2006年05月01日
眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く
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生物進化史上、5億4300万年前のカンブリア紀は一大イベントであった。それまではゆっくりと進化していた生物が、この時期に、爆発的に多様になった。カンブリア紀の大進化と呼ばれる大きな謎に対して、「眼の誕生」がその原因であったという仮説が展開されている。
生物進化において、嗅覚・味覚、聴覚、触覚など他の感覚器官は直線的に緩やかに進化してきた。これに対して視覚はカンブリアの大爆発で一気の進化を遂げているという事実がある。
眼の誕生と爆発的進化の関係を、メディアの進化にたとえて説明している。
「
日々の政治ニュースは、テレビ、ラジオ、新聞から受け取れる。これら三つの異なる形式のニュース制作者は、仕事の処理方法がまるで異なる。歴史的に見ると、まず最初に新聞が登場した。新聞記者がニュースになりそうな現場をまわり、取材したことを紙に印刷して家庭に送り届けた。電報や電話が導入されたことで、新聞記者の仕事は楽になった。というより、新技術の出現によって仕事に若干の変更が生じた。環境の変化に呼応して新聞記者が「進化」したともいえる。
ラジオの登場によって記者のノウハウはさらに変化し...
<中略>
そこに重要な変化が訪れた。テレビの発明である。
」
視覚の誕生により、捕食者の活動が活発になった。最初の眼は三葉虫に備わったとされる。新聞とラジオだけだった情報戦にテレビがいきなり加わったのである。視覚による探索を行う捕食者は圧倒的に強かった。それを逃れるために被捕食者も視覚や形態、体色などを生き残りのために急速に進化させていった。
やがて、異性をひきつけるためにも視覚は利用された。性淘汰の圧力としても視覚は重要な役割を果たしはじめる。光がすべてにスイッチを入れたのである。
先日、小田原城の公園で撮影した、羽を広げたクジャクの写真。実物を間近でみると迫力がある。視覚の役割の大きさがよくわかる。この本のカラーページには、古代の生物の体色を復元した挿絵が多数ある。虹色に輝く不思議な生物たちの姿に驚かされる。
カンブリア紀に「光スイッチ」が入った理由としては、太陽の活動の活発化と大気成分の変化などが挙げられている。地球が明るくなったのだ。この時期に、惑星レベルのゆるやかな変化が、大気中の化学成分の変化などの臨界点を超える出来事を引き起こしたらしい。環境における光量が増え、より複雑な眼を持つ生物が発達したと著者は説明している。
カンブリア紀の大爆発の原因を、地球環境の変化ではなく、眼の誕生という生物側の事情に求めて、説得力ある仮説を展開している。進化論を考える上でとても面白い一冊。
・へんないきもの
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002635.html
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Posted by daiya at 2006年05月01日 23:59 | TrackBack