2006年04月20日
タウ・ゼロ
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「
【星雲賞受賞作】
32光年彼方の乙女座ベータ星めざし、50人の男女を乗せて飛びたった恒星船〈レオノーラ・クリスティーネ号〉。だが不測の事態が勃発した。宇宙船は生れたばかりの小星雲と衝突し、バサード・エンジンが減速できなくなったのだ。亜光速の船を止めることもできず、彼らは大宇宙を飛び続けるしかないのか? ハードSFの金字塔。
」
SFはサイエンスとフィクションのバランスが肝だと思う。科学的であることにこだわりすぎて難解になると、物語性が失われる。物語性を追求すると、科学性がぼやけてしまう。ふたつの要素はトレードオフの関係にあるのだと思う。この作品は、両方を絶妙なバランスで均衡させた名作だと思った。
無限に広がる宇宙。永遠に続く時間。そして光速に近い宇宙船が遭遇する時間と空間の不思議。この作品は、宇宙の果てに思いをはせた子供時代の好奇心を呼び戻し、これでもかとばかりに満足させてくれる。気が遠くなりそうな、永遠のイメージを何度も喚起させられた。こういう感覚は普通の読書にはない。
そして、宇宙船に閉じ込められた50人の運命共同体が織り成す人間模様。ロマンスあり、組織論あり、人生論あり。このドラマがあるおかげで、物語がわかりやすく、読みやすくなっている。ハードSFである割にあっという間に読めた。
著者のポール・アンダースンは、名声を確立したSF界の巨匠であるが、多作であるため、その作品は珠玉混交といわれているようだ。だが、タウ・ゼロは間違いなく光り輝く玉であると思った。1970年ごろの作品だが、内容は古くない。
現在の巨匠グレッグ・イーガンは難解すぎる、なにか口あたりよくハードSFの極みを味わえるものはないかなと探している人におすすめ。
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Posted by daiya at 2006年04月20日 23:59 | TrackBack
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