらに並ぶ傑作です。160分に及ぶ大 作でありながら、ジャズの演奏や舞台を効果的に織り込み、感動のラストシーンまで飽きさせずに連れていってくれます。内容は、大人のラブストーリーです。
当時ジャズにはまっていたんです。「大人のラブストーリー」って表現は、当時何を思って書いていたんだろう。
ライザ・ミネリの主演作。彼女は歌も踊りもプロということで、この手のミュ ージカル映画ではさすがの演技をみせてくれます。男と女が、出逢い、恋し、 別れていく。単純な話ではありますが、単純ではないのです。
今ならもう少しまともなコメントも書けるけど書かない(笑)
平凡な結婚生活に疲れ、離婚を考えている普通の中年女性ペギー・スー。彼女 は出かけていった高校の同窓会の席で気を失い、25年前の高校時代に逆戻りす る。もう一度人生をやり直せたなら。あの時違う選択をしていたなら。という 誰もが考える人生の「もし」がテーマです。60年代アメリカの若者と文化、 音楽にファッションを見事に再現した舞台の中で2度目の人生を生きるペギ ー・スー。恋愛や友情、家族からの独立、セックス、野望など若い世代の直面 する問題に彼女は、大人の視点で2度目の選択をしていきます。それが、若者 の一途さや無知無経験ゆえの純粋さと対比されていきます。監督コッポラは、 若さゆえの愚かさを暖かい目でみているようで、むしろ大人の冷めた考え方に 対して「人生を楽しむって何でしょう?」という問いを発しているように思え ます。映画にタイムスリップものは数多くあっても、懐古趣味や、舞台設定の 奇抜さをみせるだけのものが大半の中で、たんなる古き良きアメリカ賛歌に終 わらせず、時代の移り変わりと、その流れの中でも変わらない普遍的なものと を対照的に浮き上がらせてみたのはコッポラの巨匠たる所以ではないでしょう か。結局、人生に仮定法はなく、生きるとは「If」ではなく「When」の 問題なのだよ、と監督はいいたいように思えます。また、人生の諸場面の選択 の必然性(運命とも言う)という彼の人生観が根底に感じられます。これは後 に彼の代表作となる「ゴッドファーザー」の死生感、運命の悲劇性にも重なるように思います。
何を言いたいのか分からない文章を書いていますね。でも、言いたいことは分かる気がするし、今もそう思うなあ
たった一晩の話で、登場人物もほとんど3人というシンプルな設定ですが、緻 密な演出(原作は演劇であったというのもうなずけます)と存在感ある登場人 物によって緊張感ある上質のサスペンスになっています。毎日単調な仕事に飽 き飽きしていた冴えない田舎町の駅長と、一緒に夜明けを待つことになった美 しい女性、そこに襲いかかる謎の男のサスペンス仕立てのラブストーリー。こ れは楽しめます。
緊張感のあるドラマだったなあと記憶しています
終始ジャズのスタンダードナンバーのオンパレードという感じの映画ですが、 曲がそれぞれの場面の為に書かれたのではないかと思われるほどはまっており、 ジャズファンには堪えられない作品です。主役は大御所ベッド・ミドラー。歌 唱力には圧倒されます。「PS I Love You」「Come Rain or Come Shine」などを唄うシーンは映画というよりライブを観て いる感じです。内容は二人のジャズ歌手の、それは長い長い(50年以上を描 いています)ラブストーリー。
これはいい映画でした。ベッドミドラー、ライザミネリに駄作は少ない
平凡な田舎の家庭の主婦が、戦時中夫の出征中に、生活費捻出の為、バンドで ピアノを弾いたのがきっかけで、バンドとともに旅行をはじめ、やがてバンド の男と恋に落ちてしまうという、不倫のお話です。「君と一緒にラブソングは 唄えない」という不倫相手のセリフなんかがカッコいいですね。ジャズが好き な人は必見です。
妻子もある今からすると寝取られる夫を想像してしまい、怖い映画だな(笑)
現代フランス文学の代表女流作家マルグリットデュラスの15歳の時の愛人と の性関係を綴った自伝が、ジャンジャック・アノー監督(「薔薇の名前」の監 督)の手で映画化されました。映画としては水準に達していますが、この大物 二人の組み合わせに期待したほどではないというのが本音でしょうか。作家の 愛人関係を描いた官能的な映画としては「ヘンリーアンドジェーン」(北回帰 線のヘンリーミラー)、「カミーユ・クローデル」(ロダンの愛人)などの方 が優れているように思います。そもそも主演のジェーン・マーチがいまいちで す。仏領インドシナの風景は美しいですが...。
車内で手が触れ合うシーンよかったな。今もドキドキするかな
気は優しくて、頭脳明晰、剣の腕も超一流。でも、鼻が滑稽なほど大きいため に、女性とつきあえない、悲しい男のラブストーリー。文句無しになけます。 映像は重厚で豪華キャスト。原作は有名な演劇ですね。昔の演劇の資料に「白野弁十郎」と訳されていて笑えましたが、古典的名作です。これはみないと損ですよ。
その後2回観たかな。
・「ローラ」★★
ジャック・ドゥミ監督が「シェルブールの雨傘」(大傑作!)の前に撮った白黒映画。初恋の去っていった男を、ただひたすら待ち続ける踊り子のお話。実 はこの映画微妙に、「雨傘」と設定がつながっていまして、「雨傘」の予備知 識があれば、さらに面白いかもしれません。しかし、なんで昔の映画はこう単 純なストーリーで人を感動させてしまうのでしょうか?
この映画どこで観たんだろう???大学の図書館だっただろうか。ネットにも情報がみつからず。
・「サウス・キャロライナ」★★
バーバラ・ストライザンド主演・監督。家族の葛藤を描いた秀作で、暗く複雑 なテーマをうまく処理している。ニック・ノルティが主演し、苦悩する男を見 事に演じているのはいいのだけれど、セラピストでヒロインがバーバラという のが気に入らない。バーバラストライザンドはやはり監督に徹するべきです。
苦悩する夫となりつつある今みたら感想ちがうんでしょうね
アウシュビッツ収容所で、生きるために、将校たちの賭けボクサーとして戦う 男の物語。悲惨な状況の中でも強く生きぬいて、人間の尊厳を忘れない人々の 話は、実話なだけに一際心を打ちます。有名な役者は出てきませんが、とても よい作品です。
今思うとたいしたことないかも
黒沢明監督作品。この作品を見ればなぜ「世界のクロサワ」なのかが納得でき るでしょう。代表作「乱」は、日本人が見ると、外国人向けに戦国時代があま りに類型化されすぎていて、違和感があるのですが、こちらは、日本人の為の 日本映画なので、すんなりと入って行けるでしょう。この映画はもう泣けます。 すごく泣けます。冴えない役所の土木課の課長のおじさんが、自分がガンであ と半年の命であることを知ります。おじさんは、そして人生の最後にひとつだ け、何かを残して人生を終えることを決意します。その何かとは...。「生 きる」ことの意味を真正面から描きながら、少しも説教臭さを感じさせず、見 るものを泣かせ、憤らせ、考えさせる、という素晴らしい映画です。日本映画 の頂点と私は思います。
これは未だに最高の映画のひとつと思います。
カルト系映画の巨匠ピーター・グリーナウェイ監督作品。彼の作品はすべて芸 術の香りと死のイメージが基調となる重苦しい映像なのですが、同時に、非常 に美しい絵を撮ることにも定評があります。この映画は、腐敗した食べ物や残 酷な殺人が、それはそれはとても美しく描かれております。見過ごしがちです が部屋ごとに衣装が変わっていることにも注目。他にも「ZOO」「建築家の 娘」「英国式庭園殺人事件」そして「テンペスト」と、グリーナウェイ作品は すべて同じ、重厚で煌びやかな死がテーマのようです。
グリーナウェイに当時はまっていたんです。今はもう少し分かりやすいものが好き
この映画はメジャーですね。素晴らしい映画です。近年まれにみる名作です。 きっと古典になるでしょうね。監督は若干29歳で、この映画を撮りました。 天才ですね。2時間版と3時間完全版がありますが、2時間版がお薦めです。 この映画はまあとにかく見て下さいということで...。単館公開が口コミで 噂が広がり、全国ロードショーになっただけのことはあります。やはりなんと 言ってもラストでしょうか。人生について考えたいあなたに。
その後5回くらい観ました。いいですねえ。
映画史に残る名作の一つですので見た方も多いでしょう。18歳のカトリー ヌ・ドヌーブが主演しております。今はもう大御所である彼女もまだこの頃は 駆け出しでした。ミュージカル映画でしかもフランス語なので、はじめ戸惑う かもしれませんが、とにかく、よくできた映画です。私は「サウンド・オブ・ ミュージック」などよりもこの作品が好きです。非常に洗練されたラブストー リーです。ラストは悲しいような、かっこいいような...。
おしゃれ
2003年12月29日
私の好きな映画たち(1)
映画大好き。
自信を持ってお薦めできる10作+5作。比較的最近のもの。古典的感動名作は明日の第2弾で。
観ていただきたいので、ネタバレ一切なしの短評。解説はアマゾンのサイトへ飛んで読んでください。電気を消して没入して観て、良かったら、コメント書き込んでください。
■お薦めの10作
ウッドストック、フラワームーブメント、60年代フォークロックの好きなあなたに限定で、マジで最高評価。観ないと損。この時代に生きたかった。サントラCDも選曲秀逸。
・プロフェシー
宇宙における人間の存在を哲学したいあなたに。雑誌「ムー」を愛読するなら特にお薦め。
不思議な話を見たいあなたに。四国の暗く深い森と官能的な天海祐希萌え。日本の神話、伝承マニアにはたまりません。
パニックと極限下の人間ドラマが見たいあなたに。実話ベース。原子力潜水艦を舞台に「レッドオクトーバー」を超えている。
宇宙舞台のサイエンスフィクションが観たいあなたに。
シェークスピアの「ロミオとジュリエット」を現代風設定でBGMはハードロック。レオナルド・ディカプリオがまともに名演。
いつか来た道を想いだしたい30代のあなたに。少女の静かな成長を淡々と描く。ジブリ。ジブリもいろいろあるけれど、「おもひでぽろぽろ」が好きならこれもいい。ほんのり暖かい。
怖いものみたさを愛するあなたに。ホラー。黒木瞳主演。母性が切な怖い。
天才を生きるとはこういうことなのか、と知りたいあなたに。以前の記事で紹介しました。
■次点的番外編:クセはあるけど好きならお薦め。
・レッドプラネット
火星探査に参加したいあなたに。同じ舞台設定のSF「ストランデッド」と甲乙つけがたい。こちらの方がメジャーで分かりやすい。
現代の戦争を生々しく体験したいあなたに。1993年10月3日の米軍によるソマリア侵攻の失敗を描いた戦争超大作。実話。
エンゼルハートが好きなホラーファンならば強くお薦め。
永遠に理解できない「少女」的なるものを愛するあなたに。ソフィアコッポラ初監督。サントラ買いました。
淡々と感動したいあなたに。近代中国の歴史の波に生きた女性の壮大な物語。原作はベストセラー。
参考URL:
・映画生活
友人が運営している映画評価サイトで使いやすい。
http://www.eigaseikatu.com/
・映画瓦版
http://www.eiga-kawaraban.com/
レビューが適切、評価に一貫性。著者の好みとはまれば最高のガイド。
・CinemaScape-映画批評空間-
http://cinema.intercritique.com/
明日は古典的お薦め映画中心に紹介の予定。
2003年12月28日
年末年始手抜き企画のお知らせ
年末年始手抜き企画のお知らせ
夢あるのセミナーで日記を毎日続けると宣言したので毎日更新予定です。
年末年始は1月4日までは、いつもの情報技術の話からおもいっきりはずれます。いくら好きとは言え、休み中にこの同じネタを続けると、私もみなさんも疲れるだろうなあというのが理由です(ピュア)。
映画や音楽、ゲームや漫画の話をしたいと思います。情報技術系を期待する方は、1月5日以降にご訪問ください。
この時期は私にも家族サービスもありますので、基本的に書き溜めた原稿で更新予定ですが、コメント欄のチェックは怠りません。というか、コメントへのリプライは普段よりも多くできると楽しみにしています。どうか感想やご意見をお気軽にカキコしてください。
【年末年始の更新予定】
12月29日 私の好きな映画たち(1)
12月30日 私の好きな映画たち(2)
12月31日 私の好きな漫画家たち
1月1日 年始のご挨拶
1月2日 私の好きなゲームたち
1月3日 私の好きな音楽たち
1月4日 この年末年始で楽しんだもの報告
1月5日よりブログ、会社(データセクション)ともに通常営業へ戻ります。
年初、最初の仕事は1月5日の雑誌社WebDesigning編集部訪問です。取材を受けるのですが、大変興味があるので、逆取材してブログネタにしちゃおうと企んでいますので、編集者さん、読まれてたらよろしくお願いします。
・WebDesigning
Webデザイナーでなくても楽しめるITネタも満載の雑誌だったんですね。これまでデザイナー向けと思って読んでなかったけれども、最新号を頂いて驚き。
2003年12月27日
ナレッジサイエンス―知を再編する64のキーワード
知識科学関連の書評の本。
■日本人の平均読書スピード
どの本を読むかを決めるのは難しい。
日本人の読書の平均速度は、各種調査を調べると、1分に平均600字〜800字程度と言われる。本はデザインによって1ページ当たりの文字量は異なるが、私が普段読んでいる本の平均値を大雑把に見積もったところ、1ページ当たり640字という数字が出た。250ページあるとしよう。
すると一冊当たりの文字量は、
640文字 × 250ページ = 16万文字
である。
読書の平均速度で割ると、1冊読み終わるのに3.3時間〜4.3時間が必要になる。この数字は私の感覚では短すぎるような気がする。多くの場合、何度かに分けて読む際の再開リードタイムや、調べたり考えたりする時間も必要だろう。
だいたいそれらの時間を1.5倍として考えよう。1冊読むのに5,6時間というのが平均の目安になるだろうか。
■個人差の計測と平均読書量、所要時間
読書スピードには無論個人差が大きい。以前紹介した速読メソッドの本では、1ページ1秒などという信じがたい数字が達人の速度として挙げられている。実際に自分のスピードを計算したい場合は次のサービスが参考になる。小説の見開き2ページが表示されるので、読んだらクリックすると、自分の読書スピードと評価が表示される。
・読書速度測定
http://www.zynas.co.jp/genius/sokudoku/sokutei.html
私のスピードは1000字/1分程度で平均を少し上回ることができたが、司法書士試験合格者などは2000字程度をこなすらしい。心の中で声を出して読むことを内読と呼ぶらしいが、これをすると速度が落ちるらしい。私は内読のこだわる派なので、これくらいが限界かもしれない。
日本人の平均読書量は、政府の国語に関する世論調査によると、1から10冊である。
・ 国語力低下とその背景 〜文化庁「国語に関する世論調査」結果を中心に〜
http://www.keinet.ne.jp/keinet/doc/keinet/jyohoshi/gl/toku0309/prt1_3.html解説ページ。「1か月に読む本は、「1冊〜10冊」が最も多く過半数を占めている(58.1%
)。だが、その一方で「まったく読まない」人も37.6%にのぼっている」
1から10冊では参考にならないので、こんな数字の方が気になった。
・雑誌プレジデント 月平均読書量4冊
http://www.president.co.jp/pre/special/editor/150.html
雑誌プレジデントは恐らく経営者、マネージャ層によく読まれている雑誌である。このアンケート調査によると月4冊だそうだ。4冊では64万。純粋に読むと640分だが、上述の根拠により、1.5倍にして必要時間は960分。1日当たりにすると31分の読書でノルマを達成することになる。
毎日読書をする時間を効率的に使うには、
1 上記の読書スピードを高速化する
2 読書時間を増やす
が考えられるが、普通はどちらも難しいもの。
結局、効率を考えると、適切なときに適切な本を読むこと。ハズレを引かないことが一番、良い効果を挙げるのではないだろうか。
■知識科学のキーワードを俯瞰し参考文献を探す最適の書
読書速度の話が多くなってしまったが、この本は情報科学分野で著名な国立大学の北陸先端科学技術大学の先生方が、知識科学におけるキーワードごとに名著を選んで解説したもの。各キーワードは2〜4ページ程度に上手に要約されている。キーワード解説集としても十分に勉強になる。私もこの本で見つけた本を何冊か、この書評で紹介してきた。
紹介されている本はハズレが少ない。2002年12月初版のため、最新の本は少なめだが、古典的な本ばかりというわけでは決してない。新しくて充実した名著をバランスよく選び出している。書評は、そのテーマの面白さ、その本に何を期待して読むべきか、適切に書かれている例が多いので、読書方針を決める際の羅針盤として、一級品の本である。
評価:★★★☆☆
参考URL:
・俺と100冊の成功本 blog.自己啓発.com
http://blog.zikokeihatu.com/
「このサイトは、いわゆる成功本を100冊読むことで、成功できるかを検証するページです。」。アツイ。
2003年12月26日
分かる使える思考法事典―アイディアを生み出し、形にする50の技法
・分かる使える思考法事典―アイディアを生み出し、形にする50の技法
■煮詰まった会議のブレークスルー
新規事業開発プロジェクトの会議にコンサルタントとして参加。全員でブレインストーミングをした。立ち上げ予定のサービスについて、潜在的な需要、用途をリストアップしていく。その中から有望なモデルを探すのが目的。
サービスの特性をX、Yの軸で4象限に分けたマップを作って、アイデアを配置していく。知識経験の豊富なメンバーばかりだったので、最初はアイデアが湧き出るように提案された。このまま続ければ、最後にいい成果を出せるかもしれないという期待感は高まる。途中までは調子よく、ホワイトボードが埋まっていった。
しかし、半分くらいまで進んだ段階で、これでは革命的なビッグアイデアはでないかもしれないと漠然と感じていた。一通り全員が考えをすべて喋って、ニーズのマップも9割完成したときに、やはり、全員がそう思った。どのアイデアも悪くないのだが、飛びぬけたものがない。プロジェクトリーダーも「パラダイムを変えないとだめですね。次回やりなおしましょう」と締めくくった。
こういうブレインストーミングはよくある。「ニーズのマップを埋めていく方式」では、革命的なアイデアは生まれない事が多いなあと思った。これに似た「すべての組み合わせを考える方式」も無難な結果しか生めないことが多いと感じる。発想法を次々に取り替えて議論してみるとうまくいくことがある。
それも発想法を取り替えた最初の「一絞り」にキラリと光るものが見えたりするなあと思う。(みなさんの経験はどうでしょうか?)
