2006年06月21日
ユダの福音書を追え
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”ダビンチコード”がこじつけに感じられてついていけない私ですが、この本の内容はすべてが現在進行形の実話でわくわくした。ナショナルジオグラフィック協会の最新刊。
1970年代、エジプトで謎のパピルスの写本が発見された。欲に駆られた美術商たちの手から手へ、写本は30年間の旅の末、米国で信頼できる研究者の手に渡った。そのとき写本は長期の劣悪な環境によって崩壊寸前であった。研究グループは5年の歳月をかけて修復を行い、内容を解読した。専門家の調査、放射性炭素年代測定の結果は、紀元240年から320年頃のものという結果がでた。初期キリスト教の片鱗を今に伝える文書であることがはっきりした。
そしてナショナルグラフィック日本語版では6月号の特集である。
・NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2006年 05月号
古代コプト語で書かれた数十ページの写本のタイトルは「ユダの福音書」。
その内容は通説をくつがえす衝撃的な事実に満ちている。裏切り者とされたイスカリオテのユダはイエスが最も信頼した弟子であった。イエスの十字架上での処刑は、イエスが肉体を捨てて高次の存在になるために、イエス自身が企んだことであった。イエスは誰よりも信頼する弟子のユダに、最後の重要な指示を与えた。私をローマの官憲の手に売り渡せ。「お前は真の私を包むこの肉体を犠牲とし、すべての弟子たちを超える存在になるだろう」。
ユダの福音書にはユダとイエスの対話が含まれている。イエスは最も信頼する弟子であるユダにだけ真理を伝授している。「ユダの福音書を追え」は発見の経緯中心のドキュメンタリ、福音書の内容については要約レベルで紹介されているが、詳しくは同時に出版された「原典 ユダの福音書」に原文が収録されている。解説も詳しい。
今後、この写本が学術的にどのような位置づけになるかはまだわからない。イエスの死後数百年の頃の初期キリスト教には、今に伝わる新約聖書以外にも、複数の福音書があった可能性があるという人がいる。それを示唆する別の文書もある。ユダの福音書は、偽書ではなく、その後の教義の統一過程で、抹殺され、失われた文書である可能性がある。
結論がどうなるかわからないが、考古学上の大発見を一般読者もリアルタイムに味わえるのは素晴らしい。
なお、この原典を理解するには、グノーシス主義について、知っていると深く楽しめる。以前、グノーシス入門書を書評しているので参考文献として紹介。
・グノーシス―古代キリスト教の“異端思想”
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004060.html
・ヴォイニッチ写本の謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004123.html
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Posted by daiya at 2006年06月21日 23:59 | TrackBack
極東ブログに関連情報がありますので読んでおかれると良いと思いますよ。
たしか、ピリポの福音書やトマスの福音書の話もあったはず。