2007年08月30日

美しき日本の残像このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・美しき日本の残像
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「四国の平家の落人の里に民家を買って城と称し、日頃は京都・亀岡の天満宮の庵に暮す。書画骨董、歌舞伎、古都を愛する一風かわったアメリカ人の日本美見聞録。 --」。第7回新潮学芸賞受賞作。

日本通の外人の代表みたいな著者が語った日本文化論なので、日本に優しいと同時に厳しい意見が両方書かれている。世阿弥と利休の本を読んだばかりだったので、次の日本の思想についての考察に特に感心した。

「日本は中国とは大きく違います。中国の場合、孔子、孟子をはじめ、哲学者と文人が高貴な思想を巧みに文章にして後世に残しました。一方、日本文化の歴史の中に哲学者と、はっきりした「思想」を探しても、驚くぐらい見当たらないのです。極端に言えば、日本は思想のない国です。  (中略)  日本では文化のエッセンスは言葉として本に書かれてはいませんが、目に見えないところに日本の「思想」がやはりあったのです。伝統芸術に流れたのです。だから、日本には孟子、孔子、朱熹はいませんでしたが、定家、世阿弥、利休などがいました。彼らは日本の真の哲学者だったと思います。」

本来は、芸術だけでなくて、武士、職人、商人、庶民それぞれの生活の中に、あるべき理想の生き方、哲学が内包されていたのだと思う。日本の哲学は暗黙知なのだ。だから、本当に大切なものは明文化しない、できるものでもないと考えるのが日本人なのだろうと思う。外と内の両方から見ることができる著者だからこそ、その見えない日本の美を文章で客観的に語ることができた。

アメリカ生まれで、エール大学で日本学を専攻し、オックスフォード大で中国学を専攻した著者が語るのは、常にグローバル思考での比較文化論であり比較精神論である。素人の日本人とアメリカ人にはじめての陶芸をやらせると、日本人はみんな無難なものを作るが、アメリカ人は独創性を出そうとしてとんでもない形のものをつくってしまう、という体験にもとづく考察が面白い。

「時々思うのです。「人生を面白く」というアメリカ教育の要求はひょっとしたら残酷なものかも知れません。だいたいの人の生活はつまらないものですから、失望するに決まっています。一方、日本人はつまらなさに不満を感じないように教育されていますので、きっと幸せかも知れません。」

それから、この本の9章、10章、11章は、奈良、京都の名所巡りガイドになっていて、なんとしても、それらの場所を訪れてみたいなと思わせる内容である。私もたまたまこの夏、奈良に行ったばかり。南大門、東大寺、春日大社で写真を撮ってきたので、ついでにここで公開。

「美しき日本」になっている、かなあ。

Todaiji Nara Japan

Nara

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Posted by daiya at 2007年08月30日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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