この本にもこんな一文があって大きく頷いた。
「薬でも同じですが、思考法も、最初はめざましい結果が出ることがあります。そのうちにたいした結果が出なくなります」
この本は発想法、思考法を50種類も紹介している。KJ法やマトリクス法、ブレインストーミング法等、比較的知名度の高いものから、シネクティクス法、NM法、MBS法、カードBS法、ゴードン法、フィリップス66法など知る人ぞ知る発想法が次々に紹介されていく。
50の技法は、
・学術研究で用いられてきた思考法
・ビジネス分野で定番となっている思考法
・1人に適した思考法
・グループに適した発想法
の4つに整理されている。事典だから、通読するよりも必要な箇所を煮詰まったときに読むと、使える発想がみつかりそうだ。会議室に置くのも効果があるかもしれない、発想法のカタログ書。
■百式田口氏から教えてもらった思考法
今年は年末の忘年会議まで百式管理人田口氏とよく仕事をさせてもらった。彼はコーチングや会議のファシリテーター技術を学んでいるので、発想法、思考法をやたらと知っている。個人の性格との相性もあるけれど、私と田口さんの会議で、毎回うまくいくやり方が最近分かってきた。
彼の提案によるもので、最初はそんなことできるわけないと思った2分間発想法。何か問題解決やアイデア出しをしたいときに、「それじゃあ、今から2分で必要なことをリストアップしてください、はい、スタート」と彼にいきなり宣言される。準備は一切出来ない。私は若干彼の能力にライバル意識を持っているので、それを超えようと必死に考える。2分後に両者が発表し、重複チェック、グループ化、ワークフロー順に並べ替える。これで大抵うまくいく。すごくうまくいくこともある。失敗しても2分しか使わない。
2分間の意味を私なりに考えてみた。次の5つの点が良いのではないかと思う。
1 1分は短すぎる、3分、5分はまとまった単位である、2分には緊迫感が感じられる
2 時間があると思うと完璧主義になったり全体を構成しようとして、アイデアがでない。2分しかないと思うととりあえず思いつくことを出してみる。
3 急いでも、最初に思いついたことというのは大枠正しいことが多い。
4 当意即妙の力を試されている感じがして創造性を刺激される
5 2分では一人で全体を決められないが故に、みんなの意見を組み合わせた内容にまとまるので、コミットメント感が生まれ、その後のプロセスに良い影響が出る。
その他、プロジェクトの成功ケースでは、
・「とにかくスケジュールから決めてしまいましょう」
・「プロジェクト完了まで毎朝、用がなくても電話で話しましょう」
・「じゃあ、それとそれ、お互い30分で今やっちゃいましょう、スタート!」
というセンテンスが使われることが今年は多かった。皆さんのベストプラクティスのためのセンテンス、あったら教えてください。
参考URL:
・コラボレ
http://clbr.jp/
たまごっちを生み出した発想法がWebで体験できる。
・思考法/発想法 N2
http://www.sge.co.jp/n2web/index.html
六角形の構造にアイデアを書き出していく発想法。ソフトウェア体験版もある。
・過去関連記事 デスクトップ発想支援ツールリンク集
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000139.html
2003年12月25日
言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか
■言語の獲得と脳
もうすぐ5ヶ月になる息子は、国会の証人喚問風に「橋本○○君」と名前を棒読み口調で呼びかけると微笑む。普通にあやしても中々笑わないのに不思議。彼が言葉を話すようになるのは子育ての本によると生後12ヶ月くらい、らしいので、まだ言葉の内容を理解できているわけではないはずである。
自分が日本語をどう覚えたかの記憶はない。英語のように文法から憶えた記憶ももちろんない。ウチのこどもも脳の成長に伴い近日のどこかで、言語を獲得していくはずで、毎日小さな変化の観察に興味は尽きない。
この本は、人間の脳が言語をどのように獲得し、使っているかの先端的な情報を一般向けに分かりやすく教えてくれる入門書。計測装置の進歩により、人が物事を考えたり、話したりするとき、脳のどの活性化する部位を計測することができるようになった。しかし、言語と脳の関係はまるで解明されていない。分かっていないからこそ、この分野は熱い議論が交わされている。
この本ではチョムスキーの生成文法論を中心に言語と脳の深いつながりが解明されていく。生成文法理論では、人間の脳には生まれつき、文法を処理する機構が備わっているとされる。言語は学習によって後天的に身につけるものとする、従来型の言語理論とは異なる。興味深い多数の実験結果の報告から、「普遍文法」の存在が裏づけられていく。
■生成文法論とコンピュータ応用
近年チョムスキーの生成文法論が人気があるのは、コンピュータの普及と関係があるのではないかと私は考えている。主語はS、動詞はV、目的語はOと、記号化する。例えば、日本語の構文は通常の文章(平叙文)ではSOVである。英語、中国語はSVOである。この本によると、ウェールズ語はVSO、マダガスカル語ではVOS。理論的に組み合わせは6パターンが考えられるが、OSVになる言語は発見されていないそうだ。
記号化された言語の構造モデルを、いろいろなルールで構造変換することで、言葉のバリエーションが生まれる。例外だらけの自然言語という考えと違って、コンピュータで扱いやすい理論であり。今日のコンピュータによる言語処理や意味解析の研究に大きな影響を与えていると言われる。
以前プレゼンテーションを見せてもらったソフトに三菱総研のKnowledgistがある。これは、英語文書の構文を解析しS、V、Oのモデルを抽出した後、「やりたいこと→実現方法」を発見できるという野心的なソフトである。
同社の解説では、
「
自然言語処理技術を長年研究してきた米国インベンションマシン社が、「科学技術に関する文書では、述語と目的語の組み合わせが「やりたいこと=問題」を、主語が「その実現方法(解決策)」を意味しており、技術分野のコンセプトはこの形式で表現できる。」ことを発見したことがベースになっています。」
とのことだ。こういったソフトウェアはチョムスキー的アプローチのビジネス応用と言えそうだ。
・Knowledgist
http://www.internetclub.ne.jp/IM/products/knowledgist.html
#チョムスキーは同時に政治的活動を派手に展開していることも人気の秘密なのかも。
■ブレインーマシンインタフェース
もうひとつの本書のテーマの脳科学。脳の信号を使って機械を操作するハードウェアも既に市場に出ている。
・CyberLink
http://www.brainfingers.com/
脳波、眼球運動、筋肉の動きなどを使ってコンピュータを制御するシステム
・脳内の電気信号によるコンピューター制御へ
http://slashdot.jp/articles/03/11/15/1128201.shtml?topic=70
脳の指示を機械へ伝えるBrain->Machineインタフェースは研究レベルのものが多数みつかるが、逆に機械から脳へ直接に情報を伝えるMachine->Brainインタフェースは少ない気がする。倫理的に問題が大きい。技術的にも脳科学の進歩が追いついていない。そういった課題が山積みだと思うけれど、大容量の記憶装置や、数値計算、辞書検索、翻訳などのモジュールを脳から直接利用できれば、随分、生活や人生は変わりそうだ。
いわゆるサイバネティクスの研究がそれに当ると、言えそうである。以前書いた記事にこんなのがあった。脳に機械が言語的な指示を与えて身体を動かす生物ロボット。
・ゴキブリは電脳ウナギの夢を見るか?
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20030523-01.htm
ここでも紹介したが、今年見たショッキングなページに、ゴキブリの脳に電極を取り付けて、行動をコントロールする実験の紹介がある。虫とは言え、倫理的にどうなのか議論の余地はありそうだが。
・Robo-Roach(人によってはショック画像あり。虫嫌いの人はクリック前に注意。私もあんまり見たくない(笑))
http://www.wireheading.com/roboroach/robo-roaches.html
---
余談であるが、URLの先に見たくないグロテスクな画像があることが想定される場合に、便利なコミュニティがある。この2ちゃんねるのスレッドにURLの確認依頼を出すと有志が実際に画像の内容を確認して報告してくれるのだ。Part496ということは過去に49万件以上の書き込みがあった大盛況のスレッドのようだ。
・勇気が無くて見られない画像解説スレPart496
http://ex.2ch.net/test/read.cgi/entrance/1072323640/---
■チョムスキー一辺倒だけれど
著者はチョムスキーの生成文法理論の信奉者で、言語学を語る際に少々態度の偏りがあるように思える。そのかわりに、本書は、分かりやすい一本の筋が通っていると言える。著者は、後で全面否定するものの、必ず一度は対立する意見も紹介している。一般書なので、並列で異なる意見を紹介し読者に判断を任せるより、私はこう考えているのだという専門家の強い語り口で、論を進める戦略は成功しているように感じた。
紹介される臨床例、実験例は特に興味深い。一週間置きに、片方の言語が失語症になるバイリンガル患者がいるだとか、一見読めそうだが無意味な文字列を見ると脳は無意識に反応してしまう、ジャヴァウォッキー文の事例などわくわくした。
評価:★★★☆☆
2003年12月24日
起業人 成功するには理由がある
漫画コラムニストの夏目房之助氏による、ITベンチャー創業者23人へのインタビュー集。発売直後に増刷決定だそうだが、なるほど今までの投資家視点のビットバレー起業家インタビュー集とは一線を画す。
■ヒトに焦点を当てた深い洞察
前書きにこうある。
「本書はIT起業家という、ある種の専門家を、誰でも理解できる「ヒト」の部分で扱っている。タイトルを「起業人」とした由縁である。ITにもビジネスにもまったくド素人、門外漢の私が、ただ「ヒトの面白さを見る技術」だけを武器に、ITベンチャーの現場の人々を取材した、いわば「起業人の人間学」なのである。
私は門外漢だが、ヒトの面白さを見つけ、ナゼそうなのか、どこがポイントなのかを見出すことについていえば、プロである。長年そういう仕事をしてきたし、インタビューによって、その人自身が知らない部分を引き出すことにも自信がある」
ITベンチャーへの取材であるにも関わらず、会員数やページビューがいくらだとか、技術のアルゴリズムがどうだという話はまったく触れられていない。いや、そもそも何のサービスを提供している会社なのかの会社説明も、あっさり各章末に数行で要約されるのみである。徹底的に「人」に焦点が当てられている。
■投資家が重要視する経営者の人柄
以前、私の会社の事業を、ヒアリングしにきた百戦錬磨のベンチャーキャピタリストに、私は逆に「投資する側は会社のどこを見ているんですか?」と聞いたことがある。「実は重視しているのは社長の人柄や性格なんだよね」という答えが返ってきた。ビジネスモデルや実績も大切だが、投資の経験則では、社長の人格の方が起業の繁栄の成否を分ける、最重要要素なのだという。
この本では、その「社長の人格」が、著者の鋭い人間観察眼によってむき出しにされてしまう。著者はインタビューに際して、綿密な資料分析も踏まえて、経営者の性格特徴を引き出すための質問を、慎重に選んでいる。雑談を装いながら、精神分析を仕掛けている。この質問者の戦略は、取材を受ける側にとっては怖い。
著者のインタビューは、まず育った環境や夢中になったものなど、経営者が話しやすいことを探る。軽口を繰り出しながら場を盛り上げる。話し言葉そのままを記録したりはしない。声の抑揚や表情、話し言葉の行間を、著者は呆れるほど丁寧に分析し、活き活きとした人物像を構築していく。
私は、この本で取り上げられた創業者たちの半数と面識がある。中には今一緒に会社を経営している人もいる。初対面のはずの著者が、2時間のインタビューセッションの中で、各経営者の人柄や考え方を的確にキャプチャーできていることに驚かされる。
■人物像を浮き彫りにする、練られた構成の妙
この本は構成も練られている。年代別の章立て、1ページ使った写真、経営者自ら埋めた履歴書は、インタビューを深く読む際の手がかりになる。これらの著者の仕掛けは成功していると言えそうだ。
1980年代生まれから1940年代生まれまで、年代順でインタビューが並ぶ。若い層はITとの出会い感は薄い。ITは子どもの頃から生活の中に既に存在していたからだ。逆に年配の経営者はITをキャリアのどこかで発見し、その社会的意味を深く考察していることが、窺える。時代が色濃く映る、「育ちの環境」に順応した人もいれば、反発した人もいる。
モノクロながら1ページ使った写真には多様な意味がある。経営者の眼差し、身体の表情、身につけているものから、生き方の一端が垣間見える。顔は微笑みながらも眼が笑っていない人も結構いるなあ。
履歴書はその内容よりは、経営者が限られたスペースをどう埋めたか、という視点で読むといい。ここぞとばかりにキャリアと事業実績を並べる人もいれば、あっさり学校の卒業年度と事業開始年度だけで済ます人もいる。年代別ということもあるのだが、女性経営者まで生年が書き込まれているのは珍しい。
■インター・ビューの仕事の参考として
この本は投資家や起業志望者はもちろんのこと、インタビューの仕事をする人にもお薦めである。私もよくライターの仕事をする人間だが、インタビュー記事の執筆と言うのは難しい。普通にやるとテープ起こしのまま、企業の広報資料みたいになってしまう。著者くらいの年代にならないと、この手の人間観察は難しいのかもしれないが、その視点と手法から学べることは多そうだ。インタビューは本来「Inter-View」であって双方向のものだ。一方的に聞くだけでは書き手の仕事をしたことにならないぞ、と、この本から私は教えてもらった気がする。
余談ながら、著者の夏目房之助氏は、作家夏目漱石の孫にあたる。日本を代表する文豪の子孫が今日、どんな視点で、どんな文章を書いているか、という興味で読んでも十分に面白い。
参考URL:
・いい電子
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757702353/daiya0b-22/
ゲーム業界ド素人の書いた突撃取材漫画として私は全冊読んでいる。笑える。
・過去の関連記事 その夢はいつやるんですか
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000383.html
注意:この本は出版社メディアセレクト社から献本を受けました。同社の代表者と私は関係があります(リンゴラボ代表者と同一人物)が、書評執筆に当っては、そのことを意識しないよう努めました。純粋に、読んで素直な評価としました。このブログの書評はまじめに書きたいという思いから一応付記致します。
この本で紹介される経営者のリストは以下の通り。
第1章 1980年代生まれの起業人
伊藤正裕(株式会社ヤッパ)
自分で勝手に情報を処理する自己完結系なんです
第2章 1970年代生まれの起業人
石田宏樹(フリービット株式会社)
目標や意義が納得できないとなにもできない
上田祐司(株式会社ガイアックス)
効率は愛――。これすごく大切なことだと思う
園田智也(うたごえ株式会社)
ゼロからできるという例を作りたかった
第3章 1960年代生まれの起業人
高須賀宣(サイボウズ株式会社)
重要なのは、速度、単純、魂
加治木紀子(株式会社オフィスノア)
面白いと思ってやっているうちに、後からつじつまが合う
堀主知ロバート(株式会社サイバード)
いちばん重要なのは、問題解決能力だ
原口豊(株式会社ベイテックシステムズ)
絶対、常に上昇してないといけない
關信彦(キュービットスターシステムズ株式会社)
コンピュータのネットワークで、みんなが自分を表現していく
宇野康秀(株式会社有線ブロードネットワークス)
本質的には商人と武士と両方できなきゃいけない
宋文洲(ソフトブレーン株式会社)
日本にばかりいられない。グローバルにやんないと、やられちゃうからね
安哲秀(アン研究所)
地道な方法は時間がかかるけど、最後には必ず勝ちます
舩川治郎(デジット株式会社)
最後には国連に代わる機構をつくるかもしれない
神原弥奈子(株式会社ニューズ・ツー・ユー)
スタッフが50人を超えて、待つことの大切さがわかった
竹内宏彰(株式会社コミックス・ウェーブ)
ノウハウはマンガ編集者から学んだ
市川啓一(株式会社レスキューナウ・ドット・ネット)
人のニーズに応えることが得意だったんです
南場 智子(株式会社ディー・エヌ・エー)
やっちゃった以上、成功するしかない
川上陽介(株式会社セルシス)
誰もやりたがらないことだから、やりたいんです
第4章 1950年代生まれの起業人
金丸恭文(フューチャーシステムコンサルティング株式会社)
勝つためには健全な臆病さがいる
杉山知之(デジタルハリウッド株式会社)
エンジニアの自覚は、自然に身についた感覚ですね
ティム・ブレイ(アンタークティカ・システムズ)
自分の才能がどこにあるかを探すことは、とても重要
第5章 1940年代生まれの起業人
三野明洋(株式会社イーライセンス)
10のうち8を失敗しても、成功した2を伸ばすべき
栗村信一郎(アリエルネットワーク株式会社)
若い人をサポートして生かしていく
2003年12月23日
最速で開発し最短で納めるプロジェクト・マネジメント
・最速で開発し最短で納めるプロジェクト・マネジメント―TOCの管理手法“クリティカル・チェーン”
私はベストセラービジネス小説「ザ・ゴール」シリーズのファンである。
著者の物理学博士エリヤフゴールドラットが考案したTOC(制約条件理論)が主題の名作。工場長である主人公は、閉鎖寸前の工場の業績を、TOC理論を使って生産プロセスを最適化することで、業界に革命を起こす。その過程で、TOCの考え方が、工場の経営だけでなく、あらゆるプロジェクトや日常生活までをも最適化できる汎用的な理論であることが分かっていく。
この本では、博士の小説では詳しく語られなかった理論的側面が解説されている。ザ・ゴールとあわせて読むと、特にITの開発プロジェクトにも目が向けられており、IT業界の開発マネージャに参考になる。
TOCは幾つもの理論から構成されているが、概要は次のようなもの。
■ボトルネック、中間在庫、手あまり
例えばこんな作業ラインがあるとして、括弧内にそれぞれの1日当たりの生産能力(処理できるユニット数)を示すとする。
第一工程(100)→第2工程(25)→第3工程(80)→スループット(成果)
ボトルネック:
この工程にいくら作業を投入しても、1日当たりの成果は25ユニットを超えることはできない。第2工程の作業者が病気で休んでしまったり、使う機械が壊れてしまうことがあるから、大抵は25以下である。第2工程が、TOCの重要な要素「制約条件(ボトルネック)」となっている。
溜まる中間在庫:
企業の生産性は、成果として1日何ユニット生産できるかだけでは測らない。上記のラインで1日100ユニットを投入すると、終業時には第1工程と第2工程の間に、75個の中間在庫が溜まることになる。日を追うごとにこの数字が増えていく。中間在庫は、企業にとってコストとして評価されてしまう。
手あまり:
さらに第3工程では、1日80の生産力があるのに、直前の工程からは最大25しか流れてこないものだから、55分の生産力が無駄になってしまう。第3工程の人たちはやることがなくて、ぶらぶらする結果、この作業ライン全体の人件費の効率を下げてしまう。
「工場の生産性はボトルネック工程の能力以上には絶対に向上しない」という博士の結論がある。TOCでは、ボトルネックを強化することをまず考える。
■ボトルネックの最適化
TOCの改善方法は、上の作業ラインを使って説明すると、次のような流れになる。
1 制約条件の発見
第2工程がボトルネックだということを発見する
2 制約条件の最大限の活用
第2工程が1日当たり25ユニットを必ず生産できるようにする
3 制約条件以外を制約条件にあわせる
第1工程の生産力を25を少し上回る程度に調整する
4 制約条件の強化
第2工程にスタッフや機材を増やす
5 変化のチェックと繰り返し
別の工程がボトルネックに変化していないか等チェックし1へ戻る
いくつか細かなルールがある。ボトルネックの前の工程は生産力を多めに配分し、少量の中間在庫をわざと残す。第1工程が事故で止まった場合でも第2工程以下が動き続けられるからである(保護能力)。また、手あまりの存在を容認し、全体にゆとりをもたせる(バッファー)。
■ドラムバッファーロープによるスケジュール作成
TOCではドラムバッファーロープというスケジュール管理手法がある。比ゆ的な表現として、ボトルネック工程が自分のペースに合わせて工場内に聞こえるように太鼓を叩く。太鼓のペースで他の工程は作業をする。各工程をロープで結びつけ、歩調を合わせるわけだが、わざとロープにたるみを持たせる。ボトルネック工程以外が遅れが起きても、たるみのおかげで、連鎖的に作業が中断することを防ぐ。
TOCは作業は確率的に見て必ず遅れるものという前提で組み立てられている。各工程はサイコロを振っているようなものとみなす。出た目が処理して次の工程へ渡すユニット数であるとする。サイコロは平均3.5が出るようになっているが、途中プロセスの誰かが3.5を下回る数を出せば、最終工程の出す成果は3.5を下回ってしまう計算になる(遅れの伝播)。
例えば第1工程と第2工程が2を出した場合、第3工程が6を出しても、処理すべきユニットは2しかないので、2以上の成果は出ない。逆に第1工程と第2工程が6を出したとしても、第3工程の確率平均は3.5でしかないので、最終成果も3.5程度になる可能性が高い。業務フローの遅れは伝播するが、早く仕上げた結果は伝播しないのだ。人間が行う作業である以上は、常に完璧を期待できない。遅れは必然となる。
■導入に際しての気持ちが分かる第4章
この本の面白さは第4章「夢をかたちに変えるスケジュール 開発部門のプロジェクト管理に挑む 物語編」にあると感じた。この章では、理論解説ではなく、各業界に散らばった同期が集まって、TOCの考え方をそれぞれの視点で議論する対話になっている。
TOCはマネジメントの考え方だから、管理する方と管理される方の意識の違いが導入時の最大の課題になる気がする。人は誰しも、自分の仕事を最適化したいけれど、上から最適化されたくはないと思う。この章では、クリエイターやデザイナーなどの非マネジメントサイドの意見がある。
3人以上のチームでフロー作業を行う場合にTOCは価値がある考え方と思った。他にも問題解決法の「思考プロセス」や、プロジェクトの安全余裕バッファーの量と配置の理論、全作業の中で最も重要なラインを強化する「クリティカルパス」などの理論も解説されている。
私も来年こそは遅れゼロを目指したいのだけれど、それって去年もそう言ってたっけ...。
2003年12月22日
連想の技術、プライミング効果、履歴からお薦めWebページ
■連想パターンとプライミング効果
昨日、紹介したESP Gameは、ネットコミュニティを使って連想語をデータベース化する試みだった。インターネット広告では、検索キーワードに応じた連動広告が注目されている。集めた連想語データはビジネスにすぐにも使えそうだ。ESP Gameで集まる内容が気になる。
日本人の大学生1000人に、ある言葉(刺激語)を提示したとき、どんな言葉(反応語)を最初に連想するかをデータ収集した実験がある(「連想基準表」東京大学出版会、梅本、1969)。ここにサンプルを引用してみる。
・連想基準表
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=987022508X
米国人の大学生を対象として同種の調査もある(Postman、Keppel、1970)。
n=1008
ある言葉を見たり聞いたりすると、次の言葉の連想内容に影響が及ぶことをプライミング効果と呼ぶ。賛成と反対、予防と注射、空腹と食物のように、刺激語同士が連想関係にある場合に発生する。
国と言語が異なっても、連想するパターンが一位は同一であることが興味深い。主な連想のパターンには以下のようなタイプが存在している。
また反応速度をパターン別に調べた結果は以下のような表になる。
上記の例は「人間の言語情報処理 言語理解の認知科学、1994、安陪-桃内-金子-李)より引用。
反意語関係のプライミング効果が著しく高い。人は連想を行わせると反対語があるときには真っ先に思い浮かべてしまうということだ。だから、広告表現で、テーマパークのとしまえんが「史上最悪の遊園地」という新聞広告を出したことがあったが、これなどは、反意語「史上最高」を連想させてしまうプライミング効果を狙ったものと考えられる。
これは音声上でも働く効果だ。先日書評を書いた広告の本にも、足すと14になる計算を繰り返させた後に「なにか野菜の名前を挙げてください」と聞くと、米国人の多くが「にんじん」と答えるという。14→14金(Gold)→14カラット(carat)→にんじん(carrot)という発音上の連想なのだそうだ。
