2006年01月22日

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまでこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで
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クライマックスではこみあげてくるものがあって目頭が熱くなった。知的好奇心を満足させる科学読み物でありながら、心をゆさぶる感動のドラマとして成立している。アマゾンの50以上の読者レビューのほとんどが最高点5つ星をつけての絶賛となっている。私は6つ星をあげたいくらいだ。

この本を読むのに数学の知識は要らない。楕円方程式、モジュラー形式、谷山=志村予想、コリヴァギン=フラッハ法、ガロアの群論、岩澤理論。サイモン・シンは極めて難解な解法を、人間ドラマの物語の中で順序だてて、やさしい概略として示してくれる。定理の最終証明は数学の専門用語と先端理論を使った100ページに及ぶ論文だそうだ。

この本には論文の最初の1ページの写しが掲載されるのみである。徹底的に簡単化されている。だが、十分に読者はその解法の概略を理解できるようになっている。著者の並外れた文章力と、構成力にも感動する。

フェルマーの最終定理とは、17世紀にフェルマーが残した難問である。フェルマーはノートに自分は答えを知っていると思わせぶりな書き込みまでつけていた。歴史上、数多くの数学者が全力でこの問題に挑んだ。だが、誰でも理解可能な問題でありながら、350年の間、誰もそれを解くことができなかった。学会においても解けないものだと思われていたが、1995年、現代の数学者ワイルズが8年の歳月をかけて研究し、ついに完全証明を達成した。

フェルマーの定理は、


3以上の自然数nに対して

Xn + Yn = Zn


を満たすような自然数、X、Y、Zはない

というもの。

この式はn=2ならば、ピュタゴラスの定理である。

ピュタゴラスの定理は「直角三角形において、斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい」という義務教育で習うおなじみのものだ。もちろん解がある(たとえば3,4,5)
。解があることは簡単に証明が可能だ(本の巻末に証明法がある)。

しかし、n=2を三乗(n=3)に変えると解はみつからなくなる。実は解がないのだ。この証明はn=2のときほどやさしくはないが、すぐに研究者によって証明された。そしてn=4のときも、n=5のときも、解がないことが証明されていく。フェルマーの定理を解くということは、nを無限に増やしていっても、解がないことを証明することだ。

そんな証明の話のどこが面白いんだと思われる人が多いだろう。私も読む前にそう思ったが、約400ページのこの本には純粋数学の面白さが詰まっていた。生まれ変われるなら、一度は数学者になってみたいとさえ思った。だから、この本がきっかけで未来の数学者を志す、何百人、何千人の若者がいたに違いない。

・暗号解読―ロゼッタストーンから量子暗号まで
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004028.html

・ヴォイニッチ写本の謎
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/004123.html


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Posted by daiya at 2006年01月22日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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