2005年11月14日
コンテンツビジネス・マネジメント
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日米で活躍する弁護士によるデジタルコンテンツ論。
デジタル技術とインターネットの出現によって、法律の想定を超えた、思わぬコンテンツの創出や流通形態が次々に登場している。こうした新形態は「ニューユース」の問題として、法曹界でも議論が始まったばかりのホットな問題である。
この本はデジタルコンテンツに明るい弁護士が果敢にニューユースに切り込んでいる。
■アイドル証券化
インターネットはコンテンツの資金調達という創出のフェイズから新しいチャレンジの場として機能している。新人グラビアアイドルを証券化という話題が取り上げられている。私もネットのニュースで見て注目していた。
・ジェット証券株式会社
http://www.jetsnet.co.jp/g_idol/main_fr.html
・ITmediaニュース:“萌えドル”も参加するアイドルファンド第2弾
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0412/16/news068.html
「
出資は1口5万円。調達した資金は、写真集やDVD、CDの製作にあてる。投資家には売り上げの12〜15%が出資者印税として支払われ、最終的な投資利回りは売り上げに応じて変動する。
出資受け付けは2005年1月6日から2月18日までジェット証券Webサイトで行う。総額6000万円の調達を計画している。
写真集は新潮社が発行する。DVDとCDはAmazon.co.jpで独占販売し、強力なプロモーションを行う。ネット販売により流通コストを大幅にカットし、その分をプロモーション費用に回すことでヒットを狙うとしている。
」
・「アイドルファンド」のJDC信託が急伸、信託業参入で問われる実績 - nikkeibp.jp - 企業・経営
http://nikkeibp.jp/wcs/leaf/CID/onair/jp/biz/381319
「
同時にファンドを立ち上げ、これまで67案件、延べ20億円を投資。ファンドの運営手数料などの売上高は前期連結ベースで12億円に上る。しかし話題のアイドルファンドで、出版した写真集などの売れ行きが配当可能ラインに達したアイドルはまだいない。
」
ゲームの世界でも、ヒット作品になりそうな続編企画でファンドが立てられ話題になっていた。
・世界初の投信「ゲームファンド ときめきメモリアル」〜11月から募集
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/10/25/doc817.htm
1口10万円で投資を集めたのだが、結果はこうなった。
・「ゲームファンドTMときめきメモリアル」の償還に関して(マネックス証券・2003年2月17日)/マネックス・ビーンズ証券
http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/new/news30217-2game.htm
10,000円に対して10,088円が償還
意欲的な企画だったけれども実際は投資商品としては厳しい結果に終わった。
しかし、米国ではコンテンツの証券化はコンテンツ創出の重要な役割を担い始めているという。日本ではまだ、長期的に利益を生み出せるコンテンツの企画の担い手が少ないことなどが原因に挙げられている。
投資商品としては「会社」よりも「コンテンツ」や「有名人」の方がわかりやすい人も多いはずだ。これからに期待である。
■電車男の出版
そして当然、コミュニティが生成したコンテンツとして大ヒットをおさめた電車男も解説対象になっている。
「
「電車男」の著作権は誰に帰属するのか、出版によって生じる「印税」は誰のものか、あるいはこの物語に興味をもってドラマ化や映画化する場合には誰に許諾を求めればいいのか
」
「
書籍には各投稿者の著作権は放棄されていないという認識のもと、著作隣接権者である「2ちゃんねる」の運営者に許諾を得て出版に至ったことが断り書きとして記載されていますが、これでは許諾を受けたことにはなりません
」
テレビドラマにまでなった電車男だが、著作権を完全にクリアしたわけではないようで、むしろ出版も放送も、意欲的な試みとして位置づけられていた。コミュニティが創出したキャラクターを勝手に利用したとして、その後、のまネコ問題でエイベックスが痛手をこうむることになった。今後は著作権の扱いとは別に、それを生んだコミュニティとの関係性も大切に考えていかないと、ビジネス展開は難しいようだ。
■日本ではミッキーマウスの著作権は既に消滅している?
面白い事実がいろいろある。
1928年に米国でディズニーのミッキーマウスが映画デビューした頃、著作権の保護期間は56年間であった。ミッキーマウスは、1985年には保護期間が切れてパブリックドメインとなる予定だった。誰でも自由に使えるキャラクターになるはずだったのである。だが、1979年に著作権法は改正され、保護期間は75年間で19年間の延長が決まった。そして、その延長が切れる直前の2004年、米国に著作権延長法が成立し、保護期間が95年間に再設定された。ミッキーマウスは2024年まで保護されることになった。
ディズニーの著作権が切れそうになると、著作権保護期間が延長されるようにも見えるため、ミッキーマウス保護法などと揶揄される。これは有名な話なので私も知っていた。
しかし、著者によると、これは米国の法律であり、日本には効力が及ばない。意外な事実が指摘される。
「
ミッキーマウスが映画の著作物であると考えると、保護期間は公表の翌年の一月一日から五十年ですから、わが国では1979年にはすでに著作権保護期間が満了したことになります」
戦時加算という敗戦国の日本に課された特別延長ルールを適用しても、1989年にはミッキーマウスの著作権は国内では消滅しているという。日本ではミッキーマウスが公有の存在である可能性があるようなのだ。ウォルト・ディズニー・ジャパンにこの件を問い合わせると「お答えできません」という返事が返ってくるとのこと。
ただし、商標としての「ミッキーマウス」は別に存在しており、著作権が切れたからと言って、自由に使えるものでもないらしい。「シンデレラ」や「白雪姫」はパブリックドメインでありながら、ディズニーのキャラクターとしても活躍している。パブリックドメインになる部分とそうでない部分を組み合わせた利用は新たな課題になりそうだと述べられている。
この他、
・日本の法律はパロディを許容する器量がない
・ウルトラマン初期作品の海外での商品化権を円谷プロは持っていない
・宇宙戦艦ヤマト、キャンディキャンディの著作権紛争
・ゲームは映画の著作物に該当する
・テレビ番組のリメイク権、フォーマット権
などなど、著作権絡みの話題がたくさんわかりやすく解説されている。
・著作権とは何か―文化と創造のゆくえ
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003459.html
・知財戦争
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002828.html
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Posted by daiya at 2005年11月14日 23:59 | TrackBack