2006年03月30日
知識と推論
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知識情報処理、人工知能研究の素晴らしい入門書。
この本の扱う「知識」とは「人によって認識され、明示的に記述された判断の体系」のこと。人によって確認された「事実」、日常的に使う「ルール」、「法則」、「常識」、「ノウハウ」、「辞書」などをさしている。そして「推論」とは「既存の知識を組み合わせて新しい知識を作ること」と定義される。
こうした知識には次の5種類のカテゴリがある。
1 宣言的知識と手続的知識
2 理論的知識と経験的知識
3 浅い知識と深い知識
4 ドメインの知識とタスクの知識
5 オブジェクト知識とメタ知識
一方、推論には3つのカテゴリがある。
1 演繹と帰納と発想推論
2 完全な知識に基づく推論と不完全な知識に基づく推論
3 オブジェクトレベルの推論とメタレベルの推論
こうした定義で、知識を扱う推論システムを構築するために、必要な概念や操作の仕組みが総合的に解説されている。薄い本だが無駄がない。”考えるコンピュータ”をどう作るか、基本知識が集約されている。知識表現、論理式による情報処理、代表的な人工知能のモデル、状態空間による問題解決法など、目次は以下の通り。
第1章 はじめに
第2章 問題の表現と探索
第3章 論理による推論
第4章 基本的な知識表現と推論
第5章 ルールを導く推論
第6章 仮説に関する推論
第7章 あいまいな知識に基づく推論
第8章 類推と事例ベース推論
第9章 時間に関する推論
第10章 法律における推論
知識表現やオントロジーについては、言語やフレームワークの紹介が少しあるが、実装レベルの話はあまりない。説明のほとんどは論理式で記述される。飽くまで実装の前に、基本をおさえるための良書。知識、推論だけに特化している貴重な本である。
Web2.0の次に、Web3.0があるとすれば、それは情報のレイヤーのひとつ上、知識のレイヤーを扱うものであると思う。メタデータが情報に意味を与え、Webサービスがサーバ間での情報の統合や変換を実現する。その後には「考えるコンピュータネットワーク」の時代、知識情報処理の時代が到来すると思っている。
Google、Yahooを超えるものを作るヒントがこの本に隠されているような気がした。
・メタデータ技術とセマンティックウェブ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004304.html
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Posted by daiya at 2006年03月30日 23:59 | TrackBack