2006年04月18日
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
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上下の上巻部分をまず書評。
歴史から消滅した社会を比較研究することで、文明の崩壊の法則を論じた大作。
過去の文明崩壊に共通する、5つの要因として
環境破壊
気候変動
近隣の敵対集団
友好的な取引相手
環境問題への社会の適応
があると結論している。
共同体の発生→人口増加→食糧・エネルギー消費の増大→環境への負荷→食糧・エネルギー収量の低下→社会の混乱・破綻→崩壊・消滅というサイクルで文明は発生し、反映し、崩壊していく。5つの崩壊要因はこのプロセスの中に現れるが、最も重要なキーワードは環境である。
この上巻では、モンタナ州、イースター島、ビトケアン島とヘンダーソン島、アナサジ族、マヤ文明、バイキング、グリーンランドの繁栄と崩壊がケースとして詳細に分析されている。現代の例もあれば古代文明の例もある。
モアイ巨石像で知られるイースター島。かつてモアイ像は住民同士の宗教戦争によって、すべて倒され破壊されていた。現在、立って並んでいるモアイ像は現代になってから、復元されたものだけである。今のイースター島には樹木がないが、かつては森林に覆われていたという。樹木を一本残らず切り倒したのも、今は亡き住民たちであった。
イースター島は他の太平洋諸島から距離的に遠く孤立している。資源は不足気味な土地であったが、人々は懸命に生き独自の文化と宗教を育てていた。崩壊の原因はむしろ繁栄したこと自体にあった。増えた人口を養うために樹木が切り倒され、動物種を絶滅に追い込んでしまった。文化的であるがゆえにモアイのような、膨大なコストのかかる建造物をつくることに夢中になった。
外部からの資源の流入が期待できない島で。それは少しずつ進んだが、知らないうちに、自然の再生能力を人間の消費量が超えてしまっていた。彼らは自然から再生能力そのものを奪ってしまった。
次第に苦しくなる生活の中で、人々は希少な資源をめぐり争った。戦争は狭い島を一層荒廃させ、モアイ像をはじめとする文化も破壊した。この文明の晩年は激しい戦争と人肉食に及んだ飢餓に悩まされたらしい。ついにすべての住民が島から姿を消した。
このイースター島という箱庭の中の栄枯盛衰は数百年にわたる長い歴史であった。すべては徐々に進んでいた。各世代は知恵も能力もあり、最善と思う選択を選んでいたはずだ。そうでなければ巨石像を何百もつくる余裕のある一時代を築けなかったはずであるから。
上巻にでてきた多くの文明が、自らの住む環境を何らかの原因で徹底破壊してしまったことに崩壊の原因があることがわかる。人類のどんな営みも自然環境を少しずつ破壊している。農業でさえ破壊行為のひとつである。悪意や無知の環境破壊だけではないから複雑だ。イースター島という箱庭が実は現代の地球の縮図であるのかもしれない。
著者は、古今東西の文明崩壊の究明は今の地球文明の持続可能性の研究でもある、と示唆しているようだ。
下巻の書評を明日続けます。
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Posted by daiya at 2006年04月18日 23:59 | TrackBack