2006年05月14日
バッハ インヴェンションとシンフォニア
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クラシックは詳しくないが、バッハのインヴェンションとシンフォニアは大好きで、気合のいる頭脳労働のウォーミングアップに使っている。頭脳が明晰になる気がする。この楽曲集はバッハが息子の音楽教育のために作った練習曲集で、対位法や和声のあらゆるパターンと演奏技巧が含まれている、といわれる。何枚か持っているが、このギルバートのチェンバロ演奏版が好きだ。
インヴェンションは2声、シンフォニアは3声で構成されている。無駄な音は一切ない。すべての音符が欠かせない主役である。シンプルなインヴェンションが特に好きだ。2つの旋律が五線譜の上を、2人のダンサーのように舞う。高音部を追いかけていると、いつのまにか低音部と交代する。まったく異なる二つの高音部が、雌雄の蝶の如く、追いかけあうような譜面もある。
インヴェンションは各調の長調、短調で作曲された15曲で構成される。
1.2声のための15のインヴェンション ハ長調 BWV772
2.2声のための15のインヴェンション ハ短調 BWV773
3.2声のための15のインヴェンション ニ長調 BWV774
4.2声のための15のインヴェンション ニ短調 BWV775
5.2声のための15のインヴェンション 変ホ長調 BWV776
6.2声のための15のインヴェンション ホ長調 BWV777
7.2声のための15のインヴェンション ホ短調 BWV778
8.2声のための15のインヴェンション ヘ長調 BWV779
9.2声のための15のインヴェンション ヘ短調 BWV780
10.2声のための15のインヴェンション ト長調 BWV781
11.2声のための15のインヴェンション ト短調 BWV782
12.2声のための15のインヴェンション イ長調 BWV783
13.2声のための15のインヴェンション イ短調 BWV784
14.2声のための15のインヴェンション 変ロ長調 BWV785
15.2声のための15のインヴェンション ロ短調 BWV786
調の違いごとに異なる展開の仕方が百花繚乱だ。
各曲は2分程度の長さなので、すべての音符を集中して追うのに適した構成である。最初の音から最後の音まで、じっくりと味わうと、ぼやっとしていた頭がクリアになる。散らかった雑念を、厳格なバッハが、あるべきものをあるべき場所へ、きれいに片付けてくれる感じがする。特に教会音楽らしい、荘厳な響きのチェンバロ演奏が好き。
バロック古楽風のチェンバロ演奏に疲れたら、バッハ弾きの名手シフが弾いたピアノ版もいい。
私はiPodに2枚の楽曲をすべて入れて、同じ曲をチェンバロ、ピアノの順で聴けるようにしている。二つの楽器特性、演奏者の意図の違いが聞き取れる。ギルバートによるチェンバロ演奏は高音部も低音部も同じような強さで演奏されている。主旋律がふたつあるように感じる。
これに対してシフのピアノ版はかなり叙情的だ。低音部は主旋律の高音部を際立たせるように、弱めに引かれているように聞こえる。チェンバロの直後に聞くと、この楽曲はこんなにメロディアスだったのかという発見がある。口ずさみやすい演奏である。
理系、プログラマにバッハのファンが多いという噂を聞いた。納得できる気がする。バッハは和声や対位法、平均律という公理体系の中で、論理的にどのような美がありえるかのパターンを究めた純粋理性の人なのだと思う。プログラマも論理構築の仕事である。共通性があるのだろう。
他のバッハの大楽曲と違って、インヴェンションとシンフォニアは、創意工夫で簡潔なコードを書くハッカー的だといえそう。最低限の部品で音のあらゆる機能の可能性を実現していく。これは音楽のハッキング集だ。コンピュータ技術出版社のオライリー風にタイトルをつけるとしたら、Music Hacks By JS.Bachといったところだろうか。
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Posted by daiya at 2006年05月14日 23:59 | TrackBack
橋本様
いつも楽しく拝見しております。
「インヴェンションとシンフォニア」は私も好きな楽曲のひとつです。不要な音を全て削り取った美しさがありますね。きっとこの辺がプログラム同様にシンプルであって奥が深いことなのでしょうね。久しぶりに弾いてみたくなりました。
では、今後とも新しいエントリーを楽しみにしております。