2007年05月07日
未来を変える80人 僕らが出会った社会起業家
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「自覚と決意をもった人々が集まれば、どんな小さなグループでも世界を変えられる。それを疑ってはならない。それだけは絶対に信じなくてはならない。」マーガレット・ミード。
この本の著者である若い二人は、2003年6月、440日間に渡る世界旅行に出発した。「自覚と決意を持った」を訪ねるために。そして、彼らは113人の社会起業家と対面し、そこから選り抜き80人のプロフィール紹介とインタビューを書籍にまとめた。
バングラデシュ人の経済学者ムハマド・ユヌスは貧者のための銀行、グラミン銀行を設立した。「多くの場合、貧困の原因は、個人の問題や、怠慢、能力不足ではなく、わずかな元手すら手にできない状況にある」というのがユヌスの経済学者としての持論である。グラミン銀行は、貧困にあえぐ人たちに低利で小額の融資を行い、自主性に任せた返済の約束をしてもらう。担保も保証も取ることがなかった。返済が滞っても取り立てはしない。
彼の銀行は、そんな性善説の仕組みがうまく機能するはずがないという金融界の常識を覆した。貧者を救う助け合いという趣旨を深く理解した借り手たちは、融資をもとに生活を立て直し、責任を持って期限内に返済をした。返済率は一般行を上回り、銀行として大きな利益さえ出してしまった。ユヌスは1千2百万人の生活を救うと同時に、4万6千600の支店を持つ一大勢力に成長させた。ユヌスはこうした成功を背景に、次は安価な携帯電話と自家発電システムを貧困層に提供しようとしている。
フランス人のトリスタン・ルコントはフェアトレードのリーダーだ。不利な立場の小規模なコーヒー生産者たちと契約して、コーヒーを販売した。国連の規定する取引条件を守り、従業員の教育、住居、医療のための費用を上乗せした「正当な価格」で同社のアルタエコ・コーヒーは販売される。製品ラベルには「ようこそ、消費が行動につながる時代へ」と書かれている。
良き意図を持つアルタエコの仕組みは、クチコミが機能するので、巨額の広告費が不要であった。意外にも最終価格は、競合製品と比較しても高くならなかった。何より同社のコーヒーは質が高かった。製品として魅力的であった。ルコントは「幸せな生産者が美味しい食材をつくる」と確信している。
生産性を維持しつつ、環境にやさしい農法を広める合鴨農法、地球にやさしいハイブリッド車両、企業の社会性を指標に投資する社会責任投資ファンド、自然にかえるプラスチック素材の開発など、80人の社会起業家たちは社会性と市場性を同時に満たすビジネスを創造し、人々を幸福にしながら、大きな利益を出している。
今まで、社会起業家は特殊な事例というイメージがあったが、読み進めるうち、これが企業のあるべき姿なんじゃないか、と思える話がいっぱいあった。需要と供給のメカニズムを最適化する利益追求のみの企業よりも、そこで働く従業員や経済基盤としての社会の未来のことまで考えた持続可能な企業が、最終的に勝つのは、当たり前なのでもある。
インターネットによって社会や経済の仕組みは一層透明になってきている。製品も会社も市場のグローバル化によって選択肢は増える。消費者や従業員に選ばれるサービスをつくるものが勝つという新ルールでの、最先端の勝ち組みがこの80人なのだろうなと思った。
日本人も何人か取りあげられている。
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Posted by daiya at 2007年05月07日 23:59