2006年03月19日

Worlds of Tomorrow: The Amazing Universe of Science Fiction Artこのエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加


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・Worlds of Tomorrow: The Amazing Universe of Science Fiction Art
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1920年代から1960年代までの海外SFの本や雑誌の表紙を、カラー掲載した大型本。洋書。ちょっと値段は高め(私は東京、丸善の洋書フェアで購入)だが、その価値は充分にある。

このテーマが好きならページをめくりながら、2時間はウットリしていられる本だ。

ジュール・ベルヌ、アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラークなど、SFの創始者、大御所たちの作品も多く含まれている。

オレンジの肌、緑色の眼をした宇宙人が美女をさらうイラスト。流線型の宇宙戦闘機がレーザー光線らしい武器で戦闘するイラスト、昆虫のような形をした巨大ロボットの来襲、胸のパネルをはずすと機械が露出するアンドロイド美女。アメリカンな古典SFの美学が、これでもかとばかりに満載である。

当時、ジャンルとして確立されていなかったSFでは、表紙に多額の予算は組めなかった。それにも関わらず、小説の内容に感化された想像力あるデザイナーたちが、読者の好奇心を刺激する絵を提供してきた。

SF小説は著者の名前ばかりが有名だが、実はこの無名の表紙デザイナーの果たした役割は、とてつもなく大きいのではないか。頭でっかちでタコのような手足の火星人、流線型の光速ロケット、高層ビルの立ち並ぶ整然と区画された未来都市。今では誰もが古典的な未来イメージも、誰かが絵に描かなければ、小説の文字だけでは十分に伝わったとは思えない。表紙買いした読者も相当多いはずだ。

SF本の表紙の研究は、過去の人間が未来をどのように思い描いたかを知る貴重な未来学史の資料だといえる。

この本の作者は、SF研究とB級SFホラー映画の収集家、研究者として著名な人物で、アイザック・アシモフをして最も重要な読者と言わしめたForrest J. Ackerman。基本は200ページ以上の表紙イラストを、大判フルカラーで集めた画集だが、アッカーマンの豊富な知識が披露される解説文も読み応えがある。

日本では、SF小説の層が薄かった代わりに、手塚虫治が描いた未来都市やロボットが、同じように科学者の卵に、未来イメージをインストールする役割を果たしていたのだろうと思う。科学者だけが科学の未来を作っているわけではない。アーティストやクリエイターの想像力も、未来の行方に大きな指針を提供しているのだと確信する一冊であった。

・Collectors Press
http://www.collectorspress.com/
この本に紹介されているような古典SF本やアメコミ、往時の米国の雑誌が購入できるセレクトショップ。


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Posted by daiya at 2006年03月19日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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