2007年05月15日

全東洋街道このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・全東洋街道 上
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・全東洋街道 下
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「東洋の魂を求めて放浪400日!チベットでは山寺にこもり、チェンマイでは売春宿に泊まる…。全アジア都市の聖・食・性を写し出す、毎日芸術賞受賞のオールカラー・人間ドキュメント。」

四半世紀前の作品だが、この藤原新也の数ある放浪記の中でもこれは傑作だと思う。アジアの風土がこの人の気質と合っているのだ。外国人でありながら現地の風俗にどっぷり浸かって、観光とは無縁の、魂の遍歴とでもいうべき旅を続けた。

ときには売春宿で娼婦たちと生活を共にし、彼女たちの肢体も写真におさめている。裸の娼婦はカメラにコケティッシュなポーズを取りながら「頭の人ばかり ダメネ 人間は肉でしょ 気持いっぱいあるでしょ」と笑う。

生と性の根源である食にもこだわる。トルコでは排泄物の香りがする羊の腸のスープや、グロテスクな山羊の頭料理を写しては食べる、そして、写してまた食べる。豚のレバーにむしゃぶりつきながら、市場でシャッターを押す。「市場があれば国家は不要」。名言だ。

「レンズは九十九パーセント、肉眼に近い広角レンズを使った。街を歩き人に触れるのに望遠レンズを多用するのは卑怯だという私なりの考えがある。つまり写真を撮りながら被写体がその気になり、その時私の頬を殴ろうと思えばいつも殴れ、笑いかけようとするならいつも笑いかけられる位置において、私は写真を撮りたいと思う。」

このカメラのスタンスで挑んだからこそ、放浪先の土地の人たちの、猥雑で力強い普段の姿を、ありのままに写し撮れたのだろう。藤原新也の作品は、後期になるにつれて、次第に哲学的で説教臭くなっていき、それはそれで面白いのだが、やはり、この放浪記の頃の作品が、作家としてのベストショットだなあ。

・メメント・モリ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004925.html

・黄泉の犬
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004906.html


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Posted by daiya at 2007年05月15日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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