2007年11月12日
反転―闇社会の守護神と呼ばれて
スポンサード リンク
苦学して成った特捜の検事から、政財界と裏社会の守護神弁護士への転身、自家用ヘリ(7億円)で故郷へ凱旋し湯水のごとくカネをばらまいたバブル時代の華麗な生活、そして裏社会との濃すぎるつながりは古巣の特捜部ににらまれ、逮捕と実刑判決をくらう。著者の体験した劇的な反転人生を語った自伝。
古巣の体制の腐敗を暴露し日本社会の闇を暴く内容として、佐藤優の名著「国家の罠」に匹敵する大傑作である。
依頼人や交友関係として出てくる人物の名前が凄い。許永中、中岡信栄、末野謙一、卓見勝、阿部新太郎、佐川清、伊藤寿永光、竹下登、阿部新太郎、高橋治則、小谷光浩、渡辺芳則、山口敏夫.......。あの筋、この筋よくここまでつながったものだと関心するが著者いわく「この国は、エスタブリッシュメントとアウトローの双方が見えない部分で絡み合い、動いている」から、こうなったそうである。
権力ににらまれて詐欺罪で立件されての転落は、ポリシーをもって仕事をしてきた結果であると一貫して主張している。弁護士は犯罪者の弁護をすることが仕事であり、自身にやましい部分はないといって現在も上告中である。かつて佐藤優は自分の逮捕は国策捜査だと反論したが、検事出身の著者はこう達観している。
「最近、「国策捜査」という検察批判がよくなされるが、そもそも基本的に検察の捜査方針はすべて国策によるものである。換言すれば、現体制との混乱を避け、ときの権力構造を維持するための捜査ともいえる。だから平和相銀事件や三菱重工CB事件のような中途半端な結末に終わることが多い。本格的に捜査に突入すれば、自民党政権や中曽根派が崩壊したり、日本のトップ企業である三菱重工が傷を負う恐れのあるような事件は、極端に嫌う」。
そこで表も裏もないパワーゲームの世界では中途半端な悪はつぶされるが、勝ち組権力と結びついた巨悪は栄えるという現実を見ることになる。著者はこのゲームに負けた敗軍の将という立場で読者に語りかけている。
検察エリート街道の華々しさ、闇に暗躍したフィクサーたちの素顔、バブル紳士たちの豪遊ぶり、裏社会のトップたちの壮絶な生き様など、まず普通の人生を歩んでいる限りでは、知ることがない世界を生々しい記述で読むことができるのが魅力である。文章もうまいので文字通り私にとって徹夜本になってしまった。
「国家の罠」のファンには特におすすめである。
・国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004269.html
スポンサード リンク
Posted by daiya at 2007年11月12日 23:59