インターネットの利用にこういったプライミング効果を活用できないだろうか。
■Googleキーワードで調べる検索エンジンユーザの連想語
Googleはキーワード広告主のために、あるキーワードと同時にどんなキーワードが一緒に検索されているか、調べるツールを提供している。
・Google AdWords キーワードアドバイス
https://adwords.google.co.jp/select/main
これを使うとこんなことが分かる。
・クリスマスの同時検索語
ソング、素材、ディナー、素材、イルミネーション、壁紙、リース、壁紙、プレゼント、、イラスト、イベント、料理、ヒッキーの、ナイトメアビフォア、画像、の約束、ホワイト、島
・「忘年会」の同時検索語
ゲーム、挨拶、幹事、予約、案内、プラン、のお知らせ、会場、大阪、余興、案内状、新宿、芸、司会、ホテル
・「長い」の同時検索語
髪、世界一、橋、世界一、名前、亜麻色の、亜麻色の髪、夜、一番 日、単語、ファイル名、髪を、英単語、日曜日、脚
・「医者」の類似キーワード
病院、クリニック、医院、医師、歯医者、名医、倫子、国立、歯科、産婦人科、病院、検索、看護、学会、介護、整形外科、内科、整体、皮膚科、眼科、小児科
どうやらネット上の検索では、反意語関係以外が検索されているようだ。どの連想関係パターンが、検索エンジン利用において、最も多いのか調べる研究があったら更に面白い。(もし存在していたら教えてください)
Webサイトの運営者はこれらのデータから、ユーザの傾向を調べ、検索順位が上がるように自分のページ内容を変更することができる。また、客を呼び込むためのキーワード広告を購入することができる。
■ネットサーフィンの履歴から最適な情報を推薦する
ページに書かれている言葉から連想できる、別のページをユーザにお薦めする技術は、たくさん研究されてきた(私の会社の開発部門も含む)。今、この分野で必要なのは、ユーザが今何を探しているかという文脈を、正しく推測して、連想されるものを機械提案する技術だろう。
ブラウザの過去履歴と、そして今何を見ているかは、ユーザの情報探索の文脈を知る上で重要な情報になりそうだ。ユーザは目的を持って情報を探すが、直近に見るページの影響(プライミング効果)を受けている。クリスマスのプレゼントを探していたはずが、関連ページを読んでいるうちに、いつの間にかサンタの由来を調べていたりする。あるいは、もっと良い方法が直前のページで分かり、別の方法を探したりする。今○○を探していますと明確に自分も分からないことさえある。
今、そして最近見たページは、最新の関心に関係を取り出す文脈データとして向いている。Webの閲覧履歴から最適な情報を提案する技術では、こんな研究がある。
・Using Document Access Sequences to Recommend Customized Information
(Web履歴から最適情報を推薦する)
http://www.cs.indiana.edu/~leake/papers/p-01-09.pdf
ここでは、WordSieveという原理を使ってユーザの関心キーワードを抽出する。仕組みはこの表の通りで、3つのフィルターから構成される。1番目のフィルターはユーザの見ているWebページに最も頻度が多く出てきた単語をみつける。2番目のフィルターは過去に見たページ群で最も多く出てきた単語をみつける。3番目のフィルターは過去にあまり出てこなかった単語をみつける。
3つの種類の単語のパターンを数学的に計算することで、ユーザが今最も欲しがっているキーワードを含むWebページをユーザに推薦する。研究者たちは、Calvinという専用ブラウザーを試作している。ユーザが使えば使うほど賢い提案ができるブラウザーだ。
今見ているページと閲覧履歴から、活性化している連想キーワードを色分けして表示。
これは巨大なキーワードデータベースを持たなくても、効果的な提案ができる優れたやり方であると論文は結論している。連想語とプライミング効果の研究によって、見たいページを次々に見られる未来のブラウザーが誕生しようとしている。
・Real Time User Context Modeling for Information Retrieval Agents
http://www.cs.indiana.edu/~leake/papers/p-01-09.pdf
同じ研究者によるキーワード抽出部の研究。
・WordSieve: Learning task differentiating keywords automatically
http://research.microsoft.com/~sdumais/SIGIR2003/ExtendedAbstracts/BAUER_bauer.pdf
キーワード抽出手法には幾つかある。WordSieveアルゴリズムの優位性を主張するマイクロソフトリサーチの論文。TD/IDF法などとの対比。
・語の活性度に基づくキーワード抽出法(人工知能学会論文誌17巻4号F、2002)
http://www.miv.t.u-tokyo.ac.jp/papers/matumuraJSAI-PAI.pdf
日本の研究。著者の主張をキーワードとして取り出すKeyGraphの取り組み。KeyGraphについては後日記事に書きたい。
2003年12月21日
スケベ心で巨富を築く技術?テストステロンコンピューティング
先日こんな本を読んだ。巨富である。巨富。
評価:★★☆☆☆
■英雄は色を好むのか
なぜこのベタな本を読んだかの経緯は、過去の記事から察して頂くとして、内容は結構、真面目に楽しめた。ビジネスと人生で成功し巨富を築くための13の条件が列挙されているが、(もちろん)、気になったのは、その一要素に「性衝動」があり、一章を割り振られていたことだ。
「第十章 人類の本能を創造的なものに転換する」によると、まず、過去2千年の歴史や自伝を調べた結果、以下の事実が判明したという。
1 偉大な事業を成し遂げた人は、高度に発達した性本能の持ち主であり、性衝動の転換方法を体得した人である。
2 巨富を蓄積した人、文学、芸術、産業、技術、その他専門分野において顕著な業績を残した人は、いずれも異性の影響力によって成し得たものである。
また、あるインストラクターは3万人のセールスパースン教育を担当してきたが、性本能に関心の高い人ほど有能であるという事実を発見した、という。
恐らくは男性ホルモンのテストステロンの分泌量と、社会的な行動の活発さには相関があるであろう。活動的な人が現世的な意味で確率的に成功しやすいこと、異性の注目を浴びやすいことの関係も推測はできる。
米国の心理学者James M. Dabbs博士は、長年の調査から、成功する経営者や政治家のテストステロン分泌量が高いことをWebサイトでも報告している。
・James M. Dabbs博士のサイト
http://www.gsu.edu/~psyjmd/
このテストステロンパワーはオンラインでもアダルトサイトに集約されているはずだ。残念ながら、膨大な量の、巨富を築けるはずのエネルギーが無駄に消費されてしまっていることになる。だが、この性衝動のエネルギーをビジネスや技術に活用するアイデアを考えた若者がいる。
それは、まったく無関係のように見えるゲームの話から始まる。
■超能力ゲームで遊ぶと検索エンジンの精度が高まる
・ESP Game
http://www.espgame.org/
このサイトは、ESPつまり超能力を試すオンラインゲームサイトである。ゲームを開始すると、ランダムにWeb上の画像を提示される。その画像から連想される言葉を参加者は入力する。
このゲームには、同時にログインしている対戦相手がいる。相手と同じ連想語を入力できればゲームで得点でき、次の画像提示へ進める。制約がひとつある。タブーワードとして表示される言葉は入力できないのだ。
例えば何もない白い部屋の画像が提示されているとき、タブーワードは「White」「Room」であったりする。プレイヤーは他の言葉で連想でき、且つ対戦相手も思い浮かべそうな言葉を考えないといけない。例えば「Clean(クリーン)」「vacant(空き室)」「Clapton(ロックアーティストEric ClaptonにIn the white roomという有名な楽曲がある)」などが良いだろう。相手と一致すれば次の画像が提示され、時間内にどのくらい当てられるかを競う。
さて、こうしたゲームを遊ばせた主催者は、膨大な画像とその連想語データベースを手にすることができる。画像を見たときに、他人が思い浮かべそうな言葉ばかりのリストは、連想語として非常に質の高いものであるはずだ。このデータは、精度の高い画像検索サービスのデータとして利用していくことができる。ユーザが検索する際に、「White Room」でも「Clean」、「Vacant」、「Clapton」と入力しても白い部屋の画像を検索できる。
ユーザが超能力ゲームを面白がって遊ぶ。結果として、どこかの画像検索エンジンの精度が高まっているのだ。風が吹くと桶屋が儲かる原理に似ている。
■ポルノサイトに集まるテストステロン・パワーでスーパーコンピュータに
このアイデアを考えたのは、カーネギーメロン大学の24歳の若い研究者である。彼は次のWebページで、インタビューに答えている。
・CMU student taps brain's game skills
http://www.post-gazette.com/pg/03278/228349.stm
ここで彼は、もし1日平均5000人がESPゲームで遊ぶなら、Google画像検索で検索される4億2500万の画像に1つずつのキーワードをつけることができる。半年あれば画像ひとつに6つのキーワードをつけることも可能だ、と述べている。
この記事では更なるアイデアが発案されている。オンラインのコンテンツ保護技術のCaptchaと組み合わせることで、さらにこの仕組みを発展させたるのではないか?という提案だ。
・Captcha
http://www.captcha.net/
Captchaは、画像を使ったセキュリティ技術の一種である。ログインが必要なサービスに、犯罪者やスパム業者などのソフトウェアロボットが自動ログインできないように、ユーザに画像に書かれている文字列の入力を求める。こんなふうに画像をゆがめる。
例えば、同種の技術を採用しているドメイン管理組織のベリサインでは、他人のドメイン名の登録情報を調べようとすると、以下のような画像に書かれたのと同じ文字列の入力を求められる。ベリサインは人間にだけ情報を開示したいのだ。
この歪曲された文字の画像はソフトウェアは読み取ることが出来ないが、人間は容易に読み取ることができる。
しかし、もしアダルトサイトが「ポルノ画像をもっと見たいなら、この画像に書かれた文字列を入力してください」とユーザに提案したらどうなるだろうか。膨大なアダルトサイトのユーザたちが、完璧な答えを即座に入力してしまうだろう。このセキュリティは破られ、業者は内部の情報を収集することができてしまう。
つまり、この方法を使えば、オンラインのテストステロンを使って、「人間の認知能力では簡単にできるが、コンピュータには難しいこと」を、大量に処理する人間の分散コンピューティングができるということだ。
この方法を巧妙に駆使することができれば、冒頭の本のように「高度に発達した性本能の持ち主」でなくても「偉大な事業を成し遂げ」「巨富を蓄積」することが可能なのかもしれない。
(まあ私は発達してるから問題ないですけどね<何が?)
参考URL:
・Kinsey
http://www.indiana.edu/~kinsey/index.html
セックスとジェンダーの研究で著名なキンゼイレポートの発行機関。赤裸々な統計が。英語だから会社で読んでもばれないかも。
・20万人がネット・ポルノ中毒
http://www.hotwired.co.jp/news/news/Culture/story/20000907205.html
・日本のセックスIndex
http://www.enoplan.jp/sexindex/
性関連 ニュース&トピックス
・バーチャルなセックス、リアルな楽しさ
http://www.hotwired.co.jp/news/news/1427.html
・セックスとテクノロジーがテーマのブログ・ベンチャー『フレッシュボット』
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20031119204.html
米ニールセン・ネットレイティングスの調査によると9月中、およそ3200万人の米国人――米国のインターネット・ユーザーの24%にあたる――がポルノ系のサイトを訪れた
・Nakednews
http://www.nakednews.com/
男女のアナウンサーがニュースを読みながら脱いでいく...。有料コンテンツだがデモが見られる。ユーザがニュースをレイティングしたりコメントしたりするとアナウンサーが脱ぐとしたら、このサイトも面白いデータ収集ができるかもしれない。
・以前に書いた関連記事:好き嫌い好き嫌い好き?
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000345.html
・エログリッドコンピューティング
http://blog.bulknews.net/mt/archives/000518.html
今日の記事はこの記事を膨らませて解説してみたもの。
2003年12月20日
テキスト簡単化と図表化のテクノロジー
■中学2年の悔しい思い出と改善提案
未だに腹立たしい経験を憶えている。中学2年の社会科の授業。生徒は全員が日本国憲法の前文を暗記してこいと言われていた。クラスでタダひとり授業で暗誦できなかった、私は、放課後に居残りを命じられた。ヒステリックな20代の女性教師と図書館で二人、対面して1時間。ひたすらの繰り返し暗誦練習。
私の記憶力が悪いのは横に置いておくとして、当時の私の本音は、こんな出来損ないの汚い文章を、自分の頭に残しておきたくなんかなかった。はっきりと、この文章を覚えたくありませんと言葉で主張した記憶があるが、不思議そうな顔をされた。私の通知表の社会科の評価は1だったからか、当然、取り合ってもらえなかった。
当時の教師の年齢を超えた今なら、もっと大きな声で、自信を持って、言える。こんな文章ダメダメである!。憶えない私のアタマも悪いが、書いた人間のアタマはもっと悪いのだ。教師は暗誦の指導でなく、こうすべきだったと提案したい。
「あなたは、生徒に文章の簡単化と図表化をさせるべきだった。」
■どうしたら分かりやすくできるか?
私が文字通り泣く泣く憶えさせられたのはこの文章だ。起草当時の状況下における、最高の政治的コンセンサス・テクノロジーの成果なのだろうが稚拙な文章と感じる。
「
日本国憲法前文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法はかかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
」
一度だけ読んだら、さあクイズだ。もうテキストを見てはいけないとする。
Q1 日本国民は何を決意しましたか?
Q2 ここでは何が宣言されましたか?
Q3 国民は何を享受しますか?
Q4 憲法はどのような原理にもとづいたのですか?
Q5 この前文、ひとことで言うと結局なんですか?
よほどの秀才中学生か、憲法学者でもなかったら、この質問に即答するのは、困難なはずだ。教師には考えてほしい。たとえ暗誦できていたとしても、この質問に答えられなかったら、学んだ意味があるのだろうか?。
■係り受けの分解とアウトラインの抽出
どうしたら分かりやすくなるだろうか?。文章の順序でアウトラインを抽出してみる。質問に応じて色分けもした。
日本国民は、
国会における代表者を通じて行動する。
国会を正当に選挙する。
われらとわれらの子孫のために
諸国民との協和による成果
と
わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保すること
と
政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすること
を
決意する。
ここに主権が国民に存することを宣言する。
この憲法を確定する
そもそも国政は、
国民の厳粛な信託によるものである。
その権威は国民に由来する。
その権力は国民の代表者がこれを行使する。
その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理である。
この憲法はかかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
アウトラインの基底部を読めばきっと質問に答えられる。
Q1 日本国民は何を決意しましたか?
・国会における代表者を通じて行動すること。
・諸国民との協和による成果と自由のもたらす恵沢の確保
・再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすること
#係り受けの曖昧さがあるので「代表者を通じて行動」は決意の内容に入らないかもしれない。これを確定できないのは書いた人間のアタマの悪さだと思う。
Q2 ここでは何が宣言されましたか?
主権が国民に存すること
Q3 国民は何を享受しますか?
国政の福利
Q4 憲法はどのような原理にもとづいたのですか?
国民の厳粛な信託により
1 国政の権威は国民に由来する
2 国政の権力を国民の代表者が行使する
3 国政の福利は国民が享受する
というルールで国政を実現する、人類普遍の原理。
Q5 この前文、ひとことで言うと結局なんですか?
日本国民は、主権が国民に存することを宣言し、人類普遍の原理に基く憲法を確定する。
(基底部の太字をまとめればこうなる)
■文章の簡単化の技術
上記の作業は人間が行ったので、人によっては解析構造が異なるかもしれない。
・文章を簡単な表現に直す(係り受けの分割や受動態→能動態変換)
・文章を係り受けを表す階層構造(木構造)にする
という作業をしたわけだ。その上で意味を人間が考える。
最近、早稲田大学の研究者のShima氏に教えてもらった興味深い研究に文章の簡単化がある。これらを自動化しようという試みだ。既に無償でダウンロードできるソフトウェアもある。
・言い換えエンジン KURA
http://cl.aist-nara.ac.jp/lab/kura/doc/
・日本語を簡単な日本語に言い換えるー福祉的コミュニケーション支援に向けて
http://cl.aist-nara.ac.jp/lab/kura/papers/2001/inui-sakigake0112paper.pdf
このプログラムは文章に対して自動的に以下のような処理を行う。
1 副詞節や並列節を含む長文の分割:
ようやく回復の足取りを固めたとはいえ,日本経済の先行きは不透明感を免れない.⇒日本経済は,ようやく回復の足取りを固めた.しかし,先行きは不透明感を免れない.
2 連体修飾節の言い換え(主節化):
きっかけは中村屋がインド独立運動の闘士であったビハリ・ボースをかくまうようになったことである.⇒ きっかけは中村屋がビハリ・ボースをかくまうようになったことである.ビハリ・ボースはインド独立運動の闘士であった.
3 複雑な否定表現の言い換え:
彼はベジタリアンなので,パーティーでも野菜しか食べなかった.⇒ 彼はベジタリアンなので,パーティーでも食べたのは野菜だけだった.
4 複雑な比較表現の言い換え:
学生時代の友人と飲む酒ほど楽しい酒はない.⇒ 学生時代の友人と飲む酒が一番楽しい.
5 受動・使役表現の言い換え:
太郎は駅前で警官に呼びとめられた.⇒ 警官が駅前で太郎を呼びとめた.
6 機能語相当表現の言い換え:
たばこをやめてからというもの,食欲が出て体の調子がとてもいい.⇒ たばこをやめてから後ずっと,食欲が出て体の調子がとてもいい.
7 慣用句などの言い換え:
学生時代は毎日のように映画館に足を運んだ.⇒ 学生時代は毎日のように映画館に行った.
8 難しい内容語/句の言い換え:
多数意見は立法府(⇒国会)の裁量判断を尊重する立場を示した.
足を運ぶ⇒ 行く.
これらの処理により、難しかった文章を簡単にできる。簡単化と要約とは似ているが、少し違って、むしろ処理した結果、文章量自体は長くなることが多い。簡単化された文章は読みやすくなるし、そもそも文章としてこちらのほうが美しい気もするくらいだ。
■文書の図表化
もうひとつの分かりやすくするアプローチには図表化があると思う。
・概念図の自動生成による文書内容の可視化
http://www.image.esys.tsukuba.ac.jp/html/murayama/Work/ms_thesis.pdf
クリックで拡大
ここでは文章を解析し、概念図を作成するプログラムが研究されている。以前紹介したiEditで人間がつくるような階層図、概念図があると分かりやすくなる。
・文書アウトライン作成支援ツール iEdit
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000317.html
数式もまた文章を分かりにくくする諸要因のひとつである。
X=Y(21a+b)
という式だったら、自動的に、
1 21とaを掛ける
2 その結果をBに足す
3 その結果をYに掛ける
4 その結果がXである
というような文章に置き換えてくれる処理があればいい。図表化してくれればなおさら分りやすい。この分野でも研究があるようだ。これは図表化ではないが、数式の意味を読み取る研究である。
・数式の構造認識と意味理解
http://www.taf.or.jp/publication/kjosei_16/pdf/p644-p651.pdf
情報量の増大に伴い、簡単化の研究、図表化の研究は、一般ユーザにとっても重要な役割を果たすように思う。今、研究室で行われていることが速く市場に出てきてほしいと思う。教育分野でもこのような応用があったならば、無理に文章を暗記させる訓練など無用だったはずである。もっと分かりやすく、大人になるまで長期的に内容を憶えられる教え方、教材を開発することができるはずである。
大学時代のアルバイト先での暗誦訓練は意味があった。あの訓練は社会に出て役立った。強制してくれた社長に感謝している。しかし、私に日本国憲法を暗誦させようとした、中学の先生、あなたはもっと教育方法について考えるべきだった。あなたの知的怠慢のおかげで、私たちはもっと楽しめたはずの夏の放課後の午後の時間を無駄にしてしまった。
2003年12月19日
広告の天才たちが気づいている51の法則
全米に広く顧客を持つ広告コンサルティング会社の代表である著者が、自分のお客や友人に向けて書いた広告についての手紙をエッセイにまとめた本。ひとつのテーマで数ページの読みきりの章が51の法則として綴られている。全米最優秀ビジネス書に輝く。
・著者が代表のWizardAcademy
http://www.wizardacademy.com/default.asp
51の法則を読んだ感想は人によって違いそうだが、私なりの理解を、各章の気になったセンテンスとともに、書いてみる。
■9割以上の割合で、衝動買い、思い込みで買う
・「五人は喜び九人はがっかり」の章
「その調査によると、目当ての品物を買って帰りたいと思って店を訪れる買い物客は全体の67%いるらしい。ところが、何と実際に買って帰るのは、そのうちのわずか24%に過ぎないという(中略)つまり、現在の来客店数のままでも、買う気になって来ているこうした来店客にきちんと買ってもらうようにするだけで、従来と比較して2.8倍の売り上げが期待できる」
つまり、お客は冷静なつもりでも、実は思い込みで衝動買いすることが多い。これは日本でも裏づけがある。関連する資料はこちら。
・店頭からのブランド・プロモーションの戦略的枠組み
http://mic.tama.ac.jp/lss/kiyo/No.1/otsuki.pdf
この論文の「図3 店頭における消費者購買行動調査」は、消費者がショッピングする際の、「店内決定」の率を調べたものだ。つまり、家を出る際に決めているものではなく、店頭で見て決める。広義の衝動買いが91.6%を占めるという数字が出ている。つまり、この本が言うように、店頭での広告の余地が大きいのだ。
注釈:
ブランドレベル計画購入:ソニーの製品を買うと決めている
カテゴリーレベル計画購入:トイレットペーパーを買うと決めている
代替購入:本命がなかったので代わりのものを買う
非計画購入:無計画に衝動買いする
■何をしたいか、何を買いたいかを決めさせて欲しいお客
では、なぜこうも衝動買いが多いのだろうか。この本の以下の章に示唆がみつかる。
・「なぜそうするのかはわかっていない」の章
「われわれはいろいろなことをしている。しかし、なぜそうするのかは、わかっていない」(アルバート・アインシュタイン)
・「絶対にへなちょこワインはありません」の章
「われわれが納得しやすいのはどちらかといえば、一般的に言って、他人が教えてくれる理屈よりも、自分自身で見つけ出した理屈の方だ。」」
・「最高の価値と「思った」ものを買う」の章
顧客は本当に文字通りの「最高の価値(お買い得)」を買っているのだろうか。それとも顧客自身が「最高の価値」と思ったものを買っているのだろうか?
