2007年11月14日
ヨーロッパをさすらう異形の物語 上・下―中世の幻想・神話・伝説
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・ヨーロッパをさすらう異形の物語 上―中世の幻想・神話・伝説
・ヨーロッパをさすらう異形の物語 下―中世の幻想・神話・伝説
伝説・神話好きにはたまらない内容。
中世ヨーロッパの伝説が解説つきで24編が収録されている。一部が童話として変形して伝わった以外は、日本ではあまり知られていない話が多いように思う。海外の人が、桃太郎や金太郎、一寸法師や海幸山幸のような昔話をよく知らないのと一緒だろう。知っていれば、異文化の文学や創作を深く味わうことにつながる。
上巻:
さまよえるユダヤ人―永遠という罰の重み
プレスター・ジョン―朗報かそれとも悪い報せか
占い棒(ダウジング)―なんでも見つけ出す魔法の棒
エペソスの眠れる七聖人―復活する死者
ウィリアム・テル―本当はいなかった弓の名手
忠犬ゲラート―命の恩人は動物だった
尻尾の生えた人間―「よけいなもの」か「必要なもの」か
反キリストと女教皇ヨハンナ―悪しき者たちへの恐怖と期待
月のなかの男―いまもそこにいる理由
ヴィーナスの山―戻ってきた者はひとりしかいない
聖パトリックの煉獄―足を踏み入れた者たちの証言
地上の楽園―それはどこにあるのか
聖ゲオルギオス―残酷な拷問とドラゴン退治
下巻:
聖ウルスラと一万一千の乙女―偽りだらけのくだらなくて愚かな物語
聖十字架伝説―けたはずれの創造力
シャミル―虫や石に宿る謎めいた力
ハーメルンの笛吹き男―誰もが知っている伝説の正体は?
ハットー司教―ネズミに食い尽くされた強欲の司教
メリュジーヌ―裏切りは別れを招く
幸福の島―聖なる場所は西にある
白鳥乙女―詩人に愛された美しい鳥
白鳥の騎士―素性をたずねてはならない
サングリアル(聖杯)―聖なる器の伝説
テオフィロス―悪魔と契約した司祭
聖プレスター・ジョンは大学受験の世界史で先生が、試験にはでないかもしれないが、と前置きして話してくれたのを覚えている。
中世ヨーロッパの十字軍は、イスラム教徒との戦いが苦戦する中で、ひとつの伝説を信じていた。東方に聖ヨハネの血をひく君主プレスター・ジョンが統治するキリスト教国家があるという「聖プレスター・ジョン」の伝説である。この偉大な君主が、この戦いに強力な援軍にさしむけてくれることを願った。ローマ教皇はプレスター・ジョンあての手紙を使者に持たせて派遣した。マルコポーロもこの伝説を信じて東方へ渡ったし、大航海時代のきっかけのひとつになったともいわれる。伝説が歴史を動かしてしまったわけだ。
ネオアトラスという名作ゲームを思い出した。実は最近PS3でもネットワーク経由でダウンロード販売されているので、懐かしくて、買ってしまった。まだ未探査の世界の噂を集めて、どの噂を信じるかで世界地図が変わっていくという仕組み。
何を信じるかで世界が変わるというのは、人間の同時代史において、案外、本質なのではあるまいか。荒唐無稽に思えるこれらの伝説が真実味を帯びていた世界を想像しながら読むと、もうひとつの世界史が見えてくるような気がする。
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Posted by daiya at 2007年11月14日 23:59