2007年05月25日
写真の歴史
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写真の黎明期を解説する教科書。
「1839年1月7日、フランスの著名な天文学者であり物理学者でもある下院議員のフランソワ・アラゴは、パリの科学アカデミーで、ダゲレオタイプと呼ばれる写真術に関する講演を行った。ルイ・ダゲールによって発明されたダゲレオタイプは、16世紀以来画家たちが写生にもちいてきたカメラ・オブスキュラという装置を使った写真術だったが、それまでのように装置がうつしだした像を手で描くのではなく、画像を化学的に記録することができる、まったく新しい方法だったのである。」
「記憶を持った鏡」ダゲレオタイプの技術公開があった1839年が「写真誕生の年」と言われる。当時のカメラは露出時間が短くて10分、長いと2時間以上かかったそうで、被写体は動かないものに限られた。それが1841年には現像促進剤の開発により、いっきに10秒程度まで短縮される。ポートレートが撮影できるようになった。
長時間露出がマストの時期の人物写真はポーズが妙である。眼をつぶっていたり、手を上着の中に入れていたり、顔がこわばっていたりする(後頭部に固定棒があった)。これは長時間動いてはいけないために、編み出された撮影姿勢だったのだ。
ダゲレオタイプは一回の撮影で一枚の画像しか得ることができなかったが、1840年にはイギリスのタルボットがカロタイプという、何枚も画像を焼き増しできる写真術を発明した。
・タルボットのカロタイプ Wikipediaより引用(Public Domain)
タルボットは「だれもが印刷屋や出版社になれる」と利点を説明したらしい。この言葉は、まるでインターネットやブログのことを言っているみたいである。
大量複製できるようになって世界中の人が写真に注目した。一方で写真を快く思わなかったのが絵画を描く芸術家たちであった。景色がそのまま写しとれる写真の登場に、彼らは職を失うことを恐れたようだ。当時の芸術家たちの往復書簡が巻末に多数引用されていて、時代の空気が読める。こんなものは芸術ではないと斬る人多数。
だが、既に写真は芸術的であったことが、この本の掲載写真でよくわかる。キャメロンの神秘的な肖像写真(この本の表紙)や、レイランダーの絵画風写真などは、今見てもうっとりする。1850年代のル・グレイの「海景」はこの本で見て感動した。空と海を異なる露出時間で撮影したネガを組み合わせて作ったものらしい。当時の最先端の画像処理である。
・MOMAのサイトで「海景」
http://www.moma.org/collection/browse_results.php?criteria=O%3ADE%3AI%3A4&page_number=5&template_id=1&sort_order=1
1860年代になると新聞や雑誌にも写真がよく使われるようになり、カメラも一般人のものになった。1870年にはアメリカのイーストマン・コダックが、アマチュアでも使いやすい乾版フィルムを発明し、大衆化が進む。こうして写真の黎明期が終わりを告げる。本書はそこで終わる。ざっと写真誕生から30年間の歴史が、この本では丁寧に語られている。
・すぐわかる作家別写真の見かた
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004934.html
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Posted by daiya at 2007年05月25日 23:59