お客はどの店が一番安くて良質かを世界のすべての店舗と比較して一番を探した結果買っているのではなく、広告を見た結果、欲しい物が明確になると同時に、それは自分で選んだと思い込みながら買う。そのプロセスをうまく促進すれば、もっと売れる。
そして、そういったマーケット観を持つ著者は、効果的な広告を以下のように考えているようだ。
■効果的な広告は誰に対して発信するかではなく、何を発信するか
・「単純な変化を加えるだけで奇跡が起こる」の章
「だれに対して発信するかではなく、何を発信するか、それが勝負だ」「広告の対象を間違えたために失敗した、などという広告主に、私はこれまでお目にかかったことがない。」
・「本当に思えるウソの力」の章
ミュロンの「円盤を投げる人」は投げる瞬間の迫力のあるすばらしい造形美を見せてくれている。ただし、このフォームを取るとすれば、どんな選手でも投げられる距離はせいぜい数メートルに終わってしまうだろう」
・「自分自身にカメラを向けない」の章
「ジャッククストーの天才的才能はどんな場合にも、そのカメラを海底の洞穴やサメ、難破船に向けて撮影し、決して自分を被写体にしなかったことだ。」
確かに私たちは、最初に誰に対してメッセージを伝えるか、ターゲットを明確化しなければ広告は作れないと考えがちである。しかし、この本で著者が言うように、「誰に対して伝えるか」の特定は簡単なことだ。そこを間違えるプロのマーケターはほとんどいないだろう。
そして、裸で維持が難しそうなポーズで考えるロダンの彫刻を見ても、それは「考える人」というメッセージとして十分伝わっている。現実的ではないなどと文句はつかない。売りたいものをそのまま写した広告、「自分にカメラを向けた」広告表現はうるさく感じられる。そういうことを著者はウィットに富むコラムに仕立てて、考えるきっかけを作ってくれる。
現代のマーケットで受け入れられる広告とは何か。「何を」の部分について発想の元になるコラムが続いていく。明確な回答は期待してはいけない本ではある。帯に書かれた「米国ではアドマンやマーケッターが仕事で壁にぶつかった時に読んでいます」という推薦文の効果に期待する人にはオススメの良書。軽い。
評価:★★☆☆☆
2003年12月18日
インタフェースの計量化、その3 Hickの法則
■Hickの法則
・インタフェースの計量化、その1 KLM手法
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000662.html
・インタフェースの計量化、その2 Fittsの法則
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000677.html
の続編として、この選択肢と、
この選択肢、
どちらがどれくらい選ぶのが難しいだろうか?という話。
どうしたら使いやすいインタフェースを作ることができるのか?の科学
そしてインタフェースの計量化の第3弾はHickの法則である。
・Usability Glossary: Hick's Law
http://www.usabilityfirst.com/glossary/main.cgi?function=display_term&term_id=266
この法則には、ふたつの式がある。どちらもインタフェース上で、n個の選択肢からひとつを選ぶ場合の困難度を表現するものである。具体的な意味は後述。
(1) H = log2(n+1)
(2) H = p(i)log2(1/p(i)+1)
H = 意思決定の困難度(エントロピー)
n 選択肢の数
p(i) =iが選ばれる確率
この式の意味は「選択できる要素が多くなると、意思決定に時間がかかる結果として操作時間が長くなってしまう」ということだ。例えば、メニューの項目が3つと9つでは、9つの方が選択が難しくなる。それは直感で分かるけれどどれくらい違うか明確に言えるだろうか?
■試算してみる
例えばアドベンチャーゲームを考えてみよう。あなたは主人公で全方向が開けた広い場所の真ん中にいる。ヒントは何もなく、どちらに進もうと自由だ。システムから次のような行動メニューが選択候補として提示される。
【3つの選択肢のケース】
【9つの選択肢のケース】
Hickの法則には2つの式があるが(1)の式は、メニューの各項目が確率的に均等に選ばれるケースを想定している。((2)の式はi番目の項目が選ばれる確率がp(i)と判明している場合)。この状況は(1)だとして、実際に計算してみる。
選択肢の数 Hick値(困難度)
2個 1.5849625
3個 2
9個 3.32192809
12個 3.70043972
15個 4
100個 6.65821148
3個と9個の選択肢では、9個の方が1.6倍くらい選択が難しいことが分かる。
■ほどほどにメニューの選択肢の数を増やし、階層を減らせ
これはある意味意外な結果とも言える。選択肢の数は3→9へ3倍増えているのに比べて、困難度は1.6倍程度である。選択肢は多くなっても、選択の困難は同じ倍率で増加するわけではない。選択肢を3個から15個まで増やす(5倍)と、やっと困難度は同じ3倍になる。メニューの選択肢が5個のところを10個にしたいけど難しくなっちゃうかな?という疑問には、恐らくそれほど難しくなりません、と答えられる。
ここでは向かう方角の選択だったので数が少なかった。では、次にもっと多くのメニューを整理して、階層化し2回以上の機会で選ばせる場合ではどうなのだろう?。次にもう少し実用的な話で考えてみる。
■Webデザインへの適用
以前、私は違う視点でメニュー構造のノウハウについて書いた。
・Webデザイン:使いやすいメニューの作り方と魔法の数
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000477.html
ここでは512ページからなる、Webサイトのメニューをメニューに整理してナビゲーションするには、8個の選択肢メニューを3回選ばせるより、32個の選択肢メニューとその次に16個のメニューを選ばせたほうが良い、と結論した。Hickの法則で検証してみる。
8*8*8の3階層メニュー:9.509775
32*16の3階層メニュー:9.13185696
となった。2階層の方がHickの値が低く選びやすいことが分かる。また、前回の記事の視覚探索効果、メニューの範囲記憶の相乗効果、そしてメニューの表示時間を考慮に入れると、この差は遥かに大きくなる。無論一度に100個の選択肢を提示するわけには行かない。それでは視覚探索と範囲記憶の能力を超えてしまう。
それに実際のサイトの構造は、複雑だ。均等にメニューに選択肢を割り当てられない。「ほどほどにメニューの選択肢の数を増やし、階層を減らせ」はだいたい正しそうだが、じゃあ実際に複雑な構造のサイトに適用した場合の、「ほどほどの内容」やその他の要素は科学的にはどうなの?という疑問が浮かぶ。
ここから先は専門家の世界に譲りたい。次のサイトは非常に参考になる。
参考情報:
・The Psychology of Menu Selection: Designing Cognitive Control at the Human/Computer Interface(メニュー選択の心理学)
http://lap.umd.edu/pomsFolder/pomsHome.html
使いやすいメニューの作り方についての研究。素晴らしいの一言。長いが、軽い知的興奮を覚えた論文。2.1 Menu Structuresにこの記事の数十倍深い考察がある。
#この3回書いた「インターフェースの計量化」シリーズ。簡単とはいえ数式を文章に持ち込むと、いきなり内容が分かりにくくなる失敗例になったと反省。式を出さずにきちんと説明できる文章力を鍛えねば。私は文系だから数学が苦手。計算ミスがあればご指摘ください。今日は頼りの数学者がいないので、可能性あり。
2003年12月17日
忘年会議満員御礼に心から感謝
報告第1弾 何度かに分けて報告します。たぶん。
忘年会議終了。師走に150人満員御礼の大盛況。ご参加いただいた方、Web推薦投稿をいただいた方、会場提供してくださったデジタルハリウッドさん、お手伝い頂いたスタッフのみんな、本当にありがとうございました。
「これが私のイチオシサイト」が熱い推薦理由つきで239サイト集まり、その中から私と田口さんで独断と偏見のベスト10サイトを選出させていただきました。当日の内容はほぼ予定したアジェンダの通り。20分で239サイトを全部見るという無茶もしましたが、皆さんのご協力もあって無事紹介しきることができました。
投稿の中から橋本&田口の選んだ独断と偏見のベスト10は以下の通りでした。二人で239サイトを見て盛り上がったものを選んでいます。無論他にもたくさんの面白いサイトがありました。参加者の方は完全なリストをお持ちですから、ご自分のベスト10を作ってみてください。
■BEST SITES of the year!
1位 未来を創造するプロフェッショナルたちのためのネットワーク
http://www.future-planning.net/xp/modules/news/
事業開発者のための情報サイト。濃い時評コラム、書評、意見。ビジネスとテクノロジーがバランスよく融合し、ITビジネスコミュニティの模範のように思えました。
2位 Business Issue 日本語版
http://www.bigissuejapan.com/index.html
その社会性と独創性にショックを受けたから。
3位 X51.ORG
http://www.x51.org/
好奇心の刺激。ムー系の話題をポピュラーサイエンスとして。
4位 Hirax できるかな
http://www.hirax.net/
技術者の実験精神と遊び心。
5位 PYA!
http://pya.cc/
別に今年ってわけじゃないですね。ココでも一番すきなんです。
6位 Bulknews
http://bulknews.net/
RSSの最先端の取り組み。ツールとしてそもそも便利で大活用。
7位 Webook
http://www.webook.tv/
書評サイト。毎日読書し続ける根気に脱帽!
8位 送料の虎
http://www.shipping.jp/
「ネットを使えば、大会社に個人が勝てる」というネット黎明期のワクワクを感じることが出来る。このページはYahoo!宅配に勝っていると思う。
9位 WebArchive
http://www.archive.org/
ウェブサイトの波乱万丈な人生が垣間見ることが出来るサイトだから
10位 POP辞書.com
http://www.popjisyo.com/WebHint/Portal.aspx
とにかく海外サイトを読むのに便利。翻訳待ち時間がイライラしない
■今年を表す漢字
会議のセッションでは、参加者を6人程度のグループに分かれてもらって、次のテーマをグループ別に考えてもらいました。
Q1 「あなたのグループが選ぶ、2003年のインターネット業界を表す漢字1文字を考えてお書きください」
Q2 「あなたのグループがその漢字を選んだ理由を教えてください(ユーモアたっぷりにどうぞ)」
「個」
Blogによる個人の復権
(個人による情報発信、選択、収集、個人間の集いなど)
「言+深の右辺」(#そんな漢字のフォントないです...)
言べんに深(の右ヘン)と書いてブログです。
<言葉と深さと探る>
「繋」(つながり)
個人同士が目だってつながってきた時代なんで
「人」
2ストロークで書ける「人」。単純で深くて途切れることがないつながり。ネットサーフィンでヒトットビ?。ひとりでは生きていけない。だからサイトがあるんだ。
「誌」
Blog=〔航海日誌=Log〕。言葉に志を持ったメディアになってもらいたい。
「血」
そこまで夢中になるのはスゴイなと思って。
わたくし事。まさかヤフーのトップ画面で鼻血を出すとは思わなかった。
「字」
漢字が分からなかった
「呈」
形がパソコン。口=しゃべる。Webで個人がInfo発信。おれが王様。だから呈。
「便」
人が行進するサイトは便利ですごい。うんちじゃないよ。人は毎日便をする。これが最終成果物。サイトも同じ。
「散」
今日の意見が散ってた。
(概念図)#ホームページ時代、ポータル時代、Blog時代と進むと個が分散すると同時につながっていることを表す図、たぶん)。
「誌」
いいものはいいのです(わらう)
「俺」
「オレオレ」「私、私」サギも増えたこともあるが、日本では今年がBlogブレイク元年だと思うので、プロじゃなくても自分というものをアピールする手段、環境が増えてきたことから浮かんだ一言。
「誰」
みんなBlogを書いていますが、誰に向かって書いているんでしょう?
「人」
”情報”を求めていったら”人”に回帰した年だった。
1 Blogしかり
個人サイトよりも個人が両面におしだされ、情報に辿りついて終わりではない。巷の人と継続的につながるようになった年。
2 Googleしかり
人がつけたリンクを解析したらすごい検索エンジンになったり、メディア化した年
「尾」
AB←のB
BoradBand BtoB Blog
トラックバックはブログの尻尾
2003年もおあとがよろしいようで。
「鎖」
1 つながり
2 しばられ
「芽」
新しい可能性に期待
「雑」
ビジネス云々で雑然となりつつあったNETがWeblogの登場やら何やらで突然ぐちゃぐちゃになった。来年はこれをまた整然とさせるようなアクティビティが注目されるのかなあと。
「気」
そんな気がするから。
「祭」
いろんな意味を込めて...
「部」
ブログの部(in 台湾語)
「選」
ネットの世界は玉石混交の世界→えらぶこと(サイトを)
回、脳、楽、暗、因→明るい方向へ、未来は明るい!
「陰陽の記号(#漢字じゃないでしょそれ...)」
司会者に負けたくないから。誰もえらんでないだろうから。
解説です。今年はブログの話題が多かったため、ブログを意識したつながり感の漢字連想が多かったようです。
もし私が選ぶとしたら...。「来」かな。ブログ、セマンティックWeb、コクーン、iPod、可視化技術など「未来につながるものがキターッ!」という意味で。個人的には、今年は子どもも生まれてそういう気分の1年でした。あ、それはインターネット業界じゃないけど。
#参加者でサイトに感想を書かれた方にぜひお願い。この記事へコメント&リンクするか、トラックバックをかけてやってくださいませ!
2003年12月16日
インタフェースの計量化、その2 Fittsの法則
インタフェースの計量化、その2 Fittsの法則
昨日の続き。
ユーザビリティを科学するための計量化手法としてFittsの法則も有名である。
■Fittsの法則
ユーザがカーソルを現在位置から目標ターゲットに移動させるまでの時間を数値化するのがFittsの法則である。カーソルの移動距離とターゲットオブジェクト(ファイルアイコンやメニューアイコン、ボタン、選択したい文字列など)の画面上の大きさが、ここでは重要な変数となる。
数式で表現するとこうなる。(logは対数関数)。
・Fittsの法則
オリジナル(一次元。こちらは原理的説明の式)
T = a + b log2(2A/W)
改訂版(二次元。こちらが現実的なので以下それで説明を進める)
T = a + b log2(A/W+1)
T=時間(ミリ秒)
a、b=ユーザの熟練に応じて変わる操作効率、a=50、b=150くらいが一般値
A=カーソル現在位置とターゲットとの距離(例:100ドット、2センチなど)
W=ターゲットの画面上の大きさ(タテヨコで小さい方の値)
試算してみる。
例えば、カーソル現在位置とターゲットの距離が100ドット離れていたとする。ターゲットの大きさは、Windowsのアイコン(32×32ドット)を想定して32とすると計算は以下のようになる。
T= 50+150*log2(100/32+1)
処理時間であるTの値は、356ミリ秒となる。では、同条件でターゲットがもっと大きな横が10倍のサイズの640×320ドットの写真画像だったらどうだろうか。
T= 50+150*log2(100/320+1)
108ミリ秒になり、ターゲットが大きいことで3倍以上も移動時間は短縮された。ユーザはA地点からB地点へマウスを動かす際に、B地点のエリアが小さいと、処理が複雑になり、処理が遅くなる。小さいアイコンはクリックしにくいという簡単な事実だ。
ユーザが何百回も繰り返すマウス作業では、カーソルの平均的な開始位置を考えに入れて、設計することで、作業時間は大幅に短縮され、疲れも感じなくなる。古典的だが、WindowsのダイアログでOKボタンを自動的にフォーカスして自動で、カーソル移動してくれるチューチューマウスの便利はまさにFittsの法則があるから、と言って良いだろう。
・チューチューマウス
http://homepage1.nifty.com/ikehouse/
Fittsの法則の研究では、ターゲットが、画面の端の枠やウィンドウの枠、あるいは曲線の縁に位置した場合、ターゲットサイズは実際の大きさに関わらず小さめの値(50くらいという説あり)で計算してよいと言われている。画面の端に並んだメニューやアイコンは、画面の中途半端な位置にあるケースよりも選びやすい。重要なよく使うものは画面の端におくべきなのだ。
カーソルが100ドット離れた初期位置で、同じ32ドットのアイコンを画面の端においた場合には、287ミリ秒となる。。真ん中の場合は356ミリ秒でしたからだいぶ短縮された。
#PCでの電卓アプリでlog2は入力がやっかい。偉大なる数学者NightNoiseさんに計算方法を教えてもらった。このようにやればGoogleの電卓機能でも計算できる。
log2はlog2x=log10x/log102だから、上記例題1つ目を解くなら
50 + ((150 log((100 / 32) + 1)) / log(2)) = 356.659118
でよい。
・Fitts's UI Law Applied to the Web(Fittsの法則はWebデザインにも適用できる)
http://msdn.microsoft.com/library/default.asp?url=/library/en-us/dnhfact/html/hfactor9_3.asp
Fittsの法則はWebデザインでも通用することをマイクロソフトが説明している。
2003年12月15日
インタフェースの計量化、その1 KLM手法
インタフェースの計量化、その1 KLM手法
私も師走は人並みに忙しいので今日と明日は一度に書いた続き物で...。
「ユーザビリティ」という言葉が流行っている。このソフトはユーザビリティが高いから便利だ、とか、ユーザビリティが低くて使いにくい、などと言う。ユーザビリティ設計は、グラフィックデザインと同じように、設計者の感性や経験に依存する、主観的な技と思われがちだ。
例えば代表的なワープロソフトのMS Wordと一太郎のどちらがユーザビリティが高いか?という質問に、明確な基準で答えられる人は少ない。大抵、返ってくる答えは、この機能があるから、だとか、分かりやすいから、といったことになる。
ユーザインタフェースの便利さを数値化、計量化する方法は、一部の研究者にしか知られていない、と思う。今日はユーザビリティを計量化し、あるアプリケーションの操作を点数で評価できる仕組みで、古典的な計算方法を幾つか紹介したい。
■キーストロークモデル(GOMS KeystrokeーLevel Model)
GOMSはGoal(目標)、Operator(オペレータ)、Method(メソッド)、Selection Rules(選択規則)の頭文字をとったユーザビリティ評価モデルの大きな体系で、そのメソッドのひとつにKLM(キーボードストロークモデル)がある。アプリケーションに入力のイベントが発生したときに(メニューを選ばせるなど)、ユーザの入力のタスクを分割し、単位当たりの所要時間を、足し算して、理論的に考えれれる最短時間にいかに近いかで、ユーザビリティを評価する方法だ。
・Using the Keystroke-Level Model to Estimate Execution Times
ftp://www.eecs.umich.edu/people/kieras/GOMS/KLM.pdf
一般にKLMでは次のようなタスクの切り分けと数値が使われる。(数値はアプリケーションの複雑さやユーザ層の性質により変動してよい)。
T(N)=0.28n秒 | キー入力(非熟練ユーザのキーボード入力、1文字当たり) |
P=1.1秒 | ポインティング(ディスプレイ上の位置をユーザが指示) |
B=0.1秒 | マウスボタンをはなす |
BB=0.2秒 | マウスクリック |
H=0.4 | マウスからキーボードへ手を移動する時間(または逆) |
M=1.35秒 | 心理的準備時間(各プロセスの直前に発生) |
W | 応答時間(コンピュータの応答にかかる時間) |
■KLMを試す
例えば、こんなアプリケーションのウィンドウがあるとすると、
ユーザに年齢(2桁)を入力させてOKを入力させると0.1秒の処理時間で次の画面で「あなたの生年は○○年です」という情報が表示されるものとする。
ユーザの動きを文章で表現するとこうなる。「ユーザはマウスに手を置き(H)、カーソルを入力欄へポインティングし(P)、キーボードへ手を移動し(H)、年齢2桁を入力し(T)、マウスへ手を移動し(H)、OKボタンをポインティングし(P)、押す(B)。処理時間(W)後に、生まれた年が表示される)。」
KLMの式で表記するとこうだ。
H→P→H→T(2)→H→B→W
KLMのルール(論文参照のこと)では、すべてのキー入力(T)とクリック(B)の前には心理的準備時間(M)を挿入せよというルールがあるので適用すると、
H→M→P→H→M→T(2)→H→M→P→BB→W
0.4+1.35+1.1+0.4+1.35+0.28+0.28+0.4+1.1+1.35+0.2+0.1=8.31秒
となる。上記の変数に具体的な処理時間の数字を代入して計算すると、8.31秒が理論上の最短処理時間となる。実際にユーザに使わせたときの平均処理時間と比較して、8.31秒をはるかに上回る数字が出ていた場合、そのインタフェースは改善の余地がある。
では、上記のようなアプリケーションはどう改善できるだろうか。2案考えてみる。
A案は、年齢の入力を選択式にしたもの。キーボードを使わずにマウスで選択できるので便利に見える。年齢の欄はユーザ層の平均である30歳をデフォルト入力値として設定しておく。
B案は、キーボードからの入力のみにしたもの。ウィンドウ表示と同時に入力カーソルは年齢入力欄に自動的にフォーカスされており、年齢を入力すると同時に生年が表示される。
A案では、KLMの計算では、最初のモデルと異なるのは数字の入力だけである。選択式でふたつの数を選ぶには、「マウスでボタンをひとつめの数字を選んで離し、ふたつめの数字を選んでボタンを離す」。二つの数値入力の間のMは連続的行為なのでKLMルールにより省略する。
よって、A案は、
・A案のKLM
H→M→P→BB→B→P→BB→B→H→M→P→BB→W
0.4+1.35+1.1+0.2+0.1+1.1+0.2+0.1+0.4+1.35+1.1+0.2+0.1=7.7秒
となり、KLMの評価では最初のモデルの8.31秒よりも若干速くなった。
B案ではどうだろうか。こちらでは自動フォーカスとリアルタイム計算結果表示により、ユーザは「キーボードへ手を移動し、数値を二桁入力する」だけである。今度は8.31秒を大幅に短縮した。
・B案のKLM
H→M→T(2)+W
0.4+1.35+(0.28+0.28)+0.1=2.41秒
この結果から分かることは、KLMによる分析では、A案の「マウスだけで入力させるからユーザの入力作業も簡単で早いだろう」という思想は軽度の改良にとどまり、B案がコンセプトとして優れていると言える。(飽くまでこの部分だけを取り出してみればという話であるが)
B案を選択したなら、実際にユーザに使わせ、理論値2.41秒にどの程度近いかを計測する。そして、まだかなり理論値よりも長い数字が判明すれば、別のKLMシナリオを考案し、理論値を計算して実装する。この繰り返しがKLMアプローチだ。
■インタフェースの計量アプローチのメリットデメリット
ここでは、極めてシンプルなアプリケーションの操作で説明したが、実際のアプリケーションはさらに複雑である。直感的にどちらが便利だとか、分からないことが多い。KLMモデルのアプローチは、厳密に数字でユーザビリティを分析できる。
無論、インタフェースデザインについては、「全体は部分の総和ではない」というゲシュタルト概念としてとらえていくべきなのだろうとは思う。計量化がすべてではなく、設計者の感性や経験によるところも大きいはずだ。だが、それだけでは、思いついたアイデアの実装を加えていくだけで、やがてインタフェースは複雑になってしまうことが多い。
今、一般に使いにくいとされているアプリケーションも、大抵は、統一性なく、インタフェースデザイナーの創意工夫を集めすぎたことで、複雑化し、使いにくくなってしまったのだと思っている。計量化という、いわゆる「定石」を知り、どういう方向にあるのか、を知った上で、デザイナーの個性を加えていくのが正解なのではないか、と思う。
参考:
・プルダウンを格段に選びやすく プルダウンって使いにくい?
