2007年10月26日
神社若奥日記―鳥居をくぐれば別世界
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いきなり関西の神社に嫁いだ女性ライターのドタバタ体験記。
一般人にとって神社の舞台裏は謎である。全国に神社は8万社以上あり、神職として働く人は約2万人といわれるそうだが、どうやったら神職になれるのか。神主や巫女は祭事がない日は何をしているのか?どうやって神社は収入を得ているのか。神主というのは、やっぱり毎日清く正しく生活しているのか?結婚前は神社と寺のちがいさえ知らなかった著者なので、軽妙な文章の中で神社の基礎知識をわかりやすく教えてくれる。
神社の若奥様の1年間を日記のように綴ったドキュメンタリである。小さいけれど歴史のある、この神社は大阪の街中にある。御神輿はガレージに格納され、まつりの日には神楽殿にミラーボールが回り演歌歌手がショーをする。「えべっさん」に日には境内は近所のおじさんおばさんの酔っ払いでいっぱいになる、ような地元密着型である。
ある種の店を構えているわけであるから、神社の1年間は結構忙しいのであった。一に掃除、二に掃除で、神社を清潔に保たねばならない。関係者、協力者への気遣いのこまやかさも求められる。祭りのイベントの前後は大忙しで、大晦日から元旦は36時間不眠不休で働いている。そしてなにより大切なのは毎年同じことを繰り返すということだった。
「神社では、どんなに小さな行事でも、かならず心待ちにしている人がいるし、どんな小さな木を一本植えても、その生長を楽しみに見にきている人がいるのだという。だからおかあさんは、境内の植物の世話と掃き掃除を絶対にかかさないし、いちどやり始めた行事は、途中でやめたりしない。「今は人が来なくても、三十年やれば増えてくるやろ」「あと五十年もすれば立派な木になるやろ」などという、スパンの長い発言は、おかあさんだけでなく神社にたずさわる人たち全般の特徴である。」
軽妙に神社の裏話を書いているのだが、暴露的ではない。一般読者の神社への興味を深めてもらおう、好きになってもらおうという著者の意図が伝わってくるのが、読んでいて気持ちがよかった。現代の神社や神道の実態を楽しく知ることができる。
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Posted by daiya at 2007年10月26日 23:59