2006年02月06日
魂の重さの量り方
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20世紀初頭、米国の医師マクデゥーガルは、危篤状態の患者を精密な秤の上に乗せ、死の瞬間の体重の変化を計測した。その瞬間、秤の目盛りはわずかに動き、30グラムだけ軽くなった。「私は重さを量る機械で魂の実体を発見したのでしょうか?私はそうだと思います」と彼は書いている。
この突拍子もない見解は当時も支持されなかったし、現代科学では魂の実体という概念自体が否定されている。この本には、歴史上で「魂の重さを量る」ような同時代的に非常識な理論を提唱し、その後、その正しさや誤りが証明された科学の先駆者たちの物語が7編収録されている。まさにThink Differentな人たちの歴史である。
・重い物体と軽い物体の落下速度は同じだと指摘したガリレオ・ガリレイ
・ニュートンの粒子説に対して光の波動説を唱えたトマス・ヤング
・避雷針の頭は尖ったほうが効果が高いと主張したベンジャミン・フランクリン
・錬金術を批判しながら隠れて研究していた化学者ロバート・ボイル
・電気流体、動物電気説を唱えたルイジ・ガルヴァーニ
・生命体は独特な生命力を持つと考えた生気論者ハンス・ドリーシュ
正しかったにせよ、間違っていたにせよ、科学的に謎を解明しようとした努力は、科学の発展に貢献した。間違っていたにも関わらず、長い間、科学として生き残っていた理論も多いことが興味深い。
いつの時代の科学的な真理も、錬金術や生気論のように、その時点でほんとうだと信じられていることに過ぎないことがよくわかる。今でも根本的にわからないことがある。たとえば「魂の重さ」の重さの正体とは何なのか。重さは質量が重力に引き寄せられることである。では質量とは何か。最新の科学ではヒッグスボソンと呼ばれる粒子が他の粒子をひきつけるときに発生する力ではないかと考えられている。しかし、ヒッグスボソンを単独で探し出す試みはまだ成功していない。
著者はこう述べている。
「
科学理論は決してほんとうに真であると証明されることはない。その理論がどれだけ多くの検証をくぐりぬけてきたか。どれほど困難なテストをパスしてきたかによって、信頼度が大きくなったり、小さくなったりするだけだ。
」
科学は信仰の一種だということ、しかし、科学的方法論は科学的真理にちかづく唯一の方法であること、が、非常識で素晴らしい科学者たちの歴史から読み取れる。
・奇想、宇宙をゆく―最先端物理学12の物語
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003562.html
・科学者は妄想する
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003473.html
・ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002797.html
・トンデモ科学の見破りかた −もしかしたら本当かもしれない9つの奇説
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/001621.html
・科学を捨て、神秘へと向かう理性
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002634.html
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Posted by daiya at 2006年02月06日 23:59 | TrackBack