http://allabout.co.jp/career/html/closeup/CU20030629A/
明日も続けて、インタフェースの計量化手法について続けます。
2003年12月14日
100本と1000本、達人に聞くブログを3年続ける秘訣
今日は内輪ネタです、と最初にお断り。
9月からこのブログを開始して毎日更新で、記事が100本を越えた。だんだんと毎日のルーチンワークに収まりがよくなってきて負担も減っている。習慣化されたので、気負いが消えた。だが、100本というのは、この世界ではまだまだ赤ん坊同然である。
データセクション社の経営パートナーに小橋昭彦氏がいる。彼は前職ではコピーライティング分野の登竜門みたいな業界賞「宣伝会議賞」2年連続受賞、個人サイトは、ニフティホームページグランプリ受賞、各種講演、5万部のメールマガジンの内容は講談社の文庫本になり韓国語にも翻訳されるなど、Web上での表現者として、いろいろと実績を積み上げている。
ところで、最近Weblog、ブログが流行している。彼が2001年1月に開始したサイト「ざつがくどっとこむ」は、ブログのはずなのだが、開始時期が早すぎたせいか、メディアやコミュニティの扱いでは、いわゆるブログに含められていないみたいだ。
私は雑学ドットコムは日本で最も古い部類のブログだと思っている。というのは、このシステムは私が構築したのだが、元となったのは独自に日本語化作業を施したオープンソースのPHPWeblogというシステムだからである。技術的にも開始時期から、XMLメタデータのRSSも公開していたので、ブログであると言えると思う。
小橋氏のネットでの表現活動は以下のサイトがメインである。内輪ではあるし、商業的側面もあるのだが、編集執筆が1人であることに変わりはない。1人の能力でどこまでオンラインで豊かに表現できるかという挑戦のようにも見える。
・今日の雑学+メールマガジン配信申し込み
http://www.kobashi.ne.jp/mm/
・雑学ドットコム
http://www.zatsugaku.com/
・4im
http://4im.net/
・田舎.TV
http://www.inaka.tv/
彼の表現活動の中心のメールマガジンが先日1000号を突破した。とりあえずの私の目標は自分も1000回を達成し、この同僚を抜くこと。「打倒小橋昭彦」と心に決めている(もうひとつの目標に4年以上継続しているブログの打倒百式管理人もあるが(笑))。
そこで今日は、ブログやオンライン表現を継続する秘訣をインタビューしてみた。
> Q 毎日の編集作業の手順や内容について次の4つの段階で教えてください
>
> a 情報収集(オンライン、オフライン、日常からの情報入手)
オンラインでは100誌程度のメール情報誌と、500サイト程度の更新チェックが主要な手段です。オフラインでは、まずは新聞4紙(うち地域新聞2紙含みます)、それから雑誌を5誌弱ですね。書籍は年間150冊程度。日常で大きいのは、子どもとの毎日に教えられる
視点でしょうか。
以上はいわばルーチンとしての収集ですが、一方で、情報を編集すると決めてから収集する情報がありますよね。探索型の情報というか。百科事典や検索エンジンや辞書などを利用して探します。
> b 情報整理(集めた情報をどう貯めたり分類しておくか)
オンラインで得た情報は、URLをメールソフトで貯めこんでいます。なくなりそうなリンク先の場合は、クリッピングソフトにクリップ。オフライン情報は、新聞や雑誌は気になるものだけ、切り抜いています。書籍は、ページの片隅を折る、いわゆる「犬の耳」ですね。日常のことについては、最近B7版のメモ帳に書き留めることを愛用するようになりました。
ただ、あまり整理しておくという感覚はなく、あとの編集や作業のための準備という気持ちです。
> c 情報編集(アウトライン発送や文章化)
どの情報とどの情報をつなげようかというとき、まず「視点」を決めます。どんな視点で情報を切り取り、つなぐか、ですね。それを軸に、情報の配置を考えます。そこまでは頭の中で。
この段階で、最初に述べた情報の追加収集が入ります。
で、いきなり書き始めます。そして書き終えます。書き終えた後、推敲します。この段階で、新しい情報を追加することもあるし、がさっと削ることもあります。前半と後半を入れ換えることもあります。ここがもっとも大きな作業かな。
ちなみに文章量としては、最初に書いた文章は、だいたい目標文字数より1割程度多い感じで書きます。そこからシェイプアップ。いつものコラムなら800字で書いているので、まずは900字弱で書く感じです。
> d 情報発信(メールマガジン発行、Web更新)
メール発行は、メールソフトを利用して編集作業しています。Webについては、橋本さんが作ってくれた「ざつがく・どっと・こむ」のコンテンツ管理システムを便利に使っています。あれはいい。
> Q 情報収集や編集に何かツール(ソフトウェア含む)を使っていますか?
いわゆるPCから利用しているものとしては、次のようなものです。メールソフト。エディタ。電子百科事典。Google(Sleipnirの窓から直接使ってるけど)。Amazon.co.jp。更新チェックソフト。あと頻度は低いけれど、クリッピング及びダウンロードツール(紙、NetAnts、Weber)。
> Q ネタを作り出すための意識的な習慣はありますか?
情報に接しながら、どう使えるかと問うているくらいでしょうか。あえて加えるなら、得た情報をそのまま信じず、背景を探る、利用法を考えるなど、批判的に眺めてはいます。
> Q 書けない日はありますか?そういうときにはどう乗り越えますか?
あります。でも締切があるので、とりあえず書きます。下手な文になりますが、推敲しているうちに原型をとどめないほど書き直したりもして、なんとか形になるものです。書くことでしか乗り越えられません。
ん? いやまあ、気分転換に子どもと遊んだりもしますね。あれも乗り越える方法のひとつかな。あと、ほんとうに頭が疲れているときはDVDを観たり。
> Q 紹介しているマーケティングリンク集のページの内容はどの程度詳しく読ん
> でいますか?
英語なら極端なときは見出しだけ、おおむね第一段落の要旨まわりまで、よくて「key findings」までという感じ。日本語でも似たようなものです。
まあ、だいたい全体をぱっと眼に入れておけば、なんとなくわかりますよね、情報の質って。きっと橋本さんもそうだと思うけど。
> Q 1000号続けられた最大の秘密は本人としては結局なんだったと考えています
> か?
ひとつは自分を高めるための修行だと考えていたこと、ひとつはそれにつきあっていただける読者がいらっしゃったこと。この二つの相乗効果かと思います。
> Q モチベーションややる気といったことについて役立つ本やサイトはご存知で
> すか?
過去形になっちゃいますが、高橋源一郎氏による書評を読んだり、安藤忠雄氏の『連戦連敗』を読んだり、蜷川幸雄氏の『演出術』を読んだり、内田善美氏の『草迷宮・草空間』を読んだり、池澤夏樹氏の『スティルライフ』を読んだり、マリオ・バルガス・リョサの作品を読んだりしたときは、がぜんやる気がわいてきました。あ、なんか本読んだときばかり? それ以外ではブルーマンを観たり、MOPを観たり、そとばこまちを観たり、歌舞伎を観たりといった劇場体験でしょうか。
要するに、ほかの人が新しいジャンルを切り拓こうとか、既成概念を乗り越えようとしている姿に接すると、自分もやらなきゃと励まされるってことですね。
連戦連敗 | 演出術 | スティルライフ | 世界終末戦争 |
インタビューではどの本か言及されなかったが、私が好きなのはマリオバルガスリョサではこれである。 |
企業でもナレッジマネジメントや情報発信の重要性に関心は集まっている。だが、実際問題、ベースとなる情報を作ったり、発信したりするのは人間であるはずなのだ。そこではツールやシステムもあるけれど、モチベーション、自己効力感、習慣化など、維持し拡大していくための個人レベルのノウハウも同時に研究しなければ、続かない、大きな効果はないと思っている。
忘年会議でもう1人のパートナーであり、私が一方的に打倒執念を燃やしているライバル、百式管理人にも秘訣を聞いてみたいと思っているのでみなさん、ぜひご参加ください。(なお、本来定員70人だったんですが、いま120人超えました。会場はデジハリさんがなんとかしてくれました。感謝)。
2003年12月13日
朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ
・朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ
百式田口さんたちと立ち上げた、コンセプトドライブ事業部の会議は毎回、朝7時から渋谷のエクセル東急ホテル最上階の25Fフレンチレストラン「ア・ビエント」で、東京の全景を眺めながら、バイキングを食べる。
・ウーマンエキサイトのホテルの朝食特集でも眺めの良さで取り上げられている
http://happy.woman.excite.co.jp/garbo/031015/niceview1_1.html
ベンチャーなのに妙にこの日だけは、豪華にやっている。私は自宅が遠いので朝5時起きになるが、この日だけはバシっと目が覚める。先週は忘年会議の打ち合わせも早朝に会議した。
なぜ、この習慣が始まったのかというと、半年くらい前に、この本に私が感銘して、もともと早起きの田口さんらを誘ったからだった。私はこの本を読んでから家庭の事情(長男誕生で時間軸変動)で難しくなるまで、3ヶ月間、毎日朝5時に起きて、7時には会社で仕事を始めていた。この時期、会社の売り上げが著しく伸びた。
モーニングマネジメントに関する本である。著者は、以前紹介した「3分以内に話はまとめなさい―できる人と思われるために」と同じ弁護士。毎朝6時に起きて10時までに大半の仕事を終えてしまうのだという。早起き論を中心に56の、仕事の能率を高めるアドバイスが数ページ読みきりで続いていく。
「駆使して頼るなコンピュータ」「最高の情報ツールは人間である」「朝の礼状書きで人脈の形成に努める」「ファックスの意外な効用」という見出しが続く著者なので、ITの先端的な活用の話はこの本には期待してはいけない。ただ、逆にこういうアナログなノウハウと言うのを久々に聞くと、自分がITのツールに依存することで、逆にいかに視野を狭めているかということに気づかされる。
全体的には、新入社員に向けた叩き上げ社長の朝礼の訓話集みたいな本である。朝早く起きて、時間を自己管理して人の何倍も働きなさいということ。「わかっちゃいるけど、なかなかねえ」という気がしないでもないのだが、著者の文章は口うるささの裏に、人間的な温かみを感じる。素直に私は受け入れられた。
つまるところ、この本の価値はタイトルにある。早起きして10時までに通常の仕事を片付ければ効率は確実に上がるものだろう。それを実現するには、ただ5時に起きれば良い。特別な練習やツールも不要なわけだ。
個人的に3ヶ月5時起き7時出社を継続して感じたメリットは、
・1日が長くなる
・メールが終業時刻までにもう一巡できる
・営業上、先手を打つことができる
・嫌なこと、やりたくないことを朝は片付けやすい
・夜と比べて理性で意思決定を行える
・健康的
だった。
評価:★☆☆☆☆
最後に、睡眠、起床時間についての研究やユニークな情報を集めてみた。
参考URL:
・「睡眠学習」
http://www.maruhachi.com/zatugaku/zatu_19.html
「エリオットという心理学者は、次の15の言葉(関係のない言葉であるが、無意味の綴りではない)を眠っている人たちのグループに聞かせた。事前に本当に眠っていることを脳波で確かめておいた。【 Boy, egg, say, art, run, not, sir, leg, bag, row, ice, out, age, box, eat 】翌日、これらの言葉を、睡眠中に聞かなかったグループと聞いたグループの両方に記憶させるテストを行った。聞いたグループの方が、聞かなかったグループより83%も早くこれらの言葉を覚えたという結果が見られた」
・予備軍必見!社会人学生平均睡眠時間の実態 やっぱりハード?睡眠時間調査
社会人学生による社会人学生睡眠時間調査
http://allabout.co.jp/study/adultedu/closeup/CU20030429/「一般の社会人の平日の平均睡眠時間は7.12時間※となり、社会人学生の睡眠時間はおよそ2時間少ないことが分かる」
・動物の睡眠時間
http://www.sirasaki.co.jp/makura-ninngennkougaku/doubutu-suiminjikan.html
いろいろな動物の睡眠時間比較。トップは20時間眠るフタツユビナマケモノ(オオナマケモノ)、短眠なのは2時間しか寝ないノロジカ、ウマ。一般に草食動物の睡眠時間は短く、肉食動物の睡眠時間は長い。睡眠が生存に不利益なある種の動物はほとんど睡眠をしないとの報告がある。
・四半世紀でみるビジネスマン・OLの生活時間調査
短縮化傾向の『朝刊を読む時間』と『睡眠時間』
http://www.citizen.co.jp/release/99/99hajime.htm
25年に渡る比較調査。睡眠時間『5時間以下』が激増。今も昔も、理想の朝食時間は20分。理想の通勤時間は、今も昔も30分。
・列車内での快適な睡眠確保に関する研究
http://www.riss.org/research/r_04.html
新幹線での実験。まくらを使った被験者は2倍眠れて、降りてからの生産性が向上した。
・インターネット利用が他の生活時間に及ぼす影響
http://www.soumu.go.jp/iicp/pdf/200306_4.pdf
「睡眠時間に関しては職業の影響力が圧倒的に強く(無職、学生、専業主婦が長く、有職者が短い)、以下、学歴(低学歴の方が長い)、年齢(高齢者ほど長い)、年収(低年収ほど長い)の影響が強いが、「インターネット自宅利用の有無」の影響力は小さかった。」
・若い人ほど、休日は「睡眠曜日」、日常の疲れが顕著に出ている30代?!
http://www.tochigibank.co.jp/f801/timeis/03.html
若い人たちほど、休日には寝だめをしてウィークデイに備えているということが言える。
・日本睡眠学会
http://www.ashitech.ac.jp/jssr/睡眠に関する基礎知識
・睡眠学術誌Sleep(英語)
http://www.journalsleep.org/
海外の睡眠研究の論文がPDFで読める。
・貴方の潜在能力を引き出す『脳波学習機』の決定版 !!
