2006年11月16日
詩人少年、社長になる ぼくが出版社をつくったわけ
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毎月読む書評雑誌「ダ・ヴィンチ」には後ろのほうに、新風舎の新刊紹介コーナーがある。私は最近このコーナーで社名を知った。まだ一般知名度は高くない新風社だが、実は、年間に2700点を超える書籍を出版しており、2005年に新刊の点数で日本一の出版社になった。
・自費出版が進化した!新風舎 本にする原稿いつでも募集しております
http://www.shinpusha.co.jp/
もともとは、15歳の少年が自分で書いた詩を世に出したくて立ち上げた小さな会社だった。従来の商業出版では作品を出しにくかった無名の表現者を支援したいという情熱で、出版不況の中で異例の急成長を遂げている。
出版点数が多いのは、著者と出版社が資金を出し合って本を作る「共同出版」というビジネスモデルをベースにしているから。地方にも直営店舗ネットワークも展開している。数年前に皇室で読まれているという報道で、人気に火がついた絵本「うしろにいるのだあれ」は新風舎の代表作である。
この本は新風舎社長のマツザキヨシユキの自伝。著者の出版への関わりは、8歳の頃に盗作でつくった絵本に始まる。詩や小説を書いたり、ラジオ番組を作ったり、同人誌を作ってみたりと、少年期から大学時代までを、さまざまな表現活動に取り組んだ。
こうしたプロフィールだけ見ると、学生時代に立ち上げた音楽雑誌の出版事業から、成り上がったヴァージングループの社長に似ているが、まったく違うのは、上昇志向が感じられないこと。会社を大きくしようとか、売れ筋ベストセラーを出そうとは、考えない人のようだ。いい本を作りたいの一心で仕事をしている。だからこそ1万人の著者が共同出版のコンセプトに賛同してこの会社から本を出したのだろう。
IPOやM&Aをゴールにしない起業物語がすがすがしい。
無名の著者の本をたくさん出版する。インターネットの話は出てこないが、ロングテール市場の先駆けベンチャーだったと言えそうだ。自分史を出したい、作品集を出したい、ブログを本にしたいというアマチュア表現者は増えているはずだから、目利きとプロデュース能力次第で、自費出版、共同出版の市場にはまだまだチャンスが広がっているのかもしれない。
8歳のときに盗作した絵本の作者の谷川俊太郎、イラストレーターの和田誠と新会社トピスカインクを立ち上げるところで自伝が終わる。この会社が具体的に何をするのか書いていないが、ヌイグルミの販売を始めているようだ。おかしな取り合わせに注目である。
・トピスカインク
http://www.shinpusha.co.jp/wahhahai/
面白い本だったが、ひとつだけ疑問が残った。なんで著者は自分の出版社ではなく、日経BP社からこの本を出したのだろう?。
著者が少年時代に書いた詩集。新風舎が復刊。
・ワッハワッハハイのぼうけん: 本: 谷川 俊太郎,和田 誠
著者が少年時代に盗作した絵本。新風舎が復刊。
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Posted by daiya at 2006年11月16日 23:59
この方の出版社は、出版不況の中とても繁盛していらっしゃる一方、こういう問題も起こしているようなのが残念ですね。
http://retirement.jp/shimpusha-report/shimpusha-report1.html
http://www.janjan.jp/media/0610/0610243338/1.php
昨年倒産した壁天舎のような末路を迎えることなく、透明性の高い出版業へとシフトしていってほしいものです。
Posted by: 霊長類 at 2006年11月19日 01:33