2008年01月07日

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・ミノタウロス
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20世紀初頭のロシアを舞台にした大河小説。田舎の地主の家に生まれた若者が、戦争と革命の波に飲まれてすべてを失い、悪党として獣のごとく生き抜いていくようになる様子を描いている。

ロシアの文豪の作品を一流の翻訳者が訳したかのような格調高い文体にまず驚かされる。佐藤亜紀という著者名を隠して、ロシア作家の遺稿の翻訳物として売り出したら、これが国産だと見破れる読者は少ない気がする。日本人が書いた外国文学といえる。

翻訳物を模倣した文体の技だけでなく、リアリティを持った登場人物の時代設定と描写、骨太で破たんなく展開していく歴史小説としての完成度も一級品である。特に後半の無政府状態の混沌とした状況の中で、前半で張られた伏線の収束効果で加速して、クライマックスへと向かっていくスピード感がよかった。

疾走感こそこの作品の本質だと思う。本物のロシアの大河小説というと、名前が覚えにくい登場人物が多数登場して、何本もの筋が錯綜しがちであるが、ミノタウロスは日本人が書いたせいか、その点がやけに読みやすくできているように思う。重厚なのだが、ページをめくりやすい。

「本の雑誌」で年間ベストに選ばれるなど、本好きや評論家にかなり高く評価されている一冊。


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Posted by daiya at 2008年01月07日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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