ゴーグルと本体が一体化!!さらに使いやすくなりました。
http://store.yahoo.co.jp/royal3000/473.html
これいい!(笑)
2003年12月12日
上達の法則―効率のよい努力を科学する
仕事や趣味、英会話やスポーツ、囲碁将棋、茶道など。技能の上達とは、科学的にはどういうことなのか、上級者と初心者は何が違うのか、記憶と認知の研究で裏づけを持たせながら、わかりやすく一般向けに語る本。著者は社会心理学の教授。
■上級者に特有の性質がある
どの分野でも上級者には特有の性質が見られるという。例えば一部を抜粋すると、
【上級者特有の性質】
・退屈しにくい、疲労しにくい
・「ながら」ができる
・移調作業ができる(ギタリストはベースも弾ける)
・復元仮定作業ができる(勝負後に正確に分析)
・コツをメタファで表現できる
・他者への評価が早くでき明瞭、でもすぐには表に出さない
・一見無関係なことからヒントを得る
・細部へのこだわり、美観がある
・上級者特有のスキーマ依存エラーを犯す
といった性質である。
人間の認知学習に関わる記憶の構造がこの性質と関係があり、著者によると、こんな概念図として描ける、という。(ここではP65の図を簡略化して引用)。
情報はまず感覚器官から、ワーキングメモリを通して長期記憶へ定着する。ワーキングメモリでは、情報を、記憶できる小さな単位(チャンク)にまとめる。このチャンクのまとまりを構造的に安定させ、長期記憶に長く残す仕組みとして、スキーマとコードシステムの二つが解説されている。
スキーマは知覚、認知、思考の枠組みのことであり、ぱっと物事を見たときに一瞬で要点を把握するのに必要なメタ知識である。毎日引越しを手伝っていれば、だいたいダンボール一箱はこれくらいの重さだ、とか、車両の運転ならこれくらいハンドルを切るとこれくらい曲がるだろうといった情報の蓄積である。上級者ほどスキーマを多く持ち、それに依存する。あまり思考することなく反射的に動作できる代わりに、初心者では、ありえない奇妙なエラーを犯すことがある。
コードシステムとは、大量の情報を、記憶しやすい大きさの知識に変換して長期記憶へ定着させる仕組みのことである。この本では、ファックス文書をイメージデータとして保存すると大きなサイズになるが、テキスト化すると小さい容量で済むという例で説明された。上級者はコードシステムが発達しており、情報を圧縮して要点として覚えられる。
■上級者の秘密
面白いなと思ったのは次のような話だ。
1 上級者はチャンキングの柔軟性が高い
日本舞踊の上級者と初心者に舞踏のビデオを見せる。「意味のある単位の区切りと思うところでボタンを押してください」と指示する。つまりチャンキング実験である。「意味の単位をできるかぎり細かくしてください」「意味のある単位をできるかぎり大きくしてください」という二つの指示をさらに与えたとき、上級者ほど前者の指示にはより小さく、後者の指示にはより大きくボタンを押すことが分かった。上級者は一連の動きを頭の中で意味のある単位として、精緻にモデル化しているということになる。
2 上級者は瞬時に状況を計算できる
将棋では「手ドク」「手ゾン」という考え方があるという。将棋の勝負では、駒を今まで何手動かしたか、その駒の価値になるらしい。2手動かした駒と3手動かした駒を交換した場合、2手しか動かしていない方が「1手、手ドクをした」と表現する。これは意思決定と機会損失の問題として数学的に説明がつきそうな状況であるが、複雑な計算をしなくとも、上級者は手ドク、手ゾンを暗算的に瞬時に読み取っている。
3 退屈、疲労しにくい
上級者ほど長時間技能を使ったり、他者の技能を鑑賞しても退屈、疲労しないという。チャンキングとコード化ができているので、同じ状況でも上級者のほうが多くの情報を引き出し、無駄なく動けるので飽きないし疲れない。
この本では上達を分析するだけでなく、後半では上達のコツや、スランプの正体と乗り越え方に関しても、興味深いアドバイスが行われる。前半の理論部を理解してから読めば、どれも深く納得できて、実用的だ。
■私のギター練習の経験から学んだこと
私自身、意識的に技能の上達に取り組んだことがある。それまで触れたこともなかったギターの演奏だった。学生時代の一時期、音楽産業で働きたいと思った私は、高田馬場のヤマハ教室に通いながら、1日8時間のギター練習に2年間取り組んだ。
スタートが遅かった私は、意識的に技能の習得を分析することで、早く上級者へ追いつきたかった。そこで、アルバイト先の同僚で、芸大のオペラ歌手(なんという幸運!)に、音楽全般の学習方法や、和声学について教えてもらいながら、音大受験の参考書や問題集を解いた。携帯型のシーケンサーを持ち歩き、アルバイト先で作曲も行った。
理論学習はそれなりに効果があった。この本にも身体的練習だけでなく、理論の習熟が上達につながることがあると説明されている。指が押さえるコードの弦一本一本が、和声的にどんな意味を持っているか、知っていると楽譜の暗記が著しく良くなった。
また、毎日の練習では、まず上達するにつれ指の痛みや、疲れがなくなることを知った。指の運びは上手になればなるほど、ゆとりを持って弾ける。指の力も抜けて長時間の演奏も楽になる。演奏しながら、サビの部分の表現について考える余裕もできる。
世界のロック三大ギタリストに数えられるエリッククラプトンは「スローハンド」の異名を持つ。もちろん、運指が遅いのではない。動きに無駄がないので速いパッセージを弾いていても、ゆったりとして見える。
結局、ギターの道は先生に異常に上達が早いなと褒められた。大学祭でバンド演奏をしたりもした。でも、ヤマハの教室で隣の中学生が難しい曲を、初見で鮮やかに弾いてしまうのを見て、自分の限界を知り、断念した。幼少の頃から楽器に親しみ絶対音感のある人には適わないと感じた。しかし、意識的に上達の法則を毎日のように考え、実践してみた2年間は、貴重な体験だったなあと思っている。この本にはそうして苦労して学んだのと同じことが、あっさり明瞭に書かれていて、ちょっと(かなり)悔しい読後感ではある。
評価:★★★☆☆
参考情報:
ちなみに学習法で最近読んだ本も紹介。著者は灘中、灘高を出て、東大理科I類合格、その後、国家公務員試験I種2年連続合格、NHK記者・アナウンサー、医師国家試験合格、政策秘書試験合格、衆議院議員公設第一秘書、東大大学院医学博士課程を1人で達成してしまった超人。次は政治家を目指しているらしい。内容については...。結構ありがちなアドバイスが多いと感じた。基礎能力が恐らく異常に高いから、できることのように思えた。生来の天才が意識的にどういう学習法を行い、推薦しているかという点では読む価値ありだが。
敢えて評点なし。
2003年12月11日
毎日のニュースチェックツールに求めるもの
■Bulknewsと私
Bulknewsの宮川さんと初めてお話した。日本のRSS技術実用化の第一人者の人である。宮川さん自身は上場ベンチャーの技術担当役員で、表の顔ではPerl言語使いとして有名である。世界のPerlモジュールレジストリCPANへも多数のコード(世界一という説あり)を登録されていて、XML+Perl分野では国際的にも名前が知られている。そもそも、宮川さんが始められた頃というのは、まだWebサイトのメタデータに注目する人は少なかったし、国内に情報はほとんど皆無だった。先見の明と実装技術ありまくりである。
・Bulknews
http://bulknews.net/
・Perlユーザコミュニティ
http://shibuya.pm.org/
ご存知でない方に説明すると、Bulknewsはニュースポータルである。外部のたくさんのニュースサイトをロボット巡回してHTMLを取得し、そこから記事の見出しやURL情報をXML形式に変換してデータベース化している。
私はBulknewsが開始された頃から知っていた。で、宮川さんには内緒で2001年ごろ、Bulknews専用RSSリーダーを自作し、未来のWebはこうなるのだ!とか、人に見せてはプレゼンしていた。アプリケーションは私の作でも、元のデータは宮川さんが作っていたわけで、とりあえず、今回、謝った(笑)。
宮川さんの正式な許可を頂いたので当時作ったアプリケーションを公開してしまう。2年前のコードを引っ張り出してきたのでサポートは一切できない。
・DS_News.exe For Windows(画面例のレイアウトはマニュアル操作。後で解説)
ここをクリックするとダウンロード file
使い方は起動してスタートボタンを押すと最近のITニュース一覧が表示される。気になるタイトルをクリックすると右側に内部ウィンドウとしてWebが表示される。
基本機能は今では当たり前のRSSリーダーと同じだが、少し違うのは、
・閲覧中のWebページを整列させて比較できる
・メモ欄がついていてユーザがコメントを書くことができ、
・メモつきでURLとタイトル情報をボタン一つで誰かにメール転送できる
という程度だろうか。一応ニュースチェックには今でも使えると思う。技術的には陳腐だが、これでも2001年ごろは情報が少なくてがんばって作ったのだ。
現在の代表的なRSSリーダーをふたつ紹介。
・Glucose
http://glucose.dip.jp/Zope
日本発の高機能RSSリーダー。トラックバック情報まで表示できる。P2Pを使った情報交換機能も実験的に搭載されている。
・Sharpreader
http://www.sharpreader.com/
米国製だが日本語も表示可能な代表的ニュースチェッカー。
そもそもRSSリーダーなんぞや?という方はこちら。ツール大紹介。
・blogを始めよう!!現在流行しているblogの魅力に迫る!
http://www.forest.impress.co.jp/article/2003/12/11/blog.html
■現在のRSSリーダーに欠けているもの
一応便利なRSSリーダーだが、個人的には不満も多い。登録するニュースサイトの数が増えて数万件もデータベース化してしまうと、情報洪水で、どれを読んでよいのか分からなくなるのだ。
これは私の例だけれどニュースサイトを登録しすぎてこんなことになってしまう。もう読めない。
1 情報の意味のあるレイアウト表示
現状のRSSリーダーの一般的な表示はこんなかんじである。
これでは正直、大量のニュースを一覧できても、気になるニュースを見つけることができない。登録キーワードにマッチしたものだけを表示させる機能があるが、これでは新しい発見をすることが難しい。
紙の新聞は重要度に応じて記事の占める面積や配置、見出し修飾を慎重に選んで決めている。もしすべての記事が同列に並んでいたら、新聞も読む気がしないはずである。理想的なのは米国のGoogleNewsのように、言語処理のAIを使って、自動的に最適なレイアウトとデザインを作ることだ。
・GoogleNews
http://news.google.com/
2 オーバービュー&フォーカス(全体俯瞰と部分注視)機能
現状のRSSリーダーは、詳細な情報を見ようとするとBlogサイトを表示するしかない。これではウィンドウをいくつも立ち上げてWebを見るのと大差がなくなる。RSSリーダー内で見出しの発見から詳細記事の確認までを簡単に出来て欲しいと、感じる。大量の情報の全体と部分を見るインタフェースのことである。
上記2点に関係する研究を2つ紹介する。
■毎日のニュースチェックの効率化の研究
米国マイクロソフトリサーチは、巡回ニュースチェックの効率化について興味深い研究をしている。複数のニュースサイトから記事を1ページに集約したスタートページを数種類つくり、ユーザの使い勝手を評価した。
・Web Montage: A Dynamic Personalized Start Page
Webモンタージュ:ダイナミックで個人最適化したスタートページ
http://research.microsoft.com/~horvitz/montage/montage-www.htm
本論分では、3つの仮説を検証している。
仮説1:ユーザは1クリックで巡回チェックしたい目的ページへ到達することを望んでいる。(コンテンツを発見する努力を最小化したい)
仮説2:情報を探す文脈に基づいたリンク情報とコンテンツ表示によって、巡回チェックを便利にすることができる。
仮説3:過去のアクセスのパターンから、以後のWeb閲覧行動を予測できる。
ユーザはランダムにページにアクセスしているわけではなく、一度見た信頼できるページを繰り返し訪問する傾向があると考えられる。
意外にもユーザに選ばれたのは、見出しリンクのみの最もシンプルなデザインだった。リッチすぎるスタートページは人気がない。また昼間はビジネス、夜はスポーツ記事を多めにするなど時間帯や、デスクトップ作業状態などに応じて内容が変わっても良いのでは?といった示唆がある。
■オーバービュー&フォーカス
・Detecting Web Page Structure for Adaptive Viewing on Small Form Factor Devices
http://www2003.org/cdrom/papers/refereed/p297/p297-chen.htm
RSSによるニュースサイトからの収集は基本的にページが単位である。しかし、ユーザは必ずしも1ページのすべてを必要としているわけではない。ここでは、PDAの小さな画面で、PC用のニュースサイトを手早くチェックするためのコンテンツ抽出技術が研究されている。このインタフェースはいいなと思った。情報全体と部分をいったりきたりできる。
私が欲しいニュースチェッカーはつまり、
1 複数のニュースサイトからニュースが集約されて
2 新聞のような意味のあるレイアウトと修飾が施されて
3 全体を眺めたり、個別記事を読んだりが容易にできる
というもの。早く誰か作ってくれないかな。皆さんはどんなニュースチェッカーを使いたいですか?。
■XMLビジネス白書をよろしく、Perlデータマンジングいいです。
ところで、この記事において頻繁にでてきたRSSというキーワード。私は先日発売されたばかりのXMLビジネス白書において、その技術の最新事情(ブログ利用)と歴史、統計、今後の展望について4ページの要約記事を書いている。興味のある方はぜひ読んでいただきたい。
・XML MAGAZINE Special Issue XMLビジネス白書 2004(翔泳社)
12章 WeblogにみるRSS/RDFの活用動向/橋本大也
それから宮川さんは、こんな書籍を翻訳されている。
「データマンジング」とは、本書によると「あるフォーマットのデータを受け取り、その他のフォーマットに変換することすべて」を表す。例えばテキスト、CSV、HTML、XMLなどの相互変換の話である。私は発売日に買って以来、自宅のマシンの横に置いて参考にしている。多様な形式変換のバリエーションが、ここまでまとまって読める本は他に知らない。Perlで文書処理を行う人、Perl+XMLシステムの設計者必携。
2003年12月10日
ブックマークの技術と可能性
■書籍のブックマーク
私は本で気になった部分を残して活用するには、
・読みながらページの上の端を、重要度に応じた面積で斜めに折り曲げる
- 重要なほど大きく折り曲げるのがポイント
・後日、折り曲げた部分を探して、気になった原文と考えをPCに書き出す
・メモのファイルは全文検索できるようにしておく
をしている。
この方法も完全に満足ではないのだが、
・本以外に用具が不要
・書き込むことで読む流れが中断されない
・いくつでも折り曲げることができる(栞やポストイットは有限の手持ち数上限)
・書き込みと違って折り曲げは発見しやすい
というメリットを感じている。
デメリットは、
・1週間以内にPCに書き出さないとなぜ折り曲げたのか分からなくなる。
- これが最大の面倒
・本に跡が残るので借りた本ではできない
- これは統計的に読み返し率は低いし潔癖症じゃないので自分のならOK
すべてのページにセンサーがついていて、折り曲げたり、ゆびでなぞった箇所は
帰宅後に、PCと本を近づけると、その箇所のテキストが書名やページ数などとと
もに、PCに無線転送されるといいのにな、と思う。
参考URL:
・「読書と電子ブック利用」についてのアンケート結果
http://www.ku-so.co.jp/result/2002/348/
発表電子ブックに期待していること第2位 電子栞。
・電子栞
http://www.c-seas.co.jp/NY/ad/19991121.html
American Honda Motorが1999年に使った広告表現。オンラインとオフラインの栞を融合。
・eMarker
http://www.neowing.co.jp/special/emarker/
ラジオやテレビで「この曲ちょっと気になるけど、何という曲だろう?」という曲をボタン一つでブックマークでき、後で楽曲データにアクセスできる。
■ブックマークの自動分類の技術
インターネットでは、書籍のページではなく、WebページのURLをブックマークする。ただ、私はブックマークの分類が面倒で苦手である。それよりは、ひたすら集める方が効果があると信じてブックマークを続けた結果、会社のメインマシンはブックマークが1列に2000件ほどある。スクロールで最下部へたどるまでに1,2分はかかる代物だ。
私の会社データセクションでは、ブックマークの自動分類には何年も取り組んでいる。普段使う調査向きのブックマーク情報は、その技術のデモサイトにだいたいあるからブラウザにはブックマークしていない。
・4im.net(データセクション)
http://beta.4im.net/index.html
関連検索と自動分類技術を使って1万件のマーケティング情報のブックマークをデータベース検索できる。ある情報と似た情報をクリック一つで検索できる。ブックマークに関連するキーワードも表示される。左サイドのカテゴリは自動分類で行われている。といえばサーバの応用例。現在はパートナーの小橋がソースとなるURLを手でクリッピングしているが、将来的にはWebからのロボット自動収集に取り組みたい。
ブラウザ上で、とにかくブックマークしたら、自動的に最適なカテゴリへ分類してくれると便利だという考え方もある。そういった研究が大学で行われている。既存のブックマークから人間の分類嗜好を学習して自動分類してくれるもの。実用化に期待。
・ユーザの趣味・嗜好を汲み取ったブックマーク情報の動的分類
http://www.muraoka.info.waseda.ac.jp/~shibata/thesis/FIT.pdf
・閲覧履歴を反映したコンテクスト依存型Webブックマーク
http://www.dl.kuis.kyoto-u.ac.jp/papers/2001/doc/dbweb2001_nakajima.pdf
■サムネイル、インクリメンタル検索で一層便利に
・MarkVisual Marks 1.2.1 (Freeware!)
http://www.6bytes.com/visualmarks.html
ブックマークすると、Webのスクリーンショットのサムネイルが撮られてURLと一緒に保管される。サイト名やURLが思い浮かばなくても、サムネイル一覧を見ることで必要なサイトを発見できたりする。そして検索にはインクリメンタル検索が実装されている。
インクリメンタル検索とは、文字入力が一文字あるごとにデータベースを検索しリアルタイムに検索結果を表示することである。
例えばブックマークに、
1 www.yahoo.co.jp
2 www.yoroshiku.net
3 www.yoiyoi.com
の3つのURLが登録されていたら、検索フォームに、「www.ya」まで入力すると(もしくは「ya」のみ」)、www.yahoo.co.jpが検索される。こういった機能はOutlookやBeckyの宛先入力でもおなじみである。MSIEにも履歴からURL自動補完する機能はあるが、このソフトの場合該当するサムネイルがビジュアルに候補表示されるので斬新である。
参考URL:
・Migemo フリーのインクリメンタルサーチエンジンソフト
http://migemo.namazu.org/
・神速の検索 X1.comの紹介。デスクトップでインクリメンタル検索
http://www.100shiki.com/index.php?20030911
■ブックマークをキーワードで検索、巡回チェック、ビジュアライズ
このソフトは便利である。差をつける(笑)ためのツールのひとつとして、私は何年か前に密かに使っていた時期があった。今では便利なツールが増えたのでインパクトは控えめであるが、高機能な巡回更新チェッカーである。
10段階評価や色分けで管理できたりと機能は豊富だ。一番便利に思ったのは、HTMLに含まれるメタタグからページのキーワードを収集して、検索できることである。タイトルからだけでは分からないサイトでも検索しやすくなる。
・Powermarks
http://www.kaylon.com/power.html
LinkDriverは、リンクを先読みして履歴やサムネイルを表示してくれたり、リンクの構造をビジュアルな地図として表示するソフト。非常に意欲的。先読みと履歴のサムネイル表示を行うLinkDiver プラグインは無料でダウンロードできる。
・LinkDriver
http://linkdiver.mcon.ne.jp/products/index.html
参考URL:
・iBrarian
http://www.ibrarian.com/homepage.html
これも高機能なブックマーク、クリッピング管理ソフト。
・NetXtract
http://www.netxtract.com/
クリップした単語周辺をひとつの意味の単位記事としてデータベースへ登録。単語の頻度データなどをブラウザサイドバーに表示。
ざっと上記のような、先進的なブックマーク周辺のテクノロジーが登場しているが、ユーザはWebを使えば使うほどブックマーク情報も増えていく。パーソナルな知識ベースを作るうえで、ブックマーク技術はますます重要になっていくのではないかと考えている。
そういうわけで皆さん、最高のブックマークを交換する
をよろしくお願いします!この会議こそ究極のブックマークテクノロジーなのです。(?)。
2003年12月09日
瞬間情報処理の心理学―人が二秒間でできること
とにかくコンセプトがユニークで類書がほとんどない、気がする。
この本を読むとこんなことが、一杯分かる。コメントしながら、考えを広げる参考URLも探してつけてみた。
■私の発見:新幹線の電光掲示板は6文字、2.5秒の裏づけ
人間が2秒以内で処理できること=瞬間情報処理について、12人の認知心理学研究者たちが、各専門の観点から書き下ろした小論集。第一部では理論、第二部では日常生活に役立てるコツをまとめていく。
例えばこれは私が最近撮影した2枚の写真である。東京駅八重洲口にある大きな電光掲示板と、東海道新幹線のぞみ号内の電光掲示板だ。東京駅のほうは分からないが、のぞみの電光掲示板は横6文字。左端に出た文字が右端へ消えるまでに2.5秒程度かかっていた。こういった掲示板の文字数や流れる速度は科学できるのだろうか。東京ー名古屋間で随分悩んでしまった。
この本によると電光掲示板は、大抵は日本語は7〜8文字、アルファベットならその倍の量が2秒で処理されるように設計されているという。それが人間の平均的な視覚探索能力であるという。
・RSVPにおける眼球運動についての一研究
http://www.sahf.cc/human/thesis/2-11.htm
都内の電光掲示板を調べまくり。文字数や速度の調査結果は?
