2007年02月14日
「悪童日記」「ふたりの証拠」「第三の嘘」
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もはや古典扱いの作品ですが、全部読みました。
「悪童日記」で右からガツーンと殴られ、「ふたりの証拠」でさらに左からグワンときて眩暈がして、「第三の嘘」のアッパーカットでノックダウンされる。2作目、3作目と連携プレーが効く。ガンダムにたとえるとドムのジェットストリームアタックを喰らったようなインパクトである。これは必ず3作続けて読むべきである。
「戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。 」
著者は、主人公たちの心理描写を徹底的に排除し、事実だけを淡々と述べていく。客観的な記述にこだわった文体は、亡命者としての著者の心境を表しているとも評される。心を描かないことで、逆に心が気になる。読者は、主人公たちのしたたかな生き方には共感しつつも、どこか得体の知れない闇を感じている。その緊張感が「悪童日記」の面白さだなと思う。
そして、この作品がフィクションとしての本当の魅力を見せるのは「ふたりの証拠」からだと思う。
「戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。 」
アマゾンの説明では、(ある種のネタバレを避けるためなのか)「愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ」などと、トンチンカンな紹介がされているが、この本の面白さは愛や感動なんかではない。著者が築いたフィクションの迷宮との知的格闘である。冒頭からそのゲームは開始され、「第三の嘘」まで、ゲームのルールを変化させながら続いていく。
「ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結」
語り口は寓話的でシンプルな文体だが、それを積み上げていくとこんな構築ができるのか、圧倒的じゃないかと思った。
恋愛小説も純文学も苦手だけど面白い名作はないですか?と聞かれたら、これを薦める。
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Posted by daiya at 2007年02月14日 23:59