2007年06月10日

眼の冒険 デザインの道具箱このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・眼の冒険 デザインの道具箱
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図版約400点(内カラー110点)を使った、ビジュアルデザインのカタログ的なエッセイ集。雑誌「デザインの現場」連載42本に加筆したもの。各章のテーマは「線の乱舞」「縦と横」「デシメトリ」「周辺重視」「覆う、包む」「縦書き」「!と?」といった感じでバリエーションが広い。それぞれに近現代の優れた作品の、眼をひく写真がいっぱいある。
まさに目の冒険ができる本だ。

デザインは時代の空気を表すことが多い。

「前述したように流線形デザインがはやった1930年代、角張ったエンジンなどに、流麗な外皮、ボディを纏わせて、実際の実力はともかく、いかにも速そうにみせようとする工夫が、あらゆるデザイン領域を席捲していた。これは二十世紀初め、機械技術の進歩がもたらした新しい概念「速度」の視覚化をめざした結果だった。そのムーヴメントの立役者でもあるインダストリアルデザイナーの草分けレイモンド・ローウィは、列車のサイドに数本の横ストライプを描き込むことで、「速度」感の獲得に成功した。いわば十九世紀までのキリスト教を中心とした縦社会に対する、「横」によるアンチテーゼ、モダニズム的攻撃のようにも思える。」

今でも電車のデザインは大抵は横ストライプである。縦ストライプの電車ってあるだろうか。やはり、進行方向の横に線を引くと動きがイメージされるからだろう。機能的には同じものも表面塗装の違いでずいぶん印象が変わるものだ。そういえば知人が「中央線は機関車トーマスの顔を先頭車両に描くといいですね」と言っていた。飛び込み自殺者が減るだろうとのこと。ニコニコ笑った機関車トーマスに轢かれて最期を遂げたい人はいないだろう。実際に効果がありそうだ。

独裁者は大衆心理をイメージで操る。ナチスのニュルンベルク党大会の光のモニュメントの写真は見事である。闇にちらちらするサーチライトは催眠効果をもたらしたという。

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北朝鮮のマスゲームも視覚的に大きなインパクトがある。国家レベルの壮麗なビジュアルデザインには気をつけないといけないのかもしれない。

この本にはこうしたカラー写真がたくさん収録されていて図鑑のような楽しさがある。プロダクトデザインのネタ帳としても使える面白い一冊。


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Posted by daiya at 2007年06月10日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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