・RSVPにおける適切な速度と適切なスパンに関する一研究
http://www.sahf.cc/human/thesis/2-8.htm
電光掲示板で読みやすい文章について研究
■息が合う、間
彼や彼女と「息が合う」などというが、実際に計測してみると、対話の相手、歌の歌い手と聴衆の呼吸は同調することが分かっている、という。発声と発声の間の間(マ)が、その呼吸の同調を作り出す。人間の聴覚はは100ミリ秒という瞬間をも認識できる。そのため、その微妙の間のおかしな合成音声と本当の声を聞き分けてしまう。
ちょっと手元のプログラムを使ってこのコラム関連のもうひとつの記事を音声ファイル化してみた。
やっぱり、機械と分かってしまうと思う。逆に、この間の研究と合成の精度が高まると、人間なのか機械なのか分からない音声が作れるということでもある。
・Naunce
http://www.nuance.com/
最先端の音声合成ソフトウェア企業。デモで音声合成の対話例を聞く事ができるが、機械合成とは区別がつかないくらい、活き活きとしている。
・Microsoft Research Asia、感情表現豊かな音声認識で次世代サービス開発中
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/11/28/18.html
「MSRAの研究では、読み上げる文章を感情的にも分析し、エキサイティングなスポーツニュースなら興奮気味に、重大な犯罪事件のニュースならトーンを落としてといった、よりナチュラルな音声の実現が目標とされている」とのこと。
・Microsoft The Speech Technology
http://research.microsoft.com/stg/default.aspx
■正確なキーボードタイピング
キー押しの間隔は熟練者で平均190ミリ秒。素人で300ミリ秒。正確度は1文章内に5-10文字程度のミスがある場合が多いが、意外なことに熟練者と素人の差は大きくはないのだそうだ。しかし、どちらもマイペースでの入力のため入力速度と正確さのトレードオフ相関は存在する。つまり、普段は間違えてまで早く打とうとしないが、慌てるとミスがでるということ。
・キータイピング練習 e-Typing 腕試しレベルチェック
http://www.e-typing.ne.jp/index.asp?mode=levelcheck
さあ、どうぞ!歴代トップは700点台...。
私もやりました。208pt、B+。45秒58.正誤率97.1秒。「あと一歩で上級者ですよ」とのこと。みなさんも試してコメント欄にでも報告してください。
■読みやすい文章
日本語文書は一般的には、漢字が25%〜45%。かなが45%〜65%、残りがカタカナ、数字、記号。読みやすい文章を作るには、漢字使用率を30%程度にしつつも、大事な用語は図として認識できる漢字で書く、句読点はなどの科学が紹介されている。速い読み手は。眼球運動が最適化されていて、1行を165〜170ミリ秒で認識し、1分間に1200字を読むことができる。
・キャプションと来館者 −展示メディアにおける文字情報の評価−
博物館展覧会調査研究センター
http://www.museum.or.jp/IM/report/pdf/MD51-45.pdf
博物館の展示の解説の文章はどうあるべきか、文字量、配置、配色など。世界の博物館の経験から学べる。Web制作でも参考になるはず。
・ネットなんぱマニュアル>E-Mail基礎編>5.国語のオベンキョ?文章の印象を考える5-2) 硬派文とナンパ文
http://www.tako.ne.jp/~a3-mori/netn/e-mail_kiso/kiso_5.02.htm
「優しい丸い雰囲気を醸し出したければ、「ひらがな」を多く。知的に見せたければ「漢字」を大目に。ちょっとあか抜けた捻った雰囲気を醸し出したければ、「カタカナ」を上手に織り交ぜると良いでしょう。」など異性接触に最適化。実例多数。
このほか、野球のバッターが本当にボールの縫い目が見えている可能性や、自動車運転時の一瞬の情報判断を最適化するための科学的ノウハウなど、著者が多いだけに盛りだくさんの内容となっている。著者の数が多いこともあり、全体として、ひとつの方向性には収束しないのだが、瞬間でできることのバリエーションを知ることは、情報やインタフェースのデザインに効果的につなげていくことができそうだ。
2003年12月08日
ゲーム理論トレーニング
■ナッシュ均衡とパレート最適
ゲーム理論で有名なケースは、メリル・フラッドとメルビン・ドレッシャーによる囚人のジレンマである。この本にもゲーム理論の代表例として登場する。
囚人Aと囚人Bがいる。
1 二人とも黙秘すると懲役1年ずつ
2 二人とも自白すると懲役2年ずつ
3 一人が自白し、一人が黙秘すると、自白した方は釈放、黙秘した方は懲役3年
この状況で、あなたが囚人Aだった場合、自白すべきか、黙秘すべきか、を考える。
有名な理論にはナッシュ均衡とパレート最適がある。ナッシュ均衡は、囚人同士が利己的に考え、自分の損得のみを合理的に考え必死になっている(均衡点)状況での、非協力ゲームを前提としている。この本での定義は「自分以外の全プレイヤーが均衡点の戦略をとるとき、自分もそれをとらないと得にならない」状態のことである。
ナッシュ均衡の戦略を両者が取ると、裏切りあうことで「自白ー自白」になる。結果として両者共に2年の懲役に服すことになる。
経済学者ビルフレート・パレートが考えたパレート最適とは、この本の言葉では「全員の状態を動かしてかまわない」条件下で、「自分の利益を増やすには、他人の利益を減らすしかない」ような状態のことである。つまり全体にとっての合理性を目指す。
パレート最適の戦略では、協調することになり「黙秘ー黙秘」になる。その結果、両者共に1年の刑に服すことになる。これ以上にどちらか片方が得をしようとすると相手を裏切り、自分だけが自白する必要がある。まさにそういう状況に落ち着いている。
結局、必死に自分だけの利益を考え相手を裏切ると両者ともに懲役2年になるが、全体の合理性を考えて両者が協調して行動すると、懲役1年で済む。
■Webで囚人のジレンマを体験してみる
この囚人のジレンマは一回だけではこれといった戦略を考えるのが難しいが、何度もゲームを繰り返すプロセスでは、相手のこれまでの出方から相手の戦略、信用度などが推測できるようになる。
本から少しはなれてWebで囚人のジレンマを体験できるサイトを紹介する。(Javaアプレット)
・The Prisoner's Dilemma
http://www.xs4all.nl/~helfrich/prisoner/
このサイトでは囚人のジレンマで、以下のような報酬を設定する。報酬は高いほど良い(懲役年数が少ないということ)。ユーザはJavaAppletでbの値を上下させる。つまり裏切る場合の報酬を設定すると、相手との間で、協調と裏切りがどのようなパターンで発生するかをアニメーションとして、確認できる。
opponent(相手) | |||
---|---|---|---|
cooperate(協調) | defect(裏切り) | ||
player(あなた) | cooperate(協調) | 1点 | 0点 |
defect(裏切り) | b点(設定) | 0点 |
b=0の例 これだと裏切る意味がないので協調(青)ばかり
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b=1の例 この段階でも協調の方がリスクが少ない
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b=1.85の例 裏切り(赤)が限りなく活性化している
View image
b=2の例 裏切りばかりが圧倒優勢
View image
b=3の例 ひたすら裏切るのがよいので勢力全開
View image
では、次に一回一回の戦略を体験できるアプレットもある。
・Repeated Prisoner's Dilemma Applet
http://www.gametheory.net/Web/PDilemma/Pdilemma.html
こちらでは、Collude(協調)とCheat(裏切り)を毎回選択する。相手はこちらの戦略を学習して、対応してくる。協調が続けば相手も協調し続けるが、こちらが裏切ると相手も裏切ってくる。また初回は何を出すか分からない。
報酬表は以下のようになっている。
opponent(相手) | |||
---|---|---|---|
Collude(協調) | Cheat(裏切り) | ||
player(あなた) | Collude(協調) | あなた20:相手20 | あなた0:相手30 |
Cheat(裏切り) | あなた30:相手0 | あなた10:相手10 |
25回の選択を5ラウンド繰り返し、コンピュータに勝てるかどうかを競う。だまされたらだまし返して、やられっぱなしでは終わらないことを示す「しっぺ返し」戦略の有効性や、初回から協調を続けて25回目の最後で裏切って逃げる戦略などが考えられるがみなさん勝てるだろうか。結構難しく、単純な囚人のジレンマも奥深いことがわかってくる。
・GemeTheory.Net
http://www.gametheory.net/html/applets.html
このサイトには囚人のジレンマほかさまざまなゲーム理論シミュレーションのアプレットが公開されていて遊べる。
■ゲーム理論の展開
囚人のジレンマはもちろん基本中の基本なのでこの本ではさらに複雑な事象も広く触れられている。
ゲーム理論は株価分析と投資の決定や、取締役会の多数決、政治の選挙などの戦略に応用されている。この本でも投資にゲーム理論を使って巨額の富を得たジョージソロスの話や議席を減らしたことで逆に影響力を高めた日本の政党の例などが紹介されている。
著者は、数式を限りなく排除し、文系の人間向けにゲーム理論の応用範囲の広さや、面白さを、分かりやすく説明することに成功している。他の難解なゲーム理論の本と違って話題の選び方がとっつきやすく、理論の説明が無駄をそぎ落としており、シンプルである点が高く評価できる。
理論の解説を終えた後半の章では、ベンチャーの新規市場参入の戦略や、日本、アジア、世界経済の動きの読み方、企業のモラルハザード回避の仕組み、戦争と平和など、ゲームから見た現代の読み解きが行われる。ここも秀逸である。
評価:★★★☆☆
参考URL:
ところでナッシュ均衡を考えたナッシュ教授は苦難の人生に悩まされながら、晩年ノーベル経済学賞を受賞した、このアカデミー賞映画の主人公になった人である。
私はかなり感動してしまいました。見てない方はお正月におすすめ。見るのであれば解説は読まないほうがいいです。
2003年12月07日
情報検索のスキル―未知の問題をどう解くか
「検索」といっても、GoogleやYAHOO!の使い方の本ではなく、もっと広い意味での情報検索に関する考察の本。中公新書だし表紙も題名も地味。関西から帰る新幹線の車中で読む勉強本として買った。古典的な情報検索の心構え的な話だろうと、たかをくくって読み始めたら、いきなり冒頭の「ブルックスの方程式」の節からグイグイ引き込まれ、東京に着く頃には読みきって大満足。東京駅で隣の人に情報論を語りたくなって困った(笑)。
情報探索や問題解決のモデルが多数紹介されているのが特徴である。幾つか紹介してみる。詳細な解説が事例も豊富に使って、本の中では語られている。
■ブルックスの方程式
私たちは誰かと話をするとき、情報のギブ・アンド・テイクを意識したりする。一般的には、情報をもらうことで知識が増える、と考えがちだ。「情報の蓄積」だとか、「知識がひとつ増えた」、などという言い方をする。情報や知識はアタマの中に、足し算で追加できるもの、と考えることが多い。
しかし、この本では冒頭で次のような情報の定義を紹介して論を始めている。
情報とは「メッセージの受け手の知識に変化を及ぼすモノ」である。
これは先日紹介した情報デザイナーのリチャード・S・ワーマンが「それは情報ではない」というときの意味に近い。シャノン、ウィーバーによる1984年の論文「コミュニケーションの数学的理論」の中で、「情報とは受け手が「不確かなものを削減する」ものである」とした、定義にも似ている。
受け手の知識構造に変化を与えるものこそ情報なのだ。そして、情報学者ブルックスはその影響を数学的な方程式として説明した。知識は単なる足し算ではない。情報のやりとりとは、方程式の右辺(情報)と左辺(受けての知識構造)が影響しあう、もっとダイナミックなプロセスなのだ。
日常の感性とこの方程式はマッチする。今の私の知識を変化させてくれない情報は役に立たないという簡単な話だ。
■バンデューラの多重ゴールモデル
著者があとがきで強く影響を受けたと告白した、学習心理学者バンデューラの社会的認知理論、多重ゴールモデルの話も興味深い。引用してみる。
「
つまり人間の日常行動は、(1)未来の望ましい出来事(遠隔ゴール)を心に描き、(2)個々の行動の成果を評価する基準(直近ゴール)を設定して、それを実現させる可能性の高い行動を起こすことで生じている
」
つまり人は何かをするとき、大きな目的とそれに向かう、幾つもの小さな目標を立てるということだ。そして小さな目標達成のために現実の行動を起こす。このモデルが物理現象や一般的な社会現象と異なるのは、過去が現在に、ではなく、未来が現在に影響していることにある。そして終始一貫して同じ目的のために行動しているのではなく、とりあえずは目の前の行動に必要な情報を探している。
■クールトーの情報探索プロセスモデル
クールトーの情報探索モデルは情報探索が進むにつれての、感情の動きを意識しているところが面白い。自己効力感(モチベーションやインセンティブのこと)が、情報探索や問題解決の成功に深く関与していることがこの本では繰り返し語られる。私たちは機械ではないから、効率よく作業を進めるには、心理面をうまく制御する必要がある。
・Information Searching Process(Carol C. Kuhlthau)
http://www.ils.unc.edu/tangr/albanycourses/602fa00/kuhlthau_files/v3_document.htm
■ウィルソンの情報探索モデル
情報学者のエリスが考え、同僚のウィルソンが8段階のフローモデルにした情報探索モデルは、私たちがネットを使って情報を探したり、問題解決を行うのに非常に近いモデルと思った。
・ウィルソン教授のサイト
http://informationr.net/tdw/
著者は、この本で、機械的な情報処理ではなく、目的や感情を持ち、特定の文脈に生活している生身の人間の情報探索モデルを研究対象とし、立論している。各プロセスを支援する情報アプリケーションやWebサイトは、こうした生身の人間を総合的に、支援する設計になっている必要があるのだなと勉強になる。
例えば、現状の検索エンジンは、ユーザが現在どのプロセスにいるか、どんな感情を持っているか、過去に何を調べてきたかをまるで反映していない。何度同じキーワードを入れても同じ検索結果が出るということは、当たり前のように感じてしまっているが、よく考えたら変である。知識のある誰かに同じ質問を繰り返ししたら、生身の相手は、普通は別の答えや拡張した答えを返してくれるはずなのだ。
生身の人間の情報探索を支援するには、こんなアプリケーションが求められているのではないだろうか?。
・検索すればするほどヤル気がでてくる検索エンジン(結果にたまにジョークも入る)
・調べれば調べるほどあと少しで終わりそうだと分かる検索エンジン
・送受信すると気持ちのいい、気分が爽快になるメールソフト
・びっしり書き込まれると、忙しさよりも充実度を感じさせるスケジュールソフト
・知識の量に応じて、適切な用語で説明してくれるヘルプファイル
・参考:情報と知識の設計者が持つべき情報と知識
http://sentan.nikkeibp.co.jp/mt/20031202-01.htm
この記事とだいぶ重なりますが、考えをまとめたものを先日書きました。
ネットからは一歩離れて、普遍的な情報探索や問題解決を考えたい人に非常におすすめ。
参考URL:
・THE CONCEPT OF INFORMATION
http://www.capurro.de/infoconcept.html
ここに紹介される情報学者たちの理論も含めて最新の議論が読める。
評価:★★★☆☆
#なんでこんなことを最近考えているのかと言うと、会社で提供しているこの情報サービスをどう進化させていけるかを議論しているからです。4im.netについても、ご意見ご感想求む。
・マーケターのための発想支援サイト4im.net
http://beta.4im.net/index.html
2003年12月06日
心の動きが手にとるようにわかるNLP理論
Neuro Linguistic Programming(神経言語プログラミング)の本。人間を幾つかの理論で、タイプに分けて、コミュニケーションや交渉の対応策を探る。
例えば、人間には、
VAK代表システム(五感のこと):
Visulal 聴覚
Auditory 聴覚
Kinesthetic 体感覚(味覚、嗅覚、触覚)
の3タイプがいる、という。
ビジュアル重視な人は出来事をまず絵や画像としてとらえ、話すときには目の前に何かがあるかのような表現で話す。聴覚重視の人は、頭を傾け耳に触れて音を聴くように話す、体感覚派の人は、胸に手を当てて体と会話するように話す。相手がどの代表システムを重視しているタイプ化を、使う言葉や態度から推測し(カリブレーション)、同じような表現をすると意思疎通がうまくすすむ、というのが主なNLPの考え方である。
また、質問によって、相手が8種類ある成果や目的(アウトカム)の種類のうち、どれを重視するかで、以下のような分類アプローチを行ったり、
タイプ名(重視すること)
目的型(〜へ向かって)
回避型(〜しないように)
内的型(自分に焦点)
外的型(他人に焦点)
経過型(手順・方法)
結果型(到達視点)
大枠型(詳細よりも概観)
詳細型(細かく理解)
能動型(積極的)
受動型(受身的)
時間軸のどれを重視するか、によって、
未来型、現在型、過去型
のように分類してみたりする。
人間をパターンに分類して対応策を考えるというのは、面接作業や営業など、毎日のように新しい人と会う仕事では、ある程度必要な、思考のような気がする。NLPで一番、面白かったのは、相手がどのタイプかを読み取る方法論である。
「NLPでは、右上が「未来を作る位置だといわれています(左右が逆の人もいます)。プレゼンや企画提案の時、相手の視線をそこに誘導して、「もしもできたらどんな感じですか?」と問いかけてみましょう。ラポールが十分にとれていれば、相手の意識を未来に向けることができます」
相手が、どちらの方向に目を向けて話しているかで、
右上:未来のこと、つくりごとをイメージしている
右下:体感覚を感じている、感覚を再現している
左上:記憶されたイメージを思い出している
左下:自分と会話している
のように判断できるという。
確かに私自身が、過去と未来を考えるときには、それぞれ左下と右上に目がいきがちなので、なるほどね、と参考になった。
評価:★☆☆☆☆
■未来は右上という発想のブラウザー
なぜ方向と時間軸が結びついているのかは以前非言語コミュニケーションの本で読んだ。
英語も日本語も文字は左から右へ書く。だから、左に過去、右が未来なのだ。そして人間の体の上部に、アタマがあるので、良いこと、重要なこと、理知的なことは上に表現されやすいそうだ。「より上の地位へ上がる」だとか「地に落ちる」とか「上からの指示」といった表現は世界中に共通して、あるらしい。
経営者のよく使う「右肩上がりの成長」も、未来は右上にあるべきことを意味している。成長率を表すグラフも大抵は右上へ向かって伸びて行くグラフを書く。逆に作るとわかりにくくなる。
Browse3Dというユニークなブラウザーがある。このブラウザーは立方体の内側の各面にWebを表示する。
・Browse3D
http://www.browse3d.com/
・分かりやすいデモムービー
http://www.browse3d.com/downloads/Browse3Dhigh.wmv
正面に今見ているWebページを表示し、左右にも別のWebページを表示する。向かって左側には直前にみていたページ(履歴)が表示され、右側には今見ている正面のページからリンクされている「次に見るページ」候補がサムネイル表示される。これなど、まさに未来=右の理論を実装していると言えそうだ。
立方体の状態をブックマークとして保存することができるので、関連するページのセットを一度に上下左右のエリアに呼び出し表示させることができるて便利である。似たようなアプリとして2CEがある。
・2CE
http://www.2ce.com/
参考URL:
人をタイプで分類と言うと、
・ネットピープル分類学 その傾向と対策
http://namazu.org/~satoru/pub/handout/shibuyapm4/
ネット業界の問題人物系を分類。いますねいますね。ってオマエも該当するだろというツッコミはなしで。。。
2003年12月05日
外来語言い換えプログラムとVBScriptのススメ
外来語言い換えプログラムとVBScriptのススメ
テーマが二つ。後半は技術チックな話なので興味ない人は飛ばしてください。
■外来語を言い換える
国立国語研究所が、こんなことを言っているのだ。
「
近年,片仮名やローマ字で書かれた目新しい外来語・外国語が,公的な役割を担う官庁の白書や広報誌,また,日々の生活と切り離すことのできない新聞・雑誌・テレビなどで数多く使われていると指摘されています。例えば,高齢者の介護や福祉に関する広報誌の記事は,読み手であるお年寄りに配慮した表現を用いることが,本来何よりも大切にされなければならないはずです。多くの人を対象とする新聞・放送等においても,一般になじみの薄い専門用語を不用意に使わないよう十分に注意する必要があります。ところが,外来語・外国語の使用状況を見ると,読み手の分かりやすさに対する配慮よりも,書き手の使いやすさを優先しているように見受けられることがしばしばあります
」
そして活動として、「外来語」言い換え提案を2回行っている。カタカナのよく使われる言葉に日本語を割り当てるわけである。2回で計114語の言い換えの提案が審議会で決定された。
・国立国語研究所「外来語」言い換え語等一覧
http://www.kokken.go.jp/public/gairaigo/Word_List/iikaegotou_dic.html
例えば、「アイドリングストップ」は「停車時エンジン停止」と言いましょう、だとか、「アナリスト」でなくて「分析家」であるとか、「シミュレーション」と言わずに「模擬実験」と言いましょう、といった具合である。だいたい納得できるのだが、「ノーマライゼーション」を「等生化」と言おうとか、「マルチメディア」を「複合媒体」にしてしまう、あたりは逆に分かりにくなりそうな気もする。
トレンド、バーチャル、リアルタイム、ログインなどなど、技術やITビジネス用語のオンパレードで、どういう言いかえを「有識者たち」は考え出したか、このリストは眺めているだけでも楽しめる。
■言い換えプログラム For Windows
リストを眺めているうちに、個別に読むだけでなく、実際に文章全体を変換して読んでみないと感触が分からないと思った。それで早速、変換プログラムをVBScript言語とHTMLで書いた。ダウンロードできるようにしたので、Windowsの方は試してみて、変換結果に対する印象を教えて欲しい。
・プログラムのダウンロード(動作にはWindows98/xp/2000、MicrosftInternetExplorer5.5以上が多分必要)
ここをクリックするとダウンロード
ZIP形式でファイルをまとめたので、解凍プログラムで展開してから、中にあるiikae.htmlをブラウザーで表示してほしい。後は使い方は分かっていただけると思う。多くの環境で表示や変換ボタンを押す際に、ActiveXがどうたらこうたらなどの警告が出ると思われるが、私を信用してOKを押して続行して欲しい。ま、原則at your own riskですが。
(追加:もしも動かない場合には、この記事の末尾を参照のこと)
例えばこのプログラムを使うとこんな風に文章を一発で変換できる。違和感なくこういう作文をできる自分もズレてるんだとおもうけれど...。
変換前 | 変換後 |
グローバリゼーションとハーモナイゼーション ボーダーレス社会のグランドデザイン 現代は、政治、経済、社会、文化などあらゆるスキームで、グローバリゼーションが進んでいる。つながっていく世界のあらゆる組織と人々。あるシンクタンクのアナリストによると、大企業からベンチャーまで、多くの組織が、グローバルなビジョンをシェアしないと安定した成長は望めないと考えているのだという。 グローバリゼーションを支えているのはテクノロジーだ。多国籍企業のマーケティング部門のスタッフは、マルチメディアとバーチャルリアリティ技術を使ったオンライン会議にログインし、地理的なタイムラグなしに、パートナーシップ企業とリアルタイムにコミュニケーションを行う。他国のスタッフの情報にもアクセスしないと、グローバル市場の激しい変動をフォローアップできないからだ。 会議では、新しい製品コンセプトのプレゼンテーションや、インパクトのあるイノベーション戦略、支社で行われた戦略のケーススタディ、多国籍企業のスケールメリットのポテンシャルを活かしたアクションプランの策定などがアジェンダに登場する。こうして国境を越えて、インタラクティブで且つオンデマンドにコンセンサスを形成していく過程は壮観だ。何らかの未開拓のシーズが発見されれば、翌日には国際的なワーキンググループやタスクフォースが組まれて、スピーディな市場の動きにキャッチアップする。 もちろん、こういったグローバル企業の社員は世界時間に自分の生活をあわせないといけない。大抵はフレックスタイムが導入されているが、体内時間とのズレからくるメンタルヘルスの不調は自らをモニタリングしていないといけない。経営者は、こうした社員をマネジメントし、インセンティブとモチベーションを与える必要もある。 | 【地球規模化】と【協調】 【無境界 脱境界】社会の【全体構想】 現代は、政治、経済、社会、文化などあらゆる【計画】で、【地球規模化】が進んでいる。つながっていく世界のあらゆる組織と人々。ある【政策研究機関】の【分析家】によると、大企業から【新興企業】まで、多くの組織が、【地球規模】な【展望】を【(1) 占有率 (2) 分かち合う 分け合う】しないと安定した成長は望めないと考えているのだという。 【地球規模化】を支えているのはテクノロジーだ。多国籍企業の【市場戦略】部門のスタッフは、【複合媒体】と【仮想】リアリティ技術を使った【回線接続】会議に【接続開始】し、地理的な【時間差】なしに、【協力関係】企業と【即時】にコミュニケーションを行う。他国のスタッフの情報にも【(1) 接続 (2) 交通手段 (3) 参入】しないと、【地球規模】市場の激しい変動を【追跡調査】できないからだ。 会議では、新しい製品【基本概念】の【発表】や、【衝撃】のある【技術革新】戦略、支社で行われた戦略のケーススタディ、多国籍企業の【規模効果】の【潜在能力】を活かしたアクションプランの策定などが【検討課題】に登場する。こうして国境を越えて、【双方向的】で且つ【注文対応】に【合意】を形成していく過程は壮観だ。何らかの未開拓の【種(たね)】が発見されれば、翌日には国際的な【作業部会】や【特別作業班】が組まれて、スピーディな市場の動きに【追い上げ】する。 もちろん、こういった【地球規模】企業の社員は世界時間に自分の生活をあわせないといけない。大抵は【自由勤務時間制】が導入されているが、体内時間とのズレからくる【心の健康】の不調は自らを【継続監視】していないといけない。経営者は、こうした社員を【管理 管理者】し、【意欲刺激 意欲刺激剤】と【動機付け】を与える必要もある。 |
#VBSはウィルス作成に良く使われるのでこのファイルは再配布はしないでください。
#コード的には最長一致検出がうまくできていないなどの未熟部分あり。誰か直して。
■VBScriptのススメ
技術職でなくても、テキスト一括処理、文書の一括変換であるとか、定型作業の自動化が、自分ひとりですぐできると非常に便利である。私はこういったデスクトップオートメーションに、長い間Perl言語を使ってきた。PerlはCGIによく使われる言語でテキスト処理に適している。しかし、Windowsや日本語処理との相性は必ずしも良くない。
そこで最近はVBScriptという、Windowsのみで動作する簡易言語に注目している。比較的習得が容易でありながら、WindowsOSのほぼすべての機能を自動化でき、ネットワークや日本語との相性も良い。なんでみんな使わないのだろう、と不思議になるくらい魅力的な言語だ。強力であるが故にセキュリティ上の問題があるのだが、個人でデスクトップで使う分には問題はない。
VBScript言語はマイクロソフトが.NET戦略により、主流から外した?せいか、書籍が少ない(同じ系統のVisualBasicやVBAやWindowsScriptingHostは書籍が多い)が、この本は非常に参考になった。
VBScriptハッカーズ・プログラミング―サンプルプログラムでわかる関数・ファイル・HTMLWindows操作のテクニック
VBScriptは基本は簡単である。デスクトップに空のファイルを作成して、
「
msgbox 600*800
」
と書いて、test.vbsというファイル名で保存したものをクリックすれば、
こんな風に800×600の結果がメッセージボックスで表示される。とても簡単である。コマンドラインでもGUIでも動くし、WindowsのAPIへアクセスもできるのでかなり本格的なアプリケーションも開発できる。暗号化することでソースを隠してWebで公開することも可能であることはこの本ではじめて知った。
この言語、結構、仕事に使えるぞ。
参考URL:
・Windows Scriptオフィシャル
http://www.microsoft.com/japan/msdn/scripting/default.asp
・無料のVBScriptでXMLプログラミング
http://www.atmarkit.co.jp/fxml/rensai/msxml01/msxml01.html
・VBSのお勉強
http://sapporo.cool.ne.jp/avg/vbs/
以下は某高校の2002年度2年数学Bの授業で使った教材です、とのこと。それが無料なんだからお得。こういうのはどんどん公開して欲しい。
■補足:もしもこのプログラムが動かない場合には??
動かない場合はメールでご報告ください。。お返事はできないかもしれませんが修正が早くなります。なお、このブログのコメントスペースでバグ対応はできませんのでよろしく(汗)。
1 応急対処法
この記事を公開直後、多くの環境では動くようですが、「データファイルがありません」と表示されてしまうエラーで動かない方がいるようです。
応急対処法としては、少しややこしいのですが、ファイル内のiikae.vbsをメモ帳などで開いて、4行目の行の値を以下のようにdata.txtに対する絶対パスに変更してください。(絶対パスの意味が分からない方は、とりあえずiikaeフォルダをCドライブの直下において以下の通り修正してみてください)。それでも動かない場合には、少々お待ちください。
2 VBScriptに詳しい方、力をお貸しください
VBScriptに経験のある方、教えてください。修正案についてはコメント欄にいただいても大歓迎です。起動時のカレントディレクトリが環境によって異なることが原因のように見えますが、VBSはまだ私もはじめて日が浅いのでよくわかりません。修正できる方いたらどうかよろしくお願いいたします。
2003年12月04日
マイクロソフトが無料Blogサービスを開始 The Spoke
とにかく情報が速いリンゴラボにおける我がボス、加藤代表から教えてもらったサービス。なんとマイクロソフトが主に学生向けにWeblogのホスティングサービスをひっそりと開始していたようだ。誰でも登録して自分のブログを持つことができる。
特徴は、
・リッチエディット環境で記事編集ができる
この機能は素晴らしい。MS Wordのような文字修飾が可能。他のアプリケーションや、ブラウザーから範囲コピーしたデータを貼り付けると、MS Officeのようにリッチ情報のまま貼り付けができ、公開できる。他の記事のテキストや画像を引用する際に編集しなおす必要がないので便利である。
なお、日本語は編集画面でフォント選択にないために、本文が文字化けしてしまうようだ。タイトルは化けない。これは日本語対応は簡単なはずなので、サポートにメールしてみるとあっさり、使えるように修正してもらえるかもしれない。
・メンバーモザイク
こんなかんじでプロフィールに登録した写真がランダムに合成されて、気になった顔を選ぶことでブログを見つけることができる。
・ニュースフィード機能
RSSで公開されている他のブログやニュースサイトを登録して自分のブログ内にリンクを表示できる。RSS2.0にしか対応していないので若干まだ不便。
・ブログリーダー
ニュースフィード機能で登録したニュースサイトをWeb上で一覧できる。これは便利。ある意味はてなアンテナみたいなもの。
・最新ブログ一覧
What's Going Onという一覧ページ。TheSpokeの最新登録記事を読める。
・掲示板
分野別掲示板が用意されている。
さて、この謎のマイクロソフトのブログサービス。クレジットに、Copyright 2003 Microsoft Corporation. All Rights Reserved. Version:1 Build:012 Machine: 30 とあるからマイクロソフトには間違いない。同時に、Hosted for Microsoft by Smooth Fusionとある。調べてみると、ホスティングしているのは、
・Smooth Fusion
http://www.smoothfusion.com/default_flash.aspx
この会社であり、マイクロソフトの教育関係者に向けた開発情報サービス、マイクロソフトアカデミックアライアンスを運営している。この学生、教育関係者向けのコミュニティサービスのひとつとしてTheSpokeは位置づけられているようだ。
.NETテクノロジーで開発されており、将来的にはMSNメッセンジャーやWindowsそのものと統合することもできそうな感じ。マイクロソフトのブログへの進出の兆候としてちょっと目が離せない。
で、早速英語版のBlogを作ってみた次第。
・Passion For The Future2(英語版)
http://www.thespoke.net/MyBlog/daiya/MyBlog.aspx
そういうわけで、今日の記事は英語版の方でお読みください。
#開設した早々にフィリピン人の大学生からこんなコメントが。。。
hello! Opensouce guy! Just browsed through you post from the "What's going on?" link! heheh hm... pretty interesting... OpenSource WebDesign...because a lot of people are hiding how they do special effects in their websites..specially flash websites!
おほめいただくのはうれしいが、Opensouce guy!ってわけでもないんだなワタシ。うっかりファンがつくと、英語版も更新しなきゃいけない羽目になりそで怖い。
2003年12月03日
・Google Hacks―プロが使うテクニック&ツール100選
・Google Hacks―プロが使うテクニック&ツール100選
私の会社は技術の会社なので、オフィスの本棚には、数えたことがないが、100〜200冊くらいの技術書が並んでいる。自宅にも押入れに大量に技術の本がある。普通の本と違って、リファレンス的に使うため、通読するような書籍は少ない。これは数少ない最初から最後まで読んでしまった本であり、間違いなく、私の、2003年度、技術書ベスト1である。2位を大きく引き離している。
■ググる人々56.1%
「ググる」という言葉が一部で流行するほど、Googleで検索することは、ネット利用者にとって一般的なことになった。検索エンジンにおける利用シェアは、調査会社のOneStatによると、以下のような率になっている。インターネット上の検索は過半数がGoogle経由で行われており、2位のYAHOO!をダブルスコアで引き離している。
・Google No. 1 search site in the world according to OneStat.com
http://www.onestat.com/html/aboutus_pressbox25.html
EXCELでグラフ化してみると一目瞭然。
Googleが人気があるのは、PageRankと呼ばれる計算方法で決定される、検索結果が、ユーザの理想に近いことにある。PageRankは、以下のふたつの主なルールで計算する。
1 外部のページからのリンクの数が多いページは重要なページとみなす
2 重要なページからリンクされているページも重要度が加算される
このアルゴリズムの強み、弱み、発展性が「PageRankアルゴリズムの内部」などの章に詳しい。Googleや検索エンジンの進化の方向性が垣間見えたりもする。
ちなみにGoogleツールバーをインストールすれば、一般ユーザも表示中のPageRankを確認することができる。PageRankは10段階で高いほど良い。私のこのサイトは開始3ヶ月目、この記事執筆時点ではPageRank4で上昇傾向にある。このランクが高いほど検索順位で早く出てくるわけだ。
で、このPageRankをどうやったら上げられるか、たくさんの人を検索エンジンから呼び込むにはどうしたらよいかの解説の章がまず参考になる。
・「1日に1万5千人の訪問者を得るための26のステップ」
1年で1日1万5千ページビューを自然に達成する方法を主に技術視点から述べている。本当にそれ正しいのかって?。うーん、こういう本(アクセスを増やすホームページ革命術:現在絶版)を過去に書いた私が言うのだから信じてください。このやり方は正しい。まっとうなコンテンツを作る気があるのならば、そのとおりになるはずと納得した。
■Googleの応用事例が盛りだくさん
無数のGoogleの応用例が解説されている。Googleは一般ユーザにGoogleデータベースのプログラミングインタフェース(API)を公開しているため、主にその実装の話が多い。基本部分のソースコードサンプルが、かなり紹介されているのでプログラマにはたまらない。
たとえばほんの一部を紹介すると以下のような感じだ。
・TouchGraph Google Browser
http://www.touchgraph.com/TGGoogleBrowser.html
Googleの検索結果をネットワーク地図として表示するアプリケーション。
・GoogleSmackdown
http://www.onfocus.com/googlesmack/down.asp
キーワードをふたつ入れると検索結果数を並べて比較できる。例えばtokyo (5,960,000件)とosaka (1,780,000件)、tomorrow (6,680,000件)とyesterday (6,310,000件)、love (52,000,000件)とmoney (43,100,000件)なんてことが分かる。(愛が勝ってよかった。)。
・Googleシェア
http://ed.suppose.co.uk/googleshare.php
Googleを使ってマインドシェア(○○度)を調べる。例えば、ringo starとPaul McCartonyの、それぞれのThe beatles度を調べることができる。今試したらringoが34.21%、McCartonyが41.18%である。
・Googleミラー
http://www.alltooflat.com/geeky/elgoog/
Googleの検索結果を左右ひっくり返す...。一見の価値あり。
■実践編 メール・de・Google
この本を入手する前にGoogleAPIが米国で発表された頃、私もいたずらでアプリケーションをひとつ作っている。今確認したらまだ動作しているのでご紹介したい。
名づけて、「メール・de・Google」。メールのサブジェクト(題名)部分に検索したいキーワードを入れた本文は空のメールを、サービス用のメールアドレスへ送ると、検索結果がメールで返信される、というもの。
この本でも、メール経由でのGoogle検索システムの例が紹介されているが、コードは示されていなかった。昔、こういうサービスのメール連携部分を開発した経験があるので、数時間で開発は完了した。
使い方は簡単である。
以下のメールアドレスへサブジェクトにキーワードを書いて送るだけ。(osanpo.netはプライベートな開発サーバ)
まだGoogleAPIが日本語対応していない時期に独自の日本語対応処理をしていたので、日本語がたまに文字化けする模様。そこは商品じゃないので見逃していただきたい。英単語がおすすめ。時間がとれらた年末にでも修正予定。
■エンジニアの遊びのプラットフォームとしてのGoogleHack
私は、ふだんは営業とコンサルの仕事ばかりなので、エンジニアとしては落ちこぼれなのだが、こうやって新しい技術で遊ぶことで、新しい技術やサービスの発明につながることってあるのではないか、と思う。
私がとても尊敬する遊ぶエンジニアのサイトにhirax.netのできるかな?がある。技術を使ってひたすら遊んだ結果を公開している。文章力の高さもあるのだけれど抜群に面白い。
・できるかな?
http://www.hirax.net/#dekirukana-day
例えば、画像解析の基礎知識を使って、企業サイトとアダルトサイトの色分布を分析して、やはりアダルトはピンクっぽいのか?とか、肌の色の違いを実データで検証してみせたり、
・9人の女神はピンク映画の夢を見るか?- WEBの画像の色分布を調べよう
http://www.hirax.net/dekirukana4/mosaic3/index.html
あるいは、Web上の文体からノリノリの意味を調べたり、
・WEBページの文体を調べてみよう- 「ノリノリ文体」の秘密!? -
http://www.hirax.net/dekirukana4/style/index.html
はたまた、音声の波形から関西弁を分析してみたり、
・みんなで一緒に「なんでやねん。」- 関西弁の音声学 第一回 -
http://www.hirax.net/dekirukana3/kansai/index.html
なんてことをして遊ばれている。コードやプログラムを開示されることも多く、読者も使って遊ぶことができるようになっている。このサイトの記事を読んでいると、意外な発見や実用に結びつきそうなテーマが多くて、遊びに終わらない可能性を感じる。
だが、普通はテーマや遊び方を見つけるのが難しいものだ。Googleとこの本はエンジニアが遊ぶには格好のプラットフォームである。技術の会社はエンジニア全員にクリスマスプレゼントとして贈ってみてはどうだろうか。来年すごい効果があったりして。
■Webマーケティング担当者や経営者にもおすすめ
この本はエンジニアだけが読んでいては勿体無い。確かに半分はGoogleAPIを使ったプログラミングの話題であるが、Googleを使ってアクセス数を増やしたいWebマーケターや、新ビジネスを発想したい経営者にもお薦めできる。
日付や特定サイト以下だけを検索する方法などTipsや、「株を調査する:Googleクエリーを巧妙に使って従来の株価情報サービス以上の情報を収集」などという一般向けの章も随分、あるからだ。
今、実は私のところにもGoogle関連の書籍共同執筆のお話をいただいている。とても楽しそうなプロジェクトなので乗ることにした。来年の書店をお楽しみに!。
2003年12月02日
鉄則!企画書は「1枚」にまとめよ
こんな私でも最近、長いこと仕事をしているおかげで、企業の重要なポジションの方々に直接、提案をさせてもらえる機会が増えた。要職につかれている人の共通点として、とても忙しいという事実がある。頑張って作りこんだ長い企画書は、この人たちには、読んでもらえない。全容を語るのに何百ページ必要な内容であろうと、簡潔な企画書にしないと眼にとめてもらえないような気がする。理想は1枚。
1枚企画書というと、その世界では神様と呼ばれる高橋憲行氏のノウハウ本が有名だけれど、この人の場合「文不如表,表不如図」(文は表に及ばない。表は図に及ばない)がポリシーで図解中心である。図解のメリットもあるのだけれど、よほどの名人でもない限り、一目瞭然とはいかないものである。作成にも時間と手間もかかる。
・企画書提案書大事典
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447853022X/daiya0b-22/
そんな折、まったく違うコンセプトで1枚企画書を作成するための、素晴らしい本とめぐりあった。図解も一切不要だというのだ。
■一枚の企画書
著者は、国際的に幅広く活躍するエージェントのようだ。ソニーにHDTV向け長編映画を提案したり、電力会社のマーケティング戦略、日本テレビのタイアップイベントなど大規模なプロジェクトを次々に仕掛けてきた。10分程度しか与えられていない時間の中で、経営トップやVIPにイエスと言わせるノウハウを、余すところなくこの本では、公開している。
著者の推奨する1ページ企画書(One-Page-Proposal)は8つのパートから構成される。
1 タイトル
2 サブタイトル
3 目的
4 サブ目的
5 理由
6 予算
7 現状
8 要望
それぞれを数行で、全部で1枚に仕立てる。
この本にはその作成プロセスの、ファイル整理術から具体的な文章術、活字・用紙の選び方、アポの取り方、渡し方まで、懇切丁寧にノウハウが解説されている。魅力的なのは、実際に著者が使った企画書の実物が多数、使ったそのままで収録されていることである。どの企画書も説得力がある。
もし古代エジプトでファラオにピラミッド建設を提案するとしたら?という想定の「クフ王の大ピラミッド」企画書や、出版社に向けたこの本自体の出版必要性を説いた「1ページ企画書本」企画書なども含まれていて、遊び心も楽しい。遊びも企画の大切な説得要素だなと感じる。
著者はすべての企画書が1枚でなければならない、とは一度も言っていない。長大な提案資料が必要なケースも認めている。ただし、どんなケースでも、重要人物に対しては、1枚の企画書の方が強いと考えている。
ちょっとした衝撃を受けた一冊。
評価:★★★☆☆
■実践編:成功した私の企画書もリアルタイム公開
さて、私もこの本を読んで早速実践してみた。年末に百式の田口さんと二人で、「忘年会議」イベントを計画したのだが、広い会場を借りる予算がないこと、告知力が足りないことが問題になった。
二人で相談したところ、それじゃあ、Webクリエイターの専門学校のデジタルハリウッドさんに協力をお願いしてみては?ということになった。この会社とは今年、随分お世話になった。早速、この本の通りに企画書を作成し、ディレクターの渡辺さん、社長の藤本さんにメールしてみた。
実際に送った企画書はこれ。本の指示に忠実に作ってみました。
・「今年のベストWebランキングを報告しあう忘年会議」
情報活用ノウハウの交換で来年の作業効率を3倍に高める
デジタルハリウッドさまにご提案の内容
(WORDファイル)
#企画書の公開にあたり、藤本社長よりご許可を頂きました。ありがとうございました。
結果はどうなったかですって?
大成功でしたとも!
社長の藤本さんからも10分後にはご回答を頂き、無事、ご協力の快諾がいただけました。さすが、デキル人は判断が早い。これで会場の心配もなくなりました。
というわけで、こうして成立した、年末の私たちのとっておきイベント企画をご紹介します。楽しく有意義な会合になるように頑張りますので、ぜひみなさま、お気軽にご参加ください。
・「今年のベストWebランキングを報告しあう忘年会議」
http://bestof2003.100shiki.com/
参考URL:
・正確な文章の書き方 IIJ 技術研究所、山本和彦氏
http://www.mew.org/~kazu/doc/japanese.html
IIJというと私の感覚ではサービスもサポートも上質なISP企業。こういうことを研究している人が裏側にいるわけですね。
2003年12月01日
今年のベストウェブランキングを報告しあう忘年会議!
こんにちは。
データセクションの橋本と百式の田口のコンビです。日頃の感謝の意を込めて、IT業界の年末大集会を企画してみました。
■ 今年のベストウェブランキングを報告しあう忘年会議!
〜 参加すると来年の仕事効率を3倍高められる知識交換会 〜
忘年会ではありません。忘年会「議」です。
日時と場所は12月17日(水)にお茶の水のデジタルハリウッドで開催します。
・忘年会議の詳細と申込みURL。主宰の二人が全力で考えた面白プログラム。
http://bestof2003.100shiki.com/
居酒屋に集まるのではなくて会議室に集まります。今回の忘年会議では、情報検索、経営、マーケティング、技術の視点からベストウェブを決定します。参加者は来年の仕事効率を高める全部のリンクを帰宅後ダウンロードできる特典があります。
会議ですので全員参加です。参加するにはフォームからあなたが今年のベストサイトと思うウェブサイトを報告してください。推薦理由は「使っている技術がマニアック」、「写真の女性にもうめろめろ」、「実は私がやっているから」・・・など、なんでも構いません。熱く、クリエイティブな推薦理由をお待ちしております!推薦理由でベストウェブが選ばれるといっても過言ではありません。あなたの熱い思いを伝えるしびれるコピーをおまちしております
また終了後は名刺と知識の交換会の時間をとりたいと思います。またどうしても当日参加できない人も上記ページから、サイトを推薦していただければ要約版をお送りします。マスメディアとは一味違った知識のリンク集ができればと思っています。
なお、申込みURLはアクセス集中で表示が遅くなるかもしれないけれどめげずに見てください。
協賛:デジタルハリウッド株式会社