2006年10月31日
巡礼者たち
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アメリカの片隅に生きる名もなき人たちの、人生の一瞬の輝きを切り取った短編が12作。著者のエリザベス・ギルバートは、ニューヨーク大学卒業後、エクスワイア誌に小説を連載し、パリスレビュー新人賞、ブッシュカート賞を受賞した気鋭の新人小説家。受賞作は共にこの作品集に含まれている。
12作の中から好きな作品をピックアップ。
表題作「巡礼者たち」は、平穏な牧場生活にふらりと現れたカウガールと、牧場主の息子の少年の短い交流を描く。新天地を求めて旅するカウガールを米国開拓者のイメージと重ね合わせている。力強い。
「東へ向かうアリス」はトラックが故障して立ち往生した兄妹を田舎町の中年男が修理を助けてやる話。孤独な者同士が触れ合うやすらぎ、悲哀。
「トール・フォークス」の主人公は安酒場の女主人。かつては人気だった店も時代の移り変わりの中で、隣の店にお客が流れ始めている。何事にも潮時があるという話。
「デニー・ブラウン(十五歳)の知らなかったこと」は、主人公が知らなかったことからその人生を描くという手法がユニーク。
「最高の妻」は70歳でスクールバス運転手をしているおばあさんの寓話。最後にもってきただけあってすばらしい出来だ。
どの作品も風味が豊か。読後感は爽やか。くだものをたくさん並べて、次々にちがう味を楽しむような楽しさがある。翻訳も洗練されていると思う。季節柄、公園やカフェでの休日読書タイムにぴったり。
エリザベス・ギルバートは長編も書き始めているらしい。今後が期待できる作家。
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Posted by daiya at 2006年10月31日 23:59
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