2005年08月29日
テレビの教科書―ビジネス構造から制作現場まで
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大学で教鞭をとるテレビのプロデューサーが語るテレビのビジネス構造から制作現場までの入門書。テレビメディアの本質、製作現場の実態、番組の作り方までがトータルに解説されている。
■テレビのお金の使われ方
2002年のテレビ広告費は1兆9531億円で総広告費の34%にあたる。これを視聴している全国4700万世帯で割ると1世帯当たり約4万円。企業は広告費を商品の値段に織り込んでいる。視聴者は間接的だが、年間4万円をタダで見ているテレビに支払っている計算になる。
テレビに使われるお金の内訳公開が詳しい。
企業が出す制作費を100とする。広告会社は営業費として20%の20を引いて放送局へ渡す。放送局も20%つまり全体の16を営業費として引いて64を制作会社へ渡す。制作会社も20%、12.8を確保するので、残りは51.2。番組作りの使える予算は、最祖に企業から出た予算の約半分である。
放送にのせるには制作費とは別に、電波料が必要で、これはほぼ制作費と同額と言われる。これも2割を広告会社が引いた後、放送局が分配する仕組み。電波料も含めると提供企業は、番組の直接的な制作費の4倍の予算が必要なのだそうだ。
ゴールデンタイムの1時間番組の制作費は2000万円から3000万円。ドラマは3000万円から4000万円。1年で50本なので、一本の一社提供番組に企業は年間50億円が必要になるという。数百億円の売り上げのある企業であることがスポンサーの条件となっているといえそうだ。
■テレビCMと視聴率
大量生産から少量多品種生産の時代になって、テレビCMの買われ方も様変わりしているらしい。
CMにはタイムとスポットの2種類がある。タイムは30分や1時間の番組枠を買い取って自社のCMを流す。「この番組は○○の提供でお送りしました」というのがタイム。番組の終わりと次の番組のすき間の枠がスポット。以前はタイムが多かったが、次第にスポット優勢になり、2001年のタイムとスポットの比率は3対7で圧倒的にスポットが多い。スポットは番組内容と関係なく、繰り返し訴求できるので広告効果が高いらしい。
企業にとって大切なのは視聴率だが、計測方法はアバウトだ。市場はビデオリサーチ一社の独占状態で、調査のサンプル世帯数は全国で6250世帯、関東地区で600世帯と多くはない。分母が少ないので統計的には、世帯視聴率10%(関東地方なら60世帯)でプラスマイナス3.3%の誤差がでる。視聴率20%といっても16.7%かもしれないし、23.3%かもしれないのだそうだ。
おおざっぱな視聴率に対して視聴質という言葉も最近よく聞かれる。測定サービスとしては、テレビ朝日と慶応大学が協力して実施しているテレビ番組のアンケート調査、リサーチQなどがある。
・テレビ番組視聴質調査 リサーチQ
http://www.rq-tv.com/index_before.php?type=
■ドキュメンタリ番組の作り方
後半は実際に映像制作の現場が説明される。ドキュメンタリ撮影のコツは、素人のデジタルビデオ撮影にも役立ちそう。役立ちそうなノウハウをまとめてみた。
フィックスの映像はワンカット10秒におさえる。
パンの角度は20度くらい。最初にフィニッシュを楽に撮れる姿勢を決めて、そこから体をねじって、元に戻りながらパンする。いきなりパンすると肝心のフィニッシュで姿勢が苦しくなる。見せたいものはパンの終わりにくるようにする。
ズームは最初ゆっくり、次第にスピードをあげる。ズームの倍率は最高でも画面の4分の1にする。寄れるものには撮影者自身が近づいていく。最初と最後で10秒を確保する。
なるほど、この3つをおさえておけば、良い映像が撮れそうな気がしてきた。
というわけで、テレビの全体像がよくわかる入門書としてよくできた本だった。
・新会社設立と「テレビブログ」サービス開始
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003593.html
・キレイに簡単にPCテレビ録画 MTVX2005
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003533.html
・PCで2チャンネル同時録画のGV-MVP/RX2W
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/003343.html
・テレビのからくり
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002987.html
・テレビの嘘を見破る
http://www.ringolab.com/note/daiya/archives/002377.html
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Posted by daiya at 2005年08月29日 23:59 | TrackBack