2007年03月22日

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・昨日
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悪童日記3部作があまりに良かったため、すべて読むことにしたアゴタ・クリストフ。

「昨日」は3部作の直後に書かれた作品で、続編ではないが設定や雰囲気には似た部分が多い。アゴタ・クリストフはハンガリー出身の亡命者で、母語ではないフランス語を使って小説家になった。感情移入を許さない、淡々とした客観的な語り口は、そうした作家の背景からくるものらしい。故郷も母語も失って、居場所のなくなった永遠の異邦人としての自身の姿を、主人公に重ね合わせて描いている。

アゴタ・クリストフの作品は影絵みたいだなと思う。感情エネルギーの光の部分よりも、その光が届かない闇の部分が物語の形をはっきりと映し出している。亡命者でなくても、多くの人間が、何らかの喪失感を抱えて生きているものだと思う。だから、読む者の共感を引き出す。

感情的に暗い読後感にならないのもアゴタ・クリストフの人気の秘密だろう。喪失がテーマであっても、後味は悪くない気がする。著者が亡命者ではあっても人生を投げているわけではないからだろう。むしろ、すべてを失っても生きていかなければならないという力強い覚悟を感じる。孤独だからって「癒し」なんて求めている場合じゃないぞ、と言われている気がする。

続いて読んだのが超短編集の「どちらでもいい」

・どちらでもいい
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3ページとか5ページのショート作品が25編。これがまたとても面白い。3部作の大きな魅力が、どんでん返しにつぐどんでん返し的な構成の魔術であったが、このショート作品集は、そうしたアイデアが連発である。たった1ページで独特の雰囲気を作ってしまい、残り2ページで意外な展開をする(かとおもえば、しないものもある)。先が読めない。星新一のショートショートを、ヘビーにした感じで、次はどうくる?と楽しみながら読める。

・「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004896.html


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Posted by daiya at 2007年03月22日 23:59 このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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