2007年04月23日
紗央里ちゃんの家
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第13回ホラー小説大賞 長編賞受賞作
「叔母からの突然の電話で、祖母が風邪をこじらせて死んだと知らされた。小学五年生の僕と父親を家に招き入れた叔母の腕もエプロンも真っ赤に染まり、変な臭いが充満していて、叔母夫婦に対する疑念は高まるけれど、急にいなくなったという従姉の紗央里ちゃんのことも、何を訊いてもはぐらかされるばかり。洗面所の床から、ひからびた指の欠片を見つけた僕は、こっそり捜索をはじめるが…。第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。 」
お化けや猟奇殺人は怖いが、それよりも、確固としたものだと信じていた現実が壊れていくことが一番怖い。そういう壊れ感が絶妙な、完成度の高いホラー小説。分類としては「独白するユニバーサルメルカトル」「姉飼」と同じ方向性といえそう。猟奇趣味だが、それだけには終わらない。
映像が全盛の時代にあって難しいはずなのに、近年のホラー小説はかなり健闘していると思う。ホラー映画やテレビの映像が、読者の想像力のライブラリを充実させているからなのではないかと、ふと思った。小説を読んで、脳内映像化する際に、過去に実際に観た映像を参考にするからである。
好きな和製ホラー映画
さて、この作品の舞台は、どこにでもありそうな地方の叔父さんの家だ。年に何度かしか会わない親戚というのは、内側と外側の境界領域みたいなもので、よく知っているようで知らないトワイライトゾーンである。この小説はそういう微妙な関係性をうまく素材として活かしている。嫌な話であるが、親族関係内での猟奇殺人事件が多い時代性をとらえた内容ともいえる。
ホラー小説長編賞受賞時に大賞は不在であった。これが受賞してもよかったのではないかという気がする秀作。
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Posted by daiya at 2007年04月23日 23:59
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