2006年10月08日
龍宮
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「小さな曾祖母。人間界になじめなかった蛸。男の家から海へと帰る海馬。台所の荒神さま。遠いカミの世から訪れたものとの交情を描く傑作短篇集。 」
怪しいものを題材にする別の女性作家として宮部みゆきもよく読む。基本はミステリ作家だけれども、「本所深川ふしぎ草紙」、「あやし」、「かまいたち 」のような時代物短編集で奇談怪談をあつかう。宮部作品の場合には、幽霊の正体見たり枯れ尾花といった体であって、不思議について、大抵は現実のからくりが明かされる。悪意や憎しみ。これら宮部作品では人の心に棲む鬼のようなものこそ怖いのである。
これに対してこの川上作品の魑魅魍魎には、タネも仕掛けもない。常世や黄泉の国から現し世にまぎれこんでしまった異形のものたちが、素のままうごめいている。それらは民話や伝承にモチーフを借りつつも、独自の奇想世界へ落とし込んでおり、古典ペダンチックな嫌らしさもない。するりするりと物語がすすみ、活き活きと妖しい。人間でないもの、ケモノ臭くて、はかなげで、物悲しい何かをしっかりとリアルに描いている。
8編の最後の「海馬」が特に出色の出来と思った。海からきたものは海へ帰る。いかにも日本的なカミさまのお話。
現在、巷で大不評の坂東真砂子(もともと作品が際どいから今回のペット殺し告白事件もあまり驚かなかった)原作の「狗神」「死国」、怪奇漫画の諸星大二郎原作の「奇談」みたいに、この小説も映画化されないかな。
・私の好きな漫画家たち
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/000741.html
諸星大二郎が好きな人におすすめ。
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Posted by daiya at 2006年10月08日 23:59
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