2006年01月19日
10年後の日本
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この新書は、同じ編集部による820ページ超の「日本の論点」の簡易版といえる位置づけ。
論客雑誌「論点」はサイトも充実している。
・文藝春秋編 日本の論点PLUS
http://www.bitway.ne.jp/bunshun/ronten/so-net/
ただ、14年の歴史のあるこの大作は読破するには手ごわい。個別の問題を深く掘り下げたいのでなければ、大局を知る上にはこちらの方が簡潔にまとまっている。取り上げられた論点は次の10個。
各章をタイトルとともに一言で説明してみる。
1 変わる日本社会のかたち
格差の拡大と治安の悪化、見直し迫られる消費税、老朽化するインフラ。
2 鍵をにぎる団塊世代
700万人の無職老人。危ない退職金、年金制度。
3 ビジネスマンの新しい現実
ものづくりの力の減退と外国人労働者増。
4 漂流する若者たち
フリーター500万人時代、ニート100万人。
5 世代が対立する高齢社会
保険料引き上げと、のしかかる介護問題
6 家族の絆と子どもの未来
増える虐待、教員不足、子どもの学力、体力低下
7 男と女の選択
出生率の更なる低下、専業主夫20万人
8 地球環境の危機
30年以内に70%確率で起きる首都圏直撃大震災、エネルギー危機、食糧危機、温暖化
9 グローバル経済の奔流
国債の破綻とふたたび景気停滞、中国とBRICs諸国台頭。
10 不安定化するアジア
北朝鮮統一と中国共産党の崩壊、テロの脅威拡大
経済と社会の観点では、2007年から一斉に引退が始まる、団塊の世代の老後の過ごし方が、日本の10年後に大きな影響を与えることが確実のようだ。4人に1人が老人の社会。彼らの資産がどのように使われるか、その消費が若い世代の経済活動とどう結びつけられるかが、日本経済復活の鍵になりそうだ。若者が創意工夫で作り出すサービスで、団塊の世代が喜んでカネを出し、豊かな老後を過ごせるのが理想。
危機という観点では、犠牲者1万3000人が想定される関東大震災よりも、64万人が死亡すると推計された新型インフルエンザの方が怖いように思えた。SARSは専門家の国際協力により、大規模な感染を未然に防いだ実績がある。予防する手段がある危機と言う点で、エマージングウィルス対策こそ重要かもしれない。
勝ち組、負け組の格差の問題はやはり最大の論点のようだが、思うに格差は相対的なものである。世界でみたら日本は相対的にとても豊かな国だ。世界レベルの格差を国民的な論点にして、その解決を国内の勝ち組も負け組も一緒に考えた方が、「世界の100年」という大論点では、有益なのではないだろうか。
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Posted by daiya at 2006年01月19日 23:59 | TrackBack
いつも拝見しています。10年後の日本は、簡潔によくまとまった本ですね。
Posted by: 成功者への道 at 2006年01月20日 22:13