2006年01月26日
ベルカ、吠えないのか?
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2005年度出版の一般小説ではベストだと思う。
1943年、第二次世界大戦下のアリューシャン列島。撤退する日本軍によって、4頭の軍用犬が置き去りにされた。数奇な運命によって海を渡り、世界へ散らばる血統は、人間の歴史に翻弄されながら、人間の歴史を逆に翻弄することにもなる。偉大なイヌの歴史を縦糸に、人間の歴史を横糸に、半世紀に渡る壮大な現代史のタペストリがそこに浮かび上がる。
世界史を総括する大河小説でありながら、テンポのよい筆致で、高い娯楽性もそなえた一大傑作である。鬼気迫る勢いの文体。執筆中、著者は何かに取り憑かれていたのではないか。見事なまでに魂のこもった語り、鬼気迫っているというのがふさわしい形容だろう。
古川日出男という作家の作品はこれが初めてだった。他の作品を知らないのだが、この一冊は世界的に通用する普遍の文学性を持った出来栄えであると思う。壮大な現代史を極めてユニークな手法で語ることに成功している。そこにあるのは、現代の日本人が失いつつある原初的な生命力であり、生きる意志で生きるものたちへの賛歌であると思う。その漲る生命力の前にはイデオロギーも善悪も霞んでしまう。
著者プロフィール:
古川 日出男
1966年福島県生まれ。早稲田大学第一文学部中退後、編集プロダクション勤務等を経て、98年『13』でデビュー。2002年『アラビアの夜の種族』で、第五五回日本推理作家協会賞と第二三回日本SF大賞をダブル受賞
・はてなダイアリー - 古川日出男とは
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%C5%C0%EE%C6%FC%BD%D0%C3%CB?kid=1908
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Posted by daiya at 2006年01月26日 23:59 | TrackBack
いつも興味深く拝見させて頂いています。この記事でこの本のことを知って、読んでみたら爆発的に面白かったので、書評をトラックバックさせて頂きました。ありがとうございました。ではでは。
おまけ:ぼくの書評集。
http://dora.boo.jp/book/index.html
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Posted by: Adrienne at 2008年04月07日 01:56