2005年09月28日

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・人間の終焉
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「テクノロジーはもう十分だ!」

著者が問題視しているのは、遺伝子操作、ナノテクノロジー、ロボット工学の3つ。

特に出生前の遺伝子操作で人間の身体や心を「増強」する技術は破壊的だと嘆いている。
遺伝子操作は近い将来、生まれ来るこどもたちの外見を立派な体格の美男・美女にしたり、IQを引き上げたり、常に冷静に考える気質にするような改造ができるかもしれない。彼らはノーマルの人間がいくら努力しても適わない高い身体能力を持つことになるだろう。
増強された世代とそうでない世代では世界を認識する力も変わってくる。圧倒的に高い意識レベルと思考能力を持つ人類2.0は、私たちの及びもつかない世界認識をするかもしれない。そのとき「パパは何もわかっていないんだから」が文字通りの意味になり、世代間は断絶されると著者は考えている。

そして「永遠の命」の技術革新は、人間の寿命を大きく引き伸ばすかもしれない。限り有る時間だから人はそれを大切にして生きてきた。好きなだけ生きられる時代には、人の価値観も根底から変わらざるを得ないだろう。


私たちは過去に比べてとても快適な安楽なところに到達している。真の問題は、そこまで到達した私たちが、それを本質的に未知の何かと引きかえにすることを望むのか、望まないのかである。

勇気を持ってブレーキをかけるべきだと著者は主張している。人口抑制策、汚染物質の排出規制、非暴力運動、環境保護地域のように、人間は自らの行きすぎを統制することができると著者は成功例を挙げて示した。

この本は先端科学の状況と、それが暴走した場合の脅威を、具体的に説明する部分が情報量も多くて面白い。著者の体験や人生観にもとづいた未来のビジョンにも説得力がある。単なるハイテク・ラッダイト主義者とは違いそうだ。

しかし私は著者が批判する「テクノ熱狂者」の方に近い立場である。明るい未来を作り出すためにテクノロジーの進化発展は無限に続くべきだと思う。著者は進歩史観自体を否定しているが、問題は進歩が悪いのではないと考える。科学者に哲学がなく、科学が資本の論理や知的好奇心だけで暴走していることにあると思う。ブレーキを踏むのではなく、ハンドルを価値あるビジョンの方向に修正することこそ必要なのではないかと思った。


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Posted by daiya at 2005年09月28日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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