2007年05月30日
誤解された仏教
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本来の仏教は霊魂の存在をはっきり否定している。
「肉体はなくなっても、霊魂は残る。祭りを怠ると、その先祖が祟る。ーーーーーーーなどというのは、まったく仏教とは何の関わりもない話である。事実、長いあいだインドの仏教では、死者儀礼とは何の関わりももたなかった。」
「死者の祟りなどというのは、原始民族の宗教(?)心理である。わけても、日本人は死者の怨霊を恐怖した民族である。そうした鎮魂(御霊鎮め)には神主さんより坊さんの法力のほうが秀れている、ということで仏教が取り入れられた。これを「御霊信仰」という。」
霊魂がないのだから祟るわけがない。あの世もない。本来の仏教では死んだら終りなのである。生まれ変わりということもない。そもそも輪廻というのは解脱すべきものであって、転生は永劫の生き死にを繰り返す苦しいイメージなのだ。
これは仏教=無神論・無霊魂論」の主張を軸に、仏教学者の著者が「正しい仏教」を説く本である。
私たち日本人は誤解された仏教をなんとなく信じている。人間は死んだら霊になってあの世ので暮らし、ときには輪廻転生で新しく生まれ変わったりもする、というのが平均的日本人の死後の世界のイメージではないだろうか。それが全部嘘だというと落ち着かない感じがする。
遠くインドからの伝播の過程で土着の思想と習合して、日本の仏教は本来の姿から大きく形を変えて大衆に普及した。その過程を著者は丁寧にひも解いて、誤解を解こうと試みる。輪廻のとらえ方、仏教と「梵我一如」的ヒンドゥイズムの峻別、念仏の方便と真実、日本的霊性と大乗教の提唱など、かなり仏教の専門的研究の記述が多いが、私たちが持っている通俗的な仏教感を根底から覆す内容である。
仏教は無神論であり哲学のひとつであり、他宗教との対話を通して世界的な思想となりえるという壮大なコンセプトを著者はこの本で語っている。
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Posted by daiya at 2007年05月30日 23:59