2007年03月15日
千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン
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意外な事実がたくさんあって、とても面白い経営学の本。日本版エクセレントカンパニーとは何かがテーマである。
日本には創業100年を超える老舗企業が10万社以上あるのだという。世界最古の会社は日本にある。西暦587年創業で1400年の歴史を誇る金剛組という建設会社だ。寺や神社の建築と修復を請け負う会社で飛鳥時代から今日まで存続している。この本でも取材されていたが、検索したらホームページまで見つかった。
・世界最古の企業 金剛組
http://www.kongogumi.co.jp/
100年以上続く店舗や企業はお隣韓国には1社もなく、中国やその他のアジア諸国にもほとんどない。ヨーロッパでさえ老舗の数は日本に及ばず、最古の企業の歴史は600年程度である。日本の老舗企業の多さは世界で飛びぬけた現象であると書かれている。
ただ歴史が長いというだけでなく、そうした老舗の中には、携帯電話の開発やバイオテクノロジーの研究へ転進して成功し、現代でも成長を続けている企業がある。事業の継続という観点からみたとき、超優良企業は日本に集結している。
この本では著者が多数の老舗企業の経営者にインタビューしてまわり、老舗の歴史や経営哲学をまとめている。共通しているのは以下の5つのポイントであった。
1 同族企業だが外部の優秀な人材の登用を躊躇しない
2 時代の変化に対応して事業内容は変化させてきた
3 創業以来のコア家業は譲らない
4 分をわきまえ好景気でも投機をしない
5 「町人の正義」を実践してきた
1の代がわり問題について
「日本の老舗企業にも、一族経営は多いのだが、血族にさほどこだわらない融通性をあわせ持っている。たとえ長男でも、娘婿が経営者として優秀であれば跡継に選んだり、養子や赤の他人に家業を任せる場合も珍しくない」
と述べられている。そして中国や他のアジア諸国の商人文化は家族とカネしか信用しないので、優秀な人に経営を譲る発想がなかったのではないかと分析されている。これに対して日本人は長い間、国家(お上)を信頼してその庇護の元に、職人文化を発達させることができた。老舗10万社のうち4万5千件は製造業なのである。儲け主義の商人発想ではなく、職人発想であったことが、事業の長期の継承を可能にしていたと著者は述べている。
日本人の精神性と企業経営の関係を歴史的に実証しているきわめて面白い新書。
大量発生しているITベンチャー企業はどれくらい長く続くのだろうか、とふと思う。私の会社は創業7年目。今年度決算はおかげさまで黒字で好調です。70年とか700年とか続く、かなあ。
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Posted by daiya at 2007年03月15日 23:59