2007年09月26日

沈黙のフライバイこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・沈黙のフライバイ
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第38回星雲賞日本短編部門受賞作「大風呂敷と蜘蛛の糸」を含む5作品収録の短編集。

2001年の小惑星エロスへの、NASAのシューメーカー探査機着陸成功のニュースはまだ記憶に新しい。小惑星の地面の写真が地球に送信されてきたのが衝撃的だった。人類の異世界への接触。月面着陸のように、一般の新聞やテレビでそれほど大きな話題にならないのが不思議であった。

・Final NEAR Shoemaker Descent Images of Eros from 2001 Feb 12
http://near.jhuapl.edu/iod/20010214/index.html
写真が公開されている。

「轍の先にあるもの」はこの画像にインスピレーションを受けた作者が、ネット上で科学者たちとの議論をヒントに書いた未来科学小説である。このニュースを見た若手研究者がやがてその謎を解明するべく宇宙へ飛び出すまでを描いている。作品中には本物の画像も引用されており、現実と想像がシームレスにつながっていく。

野尻抱介の作品の登場人物は、日本のオタク型理系人間の良さが出ているなあと思う。地味で淡々と緻密。派手なアクションはせずに、知的に静かに興奮する。理性的判断を優先し、人間関係の距離を保つ。決して海外SFの主人公みたいに、情熱や正義感に駆られて、英雄的な行動に出たりはしない。主役としての、日本人の研究者の描き方がリアルに感じるのである。理系の研究者の20年後、30年後として、本当にありえそうな気がしてくるのである。

グレッグ・イーガンやテッド・チャンがどんなにSF作家として天才であっても、日本人が主役のリアリティというのは望めそうにない。この人にはこれからも日本人のSFを頑張って書いてほしいなあと思う。

宇宙エレベーターの建設手法や、凧をつかった大気圏脱出手法など、新しい考え方が示されていると同時に、わかりやすい点も素晴らしい。


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Posted by daiya at 2007年09月26日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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