2005年09月13日
祈りの海
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昨年からのマイブームのSF小説家グレッグ・イーガン。年初に書評した「万物理論」の作者である。
・ 昨年度マイベストSF 大作は「万物理論」、中短編は「あなたの人生の物語」
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002774.html
まだ読んでいなかった短編集をじっくりと読んだ。。
11作収録されているが最初の作品の出だしからひきつけられた。
「
ありふれた夢を見た。わたしには名前がある、という夢を。ひとつの名前が、変わることなく、死ぬまで自分のものでありつづける。それがなんという名前かはわからないが、そんなことは問題ではない。名前があるとわかれば、それだけでじゅうぶんだ。
」(「貸金庫」の書き出し)
アイデンティティがない(決して精神病というわけでもない)主人公という設定で物語がすすんでいく。
イーガンの作品はどれもハイテンションだなあと感じる。いきなり彼の世界観が当たり前のように展開されるのだ。
イーガンは奇想天外な空想宇宙をつくりだし、その内部における妙にリアルな日常や、登場人物の心の葛藤を描く。前提となる異世界が当然のように提示されて読者はいきなり違和感と好奇心をかきたてられる。読み進めずにはいられない気分になる。
奇妙な世界の出来事や事件ばかりだが、実はどれも私たちの世界のテーマを別の見地から論じているのだと途中でわかってニヤリとする。メッセージ性もある。イーガンの作品は、意識論、量子論、宗教論、情報論、宇宙論あたりが主なテーマである。こうしたテーマに興味のある人ならハマる可能性大。逆に言えばこれらに興味がない人にはただの小難しい物語で終わってしまう気がする。読者を選ぶ作風だと思う。
短編集と言うこともあってか、物語性はあまりない。むしろ、着想の奇抜さに度肝を抜かれたい人向けの一冊。第40回日本SF大会にて星雲賞の海外短編部門を受賞と一般の評価も高い。表題作はヒューゴー賞、ローカス賞を受賞している。
私のおすすめは以下の3つ。
1位 ぼくになることを
2位 祈りの海
3位 放浪者の軌道
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Posted by daiya at 2005年09月13日 23:59 | TrackBack