2007年07月26日

今日の芸術―時代を創造するものは誰かこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・今日の芸術―時代を創造するものは誰か
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このロングセラー本で岡本太郎の偉大さをしみじみ実感した。

「岡本太郎はテレビのお陰で、眼玉ギョロリの爆発おじさんという印象だけで固定されているかもしれないけれど、この本はじつに明晰な論理をもって書かれている」と解説に赤瀬川源平が書いているように、極めてわかりやすい芸術論である。同時に凄まじく情熱的な人生論でもある。

「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」。芸術家はつねに前衛であれというメッセージ。

「芸術は、つねに新しく創造されなければならない。けっして模倣であってはならないことは言うまでもありません。他人のつくったものはもちろん、自分自身がすでにつくりあげたものを、ふたたびくりかえすということさえも芸術の本質ではないのです。このように、独自に先端的な課題をつくりあげ前進していく芸術家はアヴァンギャルド(前衛)です。これにたいして、それを上手にこなして、より容易な型とし、一般によろこばれるのはモダニズム(近代主義)です。」

岡本太郎の考えでは表現行為とは人間の本質であるから、誰もが思う通りに絵を描いたり音楽を作ったりすればいいのだ、下手も上手もなくて、ユニークかどうかが大事なのだということである。上手な芸術家をまねて美しく、ここちよい表現をするのは芸術ではないのである。日本の芸術家も教育も間違っていて、けしからんのである。

岡本太郎は長いフランス滞在から帰国して、日本の旧弊な芸術家の世界に不満を持っていた。権威や体制に迎合するのではなく、そんなものをぶちこわすのが芸術なのだと繰り返す。「芸術家は、時代とぎりぎりに対決し、火花をちらすのです。」。岡本太郎はアンシャンレジームに対して何度も喧嘩を仕掛け、孤立していたらしい。

こんなことも書いている。

「さあやろう、と言って競技場に飛び出したのはいいけれど、気がついてみると、グラウンドのまん中に、ほんとうに飛び出したのは自分ただ一人。エイクソ!こうなれば孤軍奮闘!ところで前方の敵とわたりあっていると、意外なほうから、こっそりなにかしらんが伸びてきて、足をすくうらしいのです。バカバカしい。いったい、これを日本的というのでしょうか。しかし、このバカバカしさに、これからの人は、けっしてめげてはならないのです。」

この本の出版は1954年。万国博覧会のシンボル「太陽の塔」で国民的な名声の芸術家になる16年前であった。文章の端々から、やけどしそうなほどのチャレンジャースピリットが伝わってくる。

「私はこの本を、古い日本の不明朗な雰囲気をひっくり返し、創造的な今日の文化を打ちたてるポイントにしたいと思います」。冒頭でそう宣言している。常識にとらわれず、新しいことをやってやろうと思っている人、古い業界体質と戦っている人は、この本を読んだらぐっと勇気づけられると思う。

・岡本太郎 神秘
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004986.html


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Posted by daiya at 2007年07月26日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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