2005年08月14日

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・頭がよくなる本
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1974年に初版が出版されて以来、世界中で100万部以上売れたベストセラーの最新改訂版。原題は"Use Your Head"。脳の使い方を変えることで、潜在能力を最大限に発揮する学習法を教えている。

著者は学校教育では肝心のことが教えられていないと批判する。記憶の働き、記憶術、目の認知機能、注意の集中、動機づけ、キーワードやキー概念、思考そのもの、創造性、学習技術について、通常の教育は素通りしている。

この本は、学ぶ前に学ぶ必要があった脳の使い方についての素晴らしい指導書。

■本を読む技術

学習の基本に読書がある。本の読み方ではまず次の先入観は間違いだから忘れろと書かれている。

・一度に一語ずつ読まなくてはならない
・毎分五百語以上読むのは不可能だ
・速く読むときちんと理解できない
・速く読むほど集中力は落ちる
・平均的な速度で読むのは自然なことであり、それゆえ最善だ

目が文章を追う上下(左右)運動を科学的に分析すると、眼球は一直線になめらかに文章の線を追っているのではなくて、ある間隔で静止と移動を繰り返している。一度の静止でいくつの単語を読むことができるか、静止時間をいかに短縮するか、が読書のスピードを握る鍵になっていると指摘する。

速く読む練習法も示されているが、面白いのは大切なのは速く読む動機づけだという話。「運動が苦手な人が牛に追われて百メートルを10秒きっかりで走ったり、二メートルの塀を飛び越えてしまうようなものだ。」とちょっと無茶とも思えるたとえで説明される。

10秒、2メートルという数字はともかく、普通の読書速度の人間が動機づけで速く読めるようになるということは、無茶ではないようだ。人は試験の時間など、集中して早く読まなければいけないと思っているときは実際、速く読めているのだから。メトロノームを使って読書をする訓練も効果的だという。頭脳がそれを当たり前と感じるような、知覚の高速化を体得せよと説いている。

これは私も日常、長時間の通勤電車で本を読んでいるときに経験している。あと10分で目的地に到着という状況で、本が読み終わるまで残り30ページから50ページということがある。普通時の私の読書速度では無理である。だが、到着までに終わらせようと強く集中すると、理解度を落とすことなく、読み終えることができてしまう。この不思議は動機づけパワーなのだと思う。

■記憶する技術

記憶術についても詳しい。学習開始後20分から50分が記憶の定着度が高いから、その時間を勝負にし、こまめに休憩を入れるのが学習のコツだそうだ。記憶を長く保つには、何らかの関連づけが有効であるとし、特に次のようなイメージと結びつけて覚えると忘れないという。

言葉を結びつけるイメージ
 共感覚・感覚的なもの
 動きのあるもの
 関連のあるもの
 性的なもの
 こっけいなもの
 想像力をかきたてるもの
 数字を使ったもの
 記号を使ったもの
 色彩の豊かなもの
 順序・並べ方
 前向きなもの
 誇張されたもの

具体的にイメージと結びつけて記憶するやり方が例示されていて、大変、参考になる。

キーワードで記憶するには、記憶のためのキーワードと創作のためのキーワードを区別せよというノウハウも興味深い。内容を正しく想起できるようなキー概念を上手に選んで、キー概念同士の関係を記憶することが大切なのだ。そのためには多義的で拡散するキーワードではなく、内容を絞り込んでいくためのキー概念をみつける必要がある。

■頭脳地図でノートをとる

キー概念をみつけるにはノートの取り方に工夫せよという。普通の学習者のノートは先生の講義の内容を、話の順序や構造通りに文章化している。これでは、見直す際にも時間がかかるし、キー概念がみつけにくくなる。こうした一般的なノートの90%の言葉は記憶に必要がない無駄な情報であるとしてばっさり斬る。

キー概念を中央において、関係するキー概念を放射線状に伸ばして線で結ぶ頭脳地図(いわゆるマインドマップ)で、ノートを取ることが推奨される。キーワードは線上に書く。こうすることで無駄な言葉を書かずにすみ、見直す際にも、講義内容を正確に想起しやすくなるという。

そういえば私たちは学校でノートのとり方をほとんど教わっていない。ノートは先生の話の内容をその順序で余すところなく書くものだと思ってしまう。あるいは黒板をそのまま移す作業に終始してしまいがちだ。だが、ノートは結局、自分で後で想起の補助に使うためのツールであることを考えれば、想起に必要な情報だけを、効果的に記録することが重要なのだと気がつかされる。

頭脳地図ではまず学習前に知っていることを2分間で書き出せという。2分で思い出せないような事柄は、想起のベースにならない。学習はこの初期の頭脳地図に枝葉を伸ばす拡張する内容として学んでいくとよい。なるほど。


この本は学習法について示唆に富む名著だと思った。短時間でたくさんの学習が必要な場で有効なノウハウが多い。最近の学習術のノウハウのベースになっているようなので、学生にはとくにおすすめ。


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Posted by daiya at 2005年08月14日 23:59 | TrackBack このエントリーを含むはてなブックマークこのエントリーをはてなブックマークに追加
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