2008年01月22日
浅野 いにお 「おやすみプンプン」「素晴らしい世界 」「ひかりのまち」「ソラニン」
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最近、はまっている漫画家のひとりが浅野 いにお。まだ20代らしいが将来の大物登場の予感。
おもに現代の若者たちの明るくない青春を描く。
多くの作品では、先行きが見えない日本の社会や、人間関係が希薄な都市生活、機能不全に陥っている学校などが舞台になっていて、格差やニートやいじめや自殺など、あらゆる日本の諸問題が背景にでてくる。社会のゆがみやひずみに翻弄されつつも懸命に生きる人たちが主役である。
多面的、多元的に世界を描くことで、陥りがちな「説教臭さ」を回避している。たとえば「ひかりのまち」「素晴らしい世界」はひとつの世界を舞台にした連作短編で、話ごとに主人公が変わる。前回のわき役が次回の主役になったりする。前回に主役を襲った通り魔やストーカーが、次の主役になったりするのだが、どちらの視点にもリアルな諸事情があって、いつのまにか対立する価値観の双方に感情移入してしまった。
物語を語る技法も凝っている。伏線張りまくりの群像劇が多いのだが、表現でも大胆な挑戦をして成功している。たとえば「おやすみプンプン」は主人公がぺらぺらの紙として描かれる。名前だって「プンプン」だから匿名みたいなものだ。第1話を読んだとき、こんなに主役の姿を記号化してしまったら厚みが出ずに長編は厳しいのでは?と思ったが、顔がないことで、いつのまにか昔の自分=プンプンという風な想いで読むようになっている。技巧派なのだけれども、技がいきていて、読者はすっと世界観に入りやすいのだ。
浅野 いにおが描く漫画の内容は、時に絶望的であったり猟奇的であったりするのだが、、バッドエンドでも救いを残す終わり方をする、というか、ぼんやりと明るい方向で終わるものが多い。だから安心して読めるのが、私がはまった理由でもあるなあ。
以下、代表的な作品をおすすめの順で並べてみた。
実験的表現技法が成功した印象的な作品。小学生のプンプンが現代にありがちな家庭の不和や学校の事件に巻き込まれながら成長していく姿を描く。まだ連載中だが既刊の2巻で小学生編が一区切り終わる。
浅野いにおの基本スタイルが一番典型的にでているのがこの連作短編かなあと思う。複眼的に現代社会に生きる人々を描いた群像劇。全2巻。
新興住宅地で自殺したい人をネットで見つけてはその幇助をするのが趣味の子どもと、それを取り巻く不気味な大人たちの人間模様。
映画化決定。バンドの成功を目指して挫折した若者と、彼を応援して同棲中の彼女が、なんとか将来に希望を持って生きようとするのだけれど...。全2巻。
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Posted by daiya at 2008年01月